観劇日記〜2009年05月〜
02日(土) 16:00 宝塚歌劇団花組「哀しみのコルドバ」「Rsd Hot Sea II」 市川市文化会館
02日(土) 23:30 映画「バーン・アフター・リーディング BURN AFTER READING」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ Screen2
03日(日) 13:00 劇団四季「春のめざめ」 自由劇場
04日(月・祝) 23:30 映画「ビバリーヒルズ・チワワ 日本語吹替版 BEVERLY HILLS CHIHUAHUA」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ Screen9
05日(火・祝) 11:30 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009
「312 ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル」
東京国際フォーラム ホールA アイゼナハ
05日(火・祝) 16:30 歌舞伎座さよなら公演 五月大歌舞伎
 「恋湊博多諷」
 「夕立」
 「神田ばやし」
 「鴛鴦襖恋睦」
歌舞伎座
09日(土) 17:00 東宝「この森で、天使はバスを降りた  THE SPITFIRE GRILL」 シアタークリエ
12日(火) 18:30 宝塚歌劇団雪組「風の錦絵」「ZORO 仮面のメサイア」 東京宝塚劇場
13日(水) 19:00 来日カンパニー「XANADU」 赤坂ACTシアター
16日(土) 18:30 民音創立45周年記念公演
シルクロード音楽の旅「青年アレキサンダー大王の道」
中野サンプラザホール
19日(火) 19:00 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」 新国立劇場オペラパレス
21日(木) 18:30 東宝+ホリプロ「シラノ」 日生劇場
23日(土) 13:00 「The Game Of Love 〜恋のたわむれ〜」 THEATRE1010
30日(土) 11:00 宝塚歌劇団花組「オグリ! 〜小栗判官物語より〜」 日本青年館大ホール
31日(日) 13:30 マイクロソフト管弦楽団「第5回ファミリーコンサート」 文京シビックホール


2009年05月02日(土)16:00-19:10
宝塚歌劇団花組「哀しみのコルドバ」「Rsd Hot Sea II」@市川市文化会館

 A席 5000円 2階-12列-24番 (パンフレット:1000円)

 作:柴田侑宏 演出:中村暁(哀しみのコルドバ)/草野旦(Rsd Hot Sea II)

 エリオ・サルバドール:真飛 聖
 エバ・シルベストル:桜乃 彩音
 マリア:京 三紗(専科)
 アントン・ナバロ:夏美 よう
 セバスチャン伯爵:眉月 凰
 リカルド・ロメロ:大空 祐飛
 パウラ:絵莉 千晶
 ビセント・ロペス:愛音 羽麗
 アルバロ:未涼 亜希
 アンフェリータ・ナバロ:桜 一花
 フェリーぺ・マルティン:真野 すがた

 85年初演、95年再演に続き、ツアー公演の形で三演となる「哀しみのコルドバ」。登場人物を丁寧に書き込み、シンプルな話ながら、各登場人物の思いが丁寧に書き込まれた素敵な作品。宝塚の男役ならではの格好良い姿の一つがスパニッシュ物だと思うのですが、少人数かつ、稽古期間も短い中、よくぞ過不足なく作品世界を構築したものです。

 今回のツアー公演の特徴はというと「各生徒が自信に満ちていること」でしょうか。トップとして丸一年となる真飛聖は舞台のセンターに落ち付き、桜乃彩音は組を率いる覚悟が決まり、宙組トップ就任が内定となった大空祐飛はキャストの誰よりも張りきった舞台。そういえば、最近ではトップと二番手が揃ってのツアー公演は珍しいけれど、トップ&新人さんたちというカンパニーと異なり、二番手にベテランが座ると、何とも安定するもんですね。また、若手もバウ公演出演者が抜けた分、ポジションアップとなっていて、おのおの見せ場を与えられて張り切っているのが何とも元気。

 「Rsd Hot Sea II」は、真飛聖のトップお披露目公演のショーですが、装置も照明も貧弱なツアー公演にも関わらず、その充実度はこの一年間での仕事っぷりがうかがえて、東宝公演とは雲泥の出来。歌やダンスの技術が上がったというよりも、客席へのアピール力が各段に高くなり、熱いショーとなりました。でも、フィナーレの衣装、ジーンズではなくなったのは良いとして、襟という襟に白くてフワフワしたファーを付けたことにより、何とも暑苦しくて「季節感がないなぁ」と。



2009年05月02日(土)23:30-01:20
映画「バーン・アフター・リーディング BURN AFTER READING」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ Screen2

 全席指定 レイトショー 1200円 H列-4番 (パンフレット:600円)

 監督:ジョエル・コエン&イーサン・コーエン

 チャド・フェルドハイマー:ブラッドピット
 ハリー・ファラー:ジョージ・クルーニー
 オズボーン・コックス:ジョン・マルコヴィッチ
 リンダ・リツキ:フランシス・マクドーマンド
 ケイティ・コックス:ティルダ・スウィントン
 サンディ・ファラー:エリザベス・マーベル
 テッド:リチャード・ジェンキンズ
 CIA情感:J.K.シモンズ

 コーエン兄弟によるおバカ映画。メインキャストはiPodなしでは生きられない筋肉バカなスポーツクラブのインストラクターのチャド、財務省連邦保安官ながら出会い系サイトにハマり二股不倫中のハリー、アル中でCIAをクビになったため暴露本を執筆中のオズボーン、整形マニアで全身整形のためなら給料前借りも借金も犯罪も厭わないリンダ、オズボーンの妻でヒステリー女医のケイティ。

 もう、キャラクター設定を効いただけで胡散臭いでしょ。ケイティがオズボーンとの離婚を有利に進めるため、彼のパソコンからダウンロードしたデータ(実は暴露本の原稿)をCDにコピー。が、それを受け取った弁護士秘書がうっかりスポーツクラブのロッカーに落としてしまったのが事の発端。脳ミソまで筋肉なチャドがそれをCIAの機密情報だと勘違いし、それを元に恐喝を思いつき、全身整形のためにお金が必要なチャドの同僚リンダはその共犯者としてオズボーンへの脅迫やロシア大使館との取引を提案。このリンダ、男あさりにも余念なく、出会い系サイトにハマっているのだけれど、直近のお相手は、コックスの知人にしてコックス夫人のケイティと不倫中のハリー。ハリーはW不倫ってわけです。

 ブラピのイントラ役、はまりすぎです! やたらとテンション「だけ」は高く顔面土砂崩れの笑顔が張りついているイントラ……いるでしょ。50歳近くになっても、ゴムまりのような肉体とハイテンションがフィットする若々しさは圧巻。何となくシリアス作品の俳優さんというイメージが強いけれど、実はコメディアンとしてナカナカなお方。個人的にはこちら路線でもっと出演していただきたい、と。おバカっぷりを盛り上げる表情が何とも言えませぬ。

 ブラピより1歳年上のジョージ・クルーニーも、ダンディなおじ様だったハズが、大きな目をさらに見開いて、まるで中尾彬みたい。ジョギング・マニアで「運動しないと鬱になる」程の割にメタボ気味なのは食生活が原因でしょうか? そして、出会い系サイトにはまるエロ親父。ホームセンターで材料を仕入れては大人のオモチャを作っちゃうわ、離婚する気はないのに、離婚直前をほのめかして複数の女性とHしまくり。あぁぁ、何だかヘアスタイルも微妙だし、イメージが崩壊〜〜〜。

 ま、女性陣も曲者で、思い込みの激しいリンダの表情はどことなく高畑淳子。……アメリカ映画なのに、なんだかとっても身近に感じるのは、日本人俳優をイメージさせる俳優の起用ってのがあったのかも。

 イッチャッてる役者を楽しみ、、状況を知っている第三者からすると「まじめに取り組めば取り組む程」コメディになってしまう登場人物たちの「ありえないでしょ〜この展開」な偶然の重なりに、お気楽極楽ぶりを感じ、衝撃の(!)結末に「嘘〜〜〜っ」と絶叫して終わる、ポップコーン片手に観るのにピッタリなお気楽極楽な一本でした。


2009年05月03日(日)13:00-15:30
劇団四季「春のめざめ」@自由劇場

 B席 6000円 2階-5列-3番 (パンフレット 四季の会会員価格:1000円)

 演出:ビル.T.ジョーンズ

 ベンドラ:林香純
 マルタ:撫佐仁美
 イルゼ:金平真弥
 アンナ:松田佑子
 テーア:有村弥希子
 メルヒオール:柿澤勇人
 モリッツ:三雲肇
 オットー:加藤迪
 ハンシェン:一和洋輔
 エルンスト:竹内一樹
 ゲオルグ:白瀬英典
 大人の女性:中野今日子
 大人の男性:志村要

