| 2005/10/1 |
| 『平原の旅 上』 ジーン・アウル(金原瑞人・小林みき訳) 集英社 2005年 |
| ジョンダラーの故郷へ向かってエイラとジョンダラーの旅が続く。旅の途中何度もジョンダラーがウルフを邪魔に思うところがあって、そのたびにエイラと少し気まずくなる。なぜこういうエピソードをいれているのかよくわからないが、何か意味があるのだろうか。またエイラがクレブの夢をたびたび見るのも今後の伏線なのだろうか。読む前はなんでこんなに分厚いのかと少しうんざりしていたが、二人の人間が互いに理解し合えるにはやはりこれだけの時間が必要なのかもしれないと思い直した。その過程を手を抜かないでここまで詳しく書いていることに感嘆する。 |
| 2005/10/5 |
| 『丘はうたう』 マインダート・ディヤング(脇明子訳 モーリス・センダック絵) 福音館 1981年 |
| 田舎に引っ越してきたレイモンドの家族。父さん、母さん、兄のマーティン、姉のシャーリーとの暮らしを末っ子のレイの目から描く。まだ学校に上がる前のレイの心の動きが手に取るように描かれてほほえましい。そうそう子どもってこういうふうに考えてこういうふうに行動するんだなあ。 母さんが屋根裏の窓から見えるトオモロコシにおおわれた丘をみてつぶやいた聖書の一節が美しい。 小さき丘はみなよろこびにかこまる。 野はなべて羊のむれをまとい、 谷はみな穀物にておおわる。 ものみなよろこび、呼ばわり、かつ、歌う |
| 映画 | 2005/10/6 |
| 「シン・シティ」 ロバート・ロドリゲス監督(映画館) 2005年 |
| 映像はおもしろい。俳優もいい。ストーリーも普通に泣かせる。でもいくら映像でうまく処理してあっても、どうしてもあの残酷描写が生理的に受け付けない。それを忘れていられれば面白かったといえるのだが。ものすごく期待していたのだが、わたしの中ではやはり「キル・ビル」は越えられなかった。 |
| 2005/10/8 |
| 『平原の旅 中』 ジーン・アウル(金原瑞人・小林みき訳) 集英社 2005年 |
| 今まで同じようなエピソードの繰り返しだったが、ようやく違う展開になった。残酷な女族長アッタロアに率いられたス・アームナイ族にジョンダラーが攫われてしまう。エイラは一応彼を取り戻すがまだ完全に逃れたわけではなく、下巻ではアッタロアとの対決が控えてるらしい。ス・アームナイ族の呪術師が語ったアッタロアの過去が興味深い。今までクロマニヨン人はみんな、氏族に対して獣同様の嫌悪感を持っていると思い込んでいたが、この族では氏族の血を引くブラガーという男が族長にまでなっていたという。それならジョンダラーのあの嫌悪感は一般的なものではなかったのか。そういえばマムトイ族もシャラムドイ族も最初こそジョンダラーの反応と似ていたが、最後にはエイラを快く受け入れてくれた。だからジョンダラーがなぜそんなにエイラの過去を気にするのか不思議だった。どうやらジョンダラーのゼランドニー族が格別そういう意識が強いらしい。ますますジョンダラーが気にくわなくなったが、そういう彼をエイラの相手として設定することにこそ意味があるのかもしれない。 |
| 2005/10/9 |
| 『夢でない夢』 天沢退二郎(佐伯俊男挿画 中島かほる装丁) ブッキング 2005年 |
| 著者が大学生時代に書いたという作品。あとがきにもあるようにもうすでに『光車よ、まわれ』の世界がひろがっている。不気味で怖い世界だ。これを童話とよんでいいのだろうか。先日アラン・ガーナーを読んだが、その影響は確かに感じられる。初版のままだという挿画も装丁も不気味だ。 |
| 2005/10/10 |
| 『τになるまで待って』 森博嗣 講談社ノベルス 2005年 |
