受け止め方を変えると、感じ方も変わるよ


 神経症の方は、たびたび「そうなったらどうしよう?」「また同じようになるんじゃないか?」と考える一種の癖があると思います。そうすると、緊張して不安等の感情が出てくる訳です。現実の出来事に対して不安が起きているのではなく、それをどう受け止めるか?によって、不安などの感情が出てくる訳です。そうしてみると「こうなったらどうしよう?」等という考え方をもし変えることが出来たら、不安などの感情を変化させられるかも知れませんね。そこで今回は認知行動療法を使って、それに挑戦してみたいと思います。

 例えばパニック障害を持っていて、外出の予定が出来ると「発作が起きたらどうしよう?」という考えが浮かんでくるかもしれません。また対人恐怖症だったら「人に嫌われたらどうしよう?」と思って、人と会ったり会話するのが恐くなるかもしれません。これらの受け止め方を見ると、共通するものがあると思います。パニック障害の方は、事態が確実に悪くなると決め付けている事(先読みのし過ぎ)で、対人恐怖症の方は、相手があなたに悪く反応していると思いこんでいる(心の読み過ぎ)ように思います。

 また心臓神経症の人だったら、ある時、急に動悸がして胸が苦しくなったとします。これは現実に起きている体の症状です。その時「心臓が悪くなったんじゃないだろうか?」と考えたとしたら、それによって不安になり、その不安が身体症状をさらに大きくしていくという悪循環になっているのかも知れません。

 パニック障害の場合で言うと、実際には発作はまだ起きてないのに、事態は確実に悪くなると決め付ける(先読みの誤り)事によって、不安で頭がいっぱいになり、まるでもう発作が起きてしまっているかのような、不安や緊張感を感じているのではないでしょうか?また対人恐怖症の場合だと「人に嫌われたらどうしよう?」と先読みの誤りをしていないでしょうか?また「私はあの人に嫌われてしまったんだ」と決め付けていないでしょうか?心臓神経症の場合、実際には心臓に異常は確認されているのでしょうか?

 『実際はどうなんだろう?』『この考え方は合理的だろうか?』等と考えてみる事が、受け止め方を修正するのに役に立つかも知れません。対人恐怖症の人は、実際はまだ誰にも嫌われていないのかも知れないのに、自分で悪い状態になっていると思いこんでいる訳です。このように不安の元になっているこれらの「考え方(自動思考)」に注目する事が出来れば、それを変えて行く事も出来る訳です。

 それでは、どのようにすれば、それを変えられるのでしょうか?まずパニック障害の場合について考えてみたいと思います。例えば外出をする時に「発作が起きたらどうしよう?」と思って、不安を感じ、外出を躊躇したり、外出するのを取りやめてしまう場合もあるかも知れません。先読みの誤りをすると、事態は確実に悪くなると思いこんでしまいますが、外出してもホントに発作が起きるかどうかわからないし、少なくとも今現在は発作は起きていない訳です。そうですよね。そうすると「発作が起きたらどうしよう」と考える代わりに「発作が起きるとは限らない」「今までだって発作が起きなかった事があったじゃないか」「発作が起きたら、その時はタクシーで家に帰ってくればいいや」等と考えてみる事も可能ではないでしょうか?また、そう考えてみる事で、実際に不安などの感じ方も変わってくるのではないでしょうか?

 対人恐怖の場合だと「人に嫌われたらどうしよう」と思う代わりに「人に嫌われるとは限らない」「誰かに嫌われることがあっても、自分を好きでいてくれる人はいっぱいいる」等と考えれば、感じ方も変わってくるように思います。心臓神経症の場合でも「神経症で死ぬ事は絶対にない」と考えれば、また感じ方も体の反応も変わってくるだろうと思います。

 以下に神経症やウツの人が陥りやすい「認知の歪みの定義」をあげておきます。

1
全か無か思考:ものごとを白か黒のどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう。

2
一般化のしすぎ:たった1つの良くない出来事があると、世の中全てこれだ、と考える

3
心のフィルター:たった1つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。ちょうどたった1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように

4
マイナス化思考:なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活がすべてマイナスのものになってしまう

5
結論の飛躍:根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう
 a.心の読みすぎ:ある人があなたに悪く反応したと早合点してしまう
 b.先読みの誤り:事態は確実に悪くなると決めつける

6
拡大解釈(破壊化)と過小評価:自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃す。双眼鏡のトリックとも言う

7
感情的決めつけ:自分の憂鬱な感情は現実をリアルに反映していると考える。「こう感じるんだから、それは本当の事だ」

8
すべき思考:何かやろうとする時に「〜すべき」「〜すべきでない」と考える。あたかもそうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識を持ちやすい。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じる

9
レッテル貼り:極端な形の「一般化のしすぎ」である。ミスを犯した時に、どうミスを犯したのかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。「自分は落伍者だ」他人が自分の神経を逆なでした時には「あのろくでなし!」というふうに相手にレッテルを貼ってしまう。そのレッテルは感情的で偏見に満ちている。

10
個人化:何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にも自分のせいにしてしまう

「いやな気分よさようなら」星和書店 P.35 から引用


 認知の歪みの定義の説明は、こちらのサイトが大変詳しいです。


 ここまでは、認知療法を使って、自分の心の中に自動的にあらわれる受け止め方(自動思考)を見つけ、それが合理的な考えかどうかをチェックし、それに対して自分を擁護する形で反論する事で、不安などの感情を変えていく方法を書いてみました。認知行動療法の場合は、そういう認知の歪みを変えるだけでなく、行動を通して「はたして現実的な考えだろうか?」と確認する作業をします。

 例えば、歯科医をされている先生には申し訳ないのですが、私は歯医者へ行くがとても苦手です。歯医者に行こうとすると、すごく不安になります。どうしても歯医者へ行かなければ、もうどうにもならなくなった時に、歯医者に行く前の不安は、何%ぐらいだろう?とノートやメモに書いておきます。そして次は実際に歯医者へ行ってみて、家に帰ってきたら、実際の不安は何%ぐらいだったか?を先ほどのノート等に書き込みます。

 これを何回かやっていくと、歯医者に行く前よりも、実際に歯医者に行った時の方が、不安の程度がかなり弱い事がわかってきます。つまり予期不安よりも実際に行動した時の不安の方が弱いという事です。そうすると、次に歯医者に行く前に強い不安を感じても「実際はそれ程じゃないんだよな」と考えられるようになる訳です。  

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