盆地を考える


盆地についての人類学的考察

 私は盆地が好きだ。内陸が好きなのである。海より川が好きだ。谷山浩子の「河のほとりに」が好きだ。以前は川のほとりにすんでいたのに、引っ越してしまったのは残念である。何かというと海が見たいなどという女は嫌いだ。
 海の水平線や大陸の地平線を見ていると、自分がいったいどこにいるのか、そしてその先に何があるのかと不安になるではないか。その点、盆地は、周囲を山で囲まれており、曇りの日にもどっちが北か南かが分かって運転にも便利な上、何かに包まれているようで、心が落ち着く。
 そうなのだ、盆地は子宮のようなものではないかと考える。有名な甲府盆地は子宮のような形をしているではないか。甲府盆地が子宮ならそこから流れ出る富士川の河口は何かなどと言い出すと、話がややこしくなるのでここまでとする。
 日本には、私の調べたところ盆地が46ある。
 盆地の理想型は内陸水系で、水を入れたらたまる地形が望ましく、海外では中国のトルファン盆地、タリム盆地、ジュンガル盆地などがそれに当たるが、日本にはない。知る限りでは、摩周湖が水の出口がなく完全な閉鎖系だが、残念ながら盆地とは言わない。火山の火口も閉鎖系だが、小さすぎる。阿蘇山あたりが出口を閉めて中の山を削ってくれるときれいな「盆」地になるのだが、誰かやってもらえないだろうか?
 盆地と言うからには、形が円でなくとも、少なくとも、面的な広がりがあり、出口がきゅっと締まっていることが望まし(、このことからも「盆地=子宮論」は正しいことが分かる)。この点から言うと、「盆地」らしいのは、上川盆地、米沢盆地、会津盆地、甲府盆地、奈良盆地、近江盆地、津山盆地、人吉盆地、都城盆地あたりで、伊那盆地は「谷」であり、盆地とは名乗ってほしくないものである。
 また、歴史的には、多くの政権が、奈良盆地、京都盆地、近江盆地と、盆地に都をおいて日本を支配してきた。これは大陸から文化を取り入れて日本流に文化を成熟させるために必要だったと考えられる。豊臣秀吉は大阪に城を構えたため短命であった。江戸幕府は何かの間違いである。朝廷はずっと京都盆地だったし。明治以降も何かの間違いで、現在内陸部へ首都機能移転を検討中である。県庁所在地は47都道府県中8市が盆地に所在しているが、さらに盆地に移すべきである
 文学では、山崎豊子が「ぼんち」を書いて、市川崑監督、市川雷蔵主演で映画化されている。私は忙しいので、読んだことも見たこともないが、盆地の美しい四季や激動の歴史を描いた名作であろうと推察される。
 1980年代の漫才ブームの頃、「ザ・ぼんち」というコンビもあったが、これも盆地出身者ということが勝手に推察されるのである。
 以上のように、日本の歴史上、盆地は政治・文化の形成において非常に重要であったことが分かる。

*写真は甲府盆地にある双葉町役場




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