 劇団四季のミュージカルというと、初期は外来スターを中心にした初期、その下で育った内部育ちのスターによるバブル期、そしてスター不在(と書いちゃうと語弊があるでしょうが、対外的なスター不在)の第三期を迎えた感があります。おのずと作品も大スターが求められるものよりも、アンサンブル志向の強い物がチョイスされている印象があります。もっとも、不況の影響やスター不在などによる動員力の低下に、劇団もあれこれ模索中の印象。今回登場の「春のめざめ」は久し振りの外来ミュージカルの新作ながら、ほとんど無名の新人たちによる冒険的上演。

 上演形式は意外とクラシックで、モリエールなどの演劇のように、舞台中央の正方形空間がアクティング・スペースで、出演者は芝居をしない際は両脇の客席に待機するスタイル。面白いのは、ミュージカルナンバーになると、懐からハンドマイクを取り出して歌う事。台詞などはハンドマイクを使わないで拾っているので、なんでハンドマイクなのかはわからずじまい。

 さて、時は19世紀後半。場所はドイツ。まだまだ性解放には程遠い社会での、若者達が性に興味を持ち、社会のタブーに向かい合うお話。今の「情報過多」な日本人が観る、昔の「情報不足」なドイツのお話。パンフレットの中で、新人俳優の教育について「どのタイミングで、どこまで言うか、どう言うか」とあったけれど、性教育においても同じですねぇ。15歳のドイツ人なんて、日本人から見ればずっと大人っぽいわけで、子供も作れるというのに「結婚してないのに赤ちゃんができるわけない」とおぼこ娘なのはさすがにね。でもまぁ、何をもって恥ずかしいのか、恥ずかしくないのか、これも環境や教育が影響するものでして、あれこれ考えさせられる作品でした。

 抑制された社会の中から、感情がコントロールできなくなり、ついに破滅への道を歩んでしまう若者たち。学校をドロップアウトする者、性知識が乏しいまま快楽に浸ってしまう者、ドラッグに手を出す者、その他、SMあり、同性愛あり、いじめありと、昔だけでなく今にもつながるセンセーションが連発。昨夜の映画「バーン・アフター・リーディング」とは対照的に、内へ内へと向かうのは、時代といいお国柄といいなかなか面白いカップリングでしょ。

 とはいうものの、個人的にはリピートの予定ないんですよ。作品のテーマに反して、役者が型から解放されず、常に抑制されたままなんですもの。これは、張りついた笑顔、とってつけたようなハイテンション、劇団四季ならではの間延びした棒読み台詞が原因なのですが、ベテランでも慣れるまで結構気になる独特のメソッド、新人さんたちだと「演らされている」のがアリアリとしていて、客席から観ていてかなりツライんです。性解放も良いけれど、まずは、感情を解放しましょうよ、と思ってしまうわけです。外国の劇場に足を運ぶと、言葉がわからなくても芝居がわかるんですが、四季の舞台って言葉がわかるのに、取り残させる気分になるのはなぜでしょうね。ま、これは今さらな感想であり、評価もかなり別れるところでしょうけど。

 まだまだ厳格だった時代のドイツのとある学校の話なのに、まるで劇団四季を語っているかのような辛口感覚が面白かったです。秀逸なブラック・コメディです。でも、あまりみなさん笑わないのね。。。台詞の数々が四季のメソッドに対するものとして観聴きしていると、結構楽しいんですよ。学校のシーンなんて、クスクス笑いながら観てました。まさかこの作品でこんなに笑っちゃうとは!!


2009年05月04日(月・祝)11:45-13:30
映画「ビバリーヒルズ・チワワ 日本語吹替版 BEVERLY HILLS CHIHUAHUA」
@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ Screen9

 前売一般 1300円 H列-7番 (パンフレット:500円)

 監督:ラジャ・ゴスネル

 レイチェル・アッシュ:パイパーペラーボ
 サム・コルテス:マノロ・カルドナ
 ヴィヴ:ジェイミー・リー・カーティス
 バスケス:バスケス

 ビバリーヒルズで贅沢三昧に育てられたセレブなチワワが、メキシコの旅行先で身代金目的に誘拐されてしまい、さてはて無事にビバリーヒルズに帰れるでしょうか、というのが簡単ながらストーリー。そもそも、チワワというワンコはあまりに小さ過ぎて、シェパードやレトリーバーが好きな僕にとっては「犬とは別の生物」としてあまり興味はなかったのですが、大画面でアップになれば、それなりに可愛い。ま、ジャーマン・シェパードが登場してからは、彼ばかり見てましたけど。威厳があって、凛々しくて、大好きなんです。

 さて、このビバリーヒルズのチワワ「クロエ」は、豪邸に住み、日々お洒落するわ、パーティも頻繁。ドッグフードなんてもってのほかだし、お出かけの際はブランドのバッグに入れられ、美容院に通い、首輪はゴージャスなダイヤモンド、常にシャネルの香水を振りかけ、イタリアの靴にフランスのドレスをあれこれ着こなす、人間以上のプリンセス。お育ちがお育ちなので、人種差別(犬種差別?)はしちゃうわ、高飛車だわ、世間知らずだわと、鳴き声がキャンキャンしているだけに生意気100倍のワンコ。

 ……ということで展開も結末も見えちゃいますね。はい「王子と乞食」的お話。でも、生意気ではあっても、お育ちの良さで、思いやりの心や感謝の言葉が豊富なのは見習うべきところ。そして、自分がビバリーヒルズへ戻るために、かつてはバカにしていた人や犬からの助けに感謝し、一皮むけた成長をみせるのはいかにもディズニー映画。

 クロエのドッグ・シッターとなる飼い主の姪っ子レイチェル・アッシュも、当初は何事にも中途半端なボンボン(女の子は何と表現するんでしたっけ?)だったのが、クロエ探しを通じて、初めて真剣に何かをやり遂げることを学び、野良犬たちの将来をもサポートする頼れる女性に成長。人間も動物も成長する姿なのが何とも後味のよろしい映画です。  でもね、やっぱり一番気になっちゃうのが元警察犬のシェパード、デルガド。愛想はとても悪いんだけど、面倒見は良いし、クロエのピンチには必ず駆けつけるし、滅茶苦茶格好良い役。表情豊かで渋いのがハートにきます。

 動物があまりに人間的に描かれているので、観るまで期待はしてなかったのですが、ミュージカル「CATS」のごとく、どのワンコもどこかの誰かに似ていて、人間社会を小気味良く皮肉ります。そういえば、どことなく「CATS」なんですよね、登場ワンコがww 「子供だましか?」とタカをくくっていると、足もとをすくわれる映画です。ラストに犬を飼う際の心構えを問うてくるのが素敵。



2009年05月05日(火・祝)12:15-13:05
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009
「312 ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル」
@東京国際フォーラム ホールA アイゼナハ

 A席 2000円 2階-12列-75番 (パンフレット:無料)

 指揮:ミシェル・コルボ
 ソプラノ:シルヴィ・ヴェルメイユ
 アルト:ヴァレリー・ボナール
 アルト:ジャッキー・カアン
 テノール:マティアス・ロイサー
 バリトン:ファブリス・エヨーズ
 ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

 J.S.バッハ:ミサ曲ト短調BWV235  J.S.バッハ:カンタータ「イエスよ、わが魂を」BWV78よりデュエット、コラール

 5000人収容のホールA(今年のネーミングはアイゼハナ)で小編成のバッハ!?という思いもあったけれど、このホールはシンプルな作りゆえか、2階席に関してはクリアで適度に響いた良い音が届きます。ま、音は上に飛ぶ特性があるので、どのホールでも音響の良い席は上層階ではありますけど。でもって、このホールの2階席の弱点「ステージが遠い!」については、両花道に巨大スクリーンが導入され、オペラグラスなしでもバッチリアップ! 音楽祭5年目にして嬉しい改良。サントリーホールなどにロック・コンサートでお馴染みのスクリーンが導入されたら、視界的に煩わしいけれど、この音楽祭、このホールでは、より身近にアーティストを感じられてGood!!

