[ タイムトンネル ] へ戻る



絵本 2005/8/1
『大雪』
アロワ・カリジュ絵(ゼリーナ・ヘンツ文 生野幸吉訳) 岩波書店 1965年
大型絵本とあるように、普通の横長絵本よりひとまわり大きな絵本。細かいペンタッチに美しく彩色したり、厳しい自然や楽しいソリのパレードなどが描かれる。見開きページの右側がカラー絵、左側が文と右の絵に関連した線画。この線画もとても細かくていい。ハラハラするストーリーもおもしろいが、絵を眺めているだけでも楽しめる。




絵本 2005/8/1
『シンデレラ』
東逸子絵(天沢退二郎訳) ミキハウス 1987年
東逸子さんの美しい絵と天沢退二郎の名に惹かれて借りてきた。絵の美しさは期待通り。天沢さんの文も特に特徴あるというほどではないが、魔法使いのおばあさんだと思っていたのが、名づけ親で仙女だったこと。シンデレラを自分の部屋につれていく、という記述があるので同じ家にすんでいるらしいこと。ガラスのくつはシンデレラを魔法で美しく仕立て上げたあとに手渡していること(これでようやくなぜガラスの靴だけが魔法が解けなかったのかわかった)など、いろいろ新しい発見があった。これが本来の原作なのだろうか?天沢さんはもともとフランス文学者なので、きっとペローの原作からきちんと訳したのだと思う。お話の最後に「教訓」というのがあるのも原作通りか?




2005/8/2
『アーモンド入りチョコレートのワルツ』
森絵都 角川文庫 2005年
1996年講談社から出ていた単行本は以前読んでいた。だがそのときは、森絵都さんの作品にしてはイマイチだなという感想を持った。今回読み直してみるとそれなりに面白かった。ピアノ曲をモチーフに3つの独立した短編で構成されている。一番面白かったのは2番目の「彼女のアリア」だった。バッハが不眠症の患者のために作ったという<ゴルドベルグ変奏曲>を聴いてみたくなった。




2005/8/6
『ガラスのエレベーター宇宙にとびだす』
ロアルド・ダール(田村隆一訳) 評論社 1981年
『チョコレート工場の秘密』の続編。うーんこれはちょっと騒々しすぎるような。発表された1972年ってたしかまだ米ソが冷戦下で、宇宙開発競争にお互い国家の威信をかけて取り組んでいたはず。それに対する痛烈な皮肉もたっぷり盛り込まれている。それなりにおもしろいけど、でもやっぱり『チョコレート工場の秘密』のほうがおもしろい。




2005/8/25
『チョコレート工場の秘密』
ロアルド・ダール(柳瀬尚紀訳) 評論社 2005年
新訳版。旧訳に比べ登場人物の名前に工夫があり、テンポよく読める。巻末の訳者の説明はおもしろいが、以前の訳者に対して少し失礼ではないかと思える部分がある。自分の訳に自信があるのはいいけど、ちょっとこの姿勢はどうかなあ。訳自体は楽しめたのだが、ここで少しひっかかった。でも装丁はこちらのほうが好き。なんといっても挿絵がクエンティン・ブレイクだから。




2005/8/25
『ひとりずもう』
さくらももこ 小学館 2005年
久しぶりのエッセイ。でも内容は既に漫画や他のエッセイで読んでいたものだったので、目新しさはない。そのせいだろうか、『もものかんづめ』の頃のような爆発的な面白さが感じられない。漫画で読んでいた頃のほうが感動もあった。漫画には誇張や脚色があるので、きちんと文章にしたかったのかもしれないが、今さらこういうもの書かなくてもいいのではないだろうか。あのエッセイ漫画という表現方法がいかに優れていたか思い知らされる。




2005/8/31
『ウルフ・サーガ』上下
ケーテ・レヒアイス(松沢あさか訳) 福音館 1997年
ささやき風の谷に住む狼たちはすべての生き物が従う「ワカの掟」によって、他の生き物たちとも共存し平和に暮らしていた。だが北の国から巨大な黒狼ショーガル・カンが支配する群れが、狼が君臨する世界を作るためにやってくる。谷の狼シイキたちは父母を殺されながらも「ワカの掟」を捨て去ることを拒み、追放される。シイキたちの困難な旅がはじまる。
オーストリア出身の作家レヒアイスによる狼たちの一大叙事詩。登場するのは狼だが、あきらかにそこには人間の投影がある。狼をはじめ動物たちと、彼らを生かす自然へのかぎりない畏怖と賛歌。思わず敬虔な気持ちにさせられる。体も小さく弱々しいシイキと、大きく強大なショーガル・カンの対比。変わり果てた世界に再び「ワカの掟」を取り戻そうとするシイキだけでなく、仲間のために飢えない世界を作ろうとしたショーガル・カンの、支配者ゆえの孤独も描かれているところがまたよかった。シイキの見る夢「毛皮を脱いでおぞましい二つ足の生き物になる」というところに、人間への痛烈な批判を感じる。



戻る