観劇日記〜2009年08月〜
09日(日) 12:00 来日カンパニー「WEST SIDE STORY」 オーチャードホール
13日(木) 22:05 映画「そんな彼なら捨てちゃえば?」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
15日(土) 18:00 来日カンパニー「コーラスライン  A CHORUS LINE」 オーチャードホール
18日(火) 18:30 宝塚歌劇団星組「太王四神記 Ver.II」 東京宝塚劇場
28日(金) 19:00 来日カンパニー「RENT」 赤坂ACTシアター
30日(日) 12:00 梅田芸術劇場「AIDA」 東京国際フォーラム ホールC


2009年08月09日(日)12:00-14:40
来日カンパニー「WEST SIDE STORY」@オーチャードホール

 B席 10000円 2階-7列-19番 (パンフレット:2000円)

 演出:ジョーイ・マクリーニー

 トニー:スコット・サスマン
 マリア:アン・エウォルト
 アニタ:オネイカ・フィリップス
 ベルナルド:エマニュエル・デ・ヘスース
 リフ:アレックス・ストール

 初日のつもりだったのですが、会場に足を運んでみたら千秋楽。25歳以下限定のキャストは、そりゃもう若者のエネルギーに満ちてました。大人が演じる若者の魅力もあるけれど、経験ではなく勢いでつっぱしることのできるキャストたちによる、頭に血が上ってしまう少年たちの物語は実に説得力があります。

トニーの歌唱力はテクニック的には安定せず、オペラティックに響く声や、地声を押し出す声が音符ごとに異なり、正直落ち着きが悪くて僕好みではないのですが、そんなテクニックはさておき、情熱的に「マリ〜ア♪」と、カレーラス版の高音をロングトーンで決めるやつを披露されれば、そりゃ大拍手にはなりますわな。元ヤンキーの長で、頭に血がすぐのぼってしまうトニーという役にはピッタリ。思えば、トニー役ってちょっとインテリタイプの人が演じる事が多かったように思うけれど、真面目に働くことにしたものの、ボロが出てしまう男の子の話なんですよね。あまり頭の回転は良くなさそうな役ですし、なまじテクニックにガッチガチになるよりも、スコーンと勢いで歌ってくれた方が役にフィットするってもんです。

 マリアは非常に小柄。そして細い声。「なんだか、宝塚の娘役みたいだなぁ」というのが第一印象。聴かせどころの多い役だけれど、寄り添うタイプの子なので、歌のスケールはダウン。そんな頼りない子が、トニーの死をきっかけに、恐いもの知らずにドスを聴かせて怒鳴りまくるシーンはとても衝撃的。可愛い良い子の子供が、憎しみを知ることによって成長する、という過程はしばしば語られますが、自分の欲望だけでフワフワしていた女の子が、誰か(今回はトニーですね)のために怒り、絶望し、説教をたれる。たった一日の出来事ですが、何たる変化でしょう。この作品の続編はありませんが、例えば、トニーとの子供がお腹に宿っていたらと想像すると(ありうるでしょ?)、血筋がモノ言う、イタリア的肝っ玉母さんになるんだろうな、と容易に想像がつきます。

 と、イタリア系が出てきましたが、ポーランド系、プエルトリカンなど、民族による勢いやリズム感の違いを、セリフではなく、身体表現で、体つきで、はたまた声質だけで表現できるのはアメリカのカンパニーならでは。逆に言うと、そんな土壌の地で作られるのがミュージカルであって、それを、日本で(一部外国人が参加することもありますが)単一民族で上演するとなると、そりゃ難しいわな、と。

 アニタのボン・キュン・バンのダイナミック・ボディからほとばしるパッション、ダンスの迫力、深々とした歌声でネットリと小節いっぱいにリズムを伸ばして歌い上げる歌唱だけでも別世界。テクニックで真似はできても、ソウルまでは無理ですもの。そして、TONIGHT♪をほとんど全員で歌い上げる場面で「見たかったら見なさいよい」と寝巻きの前面をおっぴろげて、おパンツ丸見えにしつつも堂々とした立ち姿。やらしくならずに色っぽさは感じさせるのはアッパレ。日本人だとやらしくなるか、色気なしかのどちらかでしょ。非常にスタイリッシュで大人びたお姉さんたちであっても、少女の香を漂わせるあたり「これはどう逆立ちしても日本人には無理っ」と脱帽にいたるわけです。