 さて、今回のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンは開催日程が去年の5日間から3日間に短縮され、ホールA公演も完売続出。ブランデンブルクのようなポピュラーなものは気づけば満員御礼。ま、どのプログラムも楽しませてくれるのがわかっているので(5年目の余裕です!)普段だったらチョイスしないようなプログラムでも迷わず購入しちゃうお遊びも音楽祭ならではでしょ。

  コルボ&ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルはすっかりこの音楽祭の顔ですね。有名曲の演奏というわけではないけれど、コンサートの存在自体がスペシャル♪ ミサ曲やカンタータは、いかにも教会用といった趣で、優しい響きが魅力。声楽もコーラスもエヴィアンではなく、ヴィッテルの味わい。柔らかくて、素朴で、ちと田舎風です。ウィークデーの仕事帰りだったら、刺激が弱すぎてチョイスしないプログラムですが、GWの、それもマチネに聴くには良い感じ。宗教的なことはおいといて、バッハ・サウンドって平和な気持ちになります。

 なお、この「公演番号312」についての解説はたったの1行。「ひとつの言葉がじんわりと心に響く歌の魔術。コルボが指揮する[ト短調ミサ]の芸術」と。これ以上ないって程、短い解説だけれど、プログラムの魅力をきちんと伝え、かつ解釈の押しつけはしないという、まことに見事な説明。毎年のことながら、これらを書いている人たちの凄さをひしひしと感じます。



2009年05月05日(火・祝)16:30-21:20
歌舞伎座さよなら公演 五月大歌舞伎@歌舞伎座
 「恋湊博多諷」
 「小猿七之助 御守殿お滝」
 「神田ばやし」
 「鴛鴦襖恋睦」


 3階A席 4200円 3階-9列-36番 (パンフレット1200円)

 「恋湊博多諷〜毛剃」
   毛剃九右衛門:團十郎
   傾城小女郎:菊之助
   中国弥平次:権十郎
   小倉伝右衛門:市蔵
   徳島平左衛門:亀蔵
   加田市五郎:松江
   じゃがたら三蔵:男女蔵
   浪花屋仁三:亀鶴
   座頭盛市:彌十郎
   奥田屋お松:秀太郎
   小松屋宗七:藤十郎
 「夕立」
   小猿七之助:菊五郎
   御守殿滝川:時蔵
 「神田ばやし」
   家主彦兵衛:三津五郎
   桶屋留吉:海老蔵
   娘おみつ:梅枝
   女房おかね:右之助
   隠居おらく:市蔵
   行者陽山:亀蔵
   若い者正太:亀寿
   若い者新七:巳之助
   店子重吉:亀三郎
   店子源太:男女蔵
   店子清兵衛:権十郎
   店子加蔵:秀調
   店子惣助:團蔵
 「鴛鴦襖恋睦〜おしどり」
   遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精:菊之助
   河津三郎/雄鴛鴦の精:海老蔵
   股野五郎:松緑

 豪華で華やかで変化に富んだ、見ごたえある5時間でした。芝居もあれこれ、役者もあれこれ、どの幕も見ごたえタップリで、あっという間に切りとなりました。

 トップバッターは成田屋ならではの豪快な芝居が楽しい「毛剃り」。
 毛剃九右衛門は、九州弁丸出しで、和洋折衷の不思議な衣装で、黒塗りでカーリーヘア。おまけにワインは飲むわ、鎖国中だというのに密貿易しちゃう強面の船長ながら、話好きで陽気なおっちゃん。そんな船に乗り合わせた小松屋宗七は、宴会の席で「面白い話を」とせがまれて、博多の廓に務める小女郎とラブラブなノロケ話をしたところ、急きょ雰囲気が悪化。実は(って、歌舞伎は「実は」ってのが多いですよねwww)九右衛門も小女郎の客だったので、この二人は恋敵! さらに間が悪いことに、密貿易の現場を見てしまった宗七は証拠隠滅のまてに海に放り込まれるのです。
 第二幕は小女郎の務める廓「奥田屋」に、悪運強い宗七が乞食のような格好で登場。小女郎に海上での事件を愚痴るが、小女郎は「命が助かったんだもの、嬉しいわ」と。(商売にすれてない良いおなごですね)。二人が奥の間に消えるのと入れ替わりにやってきたのが九右衛門の一行。羽振り良く、お土産を配り、酒盛りを楽しみます。その声を耳にした小女郎は、かつて九右衛門に「困ったことがあったら力になるよ」と言われていたのを思い出し「好きな人と一緒になりたいので、身請け金を払って♪」とおねだり。彼女にぞっこんの九右衛門は機嫌良くそれを承諾。そんな厚意へのお礼を述べさせましょうと、奥へフィアンセを呼びに行く小女郎。ということで、九右衛門と宗七がご対面〜〜〜というコメディ(だと思います)。
 ドラマティックな表現力にかけては、歌舞伎界の中でも指折りな団十郎がスケール大きく快演。船先で見得を切るスケール(目が大きいだけじゃないんです!)、男たちには威張っているけれど、小女郎相手にはメロメロで甘々になってしまう可愛さ、殺したはずの男と再会しても動揺するどころか「お前、強運の持ち主だから、仲間にならないか?」と持ちかけるリーダー的素質を力強く見せてくれます。菊之助は声の通りが良く、台詞の聞きやすさが魅力。

 二本目は「夕立」。日舞の素養がないので、清元の舞踊はちと苦手なのですが、「七之助が、ずっと好意を抱いていた滝川を、彼女が雷のショックで気を失った介抱をきっかけとして口説き落とす様」を描いたダンスナンバー。「CRAZY FOR YOU」の「SHALL WE DANCE?」の日舞バージョンで、とっつきやすいです。最初は嫌よ嫌よと抵抗していた滝川が(お代官様〜の振付も登場!)、次第に七之助の魅力を認め、最後はラブラブになるまでを描いていて、その変化っぷりを堪能。菊五郎も時蔵も足さばきが切れ良く美しく「あぁ、やはりこのシチュエーションはタップダンスがピッタリだ!」と一人納得。

 さて、ソワレ三本目の「神田ばやし」にて、海老蔵が登場。パパに似て、スケールの大きな豪快な作品が似合う印象の海老蔵ですが、意外や意外、煮え切らない男の役。猫大好きな留吉は、長屋の集会でお金がなくなった犯人との濡れ衣を着せられ、言い訳もできないまま、犯人としてお詫びをするのですが、数ヵ月後の畳替えの際に、なくなったハズのお金が発見され、疑いが晴れる、というシンプルなストーリー。早とちりの彦兵衛と、内向的な留吉のコンビが繰り出す騒動なのですが、何しろ、この内向的な留吉を演じるのが海老蔵。あらすじは知っているので、そんなことはありえないと知りつつも、つい「いつ逆切れするの?」と期待しちゃいました。「ほら、今に大見得切るぞ」とね。ま、おどおどしているように見えて、実は信念が強いあたり、海老蔵が演じて納得ではあるのですが(って、勝手なイメージですね)、常に冷静なのがちょいと不完全燃焼。

 最後の幕「鴛鴦襖恋睦」は二つの話がつながったような舞踊物。前半は遊女喜瀬川を行司に河津三郎と股野五郎が相撲の試合。一号ゼり(歌舞伎座だと絶対違う呼び名だと思う)に三人が乗ってせり上がってくるのですが、小さなセリいっぱいに乗っているので、衣装がひっかかりやしないかとちょいとヒヤヒヤ。人形劇のような、カクカクした動きがなんとも愛らしい相撲対決。河津はいかにも二枚目な白塗りの美丈夫で、喜瀬川もぞっこん。対する股野は野暮ったい赤っ面で、ロシアの帽子も真っ青なボサボサ頭。いかにも悪役といった風体。そんなタイプの違う二人の舞踊は全然印象が異なるので、そのダンス合戦が見もの。で、この勝負、色男の河津が勝利! 喜瀬川と一緒に立ち去ってしまいます。が、そんな河津に復讐しようと、股野がおしどりのオスの生血を河津に飲ませようと、黒魔術(?)のためにカップルのおしどりのオスだけ殺害。
 後半では、その恨みを晴らそう、おしどりカップルが化けて出て復讐を果たします。舞踊劇なので、複雑な説明はないのですが、前半と後半のつながりが今ひとつしっくりこないので、ここはショーとして楽しもうと開き直っちゃいました。鳥の精なので、辻村ジュザブローの和物ショーの衣装のようなキラキラ&ワサワサしたコスプレがなかなか豪華。「これでせりが舞台上に上がって、吊り物が降りてきたら、宝塚だよね〜」と、ショー好きの血が騒ぎます。菊之助は踊りも華やかで、見事なヒロインぶり。男二人に言い寄られるのも納得の美しさでした。歌舞伎のヒロインは、若くて美しい人だとほっとします。芸によって若く見せられる人もいるけれど、存在だけで若く美しいのですから、これに芸が伴った役者はそれはもう圧巻です。



2009年05月09日(土)17:00-19:35
東宝「この森で、天使はバスを降りた  THE SPITFIRE GRILL」@シアタークリエ

 S席 11000円 8列-7番 (パンフレット 1500円)

