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産業機器用プリント基板の製造について ( 目次 )

1. 前置き
 1.1 前置きの前置き
 1.2 前置き

2. 概略
 2.1 産業機器と民生機器の違い
 2.2 少量生産の産業機器
 2.3 商売としての製造
 2.4 リーダーの役割
 2.5 作業者の役割

3. 新機種の留意点

4. 資材    
 4.1 部品の検収
 4.2 部品の出庫

5. 自装(表面実装)
 5.1 新機種頭出しの作業手順
 5.2 各設備の要点  
 5.2.1 メタルマスクの要点  
 5.2.2 搬送ラインの要点
 5.2.3 手刷り印刷の要点
 5.2.4 自動印刷の要点
 5.2.5 ボンドディスペンサーの要点
 5.2.6 チップマウンターの要点
 5.2.7 異形マウンターの要点
 5.2.8 リフローの要点
 5.2.9 ローダとラックの要点
 5.3 その他自装に関する注意点
 5.3.1 デバイス装着時の注意
 5.3.2 欠品の発生した場合の処置
 5.3.3 ロス部品の取扱い
 5.3.4 現品表示
 5.3.5 稼働率とカートリッジ交換
 5.3.6 クリームはんだの材料費
 5.3.7 チッソリフローとはんだ接合
 5.3.8 オペレータの心構え

6. 手挿
 6.1 試作組立
 6.2  部品の確認と配分
 6.3  前加工(準備作業)
 6.4 挿入
 6.5  フローはんだ(自動はんだ槽)
 6.6 はんだ修正
 6.6.1 リードカットの要点
 6.6.2 部品面の修正の要点
 6.6.3 はんだ面の修正の要点
 6.6.4 目視ということについて
 6.7 はんだ付けの技能
 6.7.1 初心者の教え方
 6.7.2 はんだコテ
 6.8 ICT
 6.9 後付け
 6.10 作業確認
 6.11 目視検査
 6.12 洗浄
 6.13 梱包・出荷

7. 検査

8. 電子部品の周辺知識
 8.1 電子部品の種類
 8.1.1 機能別分類
 8.1.2 形状別分類と名称
 8.1.3 その他の材料
 8.2 型名の見方
 8.2.1 数値の読み方
 8.2.2 抵抗
 8.2.3 コンデンサ
 8.2.4 汎用ロジックIC
 8.3 静電気による部品破壊

[ 安全について ]


 

1.前置き


 

1.1 前置きの前置き

 本編は,T電子鰍ノその設立時から6年近く在職した筆者が,退職するに際して,プリント基板の製造の概要をテキストとして書き残したものを,T電子に固有の事情に関する記述を除き,一般的な会社に通じるよう,大幅に書き直したものである。


 T電子鰍ヘ,大阪府にあって創業30年になる中堅電子機器メーカーのN電機が,岡山県の地方都市に,地場のY電子と合弁でその市の名を冠した生産会社として設立したものである。N電機の開発品だけでなく,大手上場企業や有名メーカーのOEM,外注加工を請け負って,表面実装から完成品の組立まで,一貫して製造する体制で,プリント基板から完成品までを製造している。

 筆者はもともと大量生産のアッセンブリーの経験がなく,しかも電気には多少詳しいにしても(趣味で全段直結のDCアンプを作ったりしていたから),電気屋でも機械屋でもない育ちなので,割合に冷めた目でT電子鰍フ6年間を過ごしたと思う。平成7年の年末をもって退職して,ますますその思いが強まったものである。


 「一番好きな趣味を仕事にするべきではない」というのが筆者の若い頃の考えであったが,これは仕事を好きになるなということではない。古い中国の諺にもそう言っている。

 よく冗談に,「子供を造ること以外は,造るのはなんでも好きだ」(筆者には子供がいないので)と言っていた。しかし,楽しい子供を造る行為も,仕事として納期と数量と質を要求されて,朝8時から夕方の5時まで延々とせざるをえない場合は,たぶん,苦痛であるに違いない。

 仕事と苦痛・苦行とは,本来関係のない概念であろうが,大抵の人が仕事を苦行のように感じているのは,同じことを繰り返すために,喜びの感情(自己の領域の伸張)を感じなくなるからであろう。
 

 さて,プリント基板の組立は,工業界の中ではそれほど複雑なプロセスでないために,それに従事する人,とりわけ本編が対象とするアッセンブリー専業の企業にいる人は,あらためて体系付けて考える機会は少ないようである。断片的な知識と,悪く言えば行き当たりばったりの経験でなんとか仕事をこなしているように見受けられる。
 ここでは,その是非を問うのではなくて,コストダウンと品質の要求と納期に追われるうちに,仕事の手順を見失っている人のために,なにかの役に立つことを願って作成したものである。

 困った事態に陥った時は,要するに自分が対応できていないわけであるから,対応できない部分について解析と対策を考えるしかない。プリント基板の組立で困った事態と言えば,不良の続発と納期の遅れであろう。
 人と機械と技術の絡んだ事態の解析はなかなかに難しい。これに的確に対処するには,つまりは普段から仕事のプロセスを頭に入れておくということに尽きる。本編がそのために少しでも役立てば幸いである。

 

1.2 前置き

 本編は,プリント基板のアッセンブリーを賃加工で請け負っている小規模な企業を想定して,そこでおこなわれる製造工程に関し,技術的な手順を中心にして,製造の要点といったものをまとめている。すなわち,押さえるべき製造の手順の要点と,これだけを知っていればまず間違いないという範囲の製造上の注意点と周辺知識を記述している。