 これは、良い/悪いとかではなく、人種が違うのですから、かもし出すものが違うのは当たり前。これらを楽しむのが来日公演の楽しみの一つであって、日本版は逆に、これらを表現できないハンデをいかに克服し、逆に日本のカンパニーの特性を利用していかに感動を呼び起こすのか、というアダプテーションが、スタッフ・キャストの腕の見せ所となりますので、観る側は、たとえ同じ作品(時に同じ演出)であっても、頭を切り替える必要があります。切り替え上手は観劇上手。……僕はまだまだですけど。

 演出は数年前のスカラ座版と一緒です。立ち誇る高層ビルの非常階段が、まるで、差別と争いから逃れられない少年たちの心を象徴しているかのようで、圧迫感を発揮。舞台の進行に応じて、その装置が広がったり、はけたり。WSSは基本的にどの公演も同じ演出ではありますが、装置一つでガラリと印象が変わります。日本版ではお馴染み、高速下の金網のセットや、ブライダルショップ、ドクの店などもほとんど登場せず、観客の想像力にゆだねる美術です。その分、照明の変化に富んでいて、基本的に薄暗い照明の中で芝居がなされるのですが、一瞬にして真っ赤になったり、素明かりになったり、実に雄弁。見慣れた作品であっても、アプローチ如何によって、新たな発見があるのが面白いですね。


2009年08月13日(木)22:05-24:25
映画「そんな彼なら捨てちゃえば?」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ SCREEN9

 全席指定 レイトショー 1200円 H列- 番 (パンフレット:600円)

 監督:ケン・クワビス

 ニール:ベン・アフレック
 ベス:ジェニファー・アニストン
 メアリー:ドリュー・バリモア
 ジャニーン:ジェニファー・コネリー
 コナー:ケビン・コノリー
 ベン:ブラッドリー・クーパー
 ジジ:ジェニファー・グッドウィン
 アンナ:スカーレット・ヨハンソン
 ケン:クリス・クリストファーソン
 アレックス:ジャスティン・ロング

 「セックス・アンド・ザ・シティ」の脚本スタッフによる同名ベストセラーを映画化した恋愛群像劇。20代から30代の男女が織り成すさまざまな恋模様をコメディータッチで描く。……小さな頃から「男の子はアナタのことが好きだからいじめるのよ」と言われて育てられたジジ。大人になっても忙しいのよ」「それでも結婚してハッピーになった友達がいるわ」と、ポジティブな(?)アドバイスをしてくれる友人に囲まれ、いまだに恋に恋する夢子ちゃん。友達の紹介でデートしたケヴィンがいつまで待っても電話してくれなくても「忙しくて、電話出来ないのよ」「照れているのよ」と相変わらずポジティブすぎなアドバイスに希望を持つ。でも、バーテンのアレックスの「電話が来ないのは、彼が君に興味がないから」という言葉で目が覚めたジジは、男性との出会いがある度にアレックスにアドバイスを求めるようになっていく…。

 二時間以上に及ぶガールズトーク。ダメ男がテーマというのは良いんだけど、この手の話は飲み会トークの方がよっぽど面白いことを再認識。 配役は豪華なんだけれど、突っ込むのも、突っ込まれるのも生ぬるいったらありゃしない(;`皿´) スターに気を遣いすぎちゃったんですかねぇ。各スターに見せ場を作りすぎて、上映時間だけ長くなったものの、中だるみしまくりの仕上がりになってしまいました。台本も演出も、もっとbitchでbitchでbitchじゃなくちゃ!


