観劇日記〜2009年04月〜
01日(水) 18:30 宝塚歌劇団星組「My dear New Orleans」「ア ビヤント」 東京宝塚劇場
04日(土) 14:00 PARCO PRESENTS SHOW STAGE NO.1「Triangle〜ルームシェアのススメ〜」 PARCO劇場
06日(月) 19:00 古川展生「チェロ・リサイタル〜チェロで綴るフレンチ・クラシック〜」 東京文化会館 小ホール
09日(木) 18:00 東宝「マイ・フェア・レディ」 帝国劇場
11日(土) 13:30 ミラマーレ・オペラ「ロッシーニ:セヴィリアの理髪師」 六行会ホール


2009年04月01日(水)18:30-21:40
宝塚歌劇団星組「My dear New Orleans」「ア ビヤント」@東京宝塚劇場

 A席 宝塚友の会 会員割引 5000円 2階-7列-35番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田景子(My dear New Orleans)/藤井大介(ア ビヤント)

 ジョイ・ビー:安蘭けい◆
 ルイーズ・デュアン(ルル):遠野あすか◆
 スティーヴン牧師:汝鳥伶(専科)
 シスター・サラ:美穂圭子(専科)
 エマ:英真なおき
 ジョセフィン:万里柚美
 Dr.ウィルソン:にしき愛
 フローラ:朝峰ひかり◆
 アンクル・ジェリー:紫蘭ますみ◆
 ポン引きのボブ:美稀千種
 ジュール・アンダーソン:立樹遥◆
 娼婦リタ:百花沙里
 アルバート・ジョーダン:涼紫央
 Mrs.ウィルソン:毬乃ゆい
 娼婦ステラ:涼乃かつき◆
 娼婦ベラ:星風エレナ◆
 セリー:琴まりえ
 アンリ:美城れん
 レオナード・デュアン(レニー):柚希礼音
 バディ:和涼華◆
 オリヴァー:彩海早矢
 娼婦ローズ:花愛瑞穂
 ニューオリンズ市長(Mr.Behrman):天緒圭花
 ベッシー:音花ゆり
 ラジオ局のディレクター:鶴美舞夕
 ゲイブ:夢乃聖夏
 セシリア:純花まりい
 マーティン:麻尋しゅん◆
 ライアン:水輝涼
 アイリーン・ハート:妃咲せあら
 エリック・ジョンソン:紅ゆずる
 ネティ:夢咲ねね
 新聞売り少年のレッドヘッド・ウィル:碧海りま
 スタンリー:壱城あずさ
 ピート:美弥るりか
 ビッグ・ノーズ・ジョー:如月蓮
 メイ:蒼乃夕妃
 少年時代のジョイ:天寿光希
 少女時代のルイーズ:稀鳥まりや
 リトル・サム:優香りこ
 ニコ:大輝 真琴
 ポリーン:音波みのり
 ジョー・コールマン:真風涼帆
 メリー:華雅りりか

 昨日、なんであんなに拒絶反応を示したのかなぁ、と反芻しながら二度目の観劇。二日連続なので、逆に見えてきた部分もありますが、結局のところ、スタッフのお仕事が原因なのではないかと思っております。植田景子と藤井大介、共に宝塚ファンを自認する演出家なのですが、そのベースが「ファンモード」になっているか「プロモード」になっているかで明暗が分かれてしまった気がします。

 二人とも、愛情に溢れているんです。歌が売りの安蘭けいは歌いまくっていてるし、退団者それぞれに見せ場が与えられていますし、サヨナラ公演ならではのお約束はしっかり網羅しているし。でも、大好物も食べすぎると胸やけするように、気遣いも連発されると逆効果。一つ一つの見せ場が拡散して効果半減となっています。

 たとえば音楽処理。台本とミュージカルナンバーとの連携がなされてなく、芝居の上では弟が拉致される一大事だというのにヒロインはのんびり歌っていたり、民衆が集まって興奮して叫びまくる場面なのにリズムセクションがのんびりゆったりだったり、人員処理のためだけに作られたとしか思えない役の面々が歌い継いだりと、「大人の事情」優先の芝居無視状況。よって、芝居の流れも緊張感も場面ごとにブツ切れ。そもそも、どのナンバーも尻切れトンボ状態のオーケストレーションなのですからお話になりません。オルガン(と書きつつ、シンセサイザーですが)なんて、ボリュームコントロールの壊れたステレオ状態だし、何もかもがとってつけているのが制作事情丸見えで興ざめ。