 記述の方針としては,なるべく現場の苦労を想定しながら進めてみたつもりである。部品の一個が欠落していたり,未はんだのひとつがあっても動作しないのが電子機器で,接合方法もはんだという頼りないものに依っているから,その製造をやかましく言い出したらきりがない。


 製造する品種としては,産業機器レベルのプリント基板を想定している。
 コストの低減と売上高の増大を追求する民生機器の量産品が海外に生産移行するようになって久しいが,一方では,一昔前ではガチガチの産業機器の製造方法をとっていたパソコンなどが,今ではコスト追求を理由に家電の製造方法をとっている。その結果,アッセンブリーを業とする者に求められる要求はますます厳しくなってきている。

 本編の記述には枝葉の部分もあるので,目次を頼りに目的とする項目だけ読んでいただいてもある程度意味の通じる書き方をしたつもりである。なお,コピーは御遠慮願いたい。
 なるべく簡潔に読みやすくするために,ページ数を増やさないように努めたが,なにぶん,技術に限ったとはいえ,全般にわたって一通りまとめようとすると,結構なページ数になった。


 

2.概略


 

2.1 産業機器と民生機器の違い

 産業機器と民生機器の違いと,少量生産と大量生産の違いは,次元の異なるものである。産業機器用基板への取り組みの際には,この2つの違いをはっきりと区別して考える必要がある。

 産業機器と民生機器の違いは,必要とされる技能のレベルと管理手法である。
 民生機器は大量かつ低コストで生産して,不特定多数のユーザーに売ることが主眼である。大量に生産するには,作業者個人のスキルに頼らない管理手法が必要となってくる。

 大量に生産するためには多数の人に頼るわけで,その多数の人の腕前をすべて見届けるのは難しいから,数学的な手法に基づく検査方式が工夫された。この検査方式は,歴史的に言えば高信頼性を必要とされた米軍規格で制定されたものであるが,ある一定の不良を含むロット(母集団)を,決められた手続きで抜き取り検査により合否の判定をしたとき,合格ロットはある水準以上の不良を含まないとするものである。したがって,合格ロット(市場に出る製品)に発生するクレームの量は予測し得るので,それに対応するサービス体制を作ることができ,そのコストも算定し得る。

 もう一つ,民生機器は市場での価格競争があるから,低コストで生産することが特徴であるが,人の手作業の割合の多い組立作業でコストを減らそうとすると,相対的に人件費の安い地域で生産するか,または管理費の安い工場で組み立てるかのどちらか,あるいは両方である。

 産業機器は特定ユーザーに出荷し,ユーザーはその機器を使用することによって新たに利益を生み出すのであるから,トラブル発生時の影響が甚大である。
 製品の出荷時における検査で信頼性のすべて保証することはできない。したがって,材料・部品と製造方法は確かなものでなければならない。つまり,人の手にかかる作業においては,高い技能が求められる。

 

2.2 少量生産の産業機器

 少量生産と大量生産の違いは,大量生産では,生産の立ち上がり時期において,必要とされる技能に到達するまでに時間がかかったり,管理手法がまずいために不良が発生したとしても,たちまちには目だたないことである(もっとも,不良の数そのものは多くなる)。立ち上がりがもたつくとして,場合によっては外部の助力も求め得る。

 また,流れ作業方式の大量生産の特徴は,幾つもの工程を細かく分割し,それぞれを素人でもこなせるように生産することある。すなわち,難しい技能はなくてよい。あるいは,工程の中の作業者の技能が揃っていなかったとしても,作業のレベルに合わせて人を配分することができる。
 なお,最近では長野日電に端を発する,チャップリン方式でない量産方法が各社で取り入れられるようになっている。


 少量生産では,いわゆる慣れの時間がないから,素早く本質を理解することが求められる。いわゆる名人芸が要求されるといえる。
 当然のことながら,工程に携わる人が多いほど,またひとりが理解しなければならない内容が複雑であるほど,これらのことは困難になるわけで,それだけ高い技能と理解力が求められる。
 そこで,少量生産の産業機器の生産をするには,次のステップによるのが正しい。

(1) 品質を実現する最適なプロセスを立案し,検証し,決定する。
 その際,変動しやすい要素とそうでない要素を総体的に捉える。変動しやすい要素について,人の要素と機械の要素に分け,さらに,それらをコントロールできるかできにくいかという視点で考える。
(2) 決定したプロセスが採算にあうかどうか試算する。
(3) プロセスを決定したら,それを確実に守る。愚直なほどに守る。守らなかったら失敗する。
(4) 生産の途中で予期しなかった(許容範囲外の)不良が発生したら,最初の立案・検証・決定が間違っていたのであるから,直ちに(1)のステップに戻る。曖昧なまま進行すると,ここで費やす時間よりはるかに多い時間を後で費やすことになる(後ろ向きの仕事の発生)。
 高い技能を要求される工程に多くの人が携わる場合,様々なレベルの技能を目的のために統合しなければならない。そのために,次のことが必要になってくる。

(1) 作業標準を明らかにする。
(2) 作業者の技能を把握する。
(3) 機種に固有の作業条件を明らかにする。
 (1)と(2)は小規模の会社で互いに目が届く場合は,必ずしも厳密に文書化されたり制度化さている必要はないが,明確でなくてはならない。大抵の場合は「作業指導票」と称して (3)に (1)の一部を補足したものを作業者に与えるだけか,またはそれもされないことが多く,品質に問題が出た際の解析を困難にしている。。