2009年08月15日(土)18:00-20:10
来日カンパニー「コーラスライン  A CHORUS LINE」@オーチャードホール

 S席 12500円 2階-7列-番 (パンフレット:2000円)

 演出:マイケル・ベネット

 コニー:ライザ・B・ドミンゴ
 ポール:ジョーイー・ダディング
 シーラ:エミリー・フレッチャー→
 ザック:マイケル・グルーバー
 キャシー:ロビン・ハーダー

 来日公演ならではの強さを発揮のプロダクション。出演者一同がラインに居並ぶだけで観客に訴えるものがあるんですもの。セリフで説明されなくても、一目瞭然。つまり、人種による損得、そしてそれに伴う差別がクッキリ。どんなに上手に踊る人よりも、華やかな役者(人種)に目が行ってしまうのは、理性ではなく、本能的なもの。そんなハンデにいかに対応すべきか、運命の中でいかに存在すべきか、そんな生き様が描かれるのが多国籍版ならではの見所。単に「役を獲得する」ための戦いではなく「人種間格差に対抗する」戦いでもあるわけで、そりゃ、勢いも迫力も違ってくるというもの。

 日本版は「情感」面にフォーカスしていて、あれはあれで日本人だけで演じるにあたって、上手い潤色がなされていたんだなと再認識。「愛した日々に悔いはない」が涙・涙のシーンになるか、「WHAT I DID FOR LOVE」が決意表明の涙を引っ込めるシーンになるか、クライマックスのもって行き方が異なりますもの。いずれにせよ、カンパニーの特性を考えが素晴らしい演出だと思うけれど、NYのブロードウェイを扱ったこの作品、やはり、ドライでクールで、いざオーディションに落ちたとしても「さ、ビールを飲みに行こう!」と強がってサバサバしていてこそNY流。オーディションには真剣に向かいあうけれど、過ぎたことをいちいち気に病んでいたら、競争社会を生き残れません!

 そんなわけで、キャストはバラバラです。でも、全員がバラバラゆえに、それらが混ざり合って一つのものが出来上がる面白さがありました。それぞれが強烈に「個性」を前面に打ち出すので、バランスが取れているんですね。「あぁ、多民族国家はこうしてまとまるのか」と、ここでまた感嘆。たかがミュージカル、されど、お国柄はかなり色濃く出てきます。これは、翻訳上演ではわからないこと。

 最後に……劇団四季では、なぜかカラオケ(&一部クチパク)で上演される「コーラスライン」ですが、やはりオーケストラで演奏されると、響きが違います。「シンセサイザー多用&大音量」でまるで映画を見ているかのようなカラオケと違い、オーチャードホールの音響を活かし「アコースティック楽器を多用した生演奏」では、空気の振動や臨場感が違います。よって、スタジオ録音のように、どのパートでもクリアに聞こえるのではなく、パートによっては聞き取りにくかったりもするのですが、これこそライブ! そして、最近のやたらと急こう配で、二階席といえども、真下を見下ろすような視界ではなく、適度に空間があって、舞台に対する観客の目線角度が自然なのも嬉しい限り。音響や、視界を考えると、やたら二階席をせり出せば良いってものじゃないことがわかります。新・東宝劇場といい、四季系の劇場といい、最近は「心地良く観劇する」ということがないがしろになされている気がします。オーチャードは多目的ホールだけれども、観劇における心地良さは専門劇場に比べて段違い!



2009年08月18日(火)18:30-21:30
宝塚歌劇団星組「太王四神記 Ver.II」@東京宝塚劇場

 当日B席 2500円 2階-16列-11番 (パンフレット:1000円)

 演出:小池修一郎

 タムドク 柚希 礼音
 キハ 夢咲 ねね
 ヨン・ホゲ 凰稀 かなめ
 ヤン王 一樹 千尋(専科)
 ヨン・ガリョ 磯野 千尋(専科)
 ソスリム王/ヒョンゴ 英真 なお
 大神官 万里 柚美
 フッケ将軍 にしき 愛
 チョ・ジュド 美稀 千種
 トラジ 百花 沙里
 プルキル(大長老) 涼 紫央
 ファーヨム 毬乃 ゆい
 パソン 琴 まりえ
 チョク・ファン 美城 れん
 ソノ部族長 天霧 真世
 ファーヨム 梅園 紗千
 コ将軍 彩海 早矢
 ファーヨム 花愛 瑞穂
 セーム 華美 ゆうか
 カグン将軍 天緒 圭花
 ムーニョ/メファ
 イルス 鶴美 舞夕
 サリャン 夢乃 聖夏
 チャンミ 純花 まりい
 スンノ部族長 水輝 涼
 タルビ 妃咲 せあら
 チュムチ 紅 ゆずる
 カンノ部族長 碧海 りま
 セドル 壱城 あずさ
 スジニ 美弥 るりか
 カクダン 蒼乃 夕妃
 ヒョンミョン 如月 蓮
 副神官/モラン 白妙 なつ
 ポッコッ 南風 里名
 チュモン 直樹 じゅん
 ナリ 稀鳥 まりや
 クカ 音波 みのり
 チョロ 真風 涼帆
 モンニョン 水瀬 千秋
 スリョン 夢妃 杏瑠

