観劇日記〜2009年09月〜
01日(火) 18:30 東宝「ブラッド・ブラザーズ」
(藤岡×田代×金)
シアター・クリエ
02日(水) 18:00 松竹「ジェーン・エア」初日 日生劇場
08日(火) 18:30 宝塚歌劇団宙組「逆転裁判2」 赤坂ACTシアター
09日(水) 18:00 ミラノ・スカラ座「ヴェルディ:アイーダ」 NHKホール
20日(日) 16:30 歌舞伎座さよなら公演 九月大歌舞伎
 「浮世柄比翼稲妻」
 「歌舞伎十八番の内 勧進帳」
 「松竹梅湯島掛額」
歌舞伎座
29日(火) 18:30 新国立劇場オペラ「ヴェルディ:オテロ」 新国立劇場オペラパレス


2009年09月01日(火)18:30-21:20
東宝「ブラッド・ブラザーズ」@シアタークリエ

 S席 11000円 16列-14番 (パンフレット:1500円)

 演出:ジョーイ・マクリーニー

 ミッキー:藤岡正明
 エディ:田代万里生
 リンダ:鈴木亜美
 ミセス・ジョンストン:金志賢
 ミセス・ライオンズ:久世星佳
 ミスター・ライオンズ:金澤博
 サミー:伊藤明賢
 ナレーター:下村尊則

 池袋はサンシャイン劇場のイメージが強い作品ですが(あ、ジャニーズの公演もありましたっけ)、日比谷のシアタークリエに場所を移しての公演。松竹→東宝という珍しいプロダクション移行ゆえ、歌詞全取り替え。お馴染みのものが頭をリフレインするので参った〜。若い頃の観劇はすぐに歌詞を覚えられたんだけどなぁ。。。ピアノの指使いじゃないけれど、体に入ったものの入れ換えは困難を極めます。

 ストーリーはお馴染み「アンタ達は実は兄弟なんだよ」で、オペラ「イル・トロヴァトーレ」、宝塚歌劇「悲しみのコルドバ」、百恵ちゃんのテレビドラマ「赤い疑惑」(古い?)とほぼ同じです。母親達と子供達のどちらかに比重が置かれる他作品に対して、ミュージカル版は両方がほぼ対等。

 痛いまでに直球のミセス・ジョンストン:金志賢、マダム臭プンプンのミセス・ライオンズ:久世星佳、いつも七五三なエディ:田代万里生、ガキ大将のミッキー:藤岡正明と、役者のキャラも揃い、ウェストエンド物にしては、なかなか説得力がありました。日本のプロダクションにしては階級感が出たのは珍しいこと。ま、セレブ組はオペラ一家&元ジェンヌですもんね。

 中でも、ミセス・ライオンズ:久世星佳が、大ナンバーのない役にも関わらず、自ら提案した「双子の一人を引き取り」にもかかわらず、罪の意識と妄想にさいなまれて、人格がどんどん壊れていく過程を壮絶に演じて、実質的な主役となったのは、その演技力ゆえ。凄いものを見せてもらいました。

 それぞれが個性や演技力を活かして、役を生きている中、一人だけ固かったのがナレーター:下村尊則。台詞も歌も四季の癖が出過ぎ。「潰しがきかない」と叩かれる(いえ、誰からとは申しませんが)のもむべなるかなな出来。台詞のキャッチボールではなく、打ちっぱなし。浮きまくりでした(-"-;)


2009年09月02日(水)18:00-20:45
松竹「ジェーン・エア」初日@日生劇場

 S席 12600円 グランドサークル-B列-55番 (パンフレット:1500円)

 演出:ジョン・ケアード
 ジェーン・エア:松たか子
 ロチェスター:橋本さとし
 ブランチ・イングラム:幸田浩子
 フェアファックス夫人:寿ひずる
 スキャチャード:旺なつき
 リード夫人:伊東弘美
 ジェーンの母:山崎直子
 シンジュン:小西遼生
 メイソン:福井貴一
 ブロクルハースト:壤晴彦
 ジェーン(10歳):佐藤瑠花
 アデール:加藤ゆらら
 ジョン・リード:横田剛基

 どうも「ヒースクリフ」と「ロチェスター」とがゴッチャになる傾向があるんです。ついでに言うと、1月に再演される「ウーマン・イン・ホワイト」や春に再演される「レベッカ」も。

 どれも、草生い茂るヨーロッパの田舎で繰り広げられる、一見粗野な(実はガラスの心臓の)主人と、身分違いの若い女、そして、ミステリアスなマッド女性の三角関係……ね、混乱してきたでしょ(=゜-゜)(=。_。)