 ここですぐわかるように,(1)と(2)が明きらかであれば,組立図(ある程度 (3)を記載してある)を配布するだけで,曲がりなりにも生産は可能であることである。
 (1)と(2)の確立は,実際には多大な事務量と年月の積み重ねを要する。上場企業は必ずこれが整備されているが,上場企業でも創業30年未満の会社では完全に整備されていない場合が多い。



 本編では技術上の要点を文書にまとめることを試みているわけで,これは上記の(1)作業標準に近いものである。

 なかなかにこういう文書は読んで貰えないもので,それは日本人に書物から自発的に学ぶ習慣が根ついていないことに加えて,そういう手段で学習しないで仕事をしても許される環境があるからであろう。


 

2.3 商売としての製造

 企業(会社)は利潤の追求を目的として存在している。アッセンブリーの賃加工の場合,売上高に占める人件費の割合が大きく,本当の意味の付加価値が見えにくい。

 「儲かる」とは,売上が多くて経費が少なく,その上に利益の額が大きいことであって,この事情は会社でも個人営業でも同じである。

 従業員の賃金は経費に組み入れられる。いま,A社とB社の従業員1人当たりの平均賃金と従業員数が同じだとして,A社の売上高のほうが多いとすると,この時,A社の労働生産性は高いという。
 資本主義(商売)は競争であるから,A社とB社が競争すると,A社はより多い利益を競争の資金に振り当てることができる。世の中が不況になって売上高が低下しても,A社は比較的少ない経費で製造できる。そして世の中には2社だけでなく,多くの会社があるわけである。
 商売で「儲ける」には,次の2通りの方法しかない。また,一時期だけ儲けてもしようがないわけで,それを持続しなければならない。

○ 他人のやらないことをする。
○ 他人がやれないことをする。
 そして世の中には同じような人間がひしめいているから,際だって他人はやれないけども自分にはできるということがそんなにあるわけではない。その上に,仕事の中味も複雑で高度な内容に絶えず進歩を続ける。したがって,地道で,かつ,的を得た努力の積み重ねが儲けにつながる王道である。


 部品を組み立てて商品を製造する過程を,儲けることを念頭にいれて考えてみると次のようになる。

(1) 1人だけが最初から最後まで手がける。複雑なものは限度がある。名人であればかなりのことが出来るかも知れない。
 1人だけでやれば,全体を見渡すことが出来る。逆に言えば,1人が見渡せる範囲の仕事しか出来ない。

(2) ところで,芸術品の場合は作家の個性が商品価値であるから,1人で全体を見渡すのが当たり前である。どれほど念入りに時間をかけたとして,作品の完成度が高められればそれだけ価値が高くなる。
 もうひとつ,趣味でなにかを作る場合は,楽しむことが目的であるから,時間はかけたほうが楽しみが長いし,1人でしたほうが楽しみが独占出来る。
 われわれは芸術品を造っているのではないし,趣味でしているわけでもない。

(3) つぎに,数人で分担してそれぞれが得意な作業を受け持ち,お互いに連携を取りながら仕事を進めるやりかたがある。人数が少なく,同じ場所で作業をしていれば,見渡しただけで全体の状況が判るから,生産性は上がる。しかし,数人で生産できる量は僅かであるから,資材調達など加工費以外のコストを考えると,それなりの付加価値のある商品でないと採算がとれない。
 少人数で生産する商品は,営業活動や生産量と納期(商品の流通)に対応できる幅に限りがあるから,現代の商業の仕組みでは商売になりにくい。この点を除けば,効率のよい生産形態といえる。

(4) さらに,数10人規模に人数が増えると,工程を細分化できて,それほど技能を必要としない工程を内職に出すなどで加工費の単価を下げることができる。直接の加工作業に携わらない,間接人員を設けるようになる。

(5) 数100人以上になると,明確な組織で指示系統と職務の分掌(秩序)を規定しないと集団の目的を効率的に達成できない。秩序のない集団のことを「烏合の衆」という。


 多人数になれば仕事の内容は複雑になり,それらを管理する人が必要になる。また,同じ性質の仕事を専門に受け持って分業することで能率化が図れればよいが,往々にして人は多人数の集団では狭い領域に閉じ込もったりルーチンワーク(同じ手順の繰り返し)だけしかしないようになりがちである。
 多人数で製造することの意義は,1人の場合よりも多くの量ができるか,1人ではできない高度な製品ができるかであって,それができないのであれば,大勢が集まる理由はないわけである。

 1つのプロセスに係わる人数が増えるほど,意志疎通が難しくなる。意志がお互いによく通じるようにするには,共通の規範(常識)と共通の言語が必要である。このため,標準化や基準化などの管理手法が必要になってくる。
 
 

2.4 リーダーの役割

 物を作る際に,直接手を下す人を作業者といい,その人たちをまとめる役割をリーダーという。
 リーダーの役割は,「管理」であるとよく言われるが,作業者をとりまとめるというよりも,要するに自分の技能を作業者を通じて具体化するものである。
 得意であるか不得意であるかは別にして,リーダーの持っていない技能を作業者から引き出すことは難しい( それができるのが,経営者といわれる )。
 リーダークラスの人たちの中には,「経営者」の姿として,経営者が「言葉」で部下(リーダーにとっては上司)を命令して動かしているように思っている人もいるかも知れない。

 字面としての言葉では、人は動かない。巷に氾濫している音声合成LSIも,人に命令しているわけではない。人の判断の助けをしているだけである。
 パソコンで合成された「言葉」に従うイヌやネコがいれば会ってみたいものである。

 

