観劇日記〜2009年07月〜
04日(土) 11:00 歌舞伎座さよなら公演 七月大歌舞伎
 「五重塔」
 「海神別荘」
歌舞伎座
05日(日) 17:30 東宝「ダンス・オブ・ヴァンパイア」初日
(泉見×知念×森山)
帝国劇場
07日(火) 18:30 Quaras「coco」 ル テアトル銀座
10日(金) 19:00 Pavel×ARCO 若手実力派クァルテットを聴く 2
「ストリング・クヮルテット ARCO」
トッパンホール
11日(土) 17:00 SEASONS CONCERT 夏「古川展生コンサート」 原宿クエストホール
12日(日) 11:00 宝塚歌劇団月組「エリザベート」
(ルドルフ:青樹泉)
東京宝塚劇場
13日(月) 13:00 新国立劇場 高校生のためのオペラ観賞教室
「プッチーニ:トスカ」
新国立劇場 オペラパレス
14日(火) 18:30 宝塚歌劇団月組「エリザベート」
(ルドルフ:明日海りお)
東京宝塚劇場
18日(土) 19:00 PARCO劇場「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」 PARCO劇場
19日(日) 12:00 日本テレビ 他「スペリング・ビー」 銀河劇場
19日(日) 12:00 映画「ハリー・ポッターと謎のプリンス」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
20日(月・祝) 14:00 佐渡裕プロデュースオペラ2009「ビゼー:カルメン」 東京文化会館
21日(火) 18:00 松竹「ガブリエル・シャネル」 新橋演舞場


2009年07月04日(土)11:00-14:45
歌舞伎座さよなら公演 七月大歌舞伎@歌舞伎座
 「五重塔」
 「海神別荘」


 演出:石川耕士(五重塔)/戌井市郎、坂東玉三郎(海神別荘)

 3階A席 4200円 3階-7列-6番 (パンフレット1200円)

 「五重塔」
   大工十兵衛:勘太郎
   お浪:春猿
   お吉:吉弥
   用人為右衛門:寿猿
   大工清吉:巳之助
   朗円上人:市蔵
   大工源太:獅童

 「海神別荘」
   美女:玉三郎
   博士:門之助
   女房:笑三郎
   沖の僧都:猿弥
   公子:海老蔵

 歌舞伎座の歌舞伎というと、エンターテインメント性に富んだ、観客の期待に応えるプロダクション、というイメージが強いのですが、今回は観客よりも出演者の意向を重視したプロダクション、という印象を受けました。昼の部に関しては、豪華な衣装は登場しません。舞台装置も、せいぜい回り舞台を使用する程度で、これといった見せ場はありません。全体的に暗く、変化に乏しく、フラストレーションのたまる公演でした。

 「五重塔」は幸田露伴の小説の舞台化ですが、要は「マネジメント能力のない人との仕事は迷惑だ」という話。腕はあるけれど、リーダー的資質も、顧客折衝の資質もない十兵衛が「どうしても五重塔を建てたい!」と我を張るのが事の発端。今までは源太が一手に引き受けていたところ、注文主の上人が「相談をした上で答えを出すように」と、契約放り出しをするもんだから(って、こんな人、どこの会社にも居そうでしょ)混乱しまくり。そもそも、源太は癇癪持ちだし、十兵衛は自分勝手だし、こんな二人に仕事を投げちゃって大丈夫か!? 案の定、二人はコミュニケーションを取り合うこともないので現場は混乱。あぁ、こんなところも、どこかの会社の縮図でしょ??? 部下たちが愛想をつかして、仕事を放り出してしまうのもむべなるかな。

 時間も、人事も、折衝もダメ・ダメ・ダメな十兵衛がいかに、部下の信頼を得たのか、十兵衛と源太の関係の変化の過程など、本来であれば、見せ場・泣かせ場になりえたであろう場面は時間の関係か、超特急で飛ばしてしまい(これは脚本が良くなかった!)、前半のダラダラした場面ばかり冗長なのが残念。台本・演出によってはサラリーマンを中心に人気が出たかもしれないのに! ガテン男ばかりのむさくるしい舞台で、豪華な衣装や華やかな場面は皆無で、まるで朗読劇ばりに動きのない舞台なので、まずはご機嫌ナナメに。

 期待の「海神別荘」は泉鏡花原作で、舞台化はいくつもされている作品。海神の公子と結婚した美女が、やたらと実家に帰りたがるけれど、結婚した時点で美女は人間からは大蛇にしか見えない存在に。それでも、と無理やり里帰りしたものの、化け物として散々な目にあったと舞い戻ってくる美女。公子が慰めている時は聞きわけがなく、ついに公子が怒りを爆発させて彼女を殺害しようとしたら「刹那の表情が素敵だわ♪」と言い出して二人はラブラブに。何、S男とM女が本来のポジションに落ち着いた、と解釈しております。

 さて、今回の歌舞伎ヴァージョンですが「玉三郎は演出なんてしないで芝居に没頭してください!」なプロダクション。幕が上がった瞬間、あまりにチャチな装置に失笑。床に模様があるわけでなく、照明が効果を上げるでなく、素明かりでただの床が照らされ、そんな中を侍女たちがゆらゆらと漂う姿は「ラインの黄金」の乙女たちのごとく。勝手にソプラノの三重唱をイメージしていたら、いきなりオカマ声。あ、歌舞伎ですもんね。では、女装の麗人としてどんな方かしら、とオペラグラスを構えれば、呼吸困難に陥りそうに。女装のプロとして技を磨いているはずなのに、テレビなどでのオカマちゃんの方が美しいだなんて! 芸で魅せる役ってのもありますが、この手の役は絶対見た目で配役を組んでいただかないと困ります。宝塚で女の子っぽいフェアリー・タイプの男役は存在するけれど、歌舞伎における酔っぱらったおじさんの宴会芸のような女装は勘弁してほしい。。。

 で、海老蔵の公子もひどいんです! 着物の着こなしはプロだけれど、マント裁きのグチャグチャ加減は、日頃美しいマント裁き(今、帝劇で山口祐一郎が絶品な芸を披露してるでしょ)を見慣れているだけに、もたつき具合といい、裾の処理といい、あまりの雑さに思わずポカ〜ン。で、マントを脱ぎ棄ててみれば、ラッキーシューズならぬ、ポックリ靴なのですが、短足&O脚という「和服のための男」ですもの、初めてハイヒールを履いた女子大生のような摩訶不思議な歩きっぷり。二枚目が売りの人なのにあんまりです。おまけに、ロングのかつらと、ほとんど地色のメイクが相容れず、美しいどころかおぞましい状態。でも、このプロダクションは再演物なんですよね。。。手を入れないのが不思議。。。せっかく、装置が割れて、まるでレビューにおけるトップスター登場のような場面なのに、思わず舞台袖に引っ張りたくなる体たらく。

 ちなみに、マントを脱ぎ棄てた後は、仮面ライダーのような衣装なのですが、これもちょっとね。そして、黒潮騎士と名乗る集団は、ゾロの影のように、マントをひるがえして、集団で舞台を走り回るのですが、いかにもこの手の衣装をもてあましている人たちの集団ゆえ、ダンサー揃いのミュージカルやレビューとは異なり、もたつくこと、もたつくこと。なして、わざわざ歌舞伎でこの作品なんでしょう!?!? ちなみに、下座音楽の変わりにハープやアルパの演奏なのですが、フランス音楽のようなサウンドは良いとして、これと言って印象に残る曲ではなく(曲名不明)客席のあちこちで船をこぐ人が続出。かくいう私も意識を失うことが何度も。。。