 そういえば、宝塚って舞台を離れたオフでは不文律ながら「すみれコード」がうるさいにも関わらず、舞台上では、人種差別問題やら、妊婦がよろめいたりとか、拷問やら、問題発言多いんですよね。ただでさえ、ファンがナーバスになるさよなら公演で、寂しげな顔つきの安蘭けいが、ボソボソと覇気のない台詞を連発しても、さてはて、これは彼女の男役の集大成なのでしょうか。そういえば、トップスターとしては珍しく「非王子、非貴公子」なスターだった安蘭けい。柄の悪い役、色の濃い役を作り込むことによって、形式美による魅力を振りまいていただけに、(肌色は黒いけれど)白い役・受け身の役では魅力半減。そして、気を抜くと立ち姿が女性に戻ってしまう彼女には、スーツ姿は上半身が看板ぶら下げたサンドイッチマン状態でこれも彼女の魅力が出ていたかというと???

 一方、ショーでは安蘭けいの粗を見せまいと、愛情一杯のプロテクト仕様。一同が囚人服のような衣装の中で、黄金に輝くガウンに大羽根を背負って登場。おまけに、背景は電飾がピカピカ輝くので、嫌がうえにも華やかに盛り上がります。観客は電飾は逆光になってより神々しく見えるというオマケ付き。体力的負担を考慮してか、ダンス場面はひたすら二番手・三番手に任せ、立樹遥・涼紫央らと別格大人チームとしてポイントごとに君臨。ダンスが苦手でショーは得意じゃない安蘭けいにとっては何ともありがたい作り。何しろ、彼女のダンス場面では、下級生ダンサーに取り囲ませたり、難しい振りはなくして両腕をヒラヒラさせたり、やたらと見つめ合う場面をこしらえたり。何しろ、宝塚の歴代トップの中にはダンスが苦手なスターはいっぱいいますので、この手のハッタリのノウハウは劇団も心得てます。

 正直、こちらでも退団者一人一人への過剰待遇で、ソロありすぎ、見せ場与えすぎで、作品が散漫になってしまう箇所もあるのですが、藤井大介の偉いところは、下級生一同が踊り狂って疲れてきた終盤の15分に安蘭けいが今までに頑張ってきたご褒美場面を集約したこと。そりゃ、目立ちます、格好良く見えます。銀橋で歌いあげて、組子たちの大コーラスに見送られ(芝居でも似たような設定があったけれど、効果は段違い)大階段上ったと思ったら、嫁を迎えに降りてきて、こんどは黒燕尾服で三角ダンスの頂点で、いきなり見た人は「いつまでも何やってんの?」な状態ですが、過去のさよなら公演の見せ場の手法を「これでもか」惜しげもなく使ってくれるので、強引にサヨナラの感傷に浸らせてくれます。千秋楽を待たずに成仏しました(^∀^)ノ

 宙組時代は女帝圧政時代を過ごし、花組に移動後はトップ娘役以上の存在感で時に疎ましがられた遠野あすかは、トップ娘役が姫として大切にされる星組でようやく花開きました。安蘭けいと同じく、オーソドックスな宝塚の主演娘役とはタイプが異なりますが、それゆえに、バラエティ豊かな役に恵まれ、今回のショーではゴージャスな場面やソロ場面を多数与えられ、これまた娘役冥利につきるのではないでしょうか。娘役トップとしては遅咲きだったけれど、組配属に恵まれ、相手役に恵まれ、作品に恵まれ(サヨナラ公演は大コケですが)、抜群の存在感を放った娘役でした。

 個人的な助演賞は美穂圭子。彼女は力強くゴージャスに歌い上げる歌唱法なので、祝典色が強く、トップコンビのはなむけとして実にふさわしい献歌。退団者といえども、花を持たせすぎ。要らない役、要らない歌、要らない場面が多い芝居とショーでしたが、しっかり存在感をアピール。専科の面目躍起です。そして、実は要らない役だと思うけれど、スティーヴン牧師:汝鳥伶の黒塗り&アフロ頭が、鎌倉の大仏様ソックリで、シリアスで遊びどころのない芝居の中に(個人的にですが)笑いをちりばめてくれてホッ。登場するたびにオペラグラスでその姿を追ってしまいましたもの。ラジー賞はアナタのものですっ!!!


