観劇日記〜2009年11月〜
03日(火・祝) 18:00 劇団スイセイ・ミュージカル「フットルース」プレビュー 東京芸術劇場中ホール
04日(水) 18:30 Kバレエカンパニー「ロミオとジュリエット」 東京文化会館
05日(木) 18:15 東宝「レ・ミゼラブル」 帝国劇場
10日(火) 18:15 東宝「レ・ミゼラブル」 帝国劇場
12日(木) 18:30 東宝「グレイ・ガーデンズ」 シアター・クリエ
14日(土) 16:00 宝塚歌劇団雪組「情熱のバルセロナ」「RIO DE BRAVO!!(リオ デ ブラボー)」 市川市文化会館
22日(日) 21:30 映画「イングロリアス・バスターズ」」---INGLOURIOUS BASTERDS--- TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン4


2009年11月03日(火・祝)18:00-20:45
劇団スイセイ・ミュージカル「フットルース」プレビュー@東京芸術劇場中ホール

 S席 9000円 1階-M列-28番 (パンフレット:2000円)

  演出 レン アリエル ウィラード ラスティ アーリーン ウェンディ・ジョー エセル ヴァイ ショウ
2001年
TBS
松原浩 坂本昌行 中澤裕子 秋山純 MaMi 石橋けい 服部奈都子 未唯 増田恵子 村井国夫
2002年
TBS
松原浩 坂本昌行 今井絵理子 秋山純 MaMi 高橋花衣 坪井美奈子 前田美波里 高畑淳子 村井国夫
2009年
スイセイ・ミュージカル
西田直木 植木豪 中村香織 吉田要士 星野真衣 佐藤亜美菜 福島桂子 麻倉未稀 川島なお美 川崎麻世

 プリンシパルのキャスト表には登場しませんが、アリエルの彼氏のトラヴィス役:KAZZはプロダクションをまたいで、上記三公演に出演しています。初演の段階で「高校生は苦しいでしょ。どう見たって保護者」と噂していたのですが(本人にも言いましたけどwww)、8年を経た今回の公演でも同役で登場。今回は東京公演だけで地方公演には同行しないそうですが、とりあえず、日本版トラヴィスはKAZZが独占状態。その間に相手役や共演者はどんどん若返り、今回は浮いてるどころか「訳ありで社会人入学した高校生?」に見えました。アリエルに迫るところなんて、アダルトな香りがプンプンで、すっかりエロ親父。ま、これはこれで楽しかったけれど。そして、フィナーレで出演者が歌い踊る中、KAZZだけ登場しないので「さっさと早退して、何か他の仕事でもあるんやろか?」と勝手にハードスケジュールを想像していたら、カーテンコールではすました顔で登場。なんだ、踊らないだけなのね、とこれまた大笑い。アダルトチームの面々も歌い踊っているのに何てことでしょう。また突っ込んでおかなくっちゃ。

 さて、スイセイ・ミュージカルの公演は、動員を睨んだであろうキャスティングがなされます。前回の「サウンド・オブ・ミュージック」ではペギー葉山でしたが、今回は洋楽カヴァーの女王・麻倉未稀が登場。さすがに、本編の中で「HERO!」と歌うことはありませんでしたが、フィナーレではしっかりシャウトまでして歌い上げてくれました。声量といい歌い回しといい、圧巻。ミュージカルとして、この扱いはどうかとは思いますが、観客としては、麻倉未稀にテーマ曲を歌ってもらってこそ来た甲斐があるってもんでしょ!?