2.5 作業者の役割

 物作りには広範な技能と知識が要求されるとともに,一連の工程の流れの中の連携が必要である。いっぽう,作業に携わるすべての人がそれらを知っていることは難しい。
 そこで,極端にいえば,作業をする人は「言われたことだけをすればよい」という発想も出てくる。しかし,これは言葉のあやであって,完全な意味で指示されたことだけができるのは,ロボットだけである。

 物作りに直接携わる人は,次の事柄に留意しなければならない。

決められた範囲のことを確実にする。
全体における自分の範囲の位置付けをする。
 よく言われることに,大企業では自分の範囲の仕事だけを知っていればいい,ということがある。これは誤解であって,大企業であるほど,他部門の役割を知らなくては仕事が進まない。
 小規模の会社では,とくに意識しなくてもプロセス全体がぼんやり見えているので,そのためにかえってそれぞれの役割が不明確になりやすい。


 

3.新機種の留意点

 客先からの受注が新機種であった場合,不良や納期遅れを出さないで,しかも採算がとれるように様々な角度から検討することになる。
 各工程での留意点は次節以降に詳述するとして,ここでは新機種についてどういう視点から留意すべきかを言ってみる。

 新機種とは,初めて製造にかかる機種のことであるが,次のような内容に分類できる。

@  客先において,新規に開発された機種の場合は,製造上の問題点がすべて明らかになっていないことが多い。また,設計変更があって,それに伴う資材手配の変更,改造作業の追加がある。
 その機種の開発段階が,試作・量産試作(パイロットラン:Pilot Run;機能の確認)・プリプロ(Pre-production;製造工程の問題の把握)・量産のどの段階であるかで,事情が変わる。

A  客先において新規に開発された機種でも,既に開発されたものの類似の機種であるか,開発手法が確立されている時は,問題点が比較的少ない。

B  客先で既に生産実績があれば,問題点は出尽くしている。ただし,製造場所(人と設備)が変わることによる問題点は,当然,これからのことである。

サ 客先がどこか別の協力会社で製造していた場合,問題点のすべてが吸い上げられているとは限らないことに注意しなければならない。

C  リピート機種であっても,前回の生産時より月日が経過していれば,新機種と同じ取扱いをすること。この時,設計変更の有無に留意する。

サ 図面の改訂追番をみればそれが判る。なお,生基板の型名と追番(バージョン:Version)に注意を払うことを忘れやすい。

D  新規の客先の場合は,図面体系,帳票・伝票類,組織(指示伝達)体系,品質水準などを早い時期に理解しなければならない。

E  以上の目的のために,生産技術の専任者をおくのが適当である。生産技術は,工場のすべての職掌に通じた人がよい。


 

4.資材

  必要なフォーマット:部品出庫表,欠品(未出庫)リスト
  部品構成表
  実装図(組立図)

 資材は事務屋と思われている向きもあるが,アッセンブリー業の資材担当は製造作業の前段階である。
 たしかに,膨大なアルファベットと数字を処理するには,いわゆる事務処理能力と机重面さが要求されるが,帳票処理能力と棚の整理能力だけでは到底資材担当がつとまらないのは,たとえばそういう人を資材担当にしてみればすぐわかる。もっとも,帳票処理能力に本当に優れている人は,すぐに資材の業務のコツを飲み込むであろうが。

 アッセンブリー業は,部品と材料がなくては仕事が進まず,納期が遅れたことについて他に言い訳のしようがない。そういうわけで,資材は生産管理担当と同じ部門であるのがよい。あるいは,生産管理担当の影の部門であるのが一番いいように思える。

 

4.1 部品の検収

 客先より支給された部品が正しく出庫されているかどうかを,部品型名・数量についてチェックし,記録する。数量は部品メーカーの封印のあるものは現品票の表記により,それ以外は実数をカウントする。
 検収作業は色々な荷姿の部品の山を複雑な型名を手がかりに端から崩していく作業なので,後から疑念が出ないよう,着実におこなうことである。

 生産が長期にわたり,量が多い場合は専任の担当者が検収するのがよいが,ロットが小さい場合は製造の担当者が準備を兼ねて検収するのが合理的である。部品出庫表には実装する場所(ロケーション)が記載されていないので,検収の後,再び部品構成表に基づいてロケーション毎に仕訳するために部品の山を崩し返す無駄が省ける。

 型名と数量のチェックの後,不足または過剰になっているものについて,欠品リストの形で理由を添えて発注元に連絡し,すぐに揃えてもらう。欠品のあるまま製造にとりかかることは混乱のもとである。とくに,所要数に対する実数不足は混乱を招きやすい。欠品リストは部品出庫表に併記してもよい。
 発注元を経由しないで,部品メーカーから直送された場合は,入着報告を発注元にする。

 型名の間違いは,通常見落としがちな,わずかな違いであることが多い。たとえばDRAMのビット数とか,コネクタのアングルとストレートの相違などである。したがって,型名の中の記号の意味を理解しておくことが求められる。

 新規に開発・設計された機種の場合,設計部門から出される部品構成表と資材調達部門の出庫表は一致していない場合が多い。これは設計変更が資材調達に反映されていないことを意味する。
 開発部門で発生した設計変更を製造部門に伝達する方法(書式)は客先によって様々である。だいたい,次の3通りの方法がある。

図面の全ページを新たに出図する方法。図面の追番が変わる。
図面の変更ページだけを差し替える方法。追番に注意。
変更箇所だけを変更連絡書により伝達する方法。
 部品構成表と出庫表は照合をしておく必要がある。両者に相違があった場合,通常は部品構成表が正しいが,変更連絡書の配布が遅れていることもある。もし相違があった場合は,必ず客先の担当者に問い合わせしなければならない。