2009年04月04日(土)14:00-16:25
PARCO PRESENTS SHOW STAGE NO.1「Triangle〜ルームシェアのススメ〜」@PARCO劇場

 全席指定 9000円 E列-23番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮田慶子

 沢渡ナツメ:井上芳雄
 新納慎也:村野幸三郎
 彩乃かなみ:片山芽衣

 木の実ナナ&細川俊之主演の「ショーガール」の系統の新作ミュージカル。とはいえ、スタッフもキャストも(たぶん観客も)一新。どうってことないストーリーに楽しいナンバーやダンスが盛り込まれ「気負わず楽しむひと時の夢空間」というコンセプト。これ、演じる側はしんどいと思うのですが、大劇場での大作ミュージカルに疲れた時に気楽にほっこりできること請け合いのショー。出演者は芸歴の似通った三人トリオで、実力もキャリアも文句無し。特別な大スターがいるわけでもなければ、無名の人が混ざっているわけでもなく、バランスが取れてます。

 舞台上の三人は、まるで同期生のようにすっかり馴染んでます。何しろ、ちゃぶ台を囲んで、納豆ご飯を食べる芝居がいかにも自然なんですから(どうでも良いけれど、この場面で、マヨネーズを取ってもらって、お魚にドバドバかけるだけかけて、一口も食べない井上君が気になったけれど)。それにしても、ミュージカルのプリンスが、月組のお姫様が、納豆ご飯ですよ、納豆ご飯。非常に庶民的です。生活感あふれてます。「おかわりっ」なんてのが大げさなミュージカルナンバーになってしまうが、とっても可笑しいのだぁ!

 一応、主演級扱いなのが沢渡ナツメ:井上芳雄。今までにない役、今までになく踊りまくる役で、かなり頑張ってます。この人の場合、頑張りがダイレクトに伝わってしまうのが困っちゃうけれど、今回は、頑張りが空回りしちゃうのが、役とシンクロしていて、スタッフの「スターの見せ方の上手さ」に拍手。

 逆に、新納慎也:村野幸三郎は頑張りを表に出さず、チャラチャラと演じているように見せながら、きっちり作り込んでいるあたりが見事。そして、ダンサーなので、動きが綺麗で、三人並ぶと、思わず見とれてしまいます。ただ、スター街道一直線の人ではないので、ちょっと押し出しが弱いのが残念。も少し「ここは俺の場面だ〜」という押しがあれば、男性版、樹里咲穂になれるかも(と書いたら褒めすぎかしらん?)

 さて、彩乃かなみ:片山芽衣ですが、ついこの間まで宝塚トップ娘役だったはずですが、いきなり新劇出身の女優さんみたいなお芝居。そういえば、この人はトップとはいえ、姫系列よりも庶民のお譲さんタイプでしたねぇ。疲れたOLの生活感タップリで、実にノビノビ。お歌も、柔らかな高音を響かせるのではなく、地声たっぷりで歌いこなすあたり、今後の活躍に期待!です。大劇場でヒロインを演じるのよりも、中小劇場で、地道な役を演じるお茶の間女優が似合いそう。

 というトリオなのですが、実は一番落ち着きが悪かったのは観客かも。「どんな作品になるんだろう」「どんなお芝居なんだろう」「どんな演技をするんだろう」と、ほとんど接点のないファン同士が、三人並列の舞台をどう応援しようか戸惑っている感じ。すみれコードに触れる度に、どう反応しようか戸惑う客席を見学するのも面白い体験でした。

 今後もこの三人で上演が重ねられるシリーズなのか、それとも、出演者は入れ替わるのか、PARCO劇場の次の出方も気になるところですが、恐らく次の公演が勝負どころではないでしょうか。ウェルメイドの小洒落たステージ、ショーガールに負けない定番公演となりますように!


