| 2007/10/3 |
| 『アレッサンドリア物語』 ウィルヘルム・ハウフ(塩谷太郎訳) 偕成社文庫 1977年 |
| 『隊商』がとてもおもしろかったのでこれも読んでみた。 構成は『隊商』と同じく、もともとの枠の話があり、その中でいくつかの話が語られるというもの。 『隊商』では砂漠のテントの中で商人たちからそれぞれの話が語られていたが、ここではアレッサンドリアの長老が催した宴会で奴隷たちから語られる。 この作品でも奴隷たちの語る話ともともとの枠の物語が繋がっていて、意外な(だいたい予想はつくが)結末になる。 |
| 2007/10/4 |
| 『キラレ×キラレ』 森博嗣 講談社ノベルス 2007年 |
| 『イナイ×イナイ』に続くXシリーズ2作目。 時間的にはGシリーズの『ηなのに夢のよう』の後になり、前作『イナイXイナイ』同様萌絵がちらりと登場するのだが、これが単なる読者サービスなのか、このあとGシリーズと絡んでくるのか興味あるところ。 |
| 2007/10/12 |
| 『冷たい心臓‐ハウフ童話集‐』 ヴィルヘルム・ハウフ(乾侑美子訳) 福音館書店 2001年 |
| 25歳で夭折した著者ハウフが生前著した童話は『隊商』『アレッサンドリア物語』『シュペッサルトの森の宿屋』の3作だけ。 この『冷たい心臓‐ハウフ童話集』には三作品全てが収められている。前2作は枠の物語の舞台がアラブだったので、雰囲気も「アラビアンナイト風」だったが、この『シュペッサルトの森の宿屋』はドイツが舞台なので、ドイツの暗い森の雰囲気が漂う。 それぞれ違う雰囲気の味わえるお得な1冊。 |
| 2007/10/14 |
| 『空色勾玉』 荻原規子 福武書店 1988年 |
| 読書会のため再読。10年以上前に読んだのでかなり忘れていたが、その分新しい発見や感動があり楽しかった。 上代の日本を舞台に永遠の生を讃える「輝の一族」と死と転生を恐れぬ「闇の一族」の戦いを描くファンタジー。単なる「光と闇の戦い」という図式にならないのが、非常に日本的でわたしたちの感性に合う。 読んでいてとにかくことばが美しいのがとても心地よかった。漢字には雅なルビがふられ、衣装や道具や色の名前もみな美しい。主人公二人はそれぞれ輝と闇の一族ながら、敵対する一族に対する憧れをもつ少年少女であり、彼らが自分の道を探す成長物語となっている。 今回驚いたのは結構色っぽい描写や残酷な描写があったこと。児童文学にしてはかなり容赦ない描き方だった。 この内容ならもっと長くなってもいいはずなのに、多少説明不足なところも感じられる。だがその分、思いのたけを全て注ぎ込んだ、生のままの作者の叫びが息づいている。 やはり処女作に作者の全てがある、というのは本当だと思った。 |
| 2007/10/16 |
| 『ヴォイス 西のはての年代記U』 ル=グウィン(谷垣暁美訳) 河出書房新社 2007年 |
| 前作『ギフト』に続く「西の果ての年代記」シリーズ2作目。 アンサル市はオルド人の侵略を受けて以来、10数年支配下におかれている。文字を持たないオルド人は文字や書物を魔物として恐れ忌み嫌い、アルサスの文化は根こそぎ破壊される。 少女メマーは人々の精神的な支柱である<道の長>の手ほどきを受け、秘密の部屋で本を読むことを覚える。そしていつかオルド人を追い出し、アンサルがまた独立する日を夢見ている。 メマーが16歳になったころ、創り人(吟遊詩人)のオレックと妻グライがアンサルを訪れ、物語は大きく動き始める。 前作『ギフト』はまあまあという感じだったが、言葉と文字と本というわたしの大好きなものがちりばめられているこの作品は、とてもおもしろかった。 メマーと<道の長>が空中に指で文字を書き、その呪文によって書物のある秘密の部屋のドアが開く冒頭はぞくぞくする。 前作の主人公オレックが登場し重要な役割を果たすのだが、彼のギフトのことはすっかり忘れていた。今作で自分のギフトを使って活躍する彼の姿にほっとした。 ここでのオルド人の支配の仕方が、「空色勾玉」の<輝の神>の被征服者の宗教を「悪」として貶め排除していくやり方に似ていて、興味深い。 このように続けて似たようなものを読んだ偶然もおもしろかった。 |
