| 2007/7/1 |
| 『奇術師』 クリストファー・プリースト(古沢嘉通訳) 早川文庫 2004年 |
| 映画「プレステージ」の原作。
映画を先に観ていたとはいえ、ネタバレの部分も映画とは微妙に違い、受ける印象も違った。 世界幻想文学大賞受賞というだけあって、たしかに最終章などSFやミステリーというよりゴシックロマン風で、原題『PRESTIGE』にふさわしい内容だった。 原作ではその後のふたりの子孫にまで影響があり、より複雑な物語になっていて、これをうまく削ってふたりの確執だけに絞った映画は、あらためてよく出来ていたと思う。 エンジャ(映画ではアンジャー)がボーデンを憎む理由も映画ほどひどいものではないし、瞬間移動のネタもあれほど残酷ではない。 女性たちの描き方も大きく違い、映画ほどひどい目にあっていない。これは嬉しかった。 オリヴィアが彼らのことを「仲良くやっていけないふたりの恋人同士のようなもの」といってるのが、実に上手く二人の関係を表していたが、映画はここにスポットをあてたようだ。 悲劇性が強かった映画とは違い、どことなくユーモラスでほのぼのした部分がけっこうあって読んでいて楽しかった。 映画と原作をどちらを先にみれば(読めば)いいかはいつも迷うところだが、この作品に関しては映画を先に観てよかったと思う。映画原作ともとてもおもしろかった。 |
| 2007/7/2 |
| 『猛スピードで母は』 長嶋有 文藝春秋 2002年 |
| 軽くさらりとしているのに深い、すごく読みやすい文章。 |
| 2007/7/3 |
| 『ニューヨーク』 ペヴァリー・スワーリング(村上博基訳) 集英社 2004年 |
| 17世紀半ばイギリスからニューアムステルダム(後のニューヨーク)やってきたルーカスとサリーの兄妹。その後100年にわたるふたりの家系の愛憎劇。『ロンドン』に似た感じで、読み応え充分。 |
| 2007/7/6 |
| 『イン・ザ・プール』 奥田英朗 文藝春秋 2002年 |
| おもしろかった。患者さんはみんなデフォルメされているけどどこかにいそう。伊良部はまるでガキだけど憎めない。 |
| 2007/7/6 |
| 『空中ブランコ』 奥田英朗 文藝春秋 2004年 |
| おもしろい。特に表題作『空中ブランコ』は最高! |
| 映画 | 2007/7/7 |
| 「シックス・センス」 ナイト・シャマラン監督(テレビ放映) 1999年 |
| この映画の有名なオチは知っていた。けれど知っていてもとてもおもしろかった。オチそのものは今ではそれほど目新しくないけど、それを知っていると逆に見せ方がうまいことに気づく。 評判の子役ハーレイ・ジョエル・オスメント君の演技は確かにすごい。始終何かにおびえているような表情がたまらない。ブルース・ウィリスも若く、なんとなく知的でかっこよく見えた。そして「赤い色」の使い方が印象的だった。 |
| 2007/7/9 |
| 『愛の続き』 イアン・マキューアン(小山太一訳) 新潮社 2000年 |
| この内容でこの読みやすさ。描写が細かいのにくどくない。すごい。 冒頭から引き込まれた。気球事故を空を飛ぶ鳥の視点から描くなんて。この事故の部分を読んだだけで参ってしまった。映像が目に浮かぶようだ。 ストーカーの恐怖を描いた話のはずなのに、なぜかあまり怖く感じなかった。むしろ滑稽に感じてしまい、主人公のほうの粘着質なやり方に、こいつのほうがおかしいのじゃ?という疑いさえ抱いてしまった。 最後のパリーの手紙にしても、本当はものすごく恐ろしいはずなのに、とても素晴らしい愛に満ちた手紙のように思えてしまう。 こんな純粋で晴れやかな愛の手紙なんてざらにはない。ジョーも応えてやればいいのに、とまで思ってしまった。 こんなふうに思ってしまったことこそ、周囲にわかってもらえない主人公の恐怖そのものなのだろう。 こういうふうな狂気のなかでしか、「永遠につづく愛」というものは存在しないと、言いたいのかなあ。 原題「Enduring Love」(「持続する愛」と「愛に耐える」という二つの意味がある)を『愛の続き』と訳したのは上手い。 印象に残る表現が多くあり、特に「相手をやりこめたことと自分が正当であることをあっさり混同してしまう」というところでは、自分にも経験があるので反省させられた。 『贖罪』とはまったく違う印象の作品なのに、すごくおもしろかった。 |
| 2007/7/10 |
| 『町長選挙』 奥田英朗 文藝春秋 2006年 |