 演出:藤井清美

 パーシー:大塚ちひろ
 ハンナ:大浦みずぎ→剣幸
 シェルビー:土居裕子
 ジョー:藤岡正明
 訪問者:草野徹
 エフィ:田中利花
 ケイレブ:宮川浩

 ウェルメイドの素敵な公演でした。出演者がベテラン揃いで、全員が歌える人であり、ミュージカル歌唱の専門家たちばかりなので、歌唱力にイライラすることも、歌唱スタイルの違いに戸惑うこともなく、すんなりと芝居の世界に入り込めるのって、実はとっても貴重な機会ではないでしょうか。もちろん、ベースとなるメソッドは違う面々ですが、バランスはとっても良いので、逆に、ちょっとした違いが役の個性の違いに重なって、とても素敵なハーモニー。シアタークリエの公演は、動員のためかどうか存じませんが「元・宝塚+元・劇団四季+元・音楽座+その他ミュージカルはあまりご縁のない方」という、無差別級キャスティングがなされることが多いのですが、開場以来のミュージカルでは、今回がベストだったのではないでしょうか。

 活気を失った、小さな街に、刑務所を仮釈放されたパーシーがやってくることにより、人と人との繋がりに刺激が加わり、それぞれが自分の居場所を見つけていくストーリーなので、どのエピソードも身近にありそうなものばかり。小劇場ならではの作風だけれど、ミュージカルとして山場ありに仕上げたスタッフたちに大拍手。

 キー・パーソンは剣幸が演じるハンナ。元々芝居を得意とする人だけれど、心の葛藤や、感情の起伏を、年齢相当に素晴らしい表現力を発揮。そして、どんなに細かく芝居に入り込もうと「主役」としての存在感は圧巻。映画やパンフレットのあらすじなどでは、パーシーが主役にはなっていますが、実質的にはハンナとパーシーのW主演。若い大塚ちひろを立てつつも、しっかり場面をさらってしまう代役だとは信じられない程、彼女ありきの舞台に仕上がってます。舞台人としてのキャリア、主役としての華、蓄えた実力と、まさに今の剣幸がいてこその名舞台。オスカー助演女優賞モノです。

 そして、そんな彼女が浮くことなく、しっかり舞台に根付いていたのは、共演者あってのこと。大塚ちひろと藤岡正明の若手は、ベテランの胸を借り、伸び伸びと芝居に打ち込み、土井裕子はそんな若手たちを役の上でも役者としてもサポートし、田中利花と宮川浩が脇をガッチリと固めて、万全の態勢。全員にソロナンバーがあり、重唱ありと、過不足なく見せ場が与えられ、さりとて、それぞれが芝居の流れを邪魔することなく、それぞれの分をわきまえた、奥ゆかしい台本・演出。(土井裕子はオドオドした役で、せりふ回しも役らしいんだけれど、歌いだすと、歌に対する自信が伝わっちゃうのは個人的にププッと。オドオドと歌えるあたりが、歌唱力の賜物!!)

 とても身近に感じられるエピソードの数々と自然なお芝居に、いつしか日本におけるドキュメンタリー番組を見ているかのような気分に。外来ミュージカル特有の派手に歌い上げるナンバーが登場するのではなく、ギターをベースにした優しい伴奏に乗せて、リリカルにしっとりと歌い上げる音楽というのも、日本人キャストに、そして観客の琴線にピタッときます。

 最初はギスギスしていた人間関係や、謎めいていてモヤモヤしていた状況が、薄皮をむくように、少しずつクリアになり、各自が身近な幸福を意識し、さらなる幸せに向かってポジティブに向かっていこうとする姿勢が非常に爽やかな後味を残す佳作。派手な作品ではないし、動員も苦戦しているようですが、意外や意外。とっても素敵な佳作に出会えました。ここで懺悔しますが、全然期待してなかったんです。でも、実力者が揃うととてつもないマジックが起こりますね。帽子脱ぎます、ゴメンナサイ。



2009年05月12日(火)18:30-21:35
宝塚歌劇団雪組「風の錦絵」「ZORO 仮面のメサイア」@東京宝塚劇場

 当日B席 2500円 2階-16列-25番 (パンフレット:1000円)

 演出:石田昌也(風の錦絵)/谷正純(ZORO 仮面のメサイア)

 ドン・ディエゴ/ゾロ:水 夏希
 ロリータ/レディゾロ:白羽 ゆり
 長老レッド・ウィロー/ドン・カルロス:未沙 のえる(専科)
 カタリーナ:一原 けい(専科)
 アレハンドロ:飛鳥 裕
 ホセ・ディアス:未来 優希
 メンドーサ大佐:彩吹 真央
 トイプルニア:ゆり香 紫保
 ルイーザ:天勢 いづる
 ベルナルド/ゾロの影:音月 桂
 アルセニオ:麻樹 ゆめみ
 マニトゥ:舞咲 りん
 マルケス:奏乃 はると
 ブラック・エルク:彩那 音
 マヌエラ:森咲 かぐや
 総督夫人:花帆 杏奈
 ロサリオ:神 麗華
 エステバン夫人:涼花 リサ
 ホアキン:谷 みずせ
 スレバラン夫人:穂月 はるな
 フェリペ神父:真波 そら
 ガルシア軍曹: 緒月 遠麻
 オリバレス総督:早霧せいな
 ピン・ペ・オビ:晴華 みどり
 ブレイブ・バッファロー:沙央 くらま
 アウローラ:鞠輝 とわ
 ニーニャ:早花 まこ
 ゴメス伍長:大凪 真生
 フリオ:大湖 せしる
 兵隊:紫友 みれい
 エレナ:大月 さゆ
 ミルドリド:沙月 愛奈
 キッキング・ベア:蓮城 まこと
 ミゲル伍長:香綾 しずる
 夜の稲妻:愛原 実花
 オヒティカ:此花 いの莉
 ディケアミス:愛加 あゆ
 ヌリア:白渚 すず
 テカクイータ:透水 さらさ
 リトル・クロウ:凛城 きら
 フライング・ホース:彩風 咲奈
 ファナ:舞羽 美海
 サンチョ:帆風 成海

 昨今、和物作品が激減している宝塚歌劇団。そして、生徒の体型や芸風も洋風化している中、発表される作品にも変化がみられるようです。「風の錦絵」は二年ぶりの和物ショーですが、35分間という上演時間もあってか、かなり予算の制約が見え隠れする作品で、二階席から眺める限り、幕が上がった時の舞台がスッカスカ。装置も衣裳も「ショボイ」ためいきなりガクッ。劇場の吊りものを使いまくり、セリは全部使うわ、衣装も惜しみなく使うわ、といった豪華な和物ショーの時代はいつまでだったんでしょう。

 今回の衣装は、ショッピングセンターのティーンズ向きの店で見かけるようなポップな色やデザイン。しっとり雅な芸を見せるのではなく、勢いで突っ走るあたり、女子高校生の文化祭の出し物を観ているような、そんな気分になりました。今後はこういった「和物ショー」ではなく「和風ショー」のテイストがメジャーになるのでしょうか??? 確かに、スピードのゆったり感や動きの緻密さからすると、ボロが出やすい今までのショー。売り物(=生徒)に花を持たせるにはお得意のラインダンスやら裾蹴り上げての派手なダンスの方が都合が良いのでしょうが、アクセントとしての使い方ではなく、終始勢いと元気で押されてしまうと「和物の魅力は他にもあるのに」とおじちゃんは思ってしまうわけです。

 それでも、好き嫌いはともかくとして、男役五人→男女トップコンビ→別格専科と専科もどき二番手のコンビ→理事専科vsトップ→退団はなむけ同期コンビ→フィナーレといった、変化に富んだ構成・組み合わせの妙が魅力的でした。

 幕あきの「風まかせ・白浪五人男」は通常の「チョンパ」ではなく、トップ娘役白羽ゆりの女明かしが、白浪五人男を追いかけるという、幕前芝居のような様相で始まります。七五調のセリフも耳馴染みが良いです。雪組は鳳稀かなめ→早霧せいなといった、一部メンバーの入れ替えはあれども、男役五人衆をセットで大売り出し中なのでなかなか賑やか。この五人、チームワークは良いけれど、そろそろ「私が!」という個性の売り出しがないとつまんないかな。そして、「いきなり泥棒かい!」という最初のインパクトは強かったけれど、その後は舞台を走り回るばかりで中だるみ。フォーメーションも、舞台の見栄えも不完全燃焼。何よりも、銀橋渡りの際に、白浪五人男が揃いも揃って生足を見せるのはNGでしょう。一瞬にして女の子に戻ってしまいますから。本来ならば、生足を見せることで男の筋肉の美しさや豪快な色気が漂うところなのに、華奢でナマっ白いおみ足を見せられてもねぇ。ジロジロみたら「エッチ」とか言われそうだし。男役は腕や足をむやみに出しちゃアカンわ。

