記者会見説明 2003年12月18日  伊豆利彦         大学問題一覧  HOME      

 横浜市立大学の問題について、日頃、強い関心を寄せていただき、今日はまた、年末多事の際、私たちのために記者会見の場を設定していただき、ありがとうございます。

 横浜市立大学の改革については、先頃「横浜市立大学の新たな大学像について」(以下、「大学像」という)が発表され、これを市当局が受け入れるという形で、市議会でも大学教育委員会で審議が行われ、急速に進展しております。

 この「大学像」については、大学人の会、市民の会等が声明を発して、その問題点を指摘し、官僚主導の大学になる危険について、深刻な憂慮を示しております。私たちもこの声明において、その問題点を指摘していますが、それらについては、また市議会大学教育委員会でも問題にされております。

 学内においても、これらの問題点について、各学部教授会や評議会で問題にされ、多くの意見が出され、学部教授会はいくつもの決議を行っております。

 しかし、学長はそれらに耳を傾けることなく、一方的に、ごり押しに、この「大学像」なるものをまとめ、大学の正規の議を経たものとして、学長名において市長に提案し、これを市長が承認するという形を取っているのであります。

 市議会でも学長は、正規の議をへた、大学を代表する案なのだと答弁しております。しかし、これは事実を偽った虚偽の答弁であります。学内では、この「大学像」が発表された後、商学部、国際文化学部の教授会決議をはじめ、これに反対する声がさまざまな形であげられています。

 これを受けて、市議会で、学内でいろいろ異議があると聞いているがと問われて、学長は、これまでは外に向けて努力してきたが、これからは内を固めて、全学一致してやるのだと答えています。

 これはあまりにも奇怪なことであります。本来なら学部の意志、内部の意志を固めて大学案がつくられるべきなのに、学部教授会を無視し、評議会での多くの反対意見に対しても、これを強引に切り捨て、ひたすら市当局の改革方針に迎合する大学案なるものを作成し、市長の承認を得て、それを背景に、学内の疑義や反対意見を強引に押しつぶそうというのであります。

 大学の研究と教育をになうものは現場の教員であります。何よりもこの教員や学生たちの意見を聞いて、改革案をつくるべきであるのに、この教員を信頼せず、その意見を聞かず、教員たちにも秘密にして、強引に外部から改革案を押しつけてきたのであります。これでうまくいくはずがない。観念的な外枠の青写真、官僚的作文はあるが、具体的な内容はない。

 理事長の問題、人事委員会とか任期制とか研究費とかの問題、その他、肝心の教育内容についてなどの重要な事項が、多くの疑義を残したまま、きわめて乱暴に決められて、法規上も問題があり、このままでは文科省の承認を得られそうもないというようなものになっています。

 これらについて質問されると、これから詰めるのだという。しかも、その実施時期は2005年を予定しているというのだから驚きます。来年中に大学案内や入試要項やその他を作成しなければならない。それなのに、この大学で何を学ぶことができるか、この大学にどんな特色があるか、それがすこしも明らかになっていない。ただ、3学部を1学部に統合し、内容の不明な<プラクティカルなリベラルアーツ>を実施するというだけであります。

 大学内部の教員にもよく分からないこの改革が、市民や高校教師や受験生に理解しがたいのは当然であります。今年の推薦入学の受験者は商学部、国際文化学部が30%減、理学部が10%減ということになりました。

 推薦入学とは市内の高校に在学する市民の子弟に対する制度です。この推薦入学の受験者が激減したということは、この「大学像」を市民が支持していないことを示すものであると思います。

 これまで、市大はかなり高率の志願者を全国的に集めてきました。しかし、来年度入試の志願者は激減することが予想されます。受験生の質の低下もまぬがれないでしょう。この傾向は計画が実施される再来年はさらにはげしくなるでしょう。

 こうして、少子化時代で、大学生き残りのための苛酷な競争が行われている時代に、市大は現実を無視した、非現実的で、観念的な、官僚による作文の「大学像」を発表して、その衰退と解体の道を歩き始めたのであります。

 納得していないのは市民や受験生ばかりではありません。教員のあいだにも市大の未来に絶望して、辞職して行く者が相次いでいます。
 すでに定年退職者の後任は採用しないという乱暴な決定をした市大は、自発的な退職者、他大学にうつる教員が続出して、大学の運営自体が危機に陥る結果をまねくおそれがあります。

 これまでの努力や達成、苦しい時代を生き抜き、困難に抗してつくり上げて来た大学の歴史をむざむざと踏みにじり、大学人の誇りも見識も、その責務も捨て去って、大学について、研究・教育については、ほとんど素人の行政の役人たちにひたすら迎合し、大学の慣行も、法規も無視して、ごり押しに進めようとする改革の結果は惨憺たるものであります。

今朝の新聞・テレヴィによれば、市は理事長を任命したということであります。国立大学法人でも、理事長は学長であります。公立大学法人でも同様で、ただ、特別な場合に、別の人間がなることができるというものであります。いま、横浜市大は、全国に先駆けて、特別な官僚支配大学の道を歩き始めたのであります。これは大学史上の汚点として、ながく歴史に残るに違いありません。

 私たちは、このような結果をまねいた学長の責任をきびしく問うものであります。いま、大学を解体と破滅から救うためには、学長が自己の責任を明かにして、「大学像」を無効化し、学内のエネルギーを結集して、新しい大学の可能性を探るしか道はないと思います。

 市大の危機は民主主義の危機であります。私たちは単に意見を述べているのではありません。はっきりと学長の責任を問い、「大学像」の無効化を求めて、この問題に関心を持つ学内外の方々に広く訴えるものであります。

 これが、このような声明を発表し、記者会見をおこなった所以であります。