 でも、意識を取り戻しても、舞台面な何ら変わりなく、こちらの作品も延々と出演者がしゃべっているだけ。歌舞伎の俳優さんたちは、マイクを使わずに話すのは素晴らしいのですが、役者によって声量が違いすぎるので、掛け合い台詞などは聞く側の受信体制が整わないうちに次の人の台詞になってしまうので、結局、何をしゃべっているのかわからず。玉三郎も裏声芝居なので、どうしても台詞は一本調子になってしまうし、とにかく単調。海老蔵もしきりに喉をセーブした「怒鳴っているフリ」の発声続きで、音が三階に届くまでに力尽きちゃう感じ。この手のお芝居だったら、生声にこだわるのではなく、PAを入れて、音響さんが調整するべきでした。

 衣装・照明・音楽・演出のどれをとっても「役者を美しく見せる」ことはできず、また、演出もせっかく歌舞伎座なのだから、大ゼり小ゼり、その他舞台機構を使いまくって、スタッフ一同が協力すればさぞかし素晴らしいものができたでしょうに。はっ、もしや、前物の「五重塔」は連携して作品を作り上げなかったスタッフへのあてつけだったのかも???



2009年07月05日(日)17:30-21:40
東宝「ダンス・オブ・ヴァンパイア」初日@帝国劇場

 A席 8000円 2階-H列-7番 (パンフレット:1500円)
 演出:山田和也

  クロロック伯爵 アプロンシウス教授 サラ アルフレート シャガール レベッカ マグダ ヘルベルト クコール
2006年 山口祐一郎 市村正親 剱持たまき
大塚ちひろ
泉見洋平
浦井健治
佐藤正宏 阿知波悟美 宮本裕子 吉野圭吾 駒田一
2006年 山口祐一郎 石川禅 大塚ちひろ
知念里奈
泉見洋平
浦井健治
安崎求 阿知波悟美 シルビア・グラブ 吉野圭吾 駒田一

 クロロック伯爵:山口祐一郎
 アプロンシウス教授:石川禅
 サラ:知念里奈
 アルフレート:泉見洋平
 シャガール:安崎求
 レベッカ:阿知波悟美
 マグダ:シルビア・グラブ
 ヘルベルト:吉野圭吾
 クコール:駒田一

 待ってましたの再演初日。劇場に一歩足を踏み入れると、観客のみなさん、いつまでもロビーにたむろってて、写真パシャパシャ。一角ではダンスのおさらいをする人も。舞台に対する期待と熱気でムンムンしていて「あぁ、劇場って生き物なんだなぁ」と。どんなに稽古をしても、本番の魔力はヴァンパイアも真っ青な力強さに満ちています。

 そんな観客の期待に応えようと、観客の熱気に負けまいと、舞台上は「初日からこんなに飛ばして大丈夫?」な大熱演。なに、ストーリーはシンプルなので、場面場面が盛り上がればそれでOKな作品です。おまけに、出演者それぞれに見せ場が分散されているので、場面ごとにパワーは回復しているし、それでいて色合いも芸風も異なるので、それぞれ「待ってました!」の大喝采。通常、このパターンの上演だと、パワー・パワー・パワーの舞台に疲れ果ててしまうのですが、そこは音楽の妙、演出のバランス感覚の良さでちゃんとカバー。キャストのみなさん、派手に盛り上げる場面と一歩引く場面をちゃんと心得てます。でもって、やはり「役者変われば味わい変わる」な上演って良いなぁ、と。ダブルキャストの、再演の楽しみってもんです。

 続投キャストはもちろんなこと、再演から参加キャストも初日にしてかなりシックリ。サラはコゼット繋がり、シャガールはテナルディエ繋がりってのが大きいかも。アプロンシウス教授:石川禅は登場場面では「若い!?」と思ったけれど、さすがの演技力と歌唱力でカバー。ロッシーニのパロディ場面、締めの場面でひときわ輝かしいテノールを響かせたのはアッパレ。観客もちゃんと分かっていてもの凄い拍手。そういえば、今回のキャスト、かなり歌唱力重視で選ばれた模様。前回公演では物足りなかった役が確実にパワーアップしてます。マグダ:シルビア・グラブも良い喉を披露してます。上手い人達の集まりって、個々の歌の聞かせ具合はもちろんのこと、アンサンブル場面での押し引きや声のバランス作りが安心して聞けるのが嬉しいところ。(とはいえ、曲だけなら、二期会版などで聞いてみたい作品でもあります。だって、歌い映えする曲ばかりなんですもの)。

 そんな熱演キャストに刺激を受けたのか、初日ならではのマジックなのか、クロロック伯爵:山口祐一郎が大本気モード。そりゃ、歌いくちにかなり癖のある人です。上手いんだか声量があるだけなんだか良くわからなくなりますが、それでも、ドラマティックな大ナンバーを数分にわたって延々と聞かせ、森山開次が参加という超豪華なヴァンパイア・ダンサーが踊る中、歌とダンスが共存はするものの、主役の座を譲らなかったのはアッパレ。動かなくても、スターオーラがあります。これは、劇団●季ご出身の俳優さんとしては稀な事!?!? そして、週末の歌舞伎座公演ではフラストレーションがたまりまくりだったマント裁き、帝劇では「これよ、これっ」と溜飲を下げたのでした。衣装の着こなしといい、ラインの保ち方、ひるがえし方、さすがのマント裁き。そして、ダンサー陣もマントの動きも振付の一部とばかりにキレイに揃って処理しているのですからウットリもの。歌舞伎座のみなさん、ぜひぜひ帝劇までいらしてください!!

 さて、山口祐一郎の勢いはカーテンコールでも存続。今までだと、小学校の学校の先生のように、舞台端や舞台奥に引っ込んでしまい、主役だというのに、そして隠れようもないというのに、隅へ隅へと逃げてしまう傾向があったのですが、今回は堂々と中心に鎮座。うん、やはりこのポジションがお似合いです。そして、ごあいさつでは紹介されなかった新参加キャストを一人ずつポ〜ンと舞台前面へと放り投げてご挨拶させて、さらにはアンサンブルの面々に「前へ出なさい」とメインキャストを引き連れて最後列に引きさがったり(逃げ隠れするのとは違うんですよ、似た動きでも)なんとも余裕があって、心地良かった!! おかげさまでカーテンコールでも劇場中がノリノリ。座長公演における座長の在り方を考えさせられました。

 それにしても、ウィーンの作品だけあって、オペラのパロディ、映画への揶揄、さらにはロックとクラシックの融合、耽美的な場面の数々、シニカルな笑いなど、カラッとしたブロードウェイ物とも、ドッシリ重いウェストエンド物とも違って、独自の路線を突っ走っているのがなんとも頼もしいです。歌担当、ダンス担当と分担されているミュージカル作りは、昨今の「何でもできちゃう俳優たち(時には楽器演奏まで!)」の作品とは異なり、先祖がえりなんだけれども、ウィーンの俳優たちを想定して作られたであろう作品作りは「スペシャリストたちによる場面作り」が可能なわけでして、これはこれで素晴らしく魅力的。東宝版の魅力は、ブロードウェイの、ウェストエンドの、そしてウィーンの作品のいずれにも参加している面々の参加による、それぞれの美味しいところ取りのインターナショナルな作りが特徴的に感じました。これはこれで、イースト・エンドのプロダクションならではの生きかた、作りかたなんでしょうね。堪能しました。



2009年07月07日(火)18:30-21:05
Quaras「coco」@ル テアトル銀座

 全席指定 11000円 23列-26番 (パンフレット:2000円)