 

4.2 部品の出庫

 客先から出庫されたままの部品は,社内の工程の通りに区分されてないのが普通である。これを工程と作業場所に分け,製造担当者のもとに出庫する。
 また,工程投入に先だって,少なくとも1台の試作を組み立てて,量産のプランを作ると共に,疑問点を明らかにしておかなければならない(絶対条件)。
  工程は次ページのように分かれる。支給部品以外に,自社調達の副資材も用意しなければならない。



[担当部門] [ 工  程 ]  [ 部 品 内 容 ]   [ 副 資 材 ]


自装 リフロー   SMD   クリームはんだ
ボンディング   SMD  ボンド
後付け   自装できないSMD (はんだマスキング剤)

手挿 フォーミング準備 ロングリード部品など マスキングテープ
挿入 リード付き部品 棒はんだ
       後付け 自動はんだ槽でできないもの   フラックス
はんだ面に実装するもの 糸はんだ
(シリコングリス)
(接着剤

中間検査 外観検査

通電検査 通電検査 EPROM,ラベルなど
後付け

総合組立 組立 基板,機構部品,ラベルなど
 
出荷検査 検査

梱包 梱包 梱包箱,ラベル,現品票,出荷伝票,梱包材(テープ)

 

5.自装(表面実装)

 いわゆる表面実装の工程の呼び方は会社によってさまざまであるが(SMT,自挿,実装,面実装,マウント),ここでは自動装着を略した「自装」という。
 マウンターのメーカーは各社があるが,F機械製造鰍フものをモデルとした。また,角チップ部品を高速で搭載する機械を「チップマウンター」,異形部品を精度よく搭載する機械を「異形マウンター」とした。

 
5.1 新機種頭出しの作業手順

 新機種に取りかかる際は次の5.1.1から5.1.13までの作業手順でおこなう。
 各工程の詳細については 5.2 節以降にもう一度あらためて記した。


 
5.1.1 メタルマスクの確認(事前確認)
 新規製作のメタルマスクについては,開孔,厚さ,エッチングの状態を確認する。メタルマスクの設計者とプログラムの製作者が異なる場合は,流れ方向を確認する。
 リピート機種では,基板のバージョンを確認する。

 
5.1.2 クリームはんだの選定と発注(事前確認)
  まず,客先指定の有無を確かめる。
 指定がなければ,要求性能,ファインピッチ部品の有無,洗浄の有無により,社内標準の中で最適なはんだの種類を決定する。この決定は責任者がおこなう。

サ クリームはんだの納期は通常2週間である。また,保管限度は冷蔵で 1ケ月ないし3ケ月で,これは,個々の容器に記載されている。室温保管可能とカタログにうたわれているものも冷蔵保管する。
サ クリームはんだの性状は製造直後から徐々に変化する。先入れ先出しで使うことである。

 
5.1.3 ライン搬送の準備
 基板ラックと搬送コンベアおよび機械のレール幅など,ライン搬送の設定をする。薄い基板,割れやすい基板ではとくに注意する。

 
5.1.4 プログラムの準備  
 正しいプログラムを機械に設定する。プログラムを作成して日を置かずに実装する場合は問題ないとしても,試作をおこなったり,基板のバージョンが変更になった設計変更機種の場合は,プログラムのバージョンに注意する。
 厳密には,設計部門の出図にプログラムが1対1に対応すればよいのであろうが,アッセンブリー業で間接経費を伴わずに実現できるのは,コンピュータが安価になるまであと20年くらい待たねばならないであろう。それまでは,絶えずヒューマンエラーの発生を考えておかねばならない。

 
5.1.5 デバイスの準備  
 プログラムD(デバイス)データにより,デバイスを準備し,定められた手順で確認する。
 ダイオード,トランジスタ,ICなどの向きのある部品は,最初に支給された部品の巻き方向に合わせてプログラムを作成しているが,巻き方向の仕様にはL,Rの2通りがあるので,違う仕様のものが混在していないとも限らない。
 テーピングの巻き替えをした部品はとくに巻き方向に注意する。巻き方向は,送り穴を左にしたとき,1ピンが左側に向くのがLである。

 吸湿を嫌う部品(アルミ箔の包装か,乾燥剤が入っている)は,注意書きに従い,マウントの直前に開封する。これは吸湿された水分がリフロー炉の急激な加熱で膨張し,部品の内部が壊れるからである。手はんだ付けの場合は問題ない。

サ 新機種においては,慣れていない部品があるので,型名の混同と極性に注意する。また,間違いやすい型名が誤出庫されている可能性もある。

 
5.1.6 定数確認(初品確認)
 両面テープ上に装着して,C,Rの測定とその他の部品の型名と向きの確認を次の手順でおこなう。生基板に透明なフィルムを貼り,その上に両面テープを貼ると,後の始末が楽である。

  責任者(品管担当)を1人決める(プログラム担当者以外)。
  部品構成表,組立図のコピーを用意する。
  基板の部品型名・極性と図面とを照合する。
  (基板にラップフィルムをかぶせ,マジックで消していく)
  (図面を蛍光ペンで消していく)
  確認結果の図面を保管する。

 
5.1.7 はんだ印刷の確認
 基板に印刷して,最適な印刷状態を実現させる。最適な状態とは,顕微鏡(×10倍)で観察して,ダレ(型崩れ),ニジミ,フラックスの滲み出しのない状態で,次の要因がある。

