| 2005/7/3 |
| 『暁の円卓4 暗黒の歳月・後編』 ラルフ・イーザウ(酒寄進一訳) 長崎出版 2004年 |
| 暗黒とあるように、ナチが台頭してくる1930年代のドイツが舞台だけに、つらい展開が予想され幾分気が滅入ってくる。なによりレベッカがユダヤ人なので心配でならない。次々味方が犠牲になっていくデービットが、父親と同じように精神を病んでいきそうになるのも痛々しい。思いがけないラストで、次巻が待ち遠しいというか気になって仕方がない。 |
| 2005/7/3 |
| 『ニッポン硬貨の謎』 北村薫 東京創元社 2005年 |
| 北村版『五十円玉二十枚の謎』エラリー・クイーンの未発表原稿を著者が翻訳した、という形。表題紙裏の記述や序文も凝っている。ご丁寧に注釈までつけて。ミステリとしては必ずしも上等とは言えないけど、とにかくエラリー・クイーンが大好きなんだということは伝わってくる。ここまでやるのかファンって、といじらしくなってくる。小町奈々子に言わせているクイーン論はさすがに読み応えある。ここが著者の一番言いたかったことだろうし、一番面白かった。 |
| 2005/7/5 |
| 『ダウン・ツ・ヘヴン』 森博嗣 中央公論新社 2005年 |
| 『スカイ・クロラ』の表紙、装丁の美しさには息をのんだ。内容も切ないし魅力的だったが、少し読みにくかった。ところが3作目のこれはすごい!もう最初から物語に引き込まれた。読み終えた後はしばらく帰ってこられなかったほど。ああ、わたしも空へとおちてゆきたい。ものすごく危険な作品なのかも。 |
| 2005/7/7 |
| 『暁の円卓5 失意の歳月』 ラルフ・イーザウ(酒寄進一訳) 長崎出版 2004年 |
| 愛妻レベッカを失ったデーヴィット。失意の彼が何とか立ち直り原爆投下から日本を救おうと奔走する姿を経て、第二次大戦の終結までを描く。前巻までがゆっくり進んでいたのに今巻は割りと足早に進んだ感がある。今までは逃げるほうが多かったような彼だが、ようやく全面的に敵に立ち向かう姿勢になっている。遅いよ〜といいたいが、主人公を完全無敵のスーパーマンではなく、悩み惑うきわめて普通の人間らしく(充分超人的ではあるが)描いたことに本書の特徴があるのかもしれない。歴史を作るのは少数の英雄ではない、ということか。いよいよ戦後がはじまる次巻以降が楽しみ。 |
| 2005/7/7 |
| 『子どもだけの町』 ヘンリー・ウィンターフェルト(大塚勇三訳) フェリシモ出版 2004年 |
| 以前学研から出版され、ずっと絶版になっていて、復刊された作品。『ヒルズ・エンド』に似た状況だが、あれほど過酷ではなくこどもたちの人数も多く、いくぶん混乱はあるが話し合いでリーダーが決まり、各自に適した役割が与えられ、次第にうまく運営ができるようになり、というように理想的に進む。うるさい大人がいない、という子どもなら一度は夢見たことなので、読んでいてわくわくする。また人数が多いのでにぎやかで楽しい。いい子ばかりでなくちゃんといろんな性格のこどもが描かれている点も好ましい。ちょっと現実的ではないようなところもあるが、とにかく痛快で楽しい。状況がちがうので『ヒルズ・エンド』のような深い感動はないが、これはこれでとてもおもしろい作品だと思う。 |
| 2005/7/8 |
| 『STAR EGG 星の玉子さま』 森博嗣 文藝春秋 2004年 |
| 副題は「ほしのたまごさま」と読む。しかし本編では「たまこさん」とルビがふってある。その玉子さんと愛犬のジュペリ(これがまんまトーマ!)いろんな星を訪ねるという、みるからに『星の王子さま』のパロディ。でもおもしろかった。絵も森博嗣。まったくなんでも出来るんだなあ。 |
| 映画 | 2005/7/9 |
| 「モンパルナスの灯」 ジャック・ベッケル監督(ビデオ録画) 1958年 |
| 美男美女はみているだけでいい。ジェラール・フィリップは美しい。だがこのひとはどこか日本的な顔ではないかと思う。だから親しみさえ覚えるのだ。若くして死んだので薄幸のイメージがあり、儚げなところもわたしの乙女心をくすぐる。 モジリアニは冒頭からもう飲んだくれている。パトロン(この人が粋で素敵)や以前の愛人(別れても親切)も隣人である親友も、とても親切。ろくでなしのくせにそれだけ魅力があったからなんだろうなあ。画廊主も彼の才能をかっていたのに。なぜ生前は売れなかったのだろう。冷徹な画商役リノ・バンチュラが迫力あった。ようやく売れる!と無邪気に喜ぶ妻ジャネットの目の前で、彼が次々作品を選んでいくラスト。ここで終わるのか!なんて残酷な。 |