 演出:G2

 ココ:鳳蘭
 ノエル:湖月わたる
 セバスチャン:岡幸二郎
 ジョルジュ:大澄賢也
 ピグノル:今陽子
 グレフ:鈴木綜馬

 これから2週間おきにシャネル三昧。全ての半券を持ち込めば、シャネル・ブティックで割引に……はならないかf^_^; そんなタイアップがあれば嬉しいんだけどな。

 まずはミュージカル版。パリでトップを極めたシャネルが15年ぶりにカムバックするというので、マスコミは冷たく応対し、グレフとピグノルはブランク期間のフォローのためにと新進気鋭のデザイナーのセバスチャンを雇用。一度は、セバスチャンを「ゴースト・デザイナー」としてコレクションを発表しようとするものの、突如「私は私よ!」と彼を首にして自らが乗り出すシャネル。で、見事に失敗するわけです。が、アメリカのバイヤーが買い付けてくれたおかげで無事、今に至る、というお話。

 声を失ったマリア・カラスが一度は吹き替えの口パクでカムバック公演を行おうとするものの、これまた「私は私よ!」と自分のアイデンティティを守り通す人生と似てますよね。一流の人ならではのプライドと挫折の心の動きに胸打たれます。そして、成功と同時に孤独という代償を求められるのも一緒。

 ツレ・シャネル、当たり役ですね。今の年齢だからこそ醸し出せる人生の深み、迫力、そして手に入れられなかったものの哀愁。そりゃ年齢を感じさせる場面はありますが、ミュージカル界の大御所として、宝塚の大スターとしての伝説的女優ですもの、シャネルのカリスマ性とツレちゃんのスター・オーラが見事にリンク。威張っている役なので、基本的に両足は腰幅! この仁王立ちに惚れ惚れ。似合いすぎます。彼女の前では湖月わたるもお嬢ちゃん。岡幸二郎の怪演にもビクともしないスター・オブ・スター。素晴らしい公演でした。上手い下手を超越したものスゴイ存在感。凄みタップリ。

 さて、ピン子の服という悪名高いシャネルのスーツ。シンプルがゆえに、着るべき人を選ぶ恐ろしい服で、着こなしによっては救いようがなく野暮ったくなります。現に、今日のモデル役の一人はもたついて似合わなくて気の毒。

 男に依存していたノエル:湖月わたるは、あか抜けなくて、ダサダサで登場したのが、みるみるあか抜けて、自立していくさまは見ものです。一人の女優が田舎娘からパリのトップ・モデルまで変貌しうるのですから、オンナの美貌は本人の美意識次第!! シャネルのスーツの正しい着こなしはアッパレ!! でも、ちょっと待って、男からシャネルに依存先を変えただけ? いえいえ、甘えん坊でいながら、いざとなると自己をきちんと主張し、相手を攻撃することなく、自分の道を認めさせるまでに成長するラストは感動を呼びます。彼女の好演があってこそ、ツレ・シャネルの人生感が浮かび上がるのですから、見事なもの。

 自分とは違う人生観を持つノエルに、一度は感情的になるものの、母性本能を呼び起こされた弱み、結局はノエルのためにウェディング・ドレスを用意してしまうツレ・シャネル。素直に「ごめんね」と言わないのがいかにもこの人でしょ(って、なんだかツレちゃんとシャネルが混乱してきた〜)。だって、これって、宝塚の、星組の正しきトップ継承のお姿でしょ。ツレ〜ミネ〜マリコ〜ワタルの新公直系の強み!?か、このあたりの心の交流が実にお見事!!

 セバスチャン:岡幸二郎はキャスティングの時点からひそかに期待していたオカマ・キャラ。非シンメトリーなボブのカツラが笑っちゃう位似合って、いかにも芸術家なエキセントリックな性格を遺憾なく表現。台本なんだかアドリブなんだかわからないけれど、マツモトキヨシだの、オオトリランだの、なんでここに!?な単語で不意打ちをかけるので、思わずプププ。この手の台詞、タイミングや勢いを間違えると途端に安っぽくなるけれど、サラリと流すあたり、とってもお洒落です。で、彼のカツラを笑っちゃったんですが、実はこの手のカツラ、宝塚のショーでは結構普通に登場するんです。宝塚通の岡幸二郎なので、実に美しく、毛先の揺れまで計算した芝居をしているのですが、毎度のことながら、その職人技には舌を巻きます。それと同時に、こんなケッタイなものをお笑いではなく「格好良い」とファンをうならせてしまう宝塚って何???と思いをはせましたわ。

 日本初演作品の二日目。決して完成度は高くないです。特に歌に関してはかなり改善の余地があります。が、スター芝居ならではの勢いで、技術的な不満を解消させてしまうあたり、凄いカンパニーです。でもね、大劇場で主役を張った方々が集まり、束になってかかっても、やすやすと中心に納まってしまう鳳蘭。彼女の舞台の中でも指折りの凄いものを見せていただきました。そういえば、演出……スターたちの邪魔はしませぬ。シンプルに、シンプルに。余計なものは何も要りません。って、このあたり、シャネル・テイスト!?!?



2009年07月10日(金)19:00-21:10
Pavel×ARCO 若手実力派クァルテットを聴く 2
「ストリング・クヮルテット ARCO」@トッパンホール

 全席指定 5000円 F列-19番 (パンフレット:無料)

 ストリング・クヮルテット ARCO
  ヴァイオリン:伊藤亮太郎
  ヴァイオリン:双紙正哉
  ヴィオラ:柳瀬省太
  チェロ:古川展生

 ハイドン:弦楽四重奏曲第35番 ヘ短調 Op.20-5 Hob.III-35 《太陽四重奏曲第5番》
 ブラームス:弦楽四重奏曲第3番 変ロ長調 Op.67
(休憩)
 ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第2番 Op.15

 久しぶり、久しぶりのARCOのコンサート。なんというか、皆さん立派になられて。色んな意味でね。全員、どこかしらのオケのトップです。恰幅、良くなりましたf^_^; 「若手」が売りだったARCOもいつの間にやら中堅の風貌。頼もしくもあり、自分「も」中年になったことを見せつけられ寂しくもあり。あ、のぼぉちゃんは締まった!? きっと、今日は影武者ではなくご本人様だったんでしょう!
 らっしい「ARCOはいつ復活するんですか?」
 展生「えっ、解散してませんけどっ(;`皿´)」
のやり取りから、今日のこの日をどれだけ待っていたことか! 登場した面々ですが、黒シャツ&黒パンツのお揃いながら、良太郎君&双紙さんは第一ボタンのみOPEN、のぼぉちゃんは第二ボタンまでOPEN、そして、なぜか省太君だけネクタイ着用。ファンからのプレゼントだった???

 プログラムはARCOの定番。古典で始まり、ロマン派、そして近代という並び。多彩な楽曲をこなす実力もさることながら、聴く側も変化に富んでいて楽しいってもんです。久しぶりのARCOはどんなかいな、と思っていたのですが、媚びず、気負わず、真摯な演奏。ジメジメと暑苦しい夜のせいか、ハイドンはまだ音が抜けきらない、そして、やや走ってしまう感がありましたが、ブラームスで音が激変。水墨画がいきなり水彩画になったかのよう。双紙さん&省太くんの組み合わせ、亮太郎くんとのぼぉちゃんの組み合わせで始まるこの曲、たった二人なのにバズーガー砲。なんとも、逞しいカルテットになりました。弓さばきのupとdown、弦の移行・楽器の移行が非常に滑らかで、ギア・チェンジを感じさせないのが今回の聴きもの。四人が一つの楽器になったかのようなうねりが快感! しばしブランクはあったものの、常設カルテットならではの安定感が嬉しい!