 その他「ゴメンで済んだら警察いらない!」など、ベタな台詞が多かったのも、東京公演だけでなく、全国各地を回るという前提があってのことでしょう。なぜ、ここでこの言い回し?といった、細かなミュージカル・ファンならではの突っ込みは満載ですが「あ、きっとミュージカルが初めての人でも楽しめるように、ミュージカル・ナンバーやダンスだけでドラマが語られちゃうとついてこれないであろう人でも楽しめるように、苦心してるんだな」とほのぼのした気分に。こういう作りはアリだと思うんです。劇団の公演形態に合わせて作り変えてこそ新プロダクション。

 今日はプレビュー公演ということもあって、マイクが入らない(台詞の頭でなぜか毎回音を拾わないので、肝心な頭の部分が聞き取れないんです)事多々、バンドとキャストの歌が噛み合わないところも散在していて、いかにもプレビューというドキドキ感がライブならでは。バンドはまだこの作品に慣れてないのか、ビート感が悪く、キャストの面々も乗りにくそう。掛け合いの歌や、畳みかけるような音の重なりが全て平坦につぶれてしまい、まだ作品の(特に音楽面の)魅力が立ち上がらずじまい。これは、動員重視のキャスティングというのもあったかもしれません。川島なお美は「想像していたより良いじゃん」ですが舞台用の歌唱には程遠く、川崎麻世はミュージカルの出演経験は豊富なものの相変わらず発声が安定せず聞き苦しい歌唱、佐藤亜美菜はアンサンブルに溶け込むことなく、芝居も歌もハーモニーを壊してくれるし……と、なんだか苦言ズラリですね。。。でも、カンパニー全体が若々しく、技術よりも勢い重視で突っ走るあたり、この作品に合っていて、自由を求めてがむしゃらに大人たちに対抗する高校生たちの姿が新鮮でした。

 それにしても、福島桂子は実年齢に反して、学生役がいつまでも似合う方です。ちょっとキャラクターの偏りはありますが、その分安心して見られ、また、若手中心のカンパニーの中で作品の要所要所を締める素敵な存在です。こんな役者さんの存在は劇団にとっても、観客にとってもありがたいものです。



2009年11月04日(水)18:30-
Kバレエ カンパニー「ロミオとジュリエット」@東京文化会館

 C席 8000円 5階-2列-4番 (パンフレット:3000円)

 指揮:福田一雄
 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 ロミオ:熊川哲也
 ジュリエット:東野泰子
 マキューシオ:伊坂文月→浅田良和
 ティボルト:遅沢佑介
 ロザライン:浅川紫織
 ベンヴェーリオ:伊坂文月
 パリス:ニコライ・ヴィユウジャーニン
 キャピュレット卿:スチュアート・キャシディ
 キャピュレット夫人:ニコラ・ターナ
 乳母:樋口ゆり
 僧ロレンス:ブレンデン・ブラトーリック
 僧ジョン:小林由明

 

2009年11月10日(火)18:15-21:30
東宝「レ・ミゼラブル」@帝国劇場

 S席 13500円 1階-H列-8番 (パンフレット:1500円)

 演出:トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード

 バルジャン:別所哲也
 ジャベール:今拓哉
 エポニーヌ:知念里奈
 ファンテーヌ:山崎直子
 コゼット:菊地美香
 マリウス:山崎育三郎
 テナルディエ:三谷六九
 テナルディエ夫人:阿知波悟美
 アンジョルラス:松原剛志
 リトル・コゼット:田中愛生
 リトル・エポニーヌ:古口貴子
 ガブローシュ:田川颯眞

 いかにもロングランな公演でした。というのは、どの役も不満ではないけれど、傑出した役者もいないので、全体はまとまっているし、破たんはないんだけれど、感動も小さかったかなと。そういえば、今日のキャストはいわゆる「スター」不在(スターの定義については好みもありましょうが、大看板役者不在)だったので、歴史の大きなうねり、革命という大きなテーマを扱うには、役者が小粒でした。歌も芝居も熱気が感じられないんですもの。

 アンサンブルからプリンシパルへ、というのは出世コースではありますが、個人的には、最初からプリンシパルとしては使えなかった、何かが足りなかった人というイメージを持っています。舞台の中心が似合う人、スターオーラ抜群の人は、どんなに下手でもアンサンブルに入ると浮いてしまいますから。もちろん「レミゼ」は群像劇というとらえ方もありますので、アンサンブルの密度も大切ですが、それはあくまで、舞台中心の何人かが「何をやっても良いからね!」という自信と大きさを持っていてこそ商業演劇は成り立つのであって、正直、その他大勢に埋もれてしまう人が中心に立たれても、役の粒が立ちません。