| 2005/7/9 |
| 『マンモス・ハンター 中』 ジーン・アウル(白石朗訳)集英社 2005年 |
| ますますハーレクイン化。しかし当時の生活がとても詳しく述べられていて、そこはおもしろい。火打ち石の発見、馬を飼いならして乗る、犬(ここではまだ狼だが)を飼うこと、それらすべてをエイラの発見にするのはどうかなあ。 |
| 2005/7/11 |
| 『マンモス・ハンター 下』 ジーン・アウル(白石朗訳)集英社 2005年 |
| エイラとジョンダラーの気持ちのすれ違いがくどいほど描かれ、メロドラマみたい。ふたりの絆がより強固なものになるための試練なのだろうが、なんだか話がそういう方向にいくのは嫌だ。なぜジョンダラーがエイラの運命の相手なのかが、少し分かってくるが、それでもこの男はあまり好きじゃない。恋愛要素をもっとあっさり描けば物語もこんなに長くならないと思う。ラブラブはもういいから早く先に進んでくれい。 |
| 映画 | 2005/7/12 |
| 「スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐」 ジョージ・ルーカス監督(映画館) 2005年 |
| 結末がわかっているとはいえ、やはりアナキンの転落は辛い。いろいろ突っ込みたいところも多いが、それでもやはり見ごたえは充分。特にクライマックスのアナキンとオビ=ワンの壮絶な戦いは、それぞれの心情も描き出していて感動的。オビ=ワンの悲痛な表情と「I loved you!」という叫び、アナキンの凄みのある「I hate you!」という断末魔の声。どちらの気持ちも分かるだけに切なく哀しい。何がいけなかったのか。どこで間違ってしまったのか。もともとはクワイ=ガン・ジンのせいのような気がするけど…。でもクワイ=ガンには名前だけでなくチラッとでも出演してほしかった。一番受けたのはオビ=ワンのチョキ!今回のオビ=ワンはキュート。 それにしてもジェダイって不自由なものだなあ。愛も煩悩のうちってまるで仏教みたい。善と悪、比べたときなぜ悪の方が強いのだろう。古今東西悪のほうが強大だ。だから人間は力を得るために悪に堕ちていく。神はなぜこのように世界を作ったのだろう。柄にもなく考え込んでしまった。 一足先に昨日観てきたはづきと感想を話し合っているうちに、旧3部作のオビ=ワンとダース・ベイダーの戦いを観たくなってDVDをセット。「エピソード3」に比べると、戦い方が二人ともあまり腰が入ってないようでやや迫力不足。そのせいでダース・ベイダーがオビ=ワンに「老いたな」と言ってるのが納得できる。たしかに20年くらい後にしてはあのオビ=ワンの顔は老けすぎ。ユアンの顔がかわいいから仕方ないか。「エピソード4」へ繋ぐことを意識してか、ユアンがアレック・ギネスに似せて演じているのがよくわかった。 |
| 2005/7/12 |
| 『蒲公英草紙』 恩田陸 集英社 2005年 |
| 思わず衝動買いしそうな素敵な表紙。そして待ちに待った常野一族の話。『光の帝国』は短編集だったが、これは長編。あとで『光の帝国』を読み直してみたら、その中の「手紙」に、このときの話らしいことがちょこっとでてくる。 |
| 2005/7/15 |
| 『黒馬物語』 アンナ・シュウエル(土井すぎの訳) 岩波少年文庫 1953年 |
| 馬への愛情あふれる物語。本当に馬のことをよく知っている著者の、不当に扱われる馬への悲しみと無知な人間たちへの怒りがこめられている。「知らないということは、悪意の次に悪いこと」というジョンの言葉が胸に沁みる。この作品が出版以来100年以上も愛され続けているのは当然のことだと思う。 |
| 2005/7/15 |
| 『黒馬物語 BLACK BEAUTY』 アンナ。シューエル(阿部和江訳 ヴィクター・アンブラス画) 文園社 2003年 |
| 『黒馬物語』の新訳。全文ではなくダイジェスト。そのかわり美しいカラー画や写真が多く使われ、馬や当時の様子が図解されているのでよくわかる。もとは絵本だったらしい。 |