  クリームはんだの種類,製造後の経過日数
  練り具合
  クリームはんだの量
  基板とマスクのクリアランス
  スキージの印圧
  スキージの速さ
  手刷りの場合は,スキージの角度
  版離れの速さ
  スキージの摩耗状態
  室温

 
5.1.8 座標修正
 実際の基板上に装着して,位置ズレを修正する。先の両面テープ基板での位置ズレと実際の基板での位置ズレは異なる。
 位置ズレの原因は,座標データの場合と,カムスピード,カートリッジの送り具合とかノズルの状態による場合がある。トレイ部品では,画像認識処理の都合上で起きる場合があり,これは厄介である。
 位置が不規則にずれている場合は,プログラムの座標でなく,マウントで位置ズレを起こしている。

 リフローは,はんだの凝固にともなってある程度位置ズレが吸収できるが(セルフアライメントという),マンハッタンなどを防ぐために,できるだけ中心位置にプレイス(place)するのが望ましい。
  フロー面では,僅かな位置ズレがはんだの仕上がりに大きく影響する。はんだ槽でのはんだの流れを考慮した座標修正とする。

 
5.1.9 リフロー条件の設定  
 過去の類似の基板(熱容量が近いもの)の条件を参考に設定する。熱容量とは簡単に言えば重量のことである。

サ クリームはんだの種類とリフロー炉により,条件は異なる。
サQFPなどが集積していると空気の対流が悪く,光沢のないはんだや,極端な場合は生焼けがでることがある。
  空気は熱の伝導媒体としては最も効率の悪い物質である。

 
5.1.10 リフローの頭出し  
 1台(または1シートのこと,以下同じ)だけについてリフロー炉を通し,結果を見る。
 はんだの光沢がよく,1608チップにマンハッタンがないのが最適な条件である。条件には幅があるので,その中心を狙わなくてはいけない。いきあたりばったりで良品が出たとしても,それが最適条件ではない。
 リフロー条件の決定は,はんだの接合強度について,広い知識と経験を持つ責任者が決定すること。

 
5.1.11 リフローのランニング  
 次に,10台だけを正常な生産ピッチで流し,それについてはんだの状態を厳密に(目視検査の作業机で座って観察して)確認する。リフロー炉のそばで立ったまま見たのでは,不良を見落とす。ただし,リピートの量産機種ではこの限りでない。
 この段階では,リフローのばらつきを確認するのが目的である。この間,クリームはんだの印刷はしないで待っておく。
 正しい温度設定がこれで決まったら,温度プロファイルを記録する。温度プロファイルは品質が守られていることの証明の他,品質異常が発生した時のチェック,設備異常,気温が変化した時の再温度設定,類似の基板の条件設定に役に立つ。

 
5.1.12 量産移行の決定  
 以上の結果に基づき,責任者が量産への移行をできるだけ早く決定する。ただし,オペレータはこの間,クリームはんだの印刷は停止して待機する。

サ 量産移行の決定は,それまでの頭出しの努力が実って,定常運転に移る儀式であるから,ラインリーダーはオペレータ全員を集めて注意点などを伝達し,量産移行を明確に宣言するのがよい。

 
5.1.13 継続確認  
 連続運転に移行した後,さらに10台以上について(印刷が手刷りの場合は,1ラック分25台について)機械側で装着状態を確認する。
 問題がなければ,30分に1台の抜き取り検査とする。

サ 新機種頭出しの際に最も重要なことは,最適なクリームはんだの印刷の実現とリフロー炉の設定である。
 印刷後の時間の経過とともに次第にはんだの接合状態が悪くなり(印刷後約2時間),さらにある時間(5時間程度)が経過すると,急激にタッキネス(粘着保持力)が低下して,タンタルコンデンサ,アルミ電解コンデンサなどの背の高い(慣性モーメントの大きい)部品が位置ズレ・欠品をおこす。

サ 機械の異常または休憩による停止があれば,連続生産時以上にクリームはんだが放置されることになるが,搬送コンベア中に停止して滞留する台数に注意しなければならない。
 印刷機からマウンター(異形部品)までに10台の基板がストックされるとして,マウントサイクルが4分とすれば,印刷してからマウンターにはいるまでに40分を要することになる。

サ ロット終了時には部品切れに伴うスキップが生じ,多品種であればこれのプログラム伝送に膨大な時間がかかり,この間の製品ははんだの仕上がりが悪かったり,位置ズレがひどくなる。
 これの対処の奥の手として,あらかじめ,ひとつひとつの部品を1ブロックとするプログラムを作っておき,機械側でブロックスキップとしてマウントする方法がある。

 

5.2 各設備の要点

 

5.2.1 メタルマスクの要点  

 クリームはんだの性能向上に助けられて,メタルマスクの設計はずいぶんと容易になった。P=0.5のQFPであっても,適切なパッド設計であれば,パッド原寸の開口でもなんとかやれるくらいである。
 とはいえ,P=0.5以下ではスキージ方向と並行するパッドのはんだ量が少なくなるので,この補正はしたのがよい。一部の電機メーカーで,予めこれを見越してパッド形状を変えて基板を設計するところもあるが,印刷機メーカーによってスキージ方向が異なることに留意しなければならない。
 メタルマスクの設計の基となるのは,パッドのフィルムがベストで,開口の状態がイメージしやすいが,その点を除けば,レジストフィルムでもさしつかえない。