 続く「風の盆・幻想」では、和物ショーでの別格スター、松本悠里が彩吹真央の歌唱でじっくり踊るのかと思ったら、意外とスピーディ。全体に「日舞テイストのダンス」でまとめた作品なのだと、ここで理解。松本悠里というと、確か葉山三千子と同期。オフの映像や写真だとそれなりの年齢を感じますが、舞台メイクを施すと、とたんに娘に変身し、動きまで若々しくなってしまうのは、今や大地真央をしのいで、特殊メイク(と呼んだら失礼ですが)の最右翼としか思えない変貌ぶり。特別出演にしては、アッという間の出番で、かつ彼女に合っている踊りとも思えないけれど、それなりに魅せてしまうのはさすがの実力。相手役は彩吹真央だったけれど、最近の人事から「彩吹も今後は専科入りか!?」と思っていただけに、もしかしたら、それに向けてのカップリングかしらん、と要らぬ事まで考えちゃったりして(あ、憶測です、憶測)。

 専科といえば、「風林火山」ではせり上がってくるだけで思わず拍手の轟悠に「宝塚のスターはこうでなくっちゃ」とホッ。決して好みのスターではないんだけれど、若手スターでは太刀打ちできない貫禄。良く、マリア・カラスの評論に「前奏が流れた瞬間に役になりきってしまう」というものがありますが、まさにそれ。ついついチョコマカ何かしたくなる若手スターはぜひぜひこの芸を盗んでいただきたい! 専科二人がしっかり中盤を締めてくれて、逆に「この二人が出演しなかったら、どうなってしまったことやら」とハラハラ&ドキドキ。

 大御所の後は、この公演で退団の白羽ゆりと、男役三番手にして白羽ゆりの同期生・音月桂による「秋風と菊人形」が登場。なんとも若々しく愛らしいカップル。このショーは、番手に関係なく、主だったスターに場面を与える趣向で、かつ、組み合わせもあれこれ趣向をこらしてますね。

 「猫と小僧さん」は洋舞と一休さんらによるラインダンス。衣装が衣装なので、さすがにハイキックは無理で、ヒザの高さまで。結構話題になっていたので一番楽しみにしていた場面。ん……衣装は似合わないし(体型が体型ですから…)、振付面白くないし、時間は短いし、イマイチ。どうも、観客を楽しませる前に、出演者が先に面白がっているので、下手な落語のように、客席は白けます。ディープな生徒ファンが一階席前方で観る分には良いんでしょうが、最近、二階席上部を無視した芸風の生徒が多いのが気になります。テレビのように自動的にアップになるのであれば、自然なナチュラルな芝居も良いけれど、そもそも宝塚は、リアルとは正反対で、芝居もしぐさも非常に独特な芸を見せるのだから、もっと大きな芝居、大きなアピールが必要じゃないかなぁ、と。

 大詰めの大漁ソーラン〜SAKURAでは、出演者一同開き直って、男役ではなく、元気なお姉さんとして踊ってます。ま、この衣装と振付で男役として存在するのは難しいところ。今やなき武富士ダンサーズのごときに、衣装をひるがえして(下級生は衣装を着崩れしまくりつつ)踊り狂ってます。

 と、宝塚歌劇団の現在の若手生徒の芸風や特性、財政状況に合わせて、座付き演出家として、精一杯のことをしていると思います。素晴らしい構成・演出です。でも、演じる側も、見る側もまだこのスタイルにドップリというわけではなく、どこか戸惑っている感じがあります。「和物」ということではなく「和風ショー」として開き直ったら新たなる一ジャンルが出来上がるのかもしれません(そういえば、岡田敬二作品で、和風ショー「夢・フラグランス」ってのがありましたね)。

 さて、後半の「ZORO 仮面のメサイア」は、ブロードウェイで上演された版でも、匠ひびきが退団後の初ミュージカルで演じたものとも違うオリジナル作品。いきなり録音演奏での幕あきに、テンションは緩みますが(生と録音って全然違いますよね〜)、水夏希の足さばきの至芸や、Z字に切り込みを入れる剣さばき&その効果音に、娯楽大作としての素敵な予感。大階段を使って、次々にスターが降り立つプロローグは目新しさはないけれど、定番ならではの安心感。はい、ショーでの「改革」に対し、芝居は「定番」で押し切ります。「いつになったら芝居が始まるの?」とばかりに延々と続くプロローグ、人物紹介的台詞の連発、芝居の流れというよりも、スターの序列に合わせたミュージカル・ナンバー、前振りだけ勿体つけておきながら、あっけなく解決になる幕切れ。……突っ込みどころ満載です。でも、思った通りに全てが展開する公演というのは、ストレス・フリー。話の展開も、演出の流れも読めるので、仕事帰りに気楽に観るには打ってつけ。遊園地のアトラクションでなくなった頃から(?)、あれこれ凝った難しい芝居が多い宝塚ですが、スターがスターらしく格好良く見られれば良いわけで、この手のお芝居は大歓迎。

 登場人物もステレオタイプばかりなので、心なしか、生徒たちも余裕があって、安心して眺められます。アメリカが舞台なのに、ブルボン王朝の衣装がワンサカ登場しようが、スターがスターらしく見えればOKという、いかにも宝塚的な、宝塚でしか許されないお芝居。芸が確立している舞台は、強いですね。

 何かと対照的な二本立てで、終演後はあれこれ考える公演ではありましたが、劇場では頭をカラッポにして、非日常の世界にドップリ。これぞ宝塚! これぞ大衆演劇!! 宝塚デビューの人に「エリザベート」はオススメできないけれど、今回の二本立てはとっても宝塚的。キッチュでどことなく野暮ったくて、でも、華やかでキラキラしていて、相性診断にはもってこい♪



2009年05月13日(水)19:00-20:35
来日カンパニー「XANADU」@赤坂ACTシアター

 S席 12000円 1階-U列-6番 (パンフレット:1500円)

 演出:クリストファー・アシュレー CHRISTOPHER ASHLEY

 キーラ/クライオ:エリザベス・スタンリー ELIZABETH STANLEY
 ソニー:マックス・フォン・エッセン MAX VON ESSEN
 メルポメネ/メドゥーサ:シャロン・ウィルキンズ SHARON WILKINS
 カリオペ/アフロディーテ:ジョアナ・グルシャク JOANNA GLUSHAK
 ダニー・マクガイア/ゼウス:ラリー・マーシャル LARRY MARSHALL
 エラトー/ヘラ:タリア・ブリンソン TALLIA BRINSON
 スウィング:エミー・ゴールドバーガー AMY GOLDBERGER
 スウィング:ヴィンセント・ロドリゲスIII VINCENT RODRIGUEZ III
 タリア、エロス/サイクロプス:ジェイソン・マイケル・スノウ JASON MICHAEL SNOW
 スウィング/特別なスケーター:デイビッド・タンカスレー DAVID TANKERSLEY
 テラプシコレー/若いダニー/ヘルメス/ケンタウルス:ジュリアス・トマスIII  JULIUS THOMAS III
 スウィング:ティファニー・トポル TIFFANY TOPOL
 エウテルペー/テティス:J.B. ウィング J.B. WING




2009年05月16日(土)18:30-21:00
民音創立45周年記念公演
シルクロード音楽の旅「青年アレキサンダー大王の道」@中野サンプラザ

 S席 6000円 1階-14列-15番 (パンフレット:無料)

 演出:藤田敏雄
 司会・解説:舘形比呂一

 ネリー・ディモグル民族舞踊団(ギリシャ)
 カイロ・オペラハウス・アラブ音楽アンサンブル(エジプト)
 レギスタン&オファリン(ウズベキスタン)

 第1部
  シルクロード・リズム
  アレキサンダー大王の音楽遺産
  アレキサンダー大王は征服者か?それとも…
  ギリシャ/ネリー・ディモグル民族舞踊団
  エジプト/カイロ・オペラハウス・アラブ音楽アンサンブル
  ウズベキスタン/レギスタン&オファリン
 第2部
  出演者紹介
  四つのアレクサンドリア
  創作舞踊「アレキサンダーの夢」
  合同演奏「ガンダーラ幻想曲」
  合同演奏「見果てぬ夢」

 かの有名な、アレキサンダー大王=アレックスの物語。昨年の宝塚月組版のショーアップされ、幻想的だった舞台とは対照的に、土臭さや素朴さに溢れたショーです。アレキサンダー大王の一群が、ヨーロッパからアジアに向かって進軍していく歳の音楽の変化や、相乗効果について取り上げた面白い企画です。アレキサンダー大王、サマルカンド、ロクサーヌといった、(個人的に)耳馴染みのある登場人物が登場し、エピソードも一つ一つは聞いたことがあるものばかり。改めて、某T歌劇団の守備範囲の広さに驚嘆。

 さて、今回は、ギリシャ・エジプト・ウズベキスタンの三国からの団体による合同ショー。まずは各国の音楽紹介で始まりますが、西洋音階・西洋音楽に慣れている現代日本人にとっては、何とも居心地の悪いピッチや、摩訶不思議な音楽に「いきなり雅楽に触れた西洋人が雅楽を聴いた際、とても音楽とは思えない、と本国にレポートしたんだったっけ」ということを思い出してしまいました。西洋音楽としては「音痴」な音程に拒絶反応。が、第2部で、各地の音楽がブレンドされていくのと同時に、ようやくショーを楽しめるようになりました。これは、まさに演出家が望んだ展開!?!?

