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2001-04-14 ヒチコックのレベッカについて

「八十一歳で死んだ人々 ヒッチコック[一八九九−一九八〇]」
 アルフレッド・ヒッチコックは、十歳のころから肥満症に悩んでいた。彼は一生、減量のためにありとあらゆる療法を試みたがだめであった。
 映画監督になってから、彼が自分を自作映画の一シーンに必ず登場させたギャグは、ただのお遊びではなく、ひとから笑われるより先に自分で戯画化するという、彼の映画を成立させているデリケートなバランス感覚から出た心理的必然性によるものであった。
 ヒッチコックは、一九七六年、七十七歳のときの「ファミリー・プロット」の脚本制作中に心臓発作で倒れ、以後ペースメーカー(心臓の拍動を一分間七十回のペースで保つ医療器具)を胸にとりつけて、この映画を完成させた。それから次回作「みじかい夜」の準備にとりかかったが、腎臓病と関節炎も併発して、車椅子によらなければ動くことも不自由となり、ただ脚本をいじりまわしていることを余儀なくされ、本人も自棄的になり、自分のプロダクションの事務所にやって来ると、看護婦の眼を盗んでコニャックをがぶ飲みし、泥酔状態になってかつがれて帰るという毎日になった。
 一九七九年三月七日、AFI(米国映画協会)から功労賞が贈られ、その受章祝賀会で、イングリッド・バーグマン、ケイリ−・グラント、ジェームス・スチュアート、アンソニー・パーキンスなどのスターたちが代る代るお祝いの言葉を述べた。
 ヒッチコックは、一週間前からアルコールを断ってこの日にそなえ、車椅子で出席したが、出席者たちは彼がこのパーティのおしまいまで保つかどうか、ハラハラのし通しであった。彼は車椅子から立ち上がれない状態であったが、ともかくも挨拶をした。その中で彼は、「私は、私の仕事においてだれよりも貢献してくれたある人々の名をあげなければ、これから眠れぬ夜をすごさなければならないでしょう。その一人はシナリオ・ライター、一人は私の映画の編集者、一人はみごとな奇跡をみせてくれた料理人、一人は私の娘の母親で、この四人の名前はひとしくアルマと申します」とのべた。
 彼の妻アルマは、しかし数年前から脳溢血で倒れ、以来病床にあった。ヒッチコックはその妻に先立たれることを極度に怖れていた。
 八月十三日、彼は八十歳の誕生日を迎えたが、そのころの彼について知人は語る。「彼は『みじかい夜』のシナリオを眼の前において、いつもの調子でその中のシーンをどんな風に撮るかあれこれ語ってくれたが、もはや彼自身それが実現するとはまったく信じていないことはあきらかだった」
 彼は、翌一九八〇年四月二十九日にこの世を去った。
  −『人間臨終図巻』(山田風太郎、徳間書店)−(原文は縦書き)

