第14話 ラッキョウと梅干し

2001.08.20

 何年か前、鳥取県の福部村でラッキョウを見かけて買った。家に持って帰って、塩漬けをして塩出しをして、酢と砂糖と味醂で漬け込んだものである。
 妻はラッキョウが好みでなかったようで、以降、ラッキョウはおいちゃんの係りとなった。酸味と甘味の混じった味は大人の味覚である。味のついていないラッキョウは、あはは、うまくないのであった。

 単身生活になってから、捨てるわけにもいかないラッキョウをたまに食べていたのであるが、なんとラッキョウには血液をサラサラにする効用があるというではないか。それからはマメにラッキョウを食べた。

 今年の春、ストックが乏しくなったので新たにラッキョウを漬けた。よせばいいのに勢いづいて、4キログラムも漬けたところ、はてさて、容器が足りないことに気が付いた。

 おいちゃんはかつての商売の名残りでコーヒーストッカーに使っていたキャニスター(シリコンゴムの付いている広口のガラス瓶)の余分を持っている。
 キャニスターは安価なものは密閉性はダメである。高価なものは、コーヒーを焙煎直後に密閉して1日後に開封すると、「しゅぼっ」と音を立てて閉じ込められていた炭酸ガスが噴出するのである。

 このキャニスターの2つをラッキョウ用にすることとした。これらと、性能のよくない1リットルのキャニスターとタッパーウエアとの合計4つの容器に、ようやく4キログラムのラッキョウを収めた。
 これだけのラッキョウを普通の生活において1人で食べ尽くすには、少なくとも4年以上はかかるに違いないから、常温保存では味が落ちてしまうかも知れない。となると冷蔵保存である。

 キャニスターの3つはおいちゃんの冷蔵庫(370リットル)の野菜室に縦に収まるようだ。収めてみたものの、それでは野菜が少ししか収納できない。いくら野菜よりお肉が好きなおいちゃんとて、野菜をストックしていないと世間に負ける。

 ということで、キャニスターの一つは冷蔵室に移し、一つはガス台の下に移した。
 ガス台の下は、調味料などの貯蔵庫である。「みりん」 「酢」 「オリーブオイル」 「料理用酒」 「胡麻油」などを収納している。

 さて、ここにラッキョウのキャニスターを移したところ、扉を開けるたびに強烈な臭いがする。漬けたのが6月頃で、今は8月であるがいまだに強烈な臭いがする。
 鼻炎で嗅覚が衰えているおいちゃんですら閉口するくらいだから、敏感な妻が嫌がったのも無理はない。
 しかし、他に持っていく場所もない。下駄箱には入らない。押し入れなどはとんでもない。他人にはあげるつもりはない。
 そういうわけで、ガス台の下を開けるたびに、もわあっとラッキョウの臭いと対面する破目に陥ってしまった。


ビラルクー
Copyright © 2001 Kenji.Miyo, All rights reserved.

ピラルクーというブラジルの淡水魚です。体長3メートル!


第1話−第20話の目次に戻る





梅干しの話は、また今度、ね。