2009年04月06日(月)19:00-20:50
古川展生「チェロ・リサイタル〜チェロで綴るフレンチ・クラシック〜」@東京文化会館 小ホール

 全席指定 4500円 F列-25番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生
 ピアノ:坂野伊都子

 フランクール:アダージョとアレグロ
 ドビュッシー:小組曲
 ドビュッシー:チェロ・ソナタ
(休憩)
 フォーレ:パピオン
 フォーレ:パヴァーヌ
 サン・サーンス:アレグロ・アパッショナート
 サン・サーンス:白鳥
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 久石譲:おくりびと
 カザルス:鳥の歌

 今日は僕のためのリサイタル。だってそうでしょう。常日頃「のぼぉちゃんはフランス物が似合う!」と散々言いふらしていたのが聞こえたのか、フランス物を中心としたプログラム、初お目見えは散々弾き親しんだ「小組曲」(のぼぉちゃんは「二台ピアノの曲」と解説してましたが「連弾の曲」です!)が登場し、全曲、伊都子さんのピアノ伴奏付き。して、後半はフランス物から離れるものの、ラフマニノフあり、ピアソラあり、アンコールではアカデミー賞受賞の「おくりびと」をオリジナル奏者で聴けるとあって、これ以上何を望むと言うのでしょう(って、貪欲に望みは出てくる予感はしますがwww)。フランス物は派手に盛り上がる曲よりも、さりげなく、そして色彩感豊かに弾かなくてはならないので、のぼぉちゃんの歌心と、多彩な音色がたっぷり楽しめるんです。ロマン派の大曲のように、熱演で盛り上げる曲ではないので、演奏はしんどいでしょうが、逆に勢いで弾くことができないので、「のぼぉ適当に流してたんじゃないでしょうね!?」という某知人からの心配メールの甲斐もなく、実に丁寧な演奏でした。いかにも調子が良さそうで、こんな時ののぼぉちゃんは神がかります。

 ピアノ版だと、素朴でリリカルな印象の「小組曲」ですが、ピアノ曲とはいえ、チェロだと音の立ち上がりも音の特性も異なるので、こういった、編成に合わせたスタイルの変更が編曲物を聴く楽しみの一つ。「いったい、チェロだとどんな響きになるんだろう?」と楽しみにしておりました。チェロという楽器の特性か、ピアニストとの化学反応か、予想外に濃厚で色っぽい演奏。ピアノに関して言えば、一つ一つの音の粒を立てるのではなく、ペダルを多用してフレーズごとの響きを前面に出していました。オーケストラ版の色彩感豊かな編曲ともまた違って、ピアノとチェロだけに特化した響きが新鮮。

 今回は、フランス物の送品をたくさん紹介してくれたのが嬉しかったし、その繊細な響きのまま、ロシアやイタリア、ブラジルの音楽おも披露。一見、情熱的に見える他国の曲も、リベルタンゴを除いて繊細な響きが求められるものでまとめたあたり、選曲のセンスがよろしゅうござんす。声楽の二曲と、ブエノスアイレスの冬については、情熱的な音がクリアな音に浄化する仮定が何とも幸せ感いっぱい。ここで活躍するのが伊都子さんのピアノ。相変わらず、叩かずに楽器全体を鳴らす術が絶品で、低音をゆったりたっぷり響かせ安定させ、中音域はネットリと、高音域は非常にクリアに鳴らすことのできる名手。鍵盤を叩くのではなく、いかに指を離すかがポイントのようにお見受けしました。指の力だけで上げるのか、腕の筋肉を使うのか、はたまた体重移行を利用するのか。彼女が曲の大枠をきっちり作り上げてくれるので、のぼぉちゃんは伸び伸びと自分の音楽を奏でれば良いわけで、いつものことながら、ありがたいピアニストです。

 いつも、自動発券なので席を指定してチケットを購入できるわけじゃないのですが、それでもF列というのは、のぼぉちゃん鑑賞に関しては後ろの部類に入ります。東京文化の小ホールは天井が高いので、この位置でも、直接音だけではなく、反射音も良く響き、マイルドでブレンドされた優しい響きが実に心地良く、ハスキー・サウンドを堪能しました。割とかすれた音を出すチェリストなので、もしかしたらちょっと距離を置いて聴いた方が良いのかも(って、10年追っかけしてて、今さらですね)。唯一荒々しい演奏だった「リベルタンゴ」は、もしかしたら、エレキギターのような演奏を狙っているんでしょうか。弦を激しく指板に叩きつけるpizz、荒々しさを前面に出したメロディラインなどなど、トリにふさわしい革新的サウンド。この手の演出、上手いです。

 あ、桜の時期に合わせて、ピンクのシャツを着用したらしいのですが、東京文化のスポットライトがオレンジ色のため、客席からは白シャツに見えてしまったのはご愛敬。


2009年04月09日(木)18:00-21:10
東宝「マイ・フェア・レディ」@帝国劇場

 A席 8000円 1階-O列-12番 (パンフレット:1500円)