 休憩を挟んでのツェムリンスキーは、現代曲に近い作りなので、メロディ重視派には厳しい曲なのですが、独特の緊張感とリズムの変化に、なぜか心惹かれる不思議なサウンド。pppの高音をピッチを乱さずにキープするラストは、ヨガの苦しいポーズを「まだまだっ」と励まされ(いじめられ)ながら、大汗かいているよう。が、一同が「ふぅ」と力を抜いた瞬間に鳴り響くイビキの音。ご丁寧に二回も!! 隣りの人、演奏中に起こさなかったノネ。。。

 久しぶりにARCOがフルメンバーで揃ったことが嬉しくて、サイン会も参加。残念ながら、所有しているARCOのCDは、どれも過去にサイン済みのためプログラムに。相変わらず、のばぉちゃんには声かけられないんだけど、亮太郎君に確認したところ、来年に次のコンサートの予定があるとか。わ〜い(o^∀^o) 次回はどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。



2009年07月11日(土)17:00-18:50
SEASONS CONCERT 夏「古川展生コンサート」@原宿クエストホール

 全席指定 5000円 J列-3番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生  ヴァイオリン:鈴木理恵子
 バンドネオン:北村聡
 バレエ:中島周

 即興演奏:古川展生(古川)
 ヘンデル/ハルヴォルセン:パッサカリア(古川・鈴木)
 バッハ/グノー:アヴェマリア(鈴木・北村)
 マルティノン:ソナチネ 無伴奏のヴァイオリンのための(鈴木)
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番よりプレリュード(古川・中島)
(休憩)
 ソッリマ:ALONE(古川・中島)
 ピアソラ:cafe1930(鈴木・北村)
 デカロ:ロカ・ボヘミア(北村)
 ピアソラ:オブリビオン(古川・北村)
 ピアソラ:アディオス・ノニーノ(古川・北村)
 ガルデル:ポル・ウナ・カベサ(古川・鈴木・北村)
(アンコール)
 久石譲:おくりびと(古川・鈴木・北村)

 のっけから懺悔ですが、ワタクシ、本日遅刻しました。前の予定が長引いてしまい、タクシーで駆けつけるも、既に一曲目が演奏中。今までも、最前列で集団睡眠だとか、あれこれ無礼を働いてはいるのですが、遅刻は初めてです。客席後方、通路近くの席で良かった。。。

 昨夜がバリバリのクラシックのコンサートだったのが、今日は軽めのプログラム。のぼぉファンとは不思議なもので、プログラムによって集合したりしなかったり。かくいう僕も共演者によってはパスしてるんですけど。今日の客層は見事に女・女・女。東京宝塚劇場よりも男声比率は低いものと思われます。そんなもんですかね。。。

 「大先輩、あ、ちょこっと先輩(!)」のヴァイオリン:鈴木理恵子とのデュオは歌心あり同士の共演で、良く、弦楽器が人間の声に例えられることが納得。ソプラノとバリトンの二重唱を聴いている気分。ベルカント歌手によるバロックオペラの高音・高速パッセージみたいな掛け合いがお見事!な一曲ですが、先日のシラグーザじゃないけれど、凄いことを涼しい顔して、楽しげに披露しちゃうあたり、お二人の演奏家としての充実ぶりを感じます。

 ヴァイオリンのソロを挟み、前半ラストはバッハのプレリュード。ここで登場するのが、いつの間にやら東京バレエ団を退団している中島周。東京文化やゆうぽうとの広いステージならいざ知らず、仮設の狭いステージの上での踊りなので、さぞかし踊りにくかったことと思います。が、筋肉の動かし方の美しさ、バランス感覚の素晴らしさを堪能する数分間。プレリュードだけでなく、大舞台で無伴奏チェロ組曲の固まりで拝見したいバレエでした。

 後半はピアソラを中心としたオモチャ箱。バンドネオンという楽器は、分厚いタイプライターのようなルックスで、失礼ながら楽器には見えないのですが、アコーディオンのようなフガフガした、どこか懐かしい音がします。ピアノに比べれば、確かに不器用だし、演奏の制限も大きそうですが、ピアソラに関しては「この音色が欲しかった!」なアルゼンチン・サウンド。

 サウンドといえば、原宿クエストホールは、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの会議室転用のホールのような、いかにも仮設の空間なので、音響は期待できないのですが、会場では意外にタップリとした響き。えっ、でも、この内装で、この残響はないでしょう、とキョロキョロしてみたら、PAが入ってました。今日の編成ならば、生で聴きたいけれど、防音もよろしくなくて、外部の音が結構入ってくるホールなのでいたしかたないのかな。ロビーでのスタッフの話声はかなり耳触りでしたし、アンコールの演奏中は、どこかのドアをノックする音がひっきりなしに加わってきましたし……。



2009年07月12日(日)11:00-14:00
宝塚歌劇団月組「エリザベート」@東京宝塚劇場

 A席 5500円 2階-11列-24番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

  トート エリザベート フランツ ルキーニ ルドルフ ゾフィー
1996年 雪組 一路真輝 花總まり 高嶺ふぶき 轟悠 和央ようか 朱未知留
1997年 星組 麻路さき 白城あやか 稔幸 紫吹淳 絵麻緒ゆう 出雲綾
1999年 宙組 姿月あさと 花總まり 和央ようか 湖月わたる 樹里咲穂 出雲綾
2000年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬 高嶋政宏 井上芳雄 初風諄
2001年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬 高嶋政宏 井上芳雄 初風諄
2003年 花組 春野寿美礼 大鳥れい 樹里咲穂 瀬奈じゅん 彩吹真央 夏見よう
2004年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
パク・トンハ
初風諄
2005年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 井上芳雄
浦井健治
パク・トンハ
寿ひずる
2005年 月組 彩輝直 瀬奈じゅん 初風緑 霧矢大夢 大空祐飛 美々杏里
2006年 東宝 山口祐一郎
武田真治
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
パク・トンハ
初風諄
寿ひずる
2007年 雪組 水夏希 白羽ゆり 彩吹真央 音月桂 鳳稀かなめ 未来優希
2008年 東宝 山口祐一郎
武田真治
涼風真世
朝海ひかる
鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
伊礼彼方
初風諄
寿ひずる
2009年 月組 瀬奈じゅん 凪七瑠海 霧矢大夢 龍真咲 遼河はるひ
青樹泉
明日海りお
城咲あい

 トート:瀬奈じゅん
 エリザベート:凪七瑠海(宙組)
 フランツ・ヨーゼフ:霧矢大夢
 ルイジ・ルキーニ:龍真咲
 ルドルフ:青樹泉
 マックス公爵:越乃リュウ
 スターレイ 花瀬 みずか
 ツェップス:一色瑠加
 グリュンネ伯爵:研ルイス
 ルドヴィカ侯爵夫人:美鳳あや
 エルマー・バチャニー:遼河はるひ
 皇太后ゾフィー:城咲あい
 リヒテンシュタイン 憧花 ゆりの

 宙組から凪七瑠海が特別出演するものの、専科からの参加もなく、月組生徒だけによる「エリザベート」の上演。この組は、上級生がいないわけではないけれど、中堅どころがごっそりいないので、何ともバランスの悪い配役。メインキャスト以外は「アンタ、誰?」なチョイ役も多いのですが、それだけに、予想のつかない展開、新人の発掘など、なかなか見ごたえがあります。その分「新人公演?」な場面もありましたが、向き・不向きなど何のその「与えられたからには、何とか形にしちゃいます!」という意気込み、そしてそれを実現してしまうのですから、宝塚って恐ろしいところです。