 夢・夢しかった舞台や音楽、ダンスの記憶を、実際の民族音楽に修正する作業は必要でしたが、宝塚の作品ではわからなかった、様々な音楽スタイルの変遷は非常に刺激的。ミュージカル「ネバー・オン・サンデー」のテーマ曲を各国流にアレンジしてメドレーで披露されると、なおさら各国の音楽のスタイルが強調されます。「???」な音楽で聴き比べるよりも、理解度が急にアップ。この際、ショーアップに長けている団体と、ちんたらしている団体とがあるのは御愛嬌。正直、ショービジネスの世界では欧米のスタンダードではないので、歌やアンサンブルのレベルはあまり高くなかったし、創作舞踊も観客の想像力を無視して解説しまくり&素人でも踊れる内容だったし。

 そんな中、今回のショーを成功に導いたのが、舘形比呂一。素晴らしかった! その司会はトーンもスピードも緩急自在で聞き取りやすく、間の取り方も絶妙で、観客が思わず聴きほれるリズム感に満ちていました。出演者紹介のコーナーでは、まるで呪文のようなお名前を50人近くカンペなしにすらすらと暗誦し、何よりもダンサーとしての身のこなしの美しさ、ポーズがサマになることに大ぶらぁぼ。正直、ダンス場面は舘形比呂一に踊ってもらいたかった程。ステージマナーもジェントルで、客いじりも自在。培ったキャリアとスキルを活かした、名司会です。



2009年05月19日(火)19:00-21:50
新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」@新国立劇場オペラパレス

 D席 3150円 4階-3列-37番 (パンフレット:1000円)
 振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
 監修・演出:牧阿佐美
 指揮:アレクセイ・バクラン
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハロワ(シーズンスペシャルゲスト、ボリショイ劇場バレエ)
 ジークフリード王子:アンドレイ・ウヴァーロフ(ボリショイ劇場バレエ)
 ロートバルト:貝川鐵夫
 王妃:西川貴子
 道化:八幡顕光
 家庭教師:石井四郎
 王子の友人(パ・ド・トロワ):本島美和、丸尾孝子、芳賀望
 小さい4羽の白鳥:さいとう美帆、本島美和、寺島まゆみ、小野絢子
 大きい4羽の白鳥:川村真樹、丸尾孝子、堀口純、小村美沙
 スペインの踊り:寺島まゆみ、楠元郁、芳賀望、中村誠
 ナポリの踊り:高橋有里、大和雅美、吉本泰久
 ルースカヤ:湯川麻美子
 ハンガリーの踊り:西山裕子、マイレン・トレウバエフ
 2羽の白鳥:川村真樹、大湊由美

 毎年上演されている、新国バレエ団の十八番作品。出演者のほとんどが役を手中に入れているだけに、非常に安定度の高い公演です。脇役も小さな芝居(なんで、私が王子から花束をもらえないの!?など)、非常にリアルに生き生きしていて、今までもあったハズの振りなのに、ピンポイントで場をさらおうという意気込みが心地良いってもんです。そして、今日は客席にデンマーク・ロイヤル・バレエの面々が休演日を利用していらしていて、しっかりツボを押さえた声援を贈っていたせいか、客席のボルテージも高く、何とも勢いのある公演でした。眼力が強かった! そして、コールドがいつも以上に揃っていて、久しぶりに正面位置からみましたが、丸くなったり、斜めになったり、グループに分かれたりのフォーメーションの変化が実に見事。見ごたえがありました。客席と舞台が一体となる空気……大好きです。

 今回は、キャストによる足さばきの違いが面白い組み合わせでした。ザハロワは舞台に穴が開くのではないかと思う位、キリを動かすかのようなフェッテ(今回はシングルのみ)の鋭さが魅力。そして、しなやかに見えるんだけれど、長い手足ゆえ、音楽に合わせようと結構スピーディで激しく動いているのが印象的。それでいて、ちゃんとたおやかに見えるのですから、ご自身の体躯と活かし方を心得てますね。相手役のウヴァーロフは、ジャンプの際、粘土を板に叩きつけるかのような、衝撃を吸収してしまう着地がお見事なのと、上から糸で吊りあげるかのように、ピンと伸ばした長いおみ足を力感たっぷりに挙げるのが魅力。日本勢だと、八幡顕光の小さな体をいっぱいに伸ばして、大きく見せようという動きがゴムまりのようで、このカンパニーの中では良い意味で得な役どころ(反面、スペインは無駄な伸びが感じられて良くなかった)、トレウバエフはどの役に「出ない」のか、当日の配役発表に一喜一憂しちゃう程いつでも何かの役で出ている人ですが、今日はハンガリー。無駄なしなりも勢いもなく、シャープな、それでいて力感あるキックが爽快感タップリ。そしてそして、芳賀望は線の細さを活かし、勢いはそんなに感じられないのに、スッと遠くまで移動してしまう移動と、力を入れたり抜いたりするタイミングやブレーキ加減が自由自在で、主役級ダンサーならではの「ちょっとした役でも魅せちゃうぞ」という自信がみなぎっていて大変喜ばしい状況。今まで、新国バレエ団というと女性上位でしたが、ここ最近、男性ダンサーが充実してきた印象があります。

 唯一残念だったのがロートバルト:貝川鐵夫。いえ、ダンサーが悪かったのではなく、演出がイマイチ(再演しても改善されない不思議な箇所)。何しろ、このプロダクションのロートバルトは見せ場に乏しく、主演コンビに完全に位負け。オデットと王子が戦隊物の合体ロボットのようになって対抗しなくても、オデットだけで勝てそうでしたもの。オデット拉致の場や最後のせり下がりも、大見得を切るわけでなく、照明が凝った変化を見せるでなく、いつの間にかいなくなっているので、主演コンビに対立する悪役としては、しどころがなくて気の毒。

 今日のオケは割とスピード感あふれる演奏で、時にダンスよりも前走りしてしまう時や、管楽器を中心にその速さについていけない箇所もありましたが、たたみかけるように盛り上げていく音楽が非常に魅力的で、散々聴いているお馴染みのチャイコフスキーの音楽なのに、まるでミュージカル・ナンバーのようにビート感が効いていたり、一瞬音をひそめてから爆発させてみたりと、音楽による感情表現が雄弁で、中でも、主演コンビのパ・ド・ドゥでの各楽器のソロが、なんとも艶やかでロマンティックでタップリ盛り上げてくれるあたり、ロマン派大好きな僕としては嬉しい!



2009年05月21日(木)18:30-21:35
東宝+ホリプロ「シラノ」@日生劇場

 S席 12600円 1階-P列-29番 (パンフレット:1500円)

 演出:山田和也

 シラノ・ド・ベルジュラック:鹿賀丈史
 ロクサーヌ:朝海ひかる
 クリスチャン・ド・ヌーヴィレット:中河内雅貴
 ル・ブレ:戸井勝海
 ラグノオ:光枝明彦
 伯爵ド・ギッシュ:鈴木綜馬

 佐山陽規、林アキラ、大須賀ひでき、中西勝之、金澤博、岡田静
 阿部よしつぐ、家塚敦子、池谷京子、今泉由香、岩田元、岩本貴文
 大江尚毅、岡本茜、神田恭兵、小関明久、小西のりゆき、守谷譲
 橋桂、中山昇、福山 出、山田展弘

 「シラノ」のミュージカルというと、オランダのプロダクションによる市村正親主演のもの、宝塚星組の麻路さき主演のものが思い出されるのですが、それぞれ全く別の作品。それでいて、どのプロダクションも原作の戯曲を基本的に踏襲していて(宝塚版は巨大鼻は登場しませんでしたが)、いずれもジックリお芝居で魅せる作り。今回は、ブリカス&ワイルドホーンによるミュージカルなのですが、この日本公演が世界初演になるんだとか。今後、ブロードウェイ入りは……さてはてどうなるんでしょうね。