 昼休みに日比谷までテクテク歩いて当日券を購入。今日を逃すと都合がつかない綱渡りスケジュールな割に、ノンビリしてます。おまけに配役も評判もノーチェック。「安心と信頼」なのか「惰性と興味なし」なのかは……o(`▽´)o

 例えば「エリザベート」だと、微調整はあれども、どの組も基本的に同じ演出ですが、今回の「太王四神記」は「Ver.II」とうたっているだけあって「ベルサイユのばら」方式。ストーリーは同じで、見せ場については同じ場面を踏襲してはいるものの、組編成にあわせて新場面との差し替えなどがあるパターン。実は続編か何かかと思っていたので、ちょっとビックリ。座付き作者ならではの愛情をそこここに感じる公演でした。

 花組公演もトップ就任二作目の真飛聖が主演だったけれど、今回の星組公演はトップお披露目公演の柚希礼音が主演。でも、非常に若々しい印象を受けたのは、二番手の存在ゆえかもしれません。トップよりも上級生で、ベテラン風プンプンだった大空祐飛のポジションには、雪組で4番手(中堅どころの多い組なので、体感ポジションはも少し下?)だった凰稀 かなめが登場。どうなるんでしょう?と興味津津。パンフの写真は、アメリカのアニメに登場するアーモンドまなこのヒロインみたいですな。痩せすぎで、武将としての力強さや貫禄が感じられないのと、歌や芝居の拙さ、何よりも大芝居に慣れていない「押し出しの弱さ」で、ダブルトップみたいだった花組公演に対し、トップの一枚看板公演のような印象です。

 そして、前回公演にて中堅〜ベテランがごっそり退団した星組での、やたらと役が多い公演とあって、正直「アンタ、誰?」な生徒が多かったのも事実。若さを活かしたダンス場面は元気いっぱいでしたが、スターの魅力についてはまだまだ未知数。二番手以下が若手だらけ、というのは昭和の宝塚歌劇団の特徴でしたが、それをカバーする脇役陣が今の星組ではコマ不足。大河ドラマのダイジェスト版なので、短い場面で人生を、時代を感じさせることの難しさを感じました。たまたまこの公演は映画用の収録日だったのですが、ヨン様ファンの方や、韓国の方にはどう見えるのか、興味深いです。

 柚希礼音は座長として懸命に舞台を引っ張ってました。トップお披露目でこの出来はお見事。夢咲ねねは、長身で見栄えは良いのだけれど、まだ余裕がなく、さらなる押し出しが欲しいところ。星組の女王としては、登場するだけで一同がひれ伏すような、さらなる位取りで君臨していただきたいな、と。この組では早くレビューが見たい!!!


2009年08月28日(金)18:30-21:40
来日カンパニー「RENT」@赤坂ACTシアター

 S席 12500円 1階-S列-12番 (パンフレット:2000円)

 演出:ジョーイ・マクリーニー

 ロジャー:Adam Pascal
 マーク:Anthony Rapp
 トム・コリンズ:Michael McElroy
 ベニ― :Jacques C. Smith
 ジョアンヌ:Haneefah Wood
 エンジェル:Justin Johnston
 ミミ:Lexi Lawson
 モーリーン:Nicolette Hart

 マークの母ほか:Tracy McDowell
 Mr.Jeffersonほか:John Watson
 Mrs. Jeffersonほか:Gwen Stewart
 Gordon:Adam Helpin
 Steve:Telly Leung
 Paul:Andy Senor
 Alexi Darling、ダンス・キャプテン:高良結香