 既に宝塚で7演目という人気プロダクションとあって、演出はほぼ完成しています。あとは出演者に合わせての微調整が行われるのですが、ここは座付き演出家の腕の見せ所。今回のトート:瀬奈じゅんは、赤いメッシュのカツラがトレードマーク。登場場面ではまるで黒鳥のように、黒い羽を体中にまとっていて、なんとも不気味ないでたち。彼女のトートは静と動の劇的な変化が見もの。呼吸を整えて「3…2…1…爆発っ」な過程が魅力的でした。ダンス場面では、彼女ならではの、クサくて、無駄な動きが多いダンスが「いかにも宝塚スター」で、華やかさを振りまいていました。歌は、ハスキーで立ち上がりが悪い声なので、かなり損をしているのですが、お腹の底から吠えるように歌い上げるのが力強く、ナンバーの中では「青い血を流す」と歌っていますが、実際は誰よりも「赤い血」を感じさせる人です。

 話題のエリザベート:凪七瑠海は、宙組ではこれといって目立つ役は与えられてないので、大抜擢。二期会のテノール:高丈二のお嬢さんだそうで、元々歌の人かと思いきや、今までの配役からすると、ダンスがメインの方のよう。そのせいか、男役としての声が完成しておらず、娘役にしては太く・男役には高いエリザベート役を歌うのにはピッタリ。宝塚には珍しく、強い声のソプラノを響かせてアッパレ。男役がポッと出でここまで歌えるのだから大したものです。もちろん、ファントムじゃないけれど「まだまだ修行が必要」な方で、声区のチェンジの際、かなり不安定になるのと、声には恵まれているけれど、歌い回しはまだまだ、と「今後に期待」な部分は多々ありますが、ここまで歌える娘役が月組にはいないのですから納得の人事。エリザベート自身、長身で逞しい女性だったわけですから、男役が演じるのにピッタリ。それにしても、宝塚の生徒って、どうしてこんなにドレス裁きがキレイなんでしょう。普段男役ってことは、この手のドレスはほとんど着たことないはずなんですけど。

 フランツ・ヨーゼフ:霧矢大夢は役者ですね。この作品に合わせてか、歌い方はかなり変えてます。宝塚スターとしての歌唱ではなく、俳優としての歌唱。女性らしさや、霧矢大夢としての華やかさを極力排除し、じっくり歌いこんでます。完成度の上では、今回のプロダクションで一番安心して聴ける歌唱力。「夜のボート」はタップリ歌い上げて余韻が耳心地よろし。でも、フランツって、難しい曲を地味に歌いこなす中、存在感を示さなくてはならない(そして、トップではないので、演出面でのフォローはあまりない)ので、なかなかの難役ですね。前回のルキーニ役は、彼女の元気なキャラクターが活きて、魅力的でしたが、芝居の上・役者としては、辛抱役のフランツもナカナカ。

 ルイジ・ルキーニ:龍真咲はついこの前まで新人公演に出演していた人。見ているこちらの肩がこってくる程、力が入りまくってます。動きも芝居も目いっぱい。今のキャリアで出し切れる物を全て出しちゃいましたな大熱演。でも、今の彼女に、他の表現方法があるでしょうか!? いきなりの抜擢なので、存在感やスターの輝きは手も足も出ませんし、技術的にとりたてて破たんはない反面、強い個性があるわけでもないので、まずはエネルギーで観客にアピール。

 ルドルフ:青樹泉も、どちらかというと無個性派なので「なんでトリプル・キャストなの?」なのですが、ここ最近、宝塚の複数キャスト公演、役者の個性ではなく、ポジションに応じて割り振っているという印象が強いですね。ま、ルドルフ役は10分ちょっとしか出番がないので、その中で強烈な個性を示すのは難しいでしょうが、印象に残らないルドルフ。あ、長身でスタイルが良いので、立ち姿は美しいです。いかにも、今どきのタカラジェンヌって生徒。

 皇太后ゾフィー:城咲あいは役作りはともかく、歌唱面でかなり無理が目立ちます。音域が広いようで、意外に低音もちゃんと出しているけれど、高音になると途端に若くて軽い声になってしまうので、迫力不足。でも、全然タイプが違う人なだけに「この場面、どう攻めてくるんだろう?」という楽しみも。

 今日は二階席からの観劇でしたが、各役のフォーメーション(黒天使や女官たち)といい、全体での配置といい、照明との反応といい、ご贔屓スターがいるのでなければ、宝塚観劇は絶対に二階席からの方が面白いです。舞台をナナメに使う場面が多いのだけど、日頃ショーで鍛えられているせいか、団体としてまとまっているんです、お芝居も。グループとしての連携や動きの美しさは宝塚ならではの素晴らしいプレー。音楽ともフィットしていて「ザ・ミュージカル」な感覚が快感です。



2009年07月13日(月)13:00-15:55
新国立劇場 高校生のためのオペラ観賞教室
「プッチーニ:トスカ」@新国立劇場オペラパレス

 全席指定 4200円 4階-R4列-2番 (パンフレット:無料)

 指揮:沼尻竜典
 演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ
 東京フィルハーモニー交響楽団

 トスカ:横山恵子
 カヴァラドッシ:井ノ上了吏
 スカルピア:直野 資
 アンジェロッティ:彭 康亮
 スポレッタ:松浦 健
 シャルローネ:峰 茂樹
 堂守:鹿野由之
 看守:龍 進一郎
 羊飼い:九嶋香奈枝

 未来のオペラ・ファン育成のため、高校生を対象とした公演であると同時に、日本人歌手の育成の場でもある「高校生のためのオペラ教室」。観客にとっても、歌手にとっても素晴らしいシステムです。そりゃ、テノールは高音が不自由だし、バリトンは既に低音を失っていて、万全の演奏かというと、かなり苦しいのですが、今日のメンバーは海千山千の歌手たちなので、不調を認識したうえで、いかに観客を魅せるかに長けていて、これはこれで素晴らしい公演でした。

 オペラ初体験の子が多いようで、場内が暗くなると、POPSコンサートのノリで、場内大拍手と口笛ピューピュー。彼らなりの公演への期待の表れと、非オーソドックスな感情表現ですが、決して嫌な感じはありません。(本公演でこれをやられたら引いちゃうけどっ!) そして、オペラの常とはいえ、一幕は状況説明が長いので客席はややだれます。休憩時間になって「話わかんね〜」という声が聞こえるのも納得です。イタリアの政治状況や、宗教やら、日本人にはハードルが高いです。話のわからないまま、舞台装置がはけ、いきなり「テ・デウム!」と歌い上げられても、そりゃ「???」になりますわな。

 ところがどっこい、第二幕になると、カヴァラドッシは拷問にかけられるし、トスカはスカルピアに操を狙われるし、挙句の果てにはナイフで突き刺して「これがトスカのKISSよっ!」ですもの。非常にワイドショー的。音楽はドラマティックだし、一気にヒートアップ。心なしか劇場内も酸欠状態。歌い手に影響はないんでしょうかね? 舞台袖で酸素ボンベ吸ってたりして!?