| 映画 | 2007/10/24 |
| 「善き人のためのソナタ」 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督(映画館) 2006年 |
| 春に公開されていたときは観そこねていたが、期間限定で近くのシネコンでやっていたので鑑賞。 全体的に抑えた色調で、当時の東独の雰囲気が出ていた。演劇の舞台も何だか殺風景だし、町の酒場もとてもさびれた感じだった。こんな盗聴が日常的に行われていたのかと思うと、余計に町が寒々しく感じられた。 わずか20年前にこんな社会が実在したこと、そして今もどこかではあるかもしれないと思ったらとても怖い。 ヴィスラーを演じたウルリッヒ・ミューエが素晴らしかった。2時間半の時間も長いと感じることなく観ていられた。 そしてラストシーンの台詞には思わず涙がこぼれた。ああ、ここに至るための話だったのだなあ。 彼の出演した映画は他にないかと思っていたら、「スパイ・ゾルゲ」に出演していて驚いた。まるで覚えていないがパンフレットをみるとたしかに彼がいた。 そして何ということ、彼は今年の7月に亡くなっていたのだ。もう彼の姿を映画で観ることができないなんて残念でならない。 |
| 2007/10/26 |
| 『ア・ソング・フォー・ユー』 柴田よしき 実業之日本社 2007年 |
| 『フォー・ディア・ライフ』『フォー・ユア・プレジャー』『シーセッド・ヒーセッド』に続く、保育園長でもある探偵花咲慎一郎が活躍するシリーズ4作目。
前作から出版社が変わり、花咲も「ハナちゃん」と呼ばれるなど雰囲気も少し柔らかくなったようだ。ハードボイルド部分ももちろんあるが、保育園の部分でほのぼのさが増していた。今回も期待したのだが。 「ブルーライトヨコハマ」「アカシアの雨」「プレイバックPART3」「骨まで愛して」の4編と「エピローグ」。 4編の中では「ブルーライトヨコハマ」だけが独立した内容で、後味も一番いい。あとは少し暗くて悲惨で「プレイバック〜」ではハナちゃんと一緒にこっちまで泣けてきてしまった。 問題は「骨まで愛して」。どう考えてもおかしい記述があり納得できない。前の部分で「弟」だったのが後の謎解きの部分で「息子」となっていて、それについての説明がない。 これはわたしの読み取り方がヘタなのかと思ったが、先に読んだ娘も同様だったので、やはりおかしいと思う。どうもお話もあまりよくないし、山内錬が出ていたのが嬉しかっただけ。 |
| 2007/10/29 |
| 『晴れた日は図書館へいこう』 緑川聖司(挿画・宮嶋康子) 小峰書店 2003年 |
| 先日観たショート・ムービーがあまりにひどい出来だったので、それを払拭したくて再読。 これがどうすればあんな映画になるというのだ!? 「わたしの本」は北村薫のアンソロジーにも採られているので再読していたが、「プロローグ」「長い旅」「ぬれた本のなぞ」「消えた本のなぞ」「エピローグはプロローグ」は久しぶりに読んだ。 延滞本、破損本、不明本、など物語が進むなかに図書館が抱える問題も提示してあり、そうだよなあと同感すること多し。この本を読んでもっともっと本と図書館を愛する人がふえてほしい。 初読 2003/12/5 |
| 2007/10/30 |
| 『きみがいた時間 ぼくのいく時間ータイムトラベル・ロマンスの奇跡ー』 梶尾真治 朝日ソノラマ 2006年 |
| この本は書き下ろしの表題作と以前発表された『江里の"時"の時』『美亜へ贈る真珠』『時の果の色彩』の4つの短編と<成井豊と梶尾真治>の対談で構成されている。 わたしは未読だが、著者の作品に『クロノス・ジョウンターの伝説』があり、表題作もそれに関連している。だがその作品を知らなくても充分楽しめた。他の作品もみなテーマは「時を越える愛」で、著者の「後味の悪い小説は書きたくない」という言葉通り、切なくも暖かくやさしい結末はやはりいい。 対談のあとに紹介されている梶尾真治の他の作品も興味あるが、やはり『クロノス・ジョウンターの伝説』を読んでみたくなった。 |