 演出:西川信廣

 イライザ:大地真央
 ヒギンズ教授:石井一孝
 ドゥーリトル:モト冬樹◆
 ピッカリング大佐:羽場裕一
 フレディ:姜暢雄◆
 ヒギンズ夫人:草村礼子
 ゾルタン・カーパシー:藤木孝
 ピアス夫人:春風ひとみ
 トランシルバニア女王:ちあきしん

 前回ジェミイ役だった治田敦がハリィ役へとシフトしているのですが、二人組の役なので、この日記を書くまで違いに気づきませんでした。とりあえず、2キャスト(◆付き)の新顔が登場すれども、日本初演からの上演回数が1000回を数えようとも、現イライザの大地真央が550回という記念公演を迎えども、客席はちょっとさびしい雰囲気。確かに、時代を感じさせる古いミュージカルです。場面場面で舞台が暗転し、しばらく真っ暗闇になることも多々ありますし、各ミュージカルナンバーは「まだ歌うの?」と思う位、3フレーズも4フレーズも続きます。どちらかというと、オペレッタ観劇のようなペースに慣れてしまえば結構楽しめます。

 大地真央のイライザはさすがに「21歳位」には見えず、ドゥーリトル:モト冬樹との並びは親子というより夫婦のよう。これはいかんせんしかたありませぬ。でも、大地真央の代わりにイライザがまかせられる女優さんというと、思いつかないんですよね。主役としての華、コメディエンヌとしての間、なによりも「マイ・フェア・レディ」というクラシカルな作品のテンポを活かせる舞台人としての大きさなどなど。そして、今回改めて思ったのですが、確かに、真央さんの歌は音楽的には上手いと思ったことはありません。が、歌詞がストレスなく、セリフとして客席に届く技術に関しては、他の追随を許さないんです。母音発声の劇団四季の俳優とも違い、一言一言に緩急を持たせて、フレーズごとにまとまっているんです。「日本語を優先するあまり、メロディへのノリが悪いのか!」と今更ながらの発見です。

 作品としては、第一幕は花売り娘が大使館のパーティでハンガリーの王女様と誤解されるほどに開花するまでのシンデレラ・ストーリー。第二幕は貴族と庶民、先生と生徒といった階級差別を感じさせる縦の関係が、男と女という横の関係になるのが見どころ。今回の公演では、イライザのヒギンズ教授への愛情表現が今までになく顕著だったので、第二幕でのイライザの怒りと哀しみがかなりクローズアップされた気がします。そして、ヒギンズ教授:石井一孝が恋愛関係に鈍感なイギリス男を演じるのが実にお上手。独りよがりに自信満々なあたりとか。話は噛み合わないけれど、お互いに愛し合っちゃってるのがわかる「テレビドラマに登場しそうな、観客はまだかまだかとくっ付くのを待ち構えている」カップルとなりました。

 で、ピッカリング大佐:羽場裕一がこれまたイライザにぞっこんなのを前面に出し、イライザのレッスン中のチョッカイというか、ウィンクしたり、助け舟を出したりが、今までになく直接的表現。目くばせだとか、奥ゆかしい紳士ではなく、これまた色気を失ってない中年男で、古典作品ではあるけれど、2008年版「マイ・フェ・レディ」として芝居は変化しているんだな、と。

 ドゥーリトル:モト冬樹はもっと役を自分に近づけるものと思っていたら、意外にもモト冬樹ではなく、ドゥーリトルが舞台に登場。ミュージカル経験がほとんどないので、歌い踊るシーンでの押し出しはないけれど、真摯に役に取り組む姿勢に好感。も少し声量が出れば、テナルディエも出来るかも。フレディ:姜暢雄は、若くてハンサムで、でも、生活力のない貴族のボンボン役をこれまた公演。アスコット競馬の場面ではじめて登場し、イライザ→ヒギンズへの愛情戦略の武器として、あて馬のような扱われ、いとも簡単に捨てられてしまう(でも、捨てられてもすぐに立ち直ってそう)存在感の軽さ、ボンボンぶりが何とも微笑ましく、キュートなフレディ。