 オリジナル・キャストのアダム・パスカルとアンソニー・ラップが出演というのが売り。「この役はこう歌い演じるんだよ」という絶対的な自信に満ちた公演で、トップ2だけでなく、カンパニー全体が頑張る、頑張る。この夏は三つのブロードウェイ・ミュージカルの来日公演があるけれど、珍しく(!)どのカンパニーもレベルが高くて満足。

 赤坂ACTシアターは、駅からのアクセスは良いんだけど、ロビーは狭いし、やたらと威張っているスタッフは感じが悪い&仕事できないし、音響が良いわけでもないので大嫌いなんですが、そのフラストレーションが、この作品には合ってたかも。舞台も客席も爆発しました。快感。

 キャスト全体のレベルが高く(トム・コリンズは声質が軽く低音が響かないので個人的な趣味ではないけれど、悪くはない)、黒人というコンプレックスを勉強とアグレッシヴさではねのけているジョアンヌは、白人で美人な子を恋人にしようとするあたりにもコンプレックスが感じられます。WSSではないけれど、貧民人種としての生活を抜け出そうと、ハイソサエティ・ライフに無理やり馴染もうとするものの、お育ちがついつい出てしまうベニー。あるがままの自分を受け入れることの難しさと強さを周囲に示すエンジェル。今回は「彼女のオリジナルの服が、翌年にはGAPで売られてるんだよ」という表現がカットされてましたが、これはGAPがもう古いってことなのか、それとも「うちは盗作なんてしませんっ」とクレームがついたのか。。。Justin Johnstonは歌とダンスの両面に優れ、どちらもリズムの中で自在に泳いでいるのが印象的。ターンをクルクル回っちゃうのも「この衝動、抑えきれないんだもの」というのがアリアリ。歌とダンスの両面に秀でたエンジェル役者って今までなかっただけに、実に鮮やか。ミミは立派な声帯が伺える素晴らしい声を駆使し、ドラマティックな歌唱。パワー一辺倒ではなく、時にささやき、時に張り上げる、緩急自在な素晴らしい歌唱力。

 「コーラスライン」で名をあげ、エッセイも出版するという高良結香は、同時期に来日中の「コーラスライン」のコニー役を蹴って、「レント」のアンサンブルで出演。大した見せ場はないんだけれど、舞台の奥で、上方で、常にパワフルに踊りまくり。小柄で太めで、かなり役を選ぶタイプの人だと思うけれど、逆にいうと、他に彼女のようなタイプの役者がいないので、目立てるという面では強みですね。今回は、体格・体型の違いが目立ち、必要以上に目が行っちゃったきらいもありますが、日本人女優が、ブロードウェイ・メンバーに加わり活躍している姿を拝見するのは心地良いものがあります。


2009年08月30日(日)12:00-14:50
梅田芸術劇場「AIDA」@東京国際フォーラム ホールC

 A席 8000円 3階-3列-27番 (パンフレット:1500円)

 演出:木村信司

 アイーダ:安蘭けい
 ラダメス:伊礼彼方
 アムネリス:ANZA
 ファラオ:光枝明彦
 アモナスロ:沢木順
 ウバルド:宮川浩
 神官:林アキラ

 宝塚歌劇を男性投入で上演という、なかなか珍しい形態の上演。男役の歌を歌うのは男性なんで自然……と思ったら大間違い。女声のみで歌われることを前提に作られる「宝塚歌劇」のナンバーは、1オクターブ下げて歌ったところで、一般の男性にとって、かなりキーが低くなるため、意外と声の厚みが期待程得られず。宝塚版では、低音を得意とする箙かおるが朗々と歌い上げたファラオのナンバーも、光枝明彦が歌いなれない低音に四苦八苦。これは、宝塚歌劇の特異性が透けて見えるという点で面白い試みでした。音として出せるのと、音として響かせることができるのとは大違い。