 ここしばらく、声量自慢、ノド自慢作品ばかりを観ていたので、久しぶりの役者歌は「遠くで響いているなぁ」な印象でしたが、歌手の歌とは違う芝居歌に、涼やかな後味を感じました。秋の訪れを感じる作品です。上演月にフィットしてます。


2009年09月08日(火)18:30-21:05
宝塚歌劇団宙組「逆転裁判2」@赤坂ACTシアター

 S席 7500円 1階-S列-37番 (パンフレット:600円)

 演出:鈴木圭

 フェニックス・ライト 蘭寿 とむ
 ローズ・アレイア 光 あけみ(専科)
 ロッタ・ハート 美風 舞良
 マイルズ・エッジワース 悠未 ひろ
 裁判長 風莉 じん
 ディック・ガムシュー 春風 弥里
 ルーチェ・アレイア 純矢 ちとせ
 ローランド・スミス 七海 ひろき
 メアリー・ウェーバー 美影 凜
 ルード・ベス 光海 舞人
 フランジスカ・ヴォン・カルマ 藤咲 えり
 マヤ・フェイ すみれ乃 麗


 二月公演が好評につき、続編が早くも登場。ゲームやアニメって男の子の声を女性の声優さんが演じることが多いし、また、ジェンダーレスな人物も多いので、少女歌劇(一部おばちゃん歌劇)にはピッタリの題材ですね。

 ナルシストな検事さん、SMの女王様な娘役、コッテコテな大阪のおばちゃん、頼りない警部さんなど、登場人物にステレオタイプが多く、役をかなり作りこむのを役者が楽しんでいるのが伝わり、思わずプププ。非現実世界を演じるのがここまでサマになる劇団もありますまい。

 出演者一同が、ヒット作品の続編ということで、自信に満ちていること、観客も気持ち良く盛り上げ、ノリノリの舞台となりました。二月では「ゲームを舞台化」という面に力が入っていた印象ですが、今回は「芝居」面に力が入っていました。設定は相変わらず突っ込みまくりで面白いけれど、宝塚歌劇として見事に消化されていました。恐ろしい劇団です。


2009年09月09日(水)18:00-21:45
ミラノ・スカラ座「ヴェルディ:アイーダ」@NHKホール

 F席 15000円 3階-C13列-19番 (パンフレット:3000円)

 演出:フランコ・ゼッフィレッリ
 指揮:ダニエル・バレンボイム
 管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団

 エジプト王:カルロ・チーニ
 アムネリス:アンナ・スミルノヴァ
 アイーダ:マリア・ホセ・シーリ
 ラダメス:スチュアート・ニール
 ランフィス:ジョルジョ・ジュゼッピーニ
 アモナスロ:ホアン・ポンス
 使者:アントネッロ・チェロン
 巫女:サエ・キュン・リム

 かなり配役変更があったけれど、大本山の貫禄。どの役も素晴らしい声♪ 小錦のような歌手(代役です)によるエジプトの将軍は、さすがにここまでデブは声のためという言い訳以前とパンフレットをめくれば、おデブの国アメリカの歌手。あ、納得f^_^; でもオペラの七不思議で、声だけ聴いてりゃ凛々しい武将に思えてくる〜〜〜。

 が、いかんせん放送局の多目的ホール。装置もツアー用で、終幕は、裁判の行われていた装置がせり上がり、床下から地下牢が登場、というのが見せ場であり、芝居の説得力としてもあったのに、(劇場としての舞台機構が整ってないので仕方ないんだけど)、いきなり舞台上に巨大な箱がドンッですよ。牢獄の場面では、その箱が開くだけって、舞台全面のセリはなくとも、大セリ小ゼりを使用して、も少し何とかならないもんでしょうかね。

 心配されていた音響ですが、広すぎて、空間に音が充満しないのでスッカスカ。これはかなり歌いにくいのではないでしょうか。声と声とがブレンドされないので、各パートは良く聞き分けられるけれど、ハーモニーは楽しめず。やっぱり現地、せめて会場が東京文化だったらさぞかし、と悔し涙を流しました。だだっぴろいだけで高級感も趣もないし……小屋って大切。

 それにしても、上演時間が延びるって良くあるけれど、上演時間が縮まるのも珍しい。。。


2009年09月20日(日)16:30-20:55
歌舞伎座さよなら公演 九月大歌舞伎
 「浮世柄比翼稲妻」
 「歌舞伎十八番の内 勧進帳」
 「松竹梅湯島掛額」
@歌舞伎座