<百科事典より>
ヒッチコック Alfred Hitchcock (1899―1980)
イギリス出身の映画監督。1940年以降はおもにアメリカで活躍。スリラー、サスペンス映画では他の追随を許さぬ第一人者で、観客をはらはらさせながら自在にその気持ちを誘導する「ヒッチコック・タッチ」とよばれる話術で、世界の映画ファンを魅了した。
 1899年8月13日ロンドン郊外に生まれる。ロンドン大学で美術を学び、タイトル書きなどを経て1925年監督になる。第三作で早くもスリラーの『下宿人』(1926)を発表、無実の罪を晴らそうとする男などの、後年再三描かれるモチーフをみせた。トーキー第一作『ゆすり』(1929)で声価を高め、一連のスパイもの『暗殺者の家』(1934)、『三十九夜』(1935)、『間諜(かんちよう)最後の日』(1936)、『バルカン超特急』(1938)などイギリスでの代表作を残して、1939年に渡米した。アメリカでの第一作『レベッカ』(1940)でアカデミー作品賞を受賞。『疑惑の影』(1943)などで名を高め、とくに『見知らぬ乗客』(1951)以後、『ダイヤルMを廻(まわ)せ!』『裏窓』(ともに1954)、『めまい』(1958)、『北北西に進路を取れ』(1959)、『サイコ』(196 0)、『鳥』(1963)などの傑作群を生み、大ヒットさせた。
 I・バーグマン、G・ケリーなどの美人女優とK・グラント、J・スチュアートなどの二枚目を使っての華麗なロマンスと、ワン・ショットでドラマを描こうとした『ロープ』(1948)にみられるような創意工夫、観客に想像をたくましくさせる巧みな描写、小道具を効果的に用いる演出などは、一般観客だけでなく、批評家時代のE・ロメール、F・トリュフォー監督らにより50年代に高く評価され、その人気は以降衰えることがない。晩年『フレンジー』(1972)、『ファミリー・プロット』(1976)を撮り、80年 4月29日80歳で死去。テレビ映画のシリーズ『ヒッチコック劇場』(1955〜62)、『ヒッチコック・サスペンス』(1962〜65)は、彼自身のユーモラスな解説で親しまれ、また自作映画にほんのすこし姿を見せることでも知られる。〈出口丈人〉【本】A・ヒッチコック、F・トリュフォー著、蓮實重彦・山田宏一訳『映画術』(1 981・晶文社)

レベッカ Rebecca
イギリスの女流小説家デュ・モーリエの長編小説。1938年刊。孤児のフランス娘カロラインは、妻を亡くした中年の英国紳士で、マンダレーという有名な城の主に見そめられて結婚する。詳しい事情を知らずに夫の館に乗り込んだ善良でうぶな新婦は、先妻レベッカの影がいまだに強く支配しているのを知る。先妻が才色兼備の理想的な社交婦人であったことを聞き、夫がまだ彼女を愛しているのではないかと疑うが、謎(なぞ)が解き明かされるにつれて、心身ともに侵されていたレベッカの意外な正体が暴露され、カロラインはレベッカ・コンプレックスから解放される。ゴシック小説の伝統に心理小説の技法を交えた作者の代表作。1940年、ヒチコック監督によって映画化され、アカデミー作品賞を受賞している。〈安達美代子〉【本】大久保康雄訳『レベッカ』(新潮文庫)

Rebecca
Alfred Hitchcock (1899―1980)
Genres:Romance Thriller
Director:Alfred Hitchcock
Writers:Daphne Du Maurier (novel) Joan Harrison (S:AAN) Robert E. Sherwood (S:AAN)
Composer:Franz Waxman (O:AAN)
Director of Photography:
George Barnes (AA)
Cast:
Judith Anderson (S:AAN)..........Mrs. Danvers
Florence Bates...................Mrs. Van Hopper
Nigel Bruce......................Major Giles Lacy
Leonard Carey....................Ben
Leo G. Carroll...................Dr. Baker
Gladys Cooper....................Beatrice Lacy
Melville Cooper..................Coroner
Reginald Denny...................Frank Crawley
Edward Fielding..................Frith
Joan Fontaine (AAN)..............Mrs. de Winter
Gladys George....................Beatrice Lacey
Lumsden Hare.....................Tabbs
Forrester Harvey.................Chalcroft
Laurence Olivier (AAN)...........Maxim de Winter
George Sanders...................Jack Favell
C. Aubrey Smith..................Colonel Julyan
Philip Winter....................Robert
Review:
Hitchcock's first American film is sumptuous David O. Selznick production of Daphne du Maurier novel of girl who marries British nobleman but lives in shadow of his former wife. Stunning performances by Fontaine and Anderson; haunting score by Franz Waxman. Screenplay by Robert E. Sherwood and Joan Harrison. Academy Award winner for Best Picture and Cinematography (George Barnes).
Trivia:
- Hitchcock makes his cameo appearance walking past a phone booth just after George Sanders makes a call in the final part of the movie.
- The first film Hitchcock made in Hollywood and the only one that won a best picture Oscar (and even that went to the film's producer).
- Just as in the original novel, Joan Fontaine's character has no first name.
- Over 20 actresses were tested for the role that eventually went to Joan Fontaine.