 ありがたいことに、全員が脇役タイプ、職人タイプだったので、公演としてのバランスは取れていましたし、オーソドックス版、お手本版としては悪くない公演です。でも、帝劇公演とあらば、もっと心をわし掴みにされるような感動が欲しいんです。大劇場公演なんですから。今日のキャストは、もっと中小劇場ですとフィットするのではないかと。

 でもね、終演後「なんで白い服の女の人がいきなり出てきて主役の横に立つの?」って会話が聞こえてきて「あれはファンティーヌと言って、コゼットのママです!」と教えたかったんですが、確かに一幕の頭でさっさと神様に召されてしまうのですが、ここでどれだけ強烈な個性を残せるかがポイント!! 他の役もさにあらず。



2009年11月10日(火)18:15-21:20
東宝「レ・ミゼラブル」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-I列-51番 (パンフレット:1500円)

 演出:トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード

 バルジャン:橋本さとし
 ジャベール:今拓哉
 エポニーヌ:笹本玲奈
 ファンテーヌ:山崎直子
 コゼット:神田沙也加
 マリウス:泉見洋平
 テナルディエ:駒田一
 テナルディエ夫人:森公美子
 アンジョルラス:坂元健児
 リトル・コゼット:飯田汐音
 リトル・エポニーヌ:吉井乃歌
 ガブローシュ:田川颯眞

 前回が「最も地味なキャストが集まった日」の公演だとすれば、今日は「割と華やかなキャストが集まった日」の公演。もちろん、小粒な人もいまして「プリンシパルとは名ばかりでアンサンブルみたいな人だなぁ」というキャストもいらっしゃいますが。二階席から見ると、役者のスター性が良く分かりますね。歌や台詞も、劇場空間全体に響かせることのできる人と出来ない人の差は歴然。例えば、革命のヒーローは舞台上の役者同士のアンサンブルではなく、観客までも「アンタはヒーロー」と思わせるようでないと、いくら舞台が盛り上がっても、観客は置いてきぼり。最近の舞台は、内輪受けならぬ、内輪芝居が主流になっているような気がしてなりません。正直、玉石混合の最近のレミゼにおいては、帝劇の空間を埋められる人と埋められない人の格差が開いている気がします。

 バルジャン:橋本さとしは歌唱面では、いかにも無理して声を出しています、という苦しさがあるけれど、一番芝居に凝っているバルジャン。表情一つ、動き一つが実に細かく、音楽の中であれこれ芝居をしてます。が、それが帝劇サイズかというとそうでもないのが主役としての弱さかも。他の役の芝居が始まると忘れ去られてしまうバルジャン。勿体ないことです。橋本さとしの芸風だと、バルジャンよりもジャベールの方が面白いんじゃないかなぁ。暖かさがあまり出ない方なので。

 一方、ジャベール:今拓哉は便利に使われている役者ですが、この方もまた小細工で凝りすぎて、大劇場だとスケール感が伝わらない人。無表情なのと、マント裁きや動きが小さいこと、もごもごとこもった歌唱など、一つ一つは些細なことなのですが、どうしても人物の大きさが出てこず、バルジャンの対の存在として、ダブルトップ的な役にも関わらず、見せ場が決まらない恨みが残ります。「スターズ」は盛り上がらないままに歌が終わってしまい、何度かあるバルジャンとの対決場面では「出たー」という凄味がなく、自殺の場面では細かな芝居は良いけれど、スケールダウンにつながってしまい、一人だけ白いライトが当てられず、暗黒の渦の中に消えていく重々しさがないんです。どの場面も器用にこなすけれど、段取りを追っている人というイメージ。(ファンの人ゴメンナサイ)。でも、やっぱり、ダブルトップとして他の役を演じない唯一の役者の使命としては、スケール感って必要だと思います。カーテンコールでのバルジャンとの握手は「番手こそ違うけれど、我らはダブル主演」という握手だと思っているのですが、今日はなんだか白々しいな、と。