 マスクのエッチング技術は,マスクメーカーによってかなり差があるようである。詳しい事情はわからないが,納期の早いメーカーはエッチングが悪いような感がある。このため,エッチングの断面を観察するように心掛けるとよい。はんだの抜け性が悪ければ未はんだとなり,これの発見は目視検査でも電気検査でもむずかしい。
 メタル部の大きさはマスクの製造コストに関係するが,基板の大きさによらず,なるべく一定とする。それでなくても変動要素の多いクリームはんだの印刷で,あえて要素(パラメータ)の数を増やすことはない。

 同じ開口としても,QFPのメーカーによってずいぶん,はんだ不良やはんだなじみが異なる。リードのメッキの材質や状態が原因であろう。ゲートアレイやスタンダードセルのリードはなじみが悪い傾向にある。すずメッキのリードははんだが吸い上げられてフィレットが見えなくなる。
 ハンダレベラーの基板は,ある程度そのはんだ量を頭の隅に入れておく。ただし,実際には基板メーカーのレベラーの技術によって,大きく不良の程度が異なるので,一率にレベラー仕上げであればはんだ量を減らすものでもない。

 フィデューシャル(基準)マークがフィルムにない場合は,できるなら基板の設計時の座標を教えてもらうのがよい。基板の設計座標はミリ格子とインチ格子があり,インチ格子では実測ではすっきりした数字とならない。

 なお,銅スルーのプリフラックスとクリームはんだの「相性」があるには間違いがないようだが,アッセンブリー専業の立場からは,なかなか踏み込んだ検討ができない。

 

5.2.2 搬送ライン(ラック,搬送コンベア,機械内部のコンベアとレール)の要点  

 幅調整は,レールをいったん大きく広げ,次に基板をいっぱいに挟みこんでから,約1mmの間隙ができるまで調整ハンドルを戻す。
 ハンドルの回転と送りはねじのピッチで決まり,例えば1回転が4mmというように決まっている。

サ なお,ここではそれほどの精度は必要ないが,一般的に,ねじ(スクリュー)加工された軸で位置調整をするときは,送り側と戻し側では位置が違い,その間で変動することをバックラッシュという。
 次項の手刷りのメタルマスクを調整するときなどにみられる。

サ 基板の角にR(アール;ラジアル)またはC(面取り;コーナー)加工がなされていないものは,コンベアから次のコンベアに移る時に引っかかりやすい。機械と搬送ラインの芯が少しでもずれていないかどうかを確認する。
 機械の搬送確認は,パススルーモードでおこなうとよい。

サ 基板の位置検出はそれぞれのセンサーでおこなっている。基板のセンサー位置にスリットなどの穴があって,正しく基板の端がただしくレールの端に停止しないことがある。
 また,センサーの不調がたまにある。感度調整の出来るタイプはスタビリティ(安定度)をチェックする。

 

5.2.3 手刷り印刷の要点  

 印刷は 5.1 節の手順通りにして,必要以上に印刷しない。

 手刷り印刷では基板の縁(外枠)で基板を固定するわけであるが,外枠と印刷パターンの相互の位置関係がズレている機種がある。ひどい場合は,1シート毎に位置合わせをしなければならない。固定がずれたりマスクが動いても印刷ズレとなるので,1枚1枚についてよく見ること。

 両面リフローの裏面の場合,基板の周囲にスキージの押圧を支えるよう,スペーサを充分に設ける。でなければ,マスクがたわんで場所による印刷厚さのムラが生じることがある。
 基板とマスクの隙間は,密着かほんの僅か隙間(〜0.3mm)が空く程度が基本である。押しつけてはいけない。

 クリームはんだは,ポット容器のまま機械練り(マルコムのソフナー)した後,均一にするための手練りを加えて,最小限の量をマスクに取り出す。これは頭出しの時間が経過するうちに乾いてしまう被害を最小限にとどめるためである。量産に移ってから,新しいはんだを足す。

 マスクに広げたはんだは,滑らかにローリングし,マスク表面に残らないようになるまで練り合わせをする。ローリングが滑らかにできていれば,それほど力が要らない。ローリングができていないはんだを力づくで印刷したものは,抜けが悪い上に,品質も悪い。
 スキージ角度は 45゜よりやや立てて, 60゜くらいが基本である。当人には分かりにくいので,誰かに横からみてもらう。
 均等に力を入れるのは案外に難しい。基板に印刷されたクリームはんだの厚みは少し注意深く観察すれば容易に識別できる。顕微鏡でみれば一目瞭然である。
 ファインピッチでブリッジが出やすい部分はそこだけに押圧(おうあつ)を加える。
スキージを往復で使う場合は,角の摩耗が異なっていることに留意する。
 押圧は,マスク面にはんだが残らなくて,ブリッジ,ニジミ,ダレ,カスレのない程度が適当である。ダレははんだの練り具合と版離れに影響される。

 マスクのクリーニングは大切であるが,溶剤が残っているとかえってよくない。エアーで充分に飛ばす。エアーをかけるときは,手首をきかしてガンを振り回わすと,掃除をしたような気になるが,実際には掃除はできてはいないから,パッドの開口に沿ってゆっくりとおこなう。
 試し刷りの最初は,紙かフィルムを基板上に敷いてする。クリームはんだの拭き取りを完全にするのは難しく,超音波洗浄でもボールが残留する。IPAか n−(ノルマル)ヘキサンを含ませて,溶剤ごとエアーで吹き飛ばすしかない。

印刷した基板はラックの上側から収納すること。ローダは上側から送り出していく(先入れ先出し)。

サ 抜けの具合は,マスクのエッチング(断面の平滑さ)にも影響される。
  版離れの前に,マスクを基板に密着させたまま軽く叩き,マスクとはんだの境界に衝撃を与えると抜けがよくなることがある。