 第三幕は新国ならではの、舞台全面せり上がり&せり下がり、銃殺の大音響、ファンファーレが鳴り響く中、トスカの飛び降り自殺と、これまた見せ場タップリ。死刑執行前のカヴァラドッシの嘆きと、「処刑は見せかけよ」とぬか喜びのトスカで「おぉ〜」と唸っていた矢先、「処刑は見せかけ、は嘘です」な展開。畳みかけるように大どんでん返しになるので、幕が下りると同時に大喝さい。そりゃ、見ごたえありますわ。

 それにしても、高校生のためのオペラで取り上げられている作品というと「蝶々夫人(現地妻)」、「カヴァレリア・ルスティカーナ(不倫→殺人)」、「カルメン(娼婦すれすれのジプシー)」そして「トスカ(拷問に強姦未遂に観客前での殺人騒ぎ)」などなど、高校生にふさわしい題材かどうか、かなり疑わしいんですけど。どの作品も音楽は魅力的ですけどね。「こうもり」や「メリー・ウィドー」じゃ駄目なのかしらん?



2009年07月14日(火)18:30-21:30
宝塚歌劇団月組「エリザベート」@東京宝塚劇場

 S席 8500円 1階-6列-26番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

  トート エリザベート フランツ ルキーニ ルドルフ ゾフィー
1996年 雪組 一路真輝 花總まり 高嶺ふぶき 轟悠 和央ようか 朱未知留
1997年 星組 麻路さき 白城あやか 稔幸 紫吹淳 絵麻緒ゆう 出雲綾
1999年 宙組 姿月あさと 花總まり 和央ようか 湖月わたる 樹里咲穂 出雲綾
2000年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬 高嶋政宏 井上芳雄 初風諄
2001年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬 高嶋政宏 井上芳雄 初風諄
2003年 花組 春野寿美礼 大鳥れい 樹里咲穂 瀬奈じゅん 彩吹真央 夏見よう
2004年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
パク・トンハ
初風諄
2005年 東宝 山口祐一郎
内野聖陽
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 井上芳雄
浦井健治
パク・トンハ
寿ひずる
2005年 月組 彩輝直 瀬奈じゅん 初風緑 霧矢大夢 大空祐飛 美々杏里
2006年 東宝 山口祐一郎
武田真治
一路真輝 鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
パク・トンハ
初風諄
寿ひずる
2007年 雪組 水夏希 白羽ゆり 彩吹真央 音月桂 鳳稀かなめ 未来優希
2008年 東宝 山口祐一郎
武田真治
涼風真世
朝海ひかる
鈴木綜馬
石川禅
高嶋政宏 浦井健治
伊礼彼方
初風諄
寿ひずる
2009年 月組 瀬奈じゅん 凪七瑠海 霧矢大夢 龍真咲 遼河はるひ
青樹泉
明日海りお
城咲あい

 トート:瀬奈じゅん
 エリザベート:凪七瑠海(宙組)
 フランツ・ヨーゼフ:霧矢大夢
 ルイジ・ルキーニ:龍真咲
 ルドルフ:明日海りお
 マックス公爵:越乃リュウ
 スターレイ 花瀬 みずか
 ツェップス:一色瑠加
 グリュンネ伯爵:研ルイス
 ルドヴィカ侯爵夫人:美鳳あや
 エルマー・バチャニー:遼河はるひ
 皇太后ゾフィー:城咲あい
 リヒテンシュタイン 憧花 ゆりの

 今日は一階席からの観劇。照明効果や群舞のフォーメーションは全然わからなくなってしまったけれど、役者の細かな表情や仕草が良く見えるのは前方席ならでは。瀬奈トートは眼力が凄いです。牝豹のような、鋭くなまめかしい一瞥。きっと本当は見ちゃいないんでしょうが「あ、流し眼!」という錯覚を観客に与えるあたり、さすがトップさんです。蛇足ながら、フィナーレで「私が踊る時」は「アパショナード!」再び、と言いますが、肩いからせまくりの濃厚なダンス、「最後のダンス」はコアリズム!! 本編の FIRE & Ice とは打って変わって、熱くて暑い「瀬奈じゅん」が暴れまくります。

 凪七エリザベートは今日は不調。声が伸びず・飛ばず。通常、夜公演の方が良い声の人が多いのですが、彼女は朝型!?!? それにしても、普段は男役というのが信じられない程美しいです。凛々しい女性役なので、男役の押し出しの良さやキリリとした動きがフィットしてます。プロローグで、肖像画の中から飛び出す姿は、足の長さやラインの細さもあって、小鹿みたい。ヒョロリと、でも力強く。続く「パパみたいに」のナンバーは歴代シシィの中でもピカ一じゃないでしょうか。生命感に溢れた力強い歌唱が心地良いです。台詞回しが、アニメ的というか、宙組の花影アリスそっくりで、色気に乏しい(これは宙組の伝統!?)のが残念。でも、瀬奈トートを相手に歌も芝居も一歩も引かず、堂々とした態度なのは、ゲストならではかもしれません。組子の娘役だと、ついついトップさんを立てて、三歩位引いた芝居や歌になるけれど、娘役のイロハにはご縁がなかった凪七だけに、宝塚番としては珍しく、エリザとトートが対等、それどころか、場面によってはエリザベートがトートを凌駕しているのが見ものです。って、そりゃキャリアの差があるので、瀬奈トートが負けちゃうってわけじゃないんですけどね。

そんな「突っ走っているエリザ」なだけに、エリザ&フランツの夫婦感覚は、今回、かなり薄まってます。トートとは、時に子供っぽく思える程、感情と感情とのぶつかり合いで迫力があるけれど、たたずむだけで「すれ違い夫婦」ではあってもにじみ出ちゃう、夫婦の絆は希薄。ま、嫁入り前のお嬢さんたちですからねぇwww

 で、本日のルドルフは明日海りお。もの凄い人気者とのことですが、舞台姿は元・宙組の月船さららに似ている気がします。男役・男役した作りこまれた宝塚スターではなく、等身大のキュートな女の子のままなのが人気なんでしょうか。その浮世離れした姿は、なるほど、世間知らずな皇太子殿下に重なりますね。そして、登場しただけでとても華やか! 「闇が広がる」は瀬奈じゅんとのバランスが良く、見た目は素敵ですが、歌は二人とも声の立ち上がりが悪く、リード・メロディ担当の際にもっと頑張る必要を感じました。瀬奈、明日海共に、歌詞が聞き取れない。。。



2009年07月18日(土)19:00-21:40
PARCO劇場「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」@PARCO劇場

 全席指定 10000円 K列-19番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮本亜門

 ジョージ/ジョージ(ひ孫):石丸幹二
 ドット/マリー:戸田恵子
 老婦人/ブレアー・ダニエルズ:諏訪マリー
 ジュール/ボブ・グリーンバーグ:山路和弘
 イヴォンヌ・ネイオミ・アイゼン:春風ひとみ
 フランツ/デニス:畠中洋
 ボート屋/チャールズ・レドモンド:野仲イサオ
 看護婦/ハリエット・ポーリング:花山佳子
 セレステ1/イレイン:鈴木蘭々
 セレステ2/ウェイトレス:冨平安希子
 兵隊1/アレックス:岸祐二
 兵隊2/カメラマン:石井一彰
 ミスター/リー・ランドルフ:岡田誠
 ミセス/美術館アシスタント:南智子
 ルイ/ビリー・ウェブスター:中西勝之
 フリーダ/ベティ:堂ノ脇恭子

 草刈正雄や鳳蘭、藤木孝らが中心に日本初演されたのは1987年3月@青山劇場。実に22年ぶりの再演になるわけですね。もうそんなになるんだ!というのと、今もなお、ソンドハイム作品というと「難しい」ということばかり前面に出されちゃうことが残念に思えます。そりゃ、演奏は難しい作曲家だと思うけれど、白鳥は水面下ではバタバタしていても、水上は優雅そのもの。「頑張ったんだから褒めて!」という気持ちもわからなくないけれど、ショー・ビジネスですもの。あまり舞台裏を暴露せずに、素直に作品に浸らせてもらいたいなぁ、と思います。この20年の間に摩訶不思議な音楽の公演もたくさんあったわけですし、そろそろ別のコメントも欲しいな、と。