 では、今回の舞台の魅力はというと、エジプト兵がちゃんと裸だってこと。宝塚版は当たり前だけれど、灼熱の国の兵隊とは思えない程、重装備で、やたら着こんでいるのに対し、今回は肉体美で勝負。役者陣は全員、かなり体を作り上げています。立ち回りといい、筋肉を活かした動きといい「この作品は宝塚よりも男性が入ってこそより映えるんだ」と思いました。中でも、ラダメス:伊礼彼方はギリシャ彫刻を彷彿とさせる美しい肉体で、胸から二の腕にかけてのラインが見事でした。でも、売りはそれだけ。歌も芝居も下手っぴな人なので、盛り上げどころが盛り上がらないんですもの。宝塚版の湖月わたるも歌を苦手とするスターでしたが、それでも、サビの部分はしっかり声を張り上げ、見せ場では見得を切っていたのに、伊礼彼方はマッチョな肉体に反して息絶え絶え。男性ということをアピールするためか、やたら舞台上を暴れまくったのが、能力以上の動きゆえ、逆効果になっている印象。。。イッパイ、イッパイの歌・ダンス・台詞と三拍子が(悪い方向に)揃ってしまったので、大将軍には見えず。残念。

 国際フォーラムはセリも盆もない小屋なので、演出はどう変更になるかと思いきや、まったくの新演出で仕切り直し。ピラミッド状の四角錐の装置が割れると、エジプトの宮殿になるという、なかなか工夫された装置が効果的で、タッパのある劇場機構を活かしてました。出演者の数は宝塚版の1/2以下に減ってはいるけれど、立体的な配置と、一人一人の声量で見事にカバー。アイーダの兄弟たちはウバルド:宮川浩一人に集約など、微調整もされていますが、劇団という組織ではなく、一期一会の真剣勝負な外部の舞台とあって、出演者一同の役に対する意気込み、存在感が鋭く、それぞれの役の立場がスッキリ。また見せ場が集結することにより、作品としてもスッキリ。出演者多数&スターのクラスに合わせた演出、スター育成のための隠し技が求められる「宝塚歌劇」の特徴を逆描写。脚本・演出:木村信司は、宝塚歌劇団の座付きですが、自らの特異性をきっちり意識し、外部でのミュージカルとして、見事に作り替えたのはお見事。さすが、留学組。あれこれ舞台をご覧になってるな、と思う処理もそこここに。

 アイーダ:安蘭けいは宝塚歌劇団退団後第一作とはいえ、宝塚時代に娘役として演じた当たり役なので、仕上がりについては想像通り。男優相手ゆえか、強い眼力を活かしまくりかなり強さをアピール。それでいて、エチオピア王女と恋する女の間を行ったり来たりする女心の表現が印象的で、政治色よりも恋愛色を強く打ち出していました。やはり、女性相手と男性相手だと同じ役者でもかなり味わいが変わってきます。それにしても、見事な性転換ぶりです。宝塚の中でも、小柄で女性的特徴の強いスターでしたが(芸風はガッチリしてましたけど)、大柄な男性の中ではかなり華奢で小柄に見えるので、今後の活躍に期待。歌声はかなり宝塚調で(ま、宝塚歌劇を上演なので、間違ってはないんですが)、星組公演では話題だったソプラノも「あれ、響かないなぁ」でしたので、今後は声量が課題でしょうか。今後も歌を売りにするのであれば、かなり思い切ったヴォイス・トレーニングが必要かと。それでも、地声で(というか男役の声で)歌い上げる鋭さ、強さはなかなか聞きごたえがあります。

 アムネリス:ANZAは、ファラオの娘というオフィシャルな強さと、「避けられてるかもという予感、それとなく、それとなく感じてた」と中島みゆきの世界を生きる女の弱さの行き来があいまいで、緩急自在な安蘭アイーダの前に、完全に貫禄負け。ファラオが暗殺された後、国を背負って立つにふさわしい、求心力・位取りが今の彼女では無理。アムネリスは、オペラでも、ミュージカルでも、実質上の主役として、物語を動かす大役ですが、残念ながら役の大きさに押しつぶされちゃった模様。そして、せっかくの美貌も、似合わない衣装で帳消し。これは、着こなせない彼女に問題アリなのか、ケッタイな衣装をこしらえたデザイナーに問題アリなのか。。。悪くはない女優なんですが、いっそのこと、春野寿美礼が安蘭けいの対抗馬として登場した方が、張り合い具合といい、ライバル関係といい、拮抗した舞台になったのではないかと(と、書きつつ、このカップリングで観たいかというと、かなり微妙。自爆)。