| このシリーズの特徴だが謎は解くが犯人や動機ははっきりしない。全体像はまだ見えないけど明らかに真賀田四季の影がちらつく。もうついていくしかないのだが、いったいどこに行こうとしているのだろうか。今回は犀川さんの出番がいつもより多かったのでまあまあ満足。 |
| 2005/10/11 |
| 『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩 新潮社 2005年 |
| 読みながらずっと戸惑いと違和感がついてまわり、どうも生理的に受け付けられずに終わってしまった。今までの梨木さんの作品と雰囲気がまるで違う。最初はホラーのようで少々怖い。特に第2章の「カッサンドラの瞳」は何か邪悪さが感じられる怖さだ。そして合間にはさまれる、ファンタジーのようなSFのような「かって風に靡く白銀の草原があったシマの話」。うめくぬか床(この時点でちょっとひいてしまったのだが)から始まった話がどこにいこうとしているのか、まるで予測つかなかった。ラスト近くの「安世文書」から一気に謎解きのようになり、ここらへんからようやく読んでいて気分が落ち着いてきた。そのままラストの壮大な世界になだれ込むのだが、言いたいことはわかるが、しかしどうもしっくりこない。あまりに壮大すぎて梨木さんには合わないような気がする。梨木さんの中でまだこなれていないのだろうか。ラストはなんとなく萩尾望都のSFを思い出してしまった。こういう世界は漫画のほうが表現しやすいし、読むほうもわかりやすいと思う。 |
| 2005/10/14 |
| 『ゴムラスの月』 アラン・ガーナー(久納泰之訳) 評論社 1969年 |
| 『ブリジンガメンの魔法の宝石』の続編。前作よりもっと地名人名がややこしく、話の展開についていくのに苦労した。前作ではややこしいながらも、まだ主人公のスーザンとコリンと一緒に冒険をした気分になれたのだが、今回はもう傍観者でしかいられなかった。スーザンとコリンも物語の中心ではなく、キャデリンにいたっては出番すらあまりない。今回も馳夫さんのようなアーサー王のようなオールバナックという人物が登場したが、彼の説明も不充分。スーザンが魔物ブロラハンに取り付かれる話がメインかと思えば、物語は思がけずハーラシンクのアインヘリアという<幽霊の狩猟隊>の活躍になってくる。 あまりにたくさんのエピソードが盛り込まれて、ひとつひとつの物語は魅力的なのだが、全体を貫く話の大筋がはっきりしない。ラストもなんか尻切れトンボみたい。これは前作もそうだった。大団円というすっきりした終わり方でないので、どうも消化不良だ。英国の子どもたちには、たぶん説明しなくてもこれが理解できるのだろうが、日本のわたしたちには少し難しい。タイトルの「ゴムラス」の意味がどうしてもわからなかった。 |
| 2005/10/16 |
| 『アーサー王ロマンス』 井村君江 筑摩書房(ちくま文庫) 1992年 |
| トマス・マロリー『アーサー王の死』をもとに、違う伝承も取り入れて分かりやすく「アーサー王物語」を説明している。入門書としてとても読みやすやすかった。アーサー王物語の成立過程や地図もあってとても助かった。何よりランスロットの出身地ベンウィックが(フランス)とあったので、昨年から悩んでいたことがやっとすっきりした。 |
| 2005/10/20 |
| 『北村薫のミステリー館』 北村薫・編 新潮文庫 2005年 |
| 北村さんの選んだアンソロジー。いろいろな作品が読めて楽しい。冒頭がウィリアム・スタイグの絵本というのが意表をついている。この「きいろとピンク」は絵本版も借りてきて読んでみた。また昔話を自動翻訳機にかけて、それをさらに日本語訳した「一寸法師」など、凝った編集がおもしろかった。高橋克彦「盗作の裏側」は以前どこかで読んで、そのときも印象に残った作品だった。奥泉光の「滝」これはものすごかった。そして嬉しかったのは緑川聖司の『晴れた日は図書館に行こう』から「わたしの本」が採られていたこと。巻末の宮部みゆきとの対談も嬉しい。 |