 さて、今回のプロダクションは、日本のミュージカル界では歌える人を揃えました。芸大組もワンサカ。でも、その中で光ったのは、皮肉にも音大組ではない戸田恵子、諏訪マリー、春風ひとみの女性陣。音を追うだけでなく、その中にドラマを込める力量が群を抜いてます。音楽をすっかり自分の手中に納め、実に魅力的な人物を造形。(たとえトップではなかったにせよ)看板女優として劇団を背負ってきた人たちのアピール力には舌を巻きます。引き受けたからには、力づくでも役を昇華させる心意気がに圧倒されました。

 反面、芸大組でありながら、そして主役でありながら、魅力を発揮できなかったのが(ファンの方には申し訳ないけれど)石丸幹二。歌も芝居も一本調子なので、各登場人物それぞれに見せ場がある、今回のような作品の場合、主役として存在し続けることに力尽きてしまうのが残念。かといって、歌も常にこもった発声で解放感がないんです。最大の聞かせ場「Putting It Together」も、この曲だと気づくのにやや時間がかかったほど。社交的な表ヅラと、気難しい腹の底の対比が面白いナンバーなんですけれど、一生懸命さばかりが前面にでてしまい魅力半減。この人は舞台の中心で輝くよりも、二番手や三番手のポジションで貴公子を演じている方が似合う気がします(ファントムのラウルが結局のところベスト!?)

 青山劇場→PARCO劇場と小屋がかなり小さくなるので、装置はどうなることかと思いきや、青山のプロセニアムにあわせて「グランジャット 島の日曜の午後」の絵が拡大されていましたが、実はPARCO劇場のプロセニアムがちょうど良かったみたい。絵画そのものというには、動物やら人物やら、減っている分はありますが、舞台面としてのバランスはスッキリ。そして、20年以上たつと、CG処理が格段に進歩していて、映像と肉体表現との調和が実に美しく、流れるような場面転換にウットリ。

 ところで、第一幕はフランスが舞台だし、ジョルジュ・スーラが主役だというのに、ジョージ、ジョージって、いつからアメリカ人になったんよ!?な訳詞、前回も思ったのですが、今回も改善されず。ジョージ・ジョルジュ・ゲオルグなどなど、国によって同じスペルでも読み方は変わりますし、かなり違和感。ジョルジュ→ジョージと役名が変わることによって、フランスの画家のひ孫がアメリカで活躍しているのね、というのが一目瞭然になるというのに。(休憩時間に「えっ、フランスの話だったの? わかんない〜」という会話を耳にし、僕だけじゃないんだ、と思いましたさ)。

 さて、今回は点描画の画家を扱ったミュージカルですが、実は点描舞台の上演でもあったんです。常に客席に点滅した照明が当てられていて「ポケモン・ショック」を思い出してしまいました。これ、かなりイライラします。と思ったら、客席後方に巨大モニターを設置して、指揮者を映し出していたのでした。この位置、このサイズが必要だったのか、かなり疑問。そして、かなり不快。



2009年07月19日(日)12:00-14:20
日本テレビ 他「スペリング・ビー」@銀河劇場

 S席 9500円 1階-A列-10番 (パンフレット:1500円)

 演出:寺崎秀臣

 バーフェイ:藤井隆
 オリーブ:新妻聖子
 リーフ:梶原善
 シュワージー:高田聖子
 チップ:坂元健児
 マーシー:風花舞
 ロナ:安寿ミラ
 ミッチ:今井清隆
 ダグラス:村井国夫

 舞台と客席が一体化した装置で、三階席手すりしたにはバスケット・ゴールが。そして、二階席手すりにはスペリング大会の横断幕が。どうやら、観客はミュージカルを観に来たと同時に、スペリング大会の観客という役も演じる趣向の模様。となると、舞台と客席が一致しないと苦しいな、とドキドキしていたのですが、ロナ:安寿ミラが「間もなく始まりますからね」と登場したその一言で完全に客席を支配。ミュージカルの台詞なのか、安寿ミラのご挨拶か区別がつかないまま、あとはジェットコースターのように疾走。いやはや、面白い舞台です。

 大会出場者が一人一人ロナ:安寿ミラに紹介されながら客席から登場するのですが、それに混ざって、一般客(の希望者)の何人かも舞台に上げられ、台詞を言わされ、スペリングさせられ、一緒に芝居をさせられ、ついでに、舞台に上げられない観客も、出演者の親戚にされたり、一目ぼれされたり、お菓子与えられたり(!)とにかくいじられまくり。

 そもそも、大人が子役も演じる(42才にして7才を演じるシュワージー:高田聖子とか!)ので、作りこまれた役なはずなのに、違和感ゼロで、ちゃんと子供に見えてきちゃうのだから、芸の力って面白いですね。

 芸達者なキャストたちが揃い、それぞれに見せ場があると、時に焦点の定まらない空中分解作品になってしまうところですが、安寿ミラが大人役として舞台を仕切り、子役は子役で団結して集団芝居を行うことによって、どんなに個々が暴れても、芝居の大筋がぶれず、観客は安心して個々の見せ場を楽しむ事が出来ます。見る側もモチベーションのコントロールってのがあるので、この仕組みは非常にありがたい!

 そして、この作品が素晴らしいのは、単なるスペリング大会を描写するだけでなく、一人一人のコンプレックスや悩みを浮かび上がらせ、かといって誰か一人に固着するのではなく、それぞれが絡み合う中、自然と解決の方向に向かわせたこと。子供たちのその後、そして、大人たちのその後まで扱うことにより、「人間、いくつになっても学び・進化することができるんだ」とポジティブな気持ちで席を立てるのが魅力。

 様々なミュージカルで活躍中の歌えて踊れるキャストだけでないけれど、キャラクター勝負のこの作品「えっ、オリジナルじゃないの?」「あて書きじゃないんだ」な程しっくりくるキャスティングができただけでも奇跡的。濃〜〜〜いメンバー勢ぞろいなので、誰か一人が「濃いなぁ」と浮くこともなく、コミカルでノリノリの楽しい作品に仕上がりました。ぜひ、再演していただきたいプロダクションです。



2009年07月19日(日)21:25-24:10
映画「ハリー・ポッターと謎のプリンス」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ

 全席指定 レイトショー 1200円 E列-10番 (パンフレット:800円)

 監督:デイビッド・イェーツ

 ハリー・ポッター:ダニエル・ラドクリフ
 ロン・ウィーズリー:ルパート・グリント
 ハーマイオニー・グレンジャー:エマ・ワトソン
 ホラス・スラグホーン:ジム・ブロードベント
 ベラトリックス・レストレンジ:ヘレナ・ボナム=カーター
 ルビウス・ハグリッド:ロビー・コルトレーン
 アルバス・ダンブルドア:マイケル・ガンボン
 セレブス・スネイプ:アラン・リックマン
 ミネルバ・マクゴナガル:マギー・スミス
 ドラコ・マルフォイ:トム・フェルトン
 ルーナ・ラブグッド:イバンナ・リンチ
 ジニー・ウィーズリー:ボニー・ライト
 ラベンダー・ブラウン:ジェシー・ケイブ
 11歳のトム・リドル:ヒーロー・ファインズ・ティフィン
 16歳のトム・リドル:フランク・ディレイン
 フィリウス・フリットウィック:ウォーウィック・デイビス
 ワームテール:ティモシー・スポール
 リーマス・ルーピン:デイビッド・シューリス
 モリー・ウィーズリー:ジュリー・ウォルターズ
 アーガス・フィルチ:デイビッド・ブラッドリー
 アーサー・ウィーズリー:マーク・ウィリアムズ
 フレッド・ウィーズリー:ジェイムズ・フェルプス
 ジョージ・ウィーズリー:オリバー・フェルプス
 ニンファドーラ・トンクス:ナタリア・テナ
 ケイティ・ベル:ジョージーナ・レオニダス
 ナルシッサ・マルフォイ:ヘレン・マクローリー
 フェンリール・グレイバック:デイブ・レジェノ