 エポニーヌ:笹本玲奈、マリウス:泉見洋平、テナルディエ:駒田一は安定期。傑出しているわけではないけれど、安心して見聞きできる人たち。みなさん、大声を張り上げているわけでないのに、しっかり歌を響かせて劇場内を自分たちの空気で染めることに成功。テナルディエ夫人:森公美子はちょっと遊びが過ぎる感じで、バルジャンがコゼットを引き取る際に「もしや、悪い人じゃないか♪」と口が過ぎてバルジャンがテーブルを引っくり返す際の「あぶねーな」や、コゼット披露宴での「金が、先だ〜っ!(このフレーズ、すっかりテナルディエ→テナルディエ夫人のパートになりましたね)」に続く「アッアアアーアーアー♪」のコロラチューラなど、個人的には許容範囲。この程度でガタガタ言うような主要キャストは、文句を言う以前に己のスケールの小ささを反省してください。ファンテーヌ:山崎直子は相変わらず存在感ナシ。バルジャンを「約束」で善の道から外れることができないようにしたキーパーソンであるにもかかわらず、前半の短い時間で強烈な印象を残さなくてはならない難役ですが、歌の作りも、存在感も小さすぎて、印象い残らない人。今回、二回とも彼女なのですが、全く個性が思い出せません。これって文句言われるよりも辛くない???

 数少ない新キャストの一人、コゼット:神田沙也加は怖い者知らずな芝居はナカナカで「意思の強いコゼット」として登場。新鮮です。が、覚悟していた通り、歌は厳しい。マリウス・コゼット・バルジャンの三重唱のラスト「夢ではないわ〜♪」では決めの音をしっかり外してくれて、物凄い不協和音。あまりお嬢さんっぽくないのも今ひとつ。でも、存在感はあるんですよね。親の七光ならぬ、親のDNA(言葉が出てこないけれど、言いたいことわかるでしょ!?!?)

 本日のブーイングはアンジョルラス:坂元健児。出演を重ねて、だれてます。声の張り上げ方、民衆への語りかけ、どれも台詞が流れちゃって迫力ナシ。どの場面も段取りを追っているだけで、客席無視のお約束芝居で、せっかくの声が宝の持ち腐れ。いかんせん小柄でどこにいるかわからない人なんだから、目いっぱい歌って芝居してくれないことには、帝劇では埋もれます。小柄というハンデはいまさらどうしようもないのだから、ここのところは諦めて、芸風でカバーしないと困ります。もっと出来る人なんだけどなぁ。

 と、個々に対してはあれこれ思うところがあるのですが、結局のところ「良い話だね」「良い曲だね」という思いで、暗い話にもかかわらず、幸せな気持ちで劇場を後にできるのがこの作品ならでは。そして、今回は宗教面で、個人的にプチ発見があちこちにあったのが嬉しい。何度見ても楽しめ、新たな発見がある作品って、やはり名作中の名作なんだな、と改めて思いました。でも、クワトロ・キャストが組まれているものの、「じゃ、四回観なくちゃ」という気分にならない今回のレミゼ。感動するでなく吼えるでなく。。。東宝っぽくなかったなぁ。



2009年11月12日(水)18:30-20:55
東宝「グレイ・ガーデンズ」@シアタークリエ

 S席 11000円 14列-20番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮本亜門

 イーディス・ブーヴィエ・ビール(1幕)/リトル・イディ・ビール(2幕):大竹しのぶ
 イーディス・ブーヴィエ・ビール(2幕):草笛光子
 リトル・イディ・ビール(1幕):彩乃かなみ
 ジョセフ・P・ケネディ・Jr.(1幕)/ジェリー(2幕):川久保拓司
 ブルックス・シニア(1幕)/ブルックス・ジュニア(2幕):デイビット矢野
 ジョージ・グールド・ストロング:吉野圭吾
 J.V.ブーヴィエ少佐:光枝明彦