| 2005/10/21 |
| 『ななつのこものがたり』 加納朋子(菊池健絵) 東京創元社 2005年 |
| まず絵が気に入らない。そして文章も気に入らない。これは『ななつのこ』で駒子が読んでいた本ではない。いかにもそういうふうな宣伝をしているけど違う。そして児童書でもない。それなのに無理に児童書らしくしようと書いている気がして、非常に不愉快だ。 |
| 2005/10/22 |
| 『ケルト歴史地図』 ジョン・ヘイウッド(井村君江監訳 倉嶋雅人訳) 東京書籍 2003年 |
| 「アーサー王物語」やケルト神話のことをもっと知りたくて買っておいた大型本。時々眺めていたが、アラン・ガーナーの作品を再読するようになり、やはりきちんと読んでおこうと思った。世界史(地域限定だが)を最初からやり直しているようなもので、ときどきややこしくてわけわからなくなったが、何とか最後まで読み通した。ケルトのだいたいの歴史が、ぼんやりとだがつかめたような気がする。いわば辞書のようなもので、手元においてときどき読み返すことになるだろう。 |
| 2005/10/24 |
| 『バスカヴィル家の犬』 コナン・ドイル(阿部知二訳) 創元推理文庫 1960年 |
| イングランド西部地方の伝説に想を発したというホームズの長編。なるほど風景描写などはケルトっぽい。デヴォン州ダートムアという場所は手持ちの世界地図には載っていないが、「ケルト歴史地図」にコーンウォールの東にデヴォンという地名があるので、やはりケルトの風土の色濃く残る場所なのだろう。登場人物の一人モーティマー医師は発掘が趣味で、彼の発言にしばしばケルトが登場する。そして雰囲気が映画「ジェヴォーダンの獣」にも似ている。だから推理小説というよりは伝奇小説っぽく感じる。そして読みながら感じたのは、ホームズってものすごい冷酷なんでは?ということ。依頼人をあんな危険な目に合わせてどうする!怪我がなかったからいいようなものの、精神的にあんなに苦痛を与えて、あれで許されるのか?ホームズって結構危ない人なのだ。 1960年の訳なので文が少し古く感じるが、これがそのまま版を重ねているのは凄いことだと思う。もうひとつ早川文庫版も借りてきていて、そちらは娘が読んだのだが、ちらっとみたが、あちらのほうが読みやすそうだった。 |
| 映画 | 2005/10/26 |
| 「ベルベット・レイン」 ウォン・ジンポー監督(映画館)2005年 |
| どうもちょっとノレないなあと思って観ていたが、クライマックスの雨の中でアンディ・ラウが「初めて人を殺した日」について語るところで、はっとした。ここでこの映画の評価が一気に上がったのだが、そのあとの説明するようなシーンで興ざめ。それまでの色調がずっと暗かったのに、この場面だけ妙に明るくて浮いていたようにも感じた。ところがラストの解釈に二通りあることがにこさまのサイトでわかった。たしかにこのラストならにこさまの解釈(暗喩)もできる。ただわたしの場合、あの雨のシーンでの衝撃が強かったので、そのとき感じたことを大事にしたい。そのためにはラストのシーンを削って、あの雨のシーンで完結してほしかった。 もともとアンディ・ラウ、ショーン・ユー、エディソン・チャンら「インファナル・アフェア」出演者が勢ぞろいしているのに興味ひかれて観たのだが、エリック・ツァン、チャプマン・トウまで出ていたのには驚いた。(この二人、実はかなり好き)エリック・ツァンが携帯電話で話しているところなんて、「インファナル・アフェア」そのままで、ちょっぴりおかしかった。アンディ・ラウはとても素敵だったし、ショーン・ユーもかっこいい。そして「インファナル・アフェア」シリーズではあまり気に入らなかったエディソン・チャンが、この映画ではとてもよかった。 |