2009年07月20日(月・祝)14:00-17:25
佐渡裕プロデュースオペラ2009「ビゼー:カルメン」@東京文化会館

 D席 5000円 5階-L1列-15番 (パンフレット:無料)

 指揮:佐渡裕
 演出:ジャン=ルイ・マルティノーティ
 東京フィルハーモニー交響楽団

 カルメン:林 美智子
 ドン・ホセ:佐野 成宏
 エスカミーリョ:成田 博之
 ミカエラ:安藤 赴美子
 フラスキータ:吉村 美樹
 メルセデス:田村 由貴絵
 モラレス:桝 貴志
 スニガ:松本 進
 レメンダード:大川 信之
 ダンカイロ:初鹿野 剛



2009年07月21日(火)18:00-21:25
松竹「ガブリエル・シャネル」@新橋演舞場

 一等席 12600円 2階-6列-23番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮田慶子

 ガブリエル・シャネル:大地真央
 アーサー・カペル:今井翼
 エドワール:葛山信吾
 エチエンヌ・バルサン:升毅
 シャルル:平岳大
 アドリエンヌ:彩輝なお
 アントワネット:華城季帆
 セール:ジェームス小野田
 ミシア:高橋惠子

 銀座・シャネル戦争ですが、ツレ・星組・シャネルに対抗するのは、マミ・月組・シャネル。「ベルばらIII」以来、絶対に共演することのない強烈な二人の競演、ゾクゾクもんでしょ(どんな意味でゾクゾクかは触れませんが)。ツレ・シャネルは仁王立ちでガミガミでしたが、マミ・シャネルはポケットに両手突っ込んでギャーギャー。お二人とも、ザ・スターゆえに「役を自分に引き寄せる」強引さがアッパレ。大劇場の主演女優はかくあるべきの姿に興奮してきました。

 とはいえ、大地真央のあまりの棒読み大根芝居にまずは絶句。彼女の舞台を見続けてウン十年ですから、独特の台詞回しはわかってはいるものの、慣れるまでしばらくはどうも落ち着きが悪いんです。現在、大地真央は53歳ですが、12歳から71歳までを演じ分けるのもちょっと苦手なのかも。というのも、彼女は一貫してヒロイン女優。常に20代あたりを演じ続けているわけで、子役や老人役はほとんど手がけてないのです。よって、男に頼らず、自分のメゾンで「ノン、ノン、ノン!」と敵知らずに振る舞うあたりがベスト。時に大阪のおばちゃんになってしまう彼女ですが(それはそれで好きなんですけど)、凛とした強い女、格好良い女がやはり魅力的。

 でも、時に大阪のオバチャンになりながらも、12才から晩年まで大熱演する姿を観ているうちに抱くこの満足感は何!? 確かに昭和の香りがプンプンです。やたらと長い暗転は多いし、ストーリー展開もゆっくり。最近のナチュラルでスピーディな芝居とは全くの別世界。でも、ここで発揮されるのが様式美。大劇場の座長ならではの、三階席のてっぺんに座った観客にもきちんと届く台詞と芝居。歌舞伎にリアリズムを求めないように、大劇場芝居にも独特の様式が存在することを思い知らされました。そういえば、東宝劇場は宝塚歌劇専門になってしまったし、コマ劇場は閉館、帝劇はミュージカルが主流となり、今や大劇場での大衆演劇は明治座が一貫して頑張ってはいるものの、その伝統を受け継ぐ小屋も人材もなくなりつつあるんですよね。最後のカーテンコール専用の衣装まで用意しても許される数少ない女優の芸に、観客一同ひれ伏せたのでした(もとい、スタンディングでした)。主役しか演じたことのない人は凄い!! 自分よりも背の高い男優が相手役にもかかわらず、時に彼らよりも大きく見えるのですから大したもんです。

 物語は、ツレ組「coco」の前編。子供時代から、カムバックに至るまでの彼女の生きざまが描かれています。ガブリエル・シャネルはいかにしてココ・シャネルとなったのか、の物語。ライターのエドワールがシャネルの過去をインタビューする形式ゆえ、相手役が若かろうが、妹役とは親子ほど年が離れていようが、まったく問題ありません。シャネルはシャネル。そして、彼女と関係する人たちは、みなシャネルの思い出なのですから。

 ところで、今回の公演「ストレート・プレイ」扱いなのですが、意外や意外、挿入歌が多く、ラブシーンで、盛り上げ場面で、かなりシャネルが歌ってます。アーサー・カペル:今井翼は初めて接する役者ですが、ジャニーズ所属と聞いてイメージしていたものとは異なり、かなり良い声。歴代ジャニーズ・スターで(ってみんなを知ってるわけじゃないけれど)一番響く声の持ち主かもしれません。大劇場芝居にしてはサラサラとしゃべる台詞回しですが(よって、大地真央との芝居のテンポは今ひとつ噛み合わず)、口跡が良いので非常に台詞が聞きとりやすいのと、座長芝居ならではの独特の芝居のテンポにもしっかり乗っかって、大地真央を相手に、大人の男を演じたのが素晴らしい! 歌がなければもっと良かった。声が良いので、音域によってはナカナカ聴かせるけれど、大きなフレーズが歌えない&高音は音を抜いて逃げてしまうので、正直「とっても下手」なんです。が、この人はちゃんと声楽指導を受ければ、とっても素敵な歌役者になれるハズ。ぜひぜひ、今後のキャリアのためにも、修行をしてくだされ。年齢的にもまだまだ上手くなりうる人ですもの。今のままでは勿体ない!!

 アドリエンヌ:彩輝なおはすっかり性転換が完了。お約束として「男役調の台詞」を求められる場面はあれども、全然お笑いにならない程、すんなり女優さん。成功したシャネルを縁の下で支え、パリのメゾンでキビキビ働く姿の美しい事と言ったら! 大地真央といい、彩輝なおといい、元・娘役のアントワネット:華城季帆を凌駕する女っぷりに惚れ惚れ、大人の女性の魅力に満ちてます。でも、二人とも、大した見せ場はありませぬ。ま、大地真央座長公演ですからねぇ。。。その他の役者はアンサンブルとして、上記のメイン役以外にもいくつかチョイ役で登場するのですが、正直印象の強い人は見当たりませぬ。みなさんしっかりお芝居していて、まったく不満はありませんが「主役として生きる人」と「アンサンブルどまりの人」との歴然たる差を見せつけられます。その残酷なまでの位取りが、座長とシャネルの共通点として浮かび上がり、なんとも面白いお芝居です。身分の差、貧富の差の不平等に不満を抱いて、トップ・デザイナーの地位を築いたシャネルですが、その思想と、実際の彼女の生きざまとの対比が興味深いです。

 上演時間は長いし、上演形態は時代がかっているし、正直「段取りの悪い舞台だな」ではあるのですが、一場面一場面を丁寧に確認していくような大芝居。もしかしたら、とても貴重なものを観てきたのかもしれません。落ち着きの悪さを感じる場面はあっても、眠くなるなんてことは無縁で、最後まで面白楽しく観てきました。