| 2005/7/21 |
| 『神様ゲーム』 麻耶雄嵩 講談社ミステリーランド 2005年 |
| シリーズ当初から、あの麻耶が何を書くんだ?と期待と不安がいっぱいだったが、やっぱりやってくれました。麻耶は麻耶だと納得するしかない結末。我孫子武丸が以前書いたという紹介文が秀逸。 |
| 映画 | 2005/7/21 |
| 「黒馬物語」 キャロライン・トンプソン監督(日本語吹替版ビデオ) 1994年 |
| 原作がとてもよかったのとショーン・ビーンが出ていることもあり図書館から借りてきた。ショーン・ビーンは最初の頃ちょこっとでるだけ。でもその笑顔がとてもかわいい。こんなかわいい笑顔の男がなんで悪役ばっかりやってるんだろう。そして嬉しい誤算だったが、ショーンのほかにデイビット・シューリスも出ていた。彼のほうは最後のほうで原作でもビューティに優しい辻馬車の御者ジェリー役。若い!かわいい!多少エピソードの編集はあるがほぼ原作に忠実に進む。無知な人間たちに翻弄される馬の運命に一喜一憂。主役は完全に馬たち。この馬たちの演技には驚かされる。馬ってほんとうに美しい。この馬たちを見ているだけでいい。ビューティの語りはアラン・カミングだったそう。吹き替えでなく字幕でみたかった。 |
| 2005/7/23 |
| 『暁の円卓6 孤独の歳月・前編』 ラルフ・イーザウ(酒寄進一訳)長崎出版 2005年 |
| 今度はガンジー暗殺からはじまり、朝鮮戦争勃発まで。インドで<暁の円卓>の一員と対決するが、その人物が元はネパールのグルカ兵らしく、ククリという刀を持っていたのがちょっと嬉しい。細かいところよく調べてあるなと感心するが、さすがにここまでくると何だかパターン化してきて最初の勢いが落ちてきた。ドイツのホロコーストのあたりがやっぱりこの人の一番書きたかったことではないだろうか。それを過ぎたあたりから、駆け足になってきて描写もあっさりしてきた。これは世界史の勉強と思えばいいが、児童文学やファンタジーと呼ぶには少し無理があるような気がする。 |
| 2005/7/23 |
| 『ラインの虜囚』 田中芳樹 講談社ミステリーランド 2005年 |
| さすがにおもしろい!史実と冒険文学とあわせたような痛快さ。登場人物がこれまた実在のアレクサンドル・デュマだったり、内容も『三銃士』や『鉄仮面』調。エピローグの4人のその後も興味深い。特にコリンヌのところで、キャサリン・パターソンの『北極星をめざして』を思い出した。 |
| 映画 | 2005/7/25 |
| 「シベールの日曜日」 田中芳樹 講談社ミステリーランド 1962年 |
| モノクロのなんと美しい映像。森の池の水面に浮かぶ二人の姿。石によって揺れる水面。車のサイドミラーに映るピエールー。二人のあいだの愛情はなんと呼べばいいのだろう。孤独な魂のふれあいではあるが、しかしたしかな恋愛感情もあった。といってもこの二人はカルロスが理解を示したとおり本当に子どもなのだ。子どもだからこそ一途だ。それがはたからみたら異常ととらえられてしまう。娘をもつ自分としては、それもまたやむをえないことかもしれないとも思う。最後のシベールの叫びが胸を打つ。 |
| 2005/7/26 |
| 『姑獲鳥の夏』 京極夏彦 講談社 2003年 |
| 文庫版を底本にした単行本。映画鑑賞に先立って予習のつもりで再読。これで3回目だがやはり忘れていることも多い。なによりコミカルな面がなく切なく哀しい。涼子があまりに可哀相だ。ミステリーというより因習にとらわれた家の犠牲になった女性たちの話。京極堂の薀蓄の中に「バタフライ・エフェクト」や「仏教は愛を執着とみなす」という、まるでジェダイのような考えの部分があり、面白かった。里村が出羽の生き仏のことを話題に出しているのも見つけた。 |
| 2005/7/26 |
| 『ウサギが丘』 ロバート・ローソン(松永冨美子訳) 学研 1966年 |
| 農場に越してきたあたらしい人間たちを迎えるウサギが丘に住むたくさんの動物たち。人間と動物が共存できる理想の世界。 |
| 2005/7/27 |
| 『ライオンと魔女』 C・S・ルイス(瀬田貞二訳) 岩波少年文庫 1985年 |
| これも映画化を機会に再読。十何年ぶりかで懐かしかった。でもやっぱりおもしろい。 |
| 2005/7/27 |