| 伊良部くんの3作目。この作品では表題作のほか「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の3作があり、これらはそれぞれ最近の話題の人物がモデルだとわかる。ちょっと内輪ネタ風であり今までと少し趣の違う印象。伊良部はますますこどもぽくアホっぽくなり、でもなぜか憎まれず呆れられつつ愛されてる。そしてマユミさんはますますかっこよくなっている。どこまでいくのマユミさん。 |
| 2007/7/12 |
| 『夕子ちゃんの近道』 長嶋有 新潮社 2006年 |
| 連作短編集。フラココ屋という骨董屋を舞台にそこに集う人々の姿が描かれるが、この人々の微妙な距離感と連帯感が心地いい。基本的に仲良しだけど、必要以上にべたつかずよそよそしくもなく。なんだかとてもいい。
主人公の一人称だけど、男なのか女なのか途中まではっきりしない書き方でおもしろかった。会話文もかぎ括弧でくくられているほかに、地の文にとけこんでいる部分もありちょっとおもしろい。 朝子さんが美大の卒業制作で箱を作っている姿が、知り合いの姿を思い起こさせて、なにやら親近感を覚えた。「コンシーラー」からはじまる化粧品に関する主人公と瑞枝さんの掛け合いが最高におかしかった。 最後の「パリの全員」だけ書き下ろしだが、その前で終わっていてもかまわないと思った。ただみんなのその後がわかったことはやはり嬉しかった。 |
| 2007/7/13 |
| 『双生児』 クリストファー・プリースト(古沢嘉通訳) 早川書房 2007年 |
| すごかった。今年はカズオ・イシグロ、イアン・マキューアン、そしてこのプリーストと、はじめて出会った海外作家の本がどれもすごくて、とても嬉しい。 読み始めてからすぐなんともいえない違和感を感じていた。年表ひっぱり出してきたり人物名調べたり、でもはっきりせず、それでもおもしろさにそのまま作品に没頭していった。 そして半分ほどいったところで仰天した。それからはもうぐるぐる頭がまわりっぱなしで、でも読むことはやめられず最後までひきずられていった。解説読んでやっと少し理解できたのだけど、それでもぐるぐるまわるこの頭。 わからないけど、うまくいえないけど、でも一気に読めてものすごくおもしろかった。 |
| 2007/7/16 |
| 『ルビアンの秘密』 鯨統一郎 理論社 2007年 |
| ミステリーYA!の一冊。これはおもしろかった。花の名前を漢字で表すととてもいい。姫女苑(ヒメジョオン)と春紫苑(ハルジオン)など。 |
| 2007/7/16 |
| 『マジカル・ドロップス』 風野潮 光文社 2007年 |
| 2時間17分だけ15歳に戻れる魔法のドロップ。主人公の気持ちはすごくよくわかる。切なさと懐かしさにあふれている。 この魔法のアイテムが「ドロップ」というのがまたいいんだなあ。あの時代に帰りたいと強く思うけれど、それは確実にまた元に戻れることがわかっているから。それに気づいた主人公の姿が爽やか。 |
| 2007/7/17 |
| 『誕生日の子どもたち』 トルーマン・カポーティ(村上春樹訳) 文藝春秋 2002年 |
| 6編のうち「クリスマスの思い出」「あるクリスマス」「おじいさんの思い出」は以前に読んでいた。 特に「クリスマスの思い出」は山岸凉子の漫画「クリスマス」として先に出会っていた思い出のある作品。とても好きなので、山本容子の銅版画入りの本を持っている。 少し訳を手直ししているらしい。「誕生日の子どもたち」「感謝祭の客」「無頭の鷹」は初めて読んだ。「感謝祭の客」は「クリスマスの思い出」に連なる、ミス・スックが登場する話。これは好き。 |
| 2007/7/17 |
| 『朝日のようにさわやかに』 恩田陸 新潮社 2007年 |
| さわやかじゃない。短編に少しおもしろいものはあるけど、全体の印象としてはあまりよくない。 |
| 2007/7/18 |
| 『魔法』 クリストファー・プリースト(古沢嘉通訳) 早川文庫 2005年 |
| 1995年刊行の単行本もあったのだが、こちらの文庫で読んだ。単行本のころは評判の高さにも関わらず売れなかったそうで、それが『奇術師』が評判になってめでたくこの作品も文庫化されたそうだ。 でもこれはわたしにはちょっと分かりにくかった。最初はおもしろかったけれど、だんだん印象が変わってきて、ラストで「??!!」さっぱりだった。こういうのを「メタ・フィクション」というの?こうして3作読んでみると意外にも『奇術師』が一番分かりやすかったんだなあと思う。 |
| 2007/7/20 |