 3階A 4200円 3階-6列-8番 (パンフレット:1200円)

一、浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)
  「鞘當」
   不破伴左衛門:松緑
   名古屋山三:染五郎
   茶屋女お京:芝雀
  「鈴ヶ森」
   幡随院長兵衛:吉右衛門
   飛脚早助:家橘
   北海の熊六:桂三
   東海の勘蔵:由次郎
   白井権八:梅玉

二、七代目松本幸四郎没後六十年
  歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
   武蔵坊弁慶:幸四郎
   源義経:染五郎
   亀井六郎:友右衛門
   片岡八郎:高麗蔵
   駿河次郎:松江
   常陸坊海尊:錦吾
   富樫左衛門:吉右衛門

三、松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)
  「吉祥院お土砂」
  「櫓のお七」
   紅屋長兵衛:吉右衛門
   八百屋お七:福助
   小姓吉三郎:錦之助
   丁稚長太:玉太郎
   下女お杉:歌江
   長沼六郎:桂三
   月和上人:由次郎
   若党十内:歌昇
   釜屋武兵衛:歌六
   母おたけ:東蔵

 マチネのチケットも別日程で抑えていたのですが、は引っ越しと重なったので、ソワレのみ観賞。開演30分前に劇場前で待ち合わせしたのですが、東銀座の狭い歩道は人・人・人。すわっ公演中止か何かか?と焦ったら、その逆で、マチネがまだ終わらないんだとか。とにかく、ソワレ開演15分前になってマチネが終演。ここからは戦場。客出しが終わらないうちに客入れ開始。入場したら筋書き売り場を無視して食事の手配→もの凄い勢いで「売り切れ」の札が貼られて行く中、ラストの二席を確保。ホッとする間もなく「あと五分で開演です!」のアナウンスに急かされて客席へ。  「鞘當」は三人の男が動きもせずにただセリフを言いあうだけ。 コンサート形式かいっ!この演目をカットして、ゆ〜〜〜ったり入れ替えしてくれたら良かったのに、と同行者と一緒にブーたれちゃいました。続く「鈴ヶ森」は「鞘當」との間をやたらとすっ飛ばしているので、登場人物もストーリーも繋がりがなく、まずは「???」でした。歌舞伎だもんね、ハイライト場面集だし、と開き直って舞台に集中、集中。こちらは「浮浪者がプロの殺し屋を強盗して返り討ちにあってしまった」というお話。顔面をスイカのようにぶった切ったり、腕や足が血だらけになってもげたりと、グロテスク三昧。歌舞伎ならではの手法なので、笑いは起きてたけれど……この作品好きじゃないあなぁ。

 「勧進帳」はたか子パパの弁慶が絶品。「待ってました!」「日本一!」の掛け声も納得。この人、仏頂面&口跡不明瞭なので、まじめなお芝居だと眠くなるんだけど、意外と豪快なダンスが似合うんですね。実は彼の弁慶はじめてだったんです。ミュージカルでもお馴染みの俳優ですが、こんなに激しくジャンプし、六方を踏み、見得を切り、とにもかくにも観ているうちにアドレナリン出まくり。個人的に彼のベスト・プレイ。

 「松竹梅湯島掛額」では、幸四郎に負けてなるものかと、そして、まじめ一本だと思っていた吉右衛門がこれまた絶品。ちゃらんぽらんな人物を豪快に気持ち良く演じて「ありえないでしょ」なストーリーを「しょうがないなぁ」と苦笑させちゃうエネルギーに満ちてて、スター芝居かくありきの求心力。ヒロインの福助は、年齢的なものか、性別不詳な声になりつつあり、そろそろ娘役は苦しいけれど、前半のコメディエンヌぶりと、後半の人形芝居ぶり(「CHICAGO」のクチバク場面を思い出します)のどちらも鮮やか。笑いは幸せを呼びます。

 最初の幕では、ハイライトシーンの継ぎはぎという歌舞伎ならではの上演形態で、まとまりも繋がりもない公演だったけれど、スターの勢いに丸めこまれた気分で、楽しく帰路に。


2009年09月29日(火)18:30-21:35
新国立劇場オペラ「ヴェルディ:オテロ」@新国立劇場オペラパレス

 C席 8400円 3階-L4列-3番 (パンフレット:1000円)