| 映画 | 2005/10/26 |
| 「キングダム・オブ・ヘブン」 リドリー・スコット監督(DVD) 2005年 |
| 冒頭から途中まではとにかく何が起こっているのかさっぱりわからないし、登場人物も何がしたいのかもよくわからない。あっさりとたんたんとだらだらと、まるっきり説明不足だ。(船があまりにあっさり難破したのには失笑)それでもクライマックスのエレサルムの攻防あたりからちょっと見応えがでてきた。「ロード・オブ・ザ・リング」を観過ぎたせいか、戦闘場面が「ロード〜」とかぶって「ここは角笛城?」「オスギリアスだ〜」「この櫓はミナス・ティリス攻防!」とか、関係ないところではしゃいでしまった。もともと話と主役にはあまり興味なく、脇役に魅力があって観たのだが、ノーマークだったジェレミー・アイアンズに一番魅力を感じた。青い衣装が良く似合っててとても素敵。もちろん王様役エドワード・ノートンは期待通りの存在感で満足。リーアム・ニーソンとデイヴィット・シューリスはもうちょっと活躍してほしかった。 この映画も字幕問題がおきたそうだが、このDVD版ではかなり改善されているそうだ。たしかに最後のサラディンの台詞は、劇場版では意味がわからないだろうな。 |
| 2005/10/27 |
| 『マビノギオン―シャーロット・ゲスト版』 シャーロット・ゲスト(井辻朱美訳) 原書房 2005年 |
| ウェールズの神話「マビノギオン」をシャーロット・ゲストという人が英語に翻訳し、それを日本語に翻訳した本。このほかにウェールズ語から直接翻訳した本も出ているが、いずれそちらも読んでみたい。 唐突な展開、同じことの繰り返し、つじつまのあわないことのてんこ盛り。さすがは神話だ。ところどころアーサー王の話で見覚えのあるエピソードが出てくるが、考えてみればこちらのほうが元なのだ。 |
| 映画 | 2005/10/27 |
| 「モーターサイクル・ダイアリーズ」 ウォルター・サレス監督(DVD) 2005年 |
| 南米の風景が素晴らしい。映画と言うよりドキュメンタリーをみているような気分だった。ストーリーもあまり劇的でなくたんたんとしていて、好感が持てる。ただ川を泳ぐシーンだけはちょっとドラマチックすぎる気がする。それまで堅実に描いていたのに、このシーンだけ盛り上げすぎているように感じた。旅の途中で出会う人々のなかでは、チリの鉱山で出会った夫婦の瞳が一番印象に残った。 特典ディスクにある本物のゲバラの演説を聞いた。とても魅力的な声だった。そして彼の最期が1967年だったことに衝撃を受けた。私が中二のころだったのか。高校のときゲバラの映画が公開され、その前後にゲバラのことを知った私は、うんと昔に死んだ人物だと思っていた。だがあの頃はまだ彼が死んでから間もなかったのだ。 |
| 2005/10/29 |
| 『北欧神話』 パードリック・コラム(尾崎義訳) 岩波少年文庫 2001年 |
| 『マビノギオン』よりこちらのほうが読みやすく、話もわかりやすい。オーディンやトールなど神様たちになじみがあるせいだろうか。<ラグナロク><ヴァルハラ><ヴァルキュリー>など言葉の響きもかっこよく、ゲームや文学作品にもよく見かける。たしかにとても魅力的な神話だ。 |
| 2005/10/31 |
| 『ユニコーンとレプラコーン』 C・W・ニコル(M・スミス絵) 文研出版 1986年 |
| ユニコーンがイッカククジラに生まれ変わったという、美しい伝説。絵も幻想的で美しい。 著者紹介欄で著者がウェールズ生まれだということを初めて知った。あとがきにも著者がケルト民族であることが書かれている。もともとアラン・ガーナーの『エリダー』関連で、<ユニコーン>について書かれている作品を読もうと思って図書館で借りた本。 |