 しのぶ、すっごい音痴。おまけに絶叫。元々歌がヘタなのは分かっていたけれど、第一幕で娘のリトル・イディ・ビールとそのじいちゃんのJ.V.ブーヴィエ少佐が「とにかく歌うな」と阻止するのも納得。舞台には登場しないイディの夫=リトル・イディの父=ブーヴィエ少佐の婿が家に寄り付かないのも納得。とにかくKYだし。でもこのKYぶりが、日本にも、どこの家庭にもいそうな「世間知らずの女」って感じで説得力があるんです。しのぶに対してが「嫌い・嫌い・大嫌い〜」と拒絶反応を起こしまくりで、蕁麻疹が出そうだったけれど、それだけハマってたのは認めざるを得ません。そして、大竹しのぶの上っ面で感情のこもらない台詞回しがこれまた本心をなかなか語らない、曲者の二役にピッタリなんですわ。音取りに必死な歌は一本調子でこれまらイライラさせてくれるし。ファントムじゃないけれど、薬を飲ませて喉を潰してやりたいっと、殺意を抱く女優さん。ここまで嫌悪感を抱かせてくれるあたり、そして、破れかぶれっぷりはアッパレ。だって、それだけ僕の感情を揺さぶってくれたわけでしょ。大嫌いなだけに、この人スゴイと。

 草笛光子はボサボサ頭で、ボロボロの服を着て、一人でブツブツ言いながら登場。猫に餌をやる姿は「フジ子・ヘミングそっくり」です。気難しそう&プライドが高そうなところも。実は、光子の歌もたいがいだったんです。パンフレットでご自身も語っていますが「あることがあってから(あることが何かは不明ですけど)、ミュージカルには二度とでるもんか!」と思ったそうで、それからレッスンはしてなかったんでしょう。声の支えはないし、かつて「ミュージカル女優」として持てはやされたのが嘘のよう。喉自慢で鐘一つを鳴らされて「おばあちゃん、おいくつですか?」と聞かれる人みたい。もちろん、リズム感はちゃんとプロフェッショナルですが。そんな状態だから「草笛光子といえども、プロとしての姿を見せられないのにノコノコ出てくるなんて、すっごく失礼じゃない?」と最初はイライラしっぱなしだったんです。だってそうでしょ。ミュージカルを引退したならば、もう出てこなくて結構。訓練をやめてしまった女優に用はありませんっ。が、あえてそんな姿でも引っ張り出されたのは、出演を決めたのは、そんな彼女が必要だったから。上流階級でわがままいっぱいだったはずが、いつの間にか、遺産はほとんど貰えず、やっと食べていけるだけの生活で、なすすべもなく生き続ける老女。植物人間とは紙スレスレ。でも、そんな中で、どことなく漂う気品、キリリとした芯の強さ、そして、栄光から没落への哀愁。これは、今の草笛光子でないと出せない味。あまりに役にピッタリで怖い位。ボロボロでも品があるので、しのぶと同じ役とはとても思えなかったけど(ついでに言うと、かなみとしのぶが同じ役とも思えない。一人だけ下品なんですもの>しのぶ)