| 『チョコレート工場の秘密』 ロアルド・ダール(田村隆一訳) 評論社てのり文庫 1988年 |
| これも同じく映画化にあわせて再読。ダールらしく毒があり、おもしろい。 |
| 映画 | 2005/7/27 |
| 「姑獲鳥の夏」 実相寺監督(映画館) 2005年 |
| 生まれて初めて映画館に一人で入った。夏休みとあって(しかもレディスデー)シネコンは家族連れで満員だった。でもまさかこの映画が満席になるなんて思ってもいなかった。宣伝のせいか? はづきから聞かされていたほどひどいとは思わなかったが、なんともおさまりの悪い微妙な映画だった。 昨日原作を読み直して、そうかこれはこんなに切ない哀しい話だったのかと、涼子さんに同情していたので、ラストなどは泣けてきた。映像はきれいだとは思うが、あの頻発する閃光には参った。思わせぶりに時折挟み込まれる、よけいな映像(妖怪ウブメらしい)も不快。どうもすっきりしない。謎解き部分が分かりにくい。原作がそうだから仕方ないけど、もう少しすっきりまとめられなかったのか。 そしてこれが一番の原因なのだが、やっぱり堤真一の京極堂が嫌だった。だから彼がしゃべりだすともうイライラしてしまった。彼が悪いわけではなく、誰がやっても難しいとは思う。 他の役者さんたちはみな頑張っていた。堤真一だって頑張っていた。あの長台詞をこなしただけでもすごいと思う。それは認めます。これは完全に好みの問題なのでファンの人には申し訳ない。 京極夏彦氏、登場したときは○○○先生だと思い、エンドロールであの方だったとわかったときは、はづきの「この役ができるから映画化をOKしたに違いない」という言葉が納得できた。実に楽しそうだったけど、しかしテレビでみたときよりさらにまん丸になっていた。 |
| 2005/7/28 |
| 『くまのパディントン』 マイケル・ボンド(松岡享子訳 ペギー・フォートナム絵) 福音館文庫 2002年 |
| なんてかわいいパディントン!いたずらっ子なんだけど憎めない。子どもってこんな感じだったかなあ、と子育て中を思い出した。でも子育て真っ最中だったら後片付けの大変さに、ちょっと勘弁してほしいと思っただろう。これほど大騒ぎを起こしていながら、不思議とドタバタ調にならずどこかおっとりとユーモラスなのは、これもひとえにパディントンの人柄、いや、くま柄のせいか。下品にならないのはさすが。エレベータの描写には感心した。あの感じ、とてもよくわかる。 |
| 2005/7/29 |
| 『タランと角の王 プリデイン物語1』 ロイド・アリグザンダー(神宮輝夫訳) 評論社 1972年 |
| 最初に読んだのはまだ『指輪物語』を読む前だった。こういうロール・プレイング・ゲームのようなファンタジーは初めてだったので、とてもおもしろく読んだことを覚えている。今回読み直してみて『指輪物語』に驚くほど似ていること気がついた。「これは馳夫さん?」「ナズグルか?」等々。(でも『指輪」を読んだときはこれに似ているなんて感じなかった。忘れていたのだろうか)そしてタランが最初はこんな幼稚な生意気な子どもだったなんて。たしかにシリーズを通じて、タランが成長していくのがうまく描けている話ではあったけど。タランよりも印象に残っていたのがフルダー・フラム。あの竪琴の弦が切れるところがおかしくって。 『指輪』や『ゲド』のような深みはないけれど、とても読みやすく絵柄がイメージしやすい。「子ども版 指輪物語」といったところか。ケルト(ウェールズ)の伝説を元にしているのに、アラン・ガーナーやスーザン・クーパーと比べ暗さはあまり感じられず明るいのは、作者がアメリカ人だからか。 |
| 2005/7/31 |
| 『踊る夜光怪人―名探偵夢水清志郎事件ノート―』 はやみねかおる 講談社青い鳥文庫 2004年 |
| この巻だけ図書館に入ってなくて後から購入したらしい。三つ子たちがまだ中学2年生。今回の謎解きのメーンは暗号。けっこうおもしろかった。 |
| 2005/7/31 |
| 『暁の円卓7 孤独の歳月・後編』 ラルフ・イーザウ(酒寄進一訳) 長崎出版 2005年 |
| 舞台は北朝鮮から南米に飛び、ローマに移る。デービットの戦いの描き方が前巻でも感じたがあっさりしている。どうもだらだらと20世紀の出来事を羅列しているだけのように感じてきた。文章もあまり好きじゃない。 |