 実は、お誘いがなければ観る予定のない公演だったのですが、定番作品の底力と言いましょうか、何かと楽しいものですね。でも、やはり、この作品は、歩道橋のようなモダンな装置よりも、クラシカルに大掛かりに飾り立てた美術の方が好きです。確か、このプロダクションは名古屋の中日劇場用に作られたもので(なぜか名古屋で観てます!)、帝劇の大きな舞台だとちと寂しいんですよね。そして、これは権利者への確認が必要でしょうが、ナンバーの刈り込みを筆頭に、暗転なしで流れるような演出にして、上演時間を1時間位縮めた方が今後より観客にアピールできるのではないかと。オリジナルの形で上演する魅力もあるけれど、時代に合わせたアレンジもあって良いかな、と。平日18時に帝劇というのは、きついですわ。



2009年04月11日(土)13:30-16:15
ミラマーレ・オペラ「ロッシーニ:セヴィリアの理髪師」@六行会ホール

 全席指定 7000円 I列-5番 (パンフレット:無料)

 演出:馬場紀雄
 指揮:樋本英一
 管弦楽:ミラマーレ室内アンサンブル

 ロジーナ:松浦麗
 伯爵:岡坂弘毅
 フィガロ:森口賢二
 バルトロ:松山いくお
 バジリオ:飛鳥井亮
 ベルタ:東裕子
 フィオレッロ:江口浩平
 隊長:金子宏
 アンブロージョ:江口浩平

 六行会ホールはキャパが250もない小屋ながら、バックステージも客席ロビーもしっかりスペースが確保されていて、また、バブルの余波をかぶった建築だけあって、建築デザイナーが頑張ったおかげで、なかなか素敵な空間です。今回は客席最前列を取っ払い、急遽オケピをこしらえ、ヨーロッパの人口30万人位の都市にありそうな小ぶりなオペラハウスと変身! オケもヴァイオリン以外は各パート1名ずつという14人というミニチュア編成、舞台間口はわずか10m程度。でも、ちゃんとオペラカーテンはあるし、舞台はそこそこ奥行があるし、オケや指揮者による見切れ席(観客は案内されず)を銀橋のように使用してと、何もかもが小さくて愛らしくて素敵な空間。新国の小劇場オペラよりもさらに一回り小さいのですから!

 全8回公演とはいえ、可能動員人数なんて、1600人程度なのですから、大変失礼ながら、期待してなかったんです。予算のなさそうなシンプルな公演を想像してました。が、屋外場面も屋内場面もちゃんと作り込まれた美術にスタッフの心意気を感じるではありませんか!! そういえば「セヴィリアの理髪師」という作品は、一軒家の玄関先とリビングだけ登場する作品ですから、なるほど、小空間でも全然違和感がないわけです。出演者はダブルキャストとはいえ、5日間で4公演ずつというハードスケジュール。空間も小さいことですし、軽く歌うのかと思ったら……フルパワーで元気一杯。すみません、客席狭いし、温度も高くて(休憩時間に購入したチョコレート、終演時には鞄の中でドロドロに溶けてたんです!)、1幕の終盤には酸欠でフラフラになりました。オペラ歌手の酸素摂取量ってハンパじゃない!!! 結構命がけの公演でした。

 ロジーナ:松浦麗は、1年前の今頃、藤原オペラの「どろぼうかささぎ」で少年役を演じていた方ですね。今回はお譲ちゃん役。おきゃんなネエチャンではなく、落ち着きのあるロジーナ(声楽的なコロコロ感も影響しているかも)。伯爵:岡坂弘毅は初めて観る方かな。まだ若々しいテノール。第1幕では酔っ払いとしてバルトロ邸に乗り込むも玉砕するものの、第2幕では性懲りもなく声楽指導の先生として再び宅内に乗り込むのですが、登場しただけで笑いが起きたのにはぶらあぼ。フィガロ:森口賢二は舞台を出たり入ったりが忙しい役ですが、大劇場とは違いステージが狭いので、クネクネと椅子や机をよけて器用に出入りする姿が何ともおかしな床屋さん。どうでも良いことではありますが、髭剃りの場面、僕がこの役だったら、千秋楽ではシェービングクリームを「これでもかっ」と塗りつけ、バルトロをパイ投げの標的にされた人のようにしちゃいますわ、きっと。そのバルトロ:松山いくおは偏屈ジジイというよりも、子供のように感情豊かなじいちゃんで、プーっと頬を膨らませるだけで愛らしいの何の。コメディ場面は彼が一手に引き受けてた感あり。お堅いだけの後見人じゃないだけに、余計にパイ投げしたくってしたくってwww