 作品としては面白いんです。第一幕はしのぶが母でかなみが娘。栄華をきわめるブーヴィエ家の母娘の葛藤。第二幕は光子が母でしのぶが娘。ゴミ屋敷と化した荒廃した屋敷に住む母娘の葛藤。ここで、何くそっと立ち上がれば、スカーレット・オハラになれたかもしれないリトル・イディですが、お嬢様育ちの弱さで結婚するでなく、母親をひっぱるでなく、人生を無駄に過ごしている(ように見えます)。でも、一番のなぞは、育ちは悪くても生まれはわるくないお嬢様、幼少時代からきちんと整頓された家で、キレイにして育ったにもかかわらず、なんでゴミ屋敷で平気に暮らせるの?ってこと。ケネディ一族の謎は数あれども、これが僕にとっては最大の謎となりました。三つ子の魂百までって嘘だったんでしょうか!?!? ゴミはゴミ捨て場にってだけで貧しくともきちんと暮らせるでしょうに。そして、母娘の食生活のひどさったら。食べたいものは「コンビーフ」だし、喧嘩の仲直りだって「スープはトマト風味とホワイトソースのどっちが良い?」ってアンタ、缶詰開けるだけでしょうに。このあたりの味覚もどうも信じられないこと。非常にカルチャー・ショックを受けましたよ。食育って大切なんだなぁ、と。で、結局のところ、喧嘩ばかりしている割に二人とも本心をなかなか語らないけれど、イーディスは(エリザベートみたいに)あれも駄目、これも駄目と否定され続ける環境に潰され、リトル・イーディスは我儘いっぱいのようだけれど、実は精神異常があってまともな結婚生活も一人立ちもできなかった、というお話で良いんでしょうか??? 通常のミュージカルは「束縛に立ち向かって何かを掴む話」が多い中、「束縛の中で息がつまって、うつ病みたいな状態になって、ただ時間が過ぎゆくなかに生きている母娘の話」なので、確かに庶民の実生活にはフィットする部分は多いと思うんです。ドラマティックじゃないから。でも、でも、 アメリカ大統領ケネディの妻、ジャクリーンの親戚じゃなかったら、ミュージカル化されたでしょうかねぇ。口ばっかり達者な老女母娘の喧嘩を聞かされ続ける苦痛といったら!

 蛇足ながら、ジャクリーンはケネディが亡くなった後、アリストテレス・オナシスと再婚しますが、オナシスの元カノはかのマリア・カラス。ゆえに、イディが憧れていたオペラの世界は歴史上に残る黄金時代。イタリア・オペラではマリア・カラスとレナータ・テバルディがしのぎを削り、ドイツ・オペラではエリザベート・シュヴァルツコップフが優雅に、ビルギット・ニルソンがドラマティックに一世を風靡していた時代。そりゃ、歌手に憧れるのも納得ですし、大歌手の歌を耳にしている者にとってしのぶの金切り声はそりゃ家出したくなるほと苦痛でしょうねぇ。。。


2009年11月14日(土)16:00-19:00
宝塚歌劇団雪組「情熱のバルセロナ」「RIO DE BRAVO!!(リオ デ ブラボー)」@市川市文化会館

 S席 7000円 2階-2列-22番 (パンフレット:1000円)

 脚本:柴田侑宏、演出:中村一徳(情熱のバルセロナ)/齋藤吉正(RIO DE BRAVO!!)

 フランシスコ・ラフォーレ侯爵:水 夏希
 ロザリア・ジサント:愛原 実花
 エドワルド大公:未来 優希
 ルイス伯爵:彩吹 真央
 ロジータ:麻樹 ゆめみ
 ファニータ:舞咲 りん
 カルロス:奏乃 はると
 エンリケ:彩那 音
 エリザベス大公妃:花帆 杏奈
 マチルダ:神 麗華
 パポーン侯爵夫人:涼花 リサ
 ジサント将軍:真波 そら
 ラファエル:緒月 遠麻
 リンダ・メレンデス公爵夫人:晴華 みどり
 モニカ:早花 まこ
 ファノ:大湖 せしる
 サンドロ:彩夏 涼
 ジュゼッペ:紫友 みれい
 ディエゴ:祐輝 千寿
 コンスエロ:沙月 愛奈  マルタ:花夏 ゆりん
 ぺぺ:涼瀬 みうと
 セルバンテス伯爵:蓮城 まこと
 リノ:香音 有希
 ルピーノ:朝風 れい
 密偵:梓 晴輝
 テレジータ:美乃 ほのか
 ドロレス:希世 みらの
 憲兵:彩凪 翔
 マルキータ:笙乃 茅桜
 コンチータ:舞園 るり
 衛兵:千瀬 聖
 従卒:久城 あす
 タマラ:天舞音 さら
 夫人:杏野 このみ