 主演の鹿賀丈史、かなり頑張ってます。頑張りすぎてます。役者に年齢は関係ないとはいうけれど、なんで、こんなにも若づくりの役ばかりに出演するのか謎。ロクサーヌに「お兄様!」と呼びかけられても「おじい様!(100歩譲って、おじ様!)」にしか見えないんですもの。劇中で「毎月、毎月、老いていく」という台詞がありましたが、まさにその通り! 今でこそやれない役を観たいものです。

 というのも、ミュージカル俳優としては、かなり衰えが激しいのです。芝居心はお見事です。言葉遊びに満ちた前半では、間の取り方といい、スピードといい、声色の変化といい、素敵に演じ分けています。が、すでに声を失っている方なので、ろれつが回り切れず、何を言ってるのかわからない&声を張り上げようとするとかすれてしまうのです。シラノ役は出ずっぱりで、常にしゃべるか歌うかしているため、渋味で魅せることもままならず、パワー不足は致命的。これが歌ともなると、音は取れなくてぶらさがりまくるわ、息が持たずに「次の音が待ちきれない!」とばかりにオケを無視して突っ走っちゃうわで、大ナンバーも歌い上げるなんて夢のまた夢。歌の途中で「もう駄目だ」と諦めて力尽きるのが手に取るようにわかって、老化から来る現象とわかるだけに、観ていて痛々しいこと、痛々しいこと。ロマンティックなメロディも、息絶え絶え。二幕も前半が過ぎたあたりから、疲れちゃって、声も動きもコントロール不能に。が、二幕後半の修道院の場面になると、瀕死の老人を演じる場面ゆえ、これが絶品。死にそうになりながらもロクサーヌの元に駆けつけて、今週の新聞を伝え、愛を伝えて息絶えるあたり、体力ある役者じゃこの味は出せますまい。終わりよければ全て良しの名舞台でした。

 一方、ヒロインの朝海ひかるもまた前半は困ったチャン。音圧や音色のコントロールがまだできない人なので、若い時代の場面は「なんでその音を響かせちゃうの!?」の連発に、観ていてハラハラ。台詞の粒が立たず、歌のフレージングの拙さもあって(音程も怪しいけど)、とにかく、たどたどしいんです。彼女の場合は、声のコントロールができないのが致命傷ではないでしょうか。音域によって、発声も響きも音圧もマッタク異なるので、特に響きが薄くなる中音域のボソボソ声は、オカマちゃんの裏声みたい。。。でも、未亡人になってからは、年齢を出そうと、終始押さえた声で、歌も台詞もぐっと聴きやすく。「彼こそ奇跡」では、彼女の強靭な声を活かし、大アリアを聴くかのような充実ぶり。まっすぐ伸びた上半身と、キリリとした表情に品格すら漂います。

 さて、中河内雅貴はおバカな二枚目がピッタリ。ミュージカル慣れしてない、発声の弱さも、この役のキャラクターにはピッタリ。シラノが自分の知性を誇り、クリスチャンが自分の美貌を誇る二重唱はキャラクターが活きて「威張っている割にヘナチョコじゃん」ぶりがバッチリはまって楽しいナンバーに。オペラは声質で役が決まるけれど、ミュージカルも結構当てはまるかも。って、別にオペラの歌唱が最高!というのではなく、ミュージカルにはミュージカルの素晴らしい歌唱があると思っていますので、念のため。

 アンサンブル、ことに男声は音大組が多く、迫力満点。日生劇場は音響が良いので、コーラスを楽しむには最適の小屋。アンサンブルの多くが数小節ずつのソロを与えられるのも納得です。そして、他の作品ではソロを務めることも多い面々が集まっているせいか、ちょいソロもちゃんと見せます、聴かせますの姿勢が作品に厚みを加えてます。聴きほれると同時に、主役トリオの歌の下手さが際立っちゃうのは困るなぁ。。。

 ところで、守谷譲って佐川守正のことでしょうか? ちょっとお太りになられて(ビル風に読んでね)目が線になってましたが、あのお声はきっとそう。劇団四季出身の俳優って、退団後も同じ名前を使い続ける人もあれば(市村正親、山口祐一郎など)、別の名前を名乗る人もあって(芥川英司→鈴木綜馬など)ちょっと不親切な気がします。



2009年05月23日(土)13:00-16:10
「The Game Of Love 〜恋のたわむれ〜」@THEATRE1010

 A席 7500円 2階-4列-16番 (パンフレット:1500円)

 演出:勝田安彦

 アナトール:岡幸二郎
 マックス:今井清隆
 イローナ:寿ひずる
 ガブリエル:彩輝なお
 アニー:紫城るい
 アネット:菊地美香
 ビアンカ:小笠原一葉
 フランツ:日比野啓一
 フリッツ:鎌田誠樹
 フリーダー:楢原潤也
 ディエベル男爵:治田敦

 19世紀待つのウィーン貴族たちの黄昏の時代を描いたミュージカル。スタッフはブロードウェイ、作曲はおフランス(なしてオッフェンバックのフレンチ・オペレッタなんでしょうね?)、上演されるのは荒川区北千住と、どことなくボタンの掛け違いを感じる公演ではありますが、稽古期間が短かった分はチームワークでカバー。小洒落たプロダクションでした。ピアノトリオによる室内楽による歌唱なので、THEATRE1010の規模ではなく、サントリー小ホールのブルーローズあたりで二期会が上演していたら、もしくは、日暮里サニーホールあたりてオペレッタ協会が上演していたら、それはそれで納得の公演になったであろう作品です。派手なスペクタクルはないし、歌も芝居も役者の力量が問われるシンプルさゆえ、キャストが揃わないと面白くないであろう作り。

 ストーリーはシンプルです。アナトールの女遍歴。カサノヴァみたいな感じでしょうか。そして、アナトールのそばにいつもいるのが親友のマックス。マックスが語る、アナトールの恋遍歴。

 ビアンカとの恋は、アナトールは大ラブロマンスとして語るけれど、ビアンカにとっては、既に過去の事どころか、忘却の彼方の出来ごと。後腐れなくサバサバしているけれど、ロマンチストにとってはショックな存在かも。

 次なるアニーは「愛を誓うときも正直に、別れる時も正直に」と何もかも打ち明けあう「さばけたカップル」を装いつつ、互いに相手に嘘を付き合う、したたかな女性。そして、恋は恋、食欲は食欲と割り切って、別れ話の途中でも、しっかりコース料理をいただいちゃう。えっと、ワタクシは……アニータイプです!

 ガブリエルはアナトールと恋に落ちたものの、結局別の人と結ばれ、とあるクリスマスの夜、アナトールと再開し、本心ではまだまだアナトールに未練はあるけれど「私は人妻ですから」と消えていく大人の女性。チャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」の終幕のようなストーリー。

 一方、イローナは非常に情熱的。なぜアナトールが年齢の離れた彼女と共に過ごしたのかは分かりませんが、恐ろしいことに、アナトールの結婚式前夜もご一緒。そして、アナトールが結婚することを知らずにいる女性。薔薇の騎士の元帥夫人は、彼(オクタヴィアン)に新しい恋人ができたら、片方の目にだけ涙を湛えて、潔く身を引きましょうとスマートな女性を貫き通しますが、同じ時代・同じ場所の女性でありながら、イローナは舞台をキャンセルし(あ、彼女は舞台女優です)泣いて、脅して、狂乱してと、非常に正直な女性。激しくて、ヒステリックで、実に舞台人www

 最後に登場するアネットはティーンエイジ。年齢を重ねたアナトールには子供みたいな存在。って、熟女からティーンまで、アナトールの守備範囲の広さに脱帽です。もしかして、この恋愛模様はフランス人に重ね合わせ、そのパロディとしてオッフェンバックの音楽を使用したのか?と勘繰ってしまいます(ま、そのオッフェンバックもパロディを得意とする音楽家でしたが)。

 岡幸二郎と今井清隆のジャベール・コンビ(ジョン・コンビ、アシュレ・コンビでも可。タイプが違うのに、何かと役が被るお二人ですね)は、声質の違いはハーモニーに、仲の良さはコンビの妙として、素敵な組み合わせ。宝塚組は声量は物足りないけれど、思い切りの良さが圧巻。紫城るいの、恋<食い気で、求めているor想像しているのとは全然違う回答による噛み合わない会話が笑いを誘います。この方、相変わらず超スリムですね。一方、メタボ一直線の寿ひずるは、今回のカンパニーの台風の目。失恋して、暴れまくる様が圧巻。ナイフを持って大暴れしちゃうわ、アナトールとマックスの二人を相手に立ち回りをしちゃうわ、さらには、胸像のクビをもいで投げつけちゃうわと、胸をすく怪演。個人的に、彼女の今までの役で一番好きです。キェ〜〜〜ッという断末魔のような叫び声、あまりに狂気が漂っていて、思わず避難したくなった程。

 東京公演がたったの四日間にも関わらず、良くぞ集めた、というキャストなので、劇場は満席。チラシはなくなり、当日券の販売すらない大盛況。こうなったらぜひ再演していただきたいものです。会場はどこが良いかな。ワインを片手に観劇できるような……STB139(@六本木)なんていかがでしょう?