サ ファインピッチの場合,スキージの方向と並行する方向のリードのはんだ量が少なくなり,押圧が大きいほどその傾向が強くなる。P=1.0以上の広いピッチのQFPで,不定形のクリームはんだを使っていた昔は,スキージと直交方向のリードのはんだが少なくなっていた。

サ クリームはんだは顕微鏡で観察すればわかるように,微細なはんだの粒子とフラックスとチクソ剤
(可塑剤)その他を練り合わせたものである。その性質は混合物というより,コンパウンド(混和物)に近く,生き物と考えたほうがよい。
  クリームはんだの種類には,はんだの粒子の形に球形と不定形があるほか,抜け,ダレ,はんだボール,フラックス残渣の性質,はんだなじみ,乾きなどの点から,多くのものがある。

 

5.2.4 自動印刷の要点  

 要点は手刷りの場合と基本的に一緒である。
 カメラの認識エリア内にフィデューシャルマークが位置するよう,マスク枠のスペーサを調整する。
 基板ホルダ(吸着プレート)をセットする。
 印圧,スキージ速さなどを設定する。両面リフローの裏面は,僅かな基板のソリで印刷厚さが変わることに留意する。
 バキュームがクリームはんだを吸い取っていないか,裏まわりをおこしていないかを確認する。両面リフローの表面の場合,裏面にはんだが付着すると,次の裏面の印刷時にその部分の印刷不良(はんだ過多)となる。

サ ユニバーサルの吸着ホルダの設定は大変面倒である。基板を透明なフィルム(OHP用コピー用紙)にコピーして,吸着点を透かしてみて設定すると間違いが少ない。量産品であれば,専用の吸着プレートを製作したほうが,段取りによる機械停止時間がはるかに短くてすむ。

 

5.2.5 ボンドディスペンサーの要点  

 ボンドが有効期限(容器に記載)内であることを確認する。
 ボンドの量と糸引きに注意する。糸引きは粘度の経時変化やディスペンサの原因による場合と,バックアップ(基板の反り,または振動)による場合とがある。ディスペンサは微妙な吐出をエアーでコントロールしているので,長時間停止後の運転の際は調子の悪いことがある。

 ボンドがはみ出して,部品の電極とパッドの間に入ると,その部分が未はんだとなり,これを修正するのはかなりの手間であって,後工程に負担を強いることになる。
 硬化後の接着強度が,角チップで2s以上であることを確認する。

サ SOPの特定の部品が自動はんだ槽で脱落するようであれば,部品メーカーでモールドの離型剤が残留している疑いがある。

サ ボンドはエポキシ樹脂のモノマー(分子が重合する前の不安定な状態)であるので,毒性があり,素手で取り扱うとカブレなどを生じる。皮膚に付着した場合は速やかに石鹸で洗い落とすこと。


 

5.2.6 チップマウンターの要点  

 たわみ強度のある基板を除いて,通常はバックアップピンを設定する。両面リフローの裏面とフロー面の場合,一度リフローを通っているので,基板に反りが生じていることがあり,これに注意する。
 一部のマウンターでは,基板厚さと従属ピンの設定をする。基準ピンと従属ピンに基板がスムーズに脱着でき,遊びがないことを確認する。
 基準穴の径は基板により異なるが,4mmであることが多い。基板のサイドクランプがいつも(画像認識の精度以上に)確実に保たれているとは限らないので,基準ピンの保持精度にも留意すること。

 カートリッジが比較的古いものであれば,1608サイズの角チップの裏打ちに注意する。32mm幅の紙リール用カートリッジで普段使っていなかったものは,動作がスムーズかどうか注意する。

サ 新機種の時は,カートリッジにすべて新たにリールを取り付けるので,吸着点まで部品を送り込んで おけば,最初の1台でリカバリーアップを繰り返すことがなくって,煩わしくなくてよい。

 

5.2.7 異形マウンターの要点  

 デバイスに必要なカートリッジが揃っていることを確認する(事前準備)。カートリッジの種類には幅と送りピッチと紙・エンボスの区別があって,他機種に使われて不足していることがある。
 このため,両面リフローの基板であれば,2台を1シートにして表裏を並べるやりかたがある。そうすれば,デバイスを交換する必要がない。

 トレイ部品,とくにコネクタなどの向きがプログラムでどのように組まれているか確認する。
 カートリッジの送りピッチが部品のピッチと合っているか,手で送ってみて確認する。部品のピッチよりカートリッジのピッチが小さい場合はプログラムで設定できるが,逆の場合は部品を捨ててしまう。
サブロボットの吸着パッドとキャリアのパッドを,部品に応じたものに交換する。
 薄い基板でQFPがずれるなど,必要であればバックアップピンを設定する。
 エンボステープの送りがスムーズであって,吸着される前に部品がひっくり返って吸着エラーや脱落をしていないかどうかを確認する。
 画像処理エラーで排出されたQFPは専用のトレイに戻すこと。角チップ用のロス部品の小箱に入れるとリードが変形する。
 リードの変形した部品をそのまま手載せすると,修理の時にもう一度外さなければならない場合がある。

サ 機械のトラブルなどでシーケンスの途中で停止した時には,原因を突き止め対処するわけであるが,原因が判らないか,時間がかかる場合は,クリームはんだが乾くので,やむなくそのデバイスをとばし,次のデバイスのシーケンスから続けること。途中で払い出しすると残りの部品を全部手で装着しなければならないので大変な手間である。

 

5.2.8 リフローの要点  

 コンベアの幅調整の失敗は基板の仕損じとなり,通常は基板の支