 大地真央と黒木瞳のトップお披露目公演のフィナーレなし版。当時、黒木瞳があまりに下級生だったためか、前物のお芝居(そういえば、宝塚で芝居二本立てというレアな公演でした)は春風ひとみがヒロイン、後物のお芝居(情熱のバルセロナね)は黒木瞳がヒロインだけれど、影の主役は条はるきという、なんとも娘役が充実した作り。現に、新人娘役の本来のヒロインよりも、ベテラン娘役によるリンダの方が印象に残ってます。

 ということで、今やベテラントップの水夏希よりも、先月の本公演で押し出しの良いところを見せてくれた愛原実花よりも、ひそかに気になっていたのがリンダ・メレンデス公爵夫人:晴華 みどり。条はるきが元男役として押し出しの良い娘役(というより女役)だったのに対し、晴華みどりは可愛らしい娘役。アバンチュールと政治的駆け引きをギリギリのところで渡り歩くリンダをどう演じるのかと。さすがに、水夏希に「おばさま!」と呼ばれるのには無理があったけれど、おそらく、彼女の宝塚人生最大の役を体当たりで熱演。大人の女がうっかり戦略ミスをしてしまったのではなく、若いお姉ちゃんが甥っ子への恋心に人生を狂わされてという味わいになったけれど、これはこれでありかと。トップ娘役よりもガッチガチになっていましたが、それとなくサマになるのがスゴイところ。大した経験もないはずなのに、それなりにできちゃうんですから!!このあたり、外部の女優さん・男優さんはもっと見習うべきところですね。

 ツアー公演ということもあって、カラオケなのですが、この音量調節が悪く、歌になると、歌詞が全然聞き取れないのが毎度のこととはいえ、結構イライラ。最近の舞台は、本公演直後のツアー公演であっても、歌詞もメロディも思い出せないのに、30年近く前の作品ゆえ、ストーリーは半分忘れてたけれど、ミュージカルナンバーが流れると、自然に歌詞も情景も思い出され、若かりし頃の自分の記憶力に大拍手。聞きとれなくてもちゃんとついて行けます! 脂が乗った時代の柴田作品とあって、主要人物が実に良く書き込まれていて、感情が実に迫ってくるんです。音楽なし、台詞なしの、間で持たせなければならないような場面、脇役で、量は少ないけれど、ピンポイントで印象的に響かせる脇役の台詞などなど、最近の作品ではとんとお目にかからない手法ですが、その独特さゆえに「あぁ、宝塚」という思いでいっぱいになりました。

 ショーは中堅どころが他公演のため抜けていて、若手が抜擢され、ハツラツとして歌い踊っているのが印象的。でも、これが下手っぴなわけ。でも、そんな中から「技術だけでなく、いかに客を酔わせるか」を学ばせるのが宝塚。トップコンビはどうやらマイクの調子だけでなく、ご本人たちのお声の調子も悪いみたいで、ショーでの歌が、水夏希は流れまくり、愛原実花は散りまくりで、インパクトに残っていません。が、この二人揃ってのダンスはシャープな色合いがお似合いで、美しいですね。久しぶりにダンサー同士のコンビとあって、互いに技を競い合うデュエットダンスが垢ぬけてて好きです。それでいて、ツンケンしてなく、ちゃんと目線をからませ合うのが宝塚の伝統。気持ちの良いフィナーレでした。

 なお、客席には「情熱のバルセロナ」のオリジナルキャスト、大地真央&黒木瞳が、そして、黒木瞳の同期生、真矢みきが並んで観劇。ゴージャスな美女集団に客席はどよめき、舞台に対して以上の大拍手がわき上がったのでした。さらに、千葉出身の水夏希の母校の演劇部が団体観劇していて、とにかくとにかく、盛り上がった公演でした。ツアー初日だし、若手中心だして、決して充実したカンパニーではないけれど、客席の熱気に押されての熱演。火事場の馬鹿力って表現は良くないけれど、きっといつも以上の実力を発揮していたのではないでしょうか。舞台がいかに充実するかは、客席のノリも大切ですね。