| 『夢の書』上下 O.R.メリング(井辻朱美訳) 講談社 2007年 |
| メリングのケルト最終話。2段組上下巻という今までにない大作で、今までの登場人物も勢ぞろい。人間も妖精もさらには伝説の人物も。 さらに主人公は時空を越え、そのなかでこの作品の舞台カナダの歴史が織り込まれる。いろんなことをいっぱい盛り込んで大団円へ向かう。正直いって少々疲れた。 移住先のカナダを受け入れられずに悩む主人公の姿はかなりリアル。そのために使命がありながらみすみす力を弱らせていく過程もよくわかる。いらいらするけど、これが現実。 こんな小さい子にこんな重大な使命を与えたのは誰だよ、と怒りたくなってくる。最後の主人公の選択は、難しいなあ。 |
| 2007/7/22 |
| 『独断流「読書」必勝法』 清水義範(西原理恵子絵) 講談社 2007年 |
| 紹介されている本と関係ないような西原の漫画がおもしろい。 |
| 2007/7/24 |
| 『アムステルダム』 イアン・マキューアン(小山太一訳) 新潮社 19997年 |
| なかなかおもしろかったけど、『贖罪』や『愛の重さ』に比べると、少々軽く手抜きかなと感じてしまった。相変わらずすいすい読めるが、ラストの展開にはちょっとびっくり。
これはブラックジョーク?わざと皮肉っぽく書いているのだろうけどなあ。 |
| 2007/7/26 |
| 『一億百万光年先に住むウサギ』 那須田淳 理論社 2006年 |
| ああ、いいなあこれ。しっとり味わい深い話。主人公たちが浮ついてないことがとてもいい。中学生でこんなに落ち着いてるか?と思う部分もあるけど、こどもを馬鹿にしてはいけない。表面だけではわからないうんと深いものを持っているのだ。 |
| 2007/7/26 |
| 『チョコレートコスモス』 恩田陸 毎日新聞社 2006年 |
| 恩田版「ガラスの仮面」。 |
| 2007/7/28 |
| 『ヒストリー・オブ・ラブ』 二コール・クラウス(村松潔訳) 2006年 |
| ちょっと構成がややこしかった。老人と少女と作家。彼らを主人公にした章がそれぞれあり、それをつなぐのが60年前に書かれた『愛の歴史』というひとつの作品。 ひとつひとつの章にはそれぞれ共感できる部分もあるが、読み終えたときもやもやしたものがあって、それが感動なのか不満なのか自分でもよく分からなかった。何か心にひっかかる作品であることはたしかなのだけど。 |
| 2007/7/30 |
| 『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』 秋本治原作(日本推理作家協会監修) 2007年 |
| ご存知「こち亀」を素材にそれぞれが自分流に料理した作品集。 大沢在昌『幼な馴染み』 石田衣良『池袋⇔亀有エクスプレス』 今野敏『キング・タイガー』 柴田よしき『一杯の賭け蕎麦ー花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す』 京極夏彦『ぬらりひょんの褌』 逢坂剛『決闘、二対三!の巻』 東野圭吾『目指せ乱歩賞!』 みんな自分の作品のキャラクターを両さんと絡ませて楽しそうだ。 |
| テレビドラマ | 2007/7/31 |
| 「ハゲタカ」 NHK土曜ドラマ(DVD) 2007年 |
| この冬に放映された連続ドラマ。1、2回だけちょこちょこ観ていたが、ぜひ全部観たかったドラマ。友人がDVDを貸してくれてようやく観られた。 今年のドラマのなかで(たいして観てはいないが)一番おもしろかった。骨太な大人の男のドラマで、色恋抜きだったのがとてもよかった。男達のかっこいいこと。 特に菅原文太、田中泯。出ているだけでものすごい存在感。そして外見は普通のサラリーマン風の中延役の志賀廣太郎。なんでこの人が外資ファンドの社員なの?って雰囲気なのに、声がものすごく渋くて素敵だった。この人に限らず声の素敵な出演者が多かったように思う。 主役鷲津役の大森南朋は始めて見たけど、メガネかけた顔とはずした顔がまるで違う。メガネとスーツで武装して「ハゲタカ」になってたんだなあ。プライベートな「鷲津」として接する時はメガネをはずしてたようだ。柴田恭平はちょっと老けたけど相変わらず素敵。いつも苦渋に満ちた顔してて気の毒だった。 紅一点の栗山千明がドラマの中で時間が経つうちに、しっかり大人の顔になっていったのには感心した。大根じゃなかったのね。普通の人間の役も演れることがわかってよかった。 とにかく適度なケレン味のある見ごたえあるドラマだった。 |