 指揮:リッカルド・フリッツァ
 演出:マリオ・マルトーネ
 東京フィルハーモニー交響楽団

 オテロ:ステファン・グールド
 デズデーモナ:タマール・イヴェーリ
 イアーゴ:ルチオ・ガッロ
 ロドヴィーコ:妻屋秀和
 カッシオ:ブラゴイ・ナコスキ
 エミーリア:森山京子
 ロデリーゴ:内山信吾
 モンターノ:久保田真澄

 オーケストラの怒涛の響きでいきなり開幕。幕が上がれば、キプロスの港町。海に続く運河あり、イタリア〜ンな建物あり(TDLのワールドバザールじゃないけれど、上方に行く程タッパが低くなり、また、遠近法を極端に使用した奥行き感など、実際の尺以上に大掛かりに見えました。また、照明が頑張っていて、素明かりだと「プール!?」になりがちな水張りセットが、時にロマンティックに、時にグロテスクに変化し、素晴らしい職人技。

 一方、歌手では、タイトルを「オテロ」から「イアーゴ」に変更した方が良いのでは?と思える程、イアー語が大活躍。すっかり主役の座を奪ってしまいました。オテロもイアーゴも、嫉妬心によって破滅に突き進むのですが、方や騙されるばかりのヒーロー、もう一方はあれこれ悪事を企む悪役。往々にしてお芝居の上では悪役が美味しいと言いますが、実に気持ち良さそうな悪役ぶりでした。惚れ惚れ。

 オテロのコンプレックスは黒人であることと教養がないこと。脳ミソまで筋肉なのは自覚があります。そんな自分に白人で美しくて若いデズデーモナが妻となってくれて幸せと同時に「ホントか?」という思いがぬぐえない。

 一方、イアーゴのコンプレックスは、人徳のなさ。オテロからは副官に任命されると思っていたのにその座はカッシオに。白人の自分をさておき、出世はするわ、美しい新妻を伴うわで、はらわたは煮えくり返るばかり。表面上はジェントルに、あたかも味方であるように振る舞いつつ、その言葉は常に二つの意味を持ち、疑念を抱かせることなく、ずるずると破滅の道へと引きずり込む悪人。シェイクスピアならではの言葉の遊びが冴えわたります。

 二つの顔を使い分けるイアーゴですもの、単純に騙され続けて理性を失っていくオテロとは面白さが段違いなのも納得でしょ!? 音楽面では単純明快で真っすぐなオテロはドラマティック・テノールの声で雄々しく張り上げるのに対し、イアーゴは様々な声色を使い分けるバリトンが勝負。高低の男性のバトルがこれまた緊張感を生み、凄い迫力。

 オテロは役の上では真っすぐで単純な人物ですが、ステファン・グールドも大味で、真横でルチオ・ガッロが名演を披露してるので、大根ぶりが際立ちます。が、寓話性の高い作品なだけに、その大根ぶりが役にフィットして、意外と悪くなかったんです。これは、キャスティングの妙ですね。それにしても、世界的にオペラ歌手もスタイリッシュになりつつある中、アメリカの歌手って、関取も真っ青なメタボの方が多いのはなぜなんでしょう。やっぱり食生活?? 歌のための巨体を通り越して、巨体なのに声それだけ?だったりすることも少なくありませんから。あ、グールドは良い声でしたよ。

 デズデモナはノルマ・ファンティーニの代役でタマール・イヴェーリ。彼女はヒット。ニコニコするだけで華はあるし「天使のような」と表現されるのも納得のデズデモナ像を存在だけで表現することに成功。華やかな美貌が、恐れや諦めに苛まれる過程が見事でした。オテロを愛しているのに、理由もなく責められ、殺される彼女。イアーゴのオテロへの憎悪の犠牲になった女性ではありますが、幸せぶりと不幸ぶりとのコントラストがあればあるほど、ワイドショー色が強くなるのが面白いです。「世界、衝撃の事件簿」にピッタリ。

 ガタイも声も芸風も大きなトリオがグイグイ舞台を引っ張るのであっという間に時間が過ぎ去る、素晴らしい公演でした。アンサンブルも押し並べて好演・好唱。ただ、日本人は顔の筋肉が動ず、表情がないので損してます。ロドヴィーコ:妻屋秀和は、相変わらず「ねずみ男(ミッキーではないっ!)」の風貌で、声が朗々と響くタイプでもないので、個人的には「なぜこんなに多用されるんだろう?」な人物なんです。彼の歌はいつも印象に残らない。。。悪目立ちすることもないので、これはこれで凄いんですけど、二枚看板でも良いので、別のタイプの歌手も出てきてほしいな、と。ま、これは好みの問題ですね。ファンの方はゴメンナサイ。