2009年11月22日(日)21:30-24:15
映画「イングロリアス・バスターズ」---INGLOURIOUS BASTERDS---@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン4

 ポイント利用 J列-21番 (パンフレット:600円)

 監督:クエンティン・タランティーノ

 アルド・レイン中尉:ブラッド・ピット
 ショシャナ:メラニー・ロラン
 ハンス・ランダ親衛隊大佐:クリストフ・ヴァルツ
 フレデリック親衛隊一等兵:ダニエル・ブリュール
 ドニー・ドノウィッツ:イーライ・ロス
 ブリジット:ダイアン・クルーガー
 フランチェスカ・モンディーノ:ジュリー・ドレフュス
 ブリジット・フォン・ハマーシュマルク:ダイアン・クルーガー

 何となく「連休中、何も観ないなんて」ってだけで近所のシネコンをフラリと寄っただけなんです。ポイントが溜まってて一本無料だったし。ということで、予告編も前評判もノーチェックで、チケットブース前のポスターだけで判断。気になったのは次の三本。

 ◆イングロリアス・バスターズ
 ◆ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
 ◆THIS IS IT

 これらの中では「イングロリアス・バスターズ」が太っ腹で、「面白さタランかったら、全額返金しバスターズ!!」という企画。何でも映画が面白くないと判断して途中退場した観客に対し、鑑賞料金を全額返金するんだとか。コメディ大好きな僕としてはポイントが高くでチョイスしてみました。監督名をチェックしなかったのがいけないんです、この時点で。というのも、この映画、コメディじゃないんです。実にシュールな笑い。うっかり途中退場するのも忘れる位、エネルギーを吸い取られる映画です。何しろ、ユダヤ人迫害、第二次世界大戦物という、正直、僕には苦手な時代・設定。

 とにかく、痛いの嫌いな人は観ない方が良いです。バスターズたちは、SMもご主人様揃いで、頭の皮をナイフではいだり、バットで捕虜を殴り殺したり、拷問として怪我している足に指を突き刺したり、額に「消えることのない印」としてナチスのマークをナイフで刻んだり、これらがノーカットで画面に現れるのですから、観ているこちらが痛さを想像して脂汗をかく始末。銃殺なんて苦しみ度合いからいえばかなり軽度に思える次第。

 でも、後半で重要な役割を担う350席の映画館が実に素晴らしく、いかにもヨーロッパの劇場。ボックス席といい、客席配置、狭いながらも螺旋階段が優雅なロビー、ちょこちょこと映し出される舞台裏の数々、そして、ナチス風のコーディネートはされちゃうものの、そこに集う人達の衣装といい、シャンパン片手に談笑する男女の優雅なこと。この場面ゆえに満足です、ワタクシ。パリが舞台とあって、美味しそうなスウィーツやら、小洒落たカフェも登場しますし。

 メイン・ストーリーは、スパイたちのキツネとタヌキの化かし合いにハラハラさせられるし、ナチスはアメリカ映画らしくケチョンケチョンにコケにされるし、面白くないことはないけれど、僕の期待する面白さとは違ったかな。もっと気楽にゲラゲラ笑いたかったです。ブラピは「バーン・アフター・リーディング」ではさっさと殺されちゃう筋肉バカなスポーツクラブのインストラクターでしたが、今回は最後に笑うもの。でも、個人的に「いつおバカになるか」を期待しちゃうのは、前回の役のイメージがそれだけ強かったってことでしょうね(出番は短かかったけど)。ま、それもこれも監督:クエンティン・タランティーということを知らずに観たのがいけないだけで。教訓:映画の予告編は話半分に判断すべきだけれど、チェックはしておくにこしたことはない!