 終演後のトークショーは、今やすっかり名物司会の治田敦が仕切りで、今井清隆、寿ひずる、紫城るいの三人(&胸像の頭)が登場。でも、過半数は寿&治田の関西弁トーク。普通にしゃべってても、オモロイです、この二人。関東組の二人はすっかり聞き入るばかりwww 寿ひずる、芸能人としてのブランクなんて微塵も感じさせない、ミュージカル界のゴッド姐さん。それにしても、峰ちゃんといい、ペーさんといい、この期の方たちって……強いわぁwww


2009年05月30日(土)11:00-13:30
宝塚歌劇団花組「オグリ! 〜小栗判官物語より〜」@日本青年館大ホール

 S席 6500円 1階-K列-53番 (パンフレット:600円)

 演出:木村信司

 小栗判官:壮一帆
 照手姫:野々すみ花
 横山/閻魔大王:萬あきら(専科)
 語り部:藤京子(専科)
 大納言:悠真倫
 後藤左衛門:華形ひかる
 三郎:紫峰七海
 主人の妻:花野じゅりあ
 大納言の妻:初姫さあや
 主人:日向燦
 姥:愛純もえり
 大夫:月央和沙
 次郎:嶺乃一真
 鬼王:浦輝ひろと
 鬼次:彩城レア
 太郎:煌雅あさひ

 直近の本公演では、韓国の神話の時代のファンタジーを上演した花組による、今度は日本の神話の時代のファンタジー。一つ一つのエピソードは突拍子もない展開で、ケレン味たっぷりの舞台で、いかにも宝塚歌劇なステージ。このところ、難しい作品が多い中、老若男女を問わず楽しめるよう工夫されてます。

 文武両道の誉れ高い小栗はとってもワガママで、何十人という女性と一夜を共にしては、難癖をつけて里に帰してしまう(処刑だったらアラビアンナイトですね)お方。が、ついに恋に落ちた相手は蛇の化身だったということで、追放の身に。が、そこは色男。今度は追放先で照手姫とFALL IN LOVE。が、先方のご両親へのご挨拶をしなかったために毒殺。照手姫も川に沈められることに。が、なぜか、小栗は閻魔大王によって現世に送り返され……ってお話。ね、歌舞伎座も真っ青な、かなりぶっ飛んだ展開でしょ。

 和物作品は、時代背景やら、一つの単語で説明される状況やら、神経を集中させてないと聞き逃してしまうと、理解のできない授業を受ける劣等生のような気分になることがあるのですが、専科の藤京子が、緩急自在な話術でグイグイ話をひも解き、なじみの薄い用語についてはコロスたちが質問したり解説したりで、誰一人として置いてきぼりにされることもなく、一気に芝居の世界へと観客をいざないます。木村信司の筆のさえと、出演者一同の熱気がリンクして、このところ低迷しきりな本公演をしのいで、最近の宝塚歌劇のベストかと。実は主演の方は苦手なタイプなのですが、そんなことは飲み込んでしまう勢いがありました。集団芸として素晴らしい出来です。

 今回の上演は、コロスたちによる劇中劇という枠組みなので、一人で何役も演じることや、生徒の学年の役の年齢とのギャップについての無理を感じません。また、解説している世界から、物語の世界へと状況変化させる藤京子の話術、芝居心が実に鮮やか。ベテランの専科生が見事にお膳立てをしてくれるので、生徒たちも演じやすそう。

 音楽担当の長谷川雅大は、フュージョンのような響き、裏打ちを多用したリズムセクション、壮大なメロディ・ラインなどを駆使して、幻想的でありながら、力強いサウンドで劇場内を満たし、実に良い仕事してます。

 劇中劇という枠があるためか、舞台装置も抽象的で、巨大な馬の胸像(180度向きを変えると、ピラミッド型の階段が登場!)や、大蛇が見え隠れするボックス、これまた巨大な手のひらの上でのラブシーン、マジック的な特殊効果など、芝居ならではの趣向もこらされ、視覚的効果タップリ。

 小栗判官:壮一帆はここ一年間での成長が著しく、やたらと声を張り上げるばかりで重心の落ち着かない芸風だったのが、いつの間にやら、受けの芝居や、抑えての歌や台詞をこなすようになり、一回り芸が大きくなりました。今回のような和物だと、細身・長身の男役だと、落ち着きが悪いことが多い中、一回り大きな男として演じきったのがアッパレ! 小栗という男、正直、問題アリアリな困ったちゃんだとは思うのだけれど、壮一帆は細かく矛盾を追及していくのではなく、ハッタリでゴージャスに登場する目くらましによって観客を納得させることに成功。これぞ宝塚スターな貫禄を見せてくれました。  照手姫:野々すみ花は、宙組トップ就任を目前にして、勢いに乗っているところ。困ったちゃんである小栗ではあるけれど、照手姫の献身的な愛情によって、二人の愛が成就するとあって、小栗=主役を観客に納得させるのに大健闘。彼女の芝居いかんによっては「馬鹿ップル」なお話になりかねないところを、情感たっぷりのラブストーリーになるのですから、その芝居心に脱帽。

 通常の時代劇からすると、毒殺された小栗が復讐を果たして幕となるところ、巡り巡ってハッピーエンドになるのも心地良いところ。小栗は生き返って照手姫と結ばれるし、小栗と共に毒殺された家来たちは閻魔大王の元で働くことになったのに「どうせ間もなくお会いできるんだし、私たちはここで幸せですから」と元気だし、照手姫の奉公先はシンデレラじゃないけれど、みなお金持ちになってルンルンだし、小栗判官の物語って、なんだか「本当は怖いんだけど、子供用に書きなおした」グリム童話のような、そんな印象を受けました。ま、それがゆえに、教訓的でもあるんでしょうけど。


2009年05月31日(日)13:30-16:00
マイクロソフト管弦楽団「第5回ファミリーコンサート」@文京シビックホール

 全席自由 無料 2階-10列-20番 (パンフレット:無料)

 指揮:山口琢也
 ソプラノ:佐俣薫
 アルト:山上加奈
 テノール:宮良大悟
 バリトン:大谷政司

 デンツェ:フニクリ・フニクラ
 ヴェルディ:歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」
 ビゼー:歌劇「カルメン」より「ハバネラ〜恋は言う事をきかない鳥〜」
 プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」
 ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より「コンチャック汗とイーゴリ公のレチタティーヴォ」と「ダッタン人の踊り」
(休憩)
 ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
 アマチュアオーケストラ&ソリスト(音大は出ているけれど、メジャーではない方々)&コーラス(今回の公演のために有志によって結成)の公演です。よって、演奏者のやりたい放題、怖いもの知らずな公演。ファミリー・コンサートと名乗っているにも関わらず、公演時間が2時間半! 通常のクラシックコンサートが1時間半〜2時間というサイズなので、かなりのボリューム。そして、声質や、演奏者のレヴェルは無視して「演奏したい曲を演奏します」という、プロには真似できない選曲。なかなか普段聞けないであろう、面白いサウンドを体験してきました。  一曲目でいきなりブラスバンドのような管楽器の賑やかさにビックリ。パーカッションもこれでもかっと渾身の一撃。オケピに入っても抑えて演奏されるオペラアリアについても、舞台上で吠えまくるので、ソリストはみなさん「もしもし?」状態。ま、元々声量のない方々ではありますが、も少し配慮が必要だったかも。  が、これが休憩を挟んでの第九となると、意外な箇所で意外な楽器の音が聞こえてきて、実に新鮮。アンサンブルとしてまとめよう、というのではなく「俺が!」「私が!」という自己主張のせめぎ合いがなんとも楽しい。第九のソリストたちなんて、ハーモニーは無視して、いかに声を張り上げるかなので、本来ならば「ウットリ」となる個所で大笑いしちゃいました。って、大変失礼な話ですが、演奏者も「聴かせる」ということはあまり考えてないでしょうから、これはこれで、正しい聴き方だったのではないかと思ってます。なまじ、芸術面に走ったところで、そういうものを聴きたければプロのコンサートに行くわけですから、アマチュア精神に徹したコンサート、出演者が楽しそうならばANYTHING GOES!!です。 マイクロソフト管弦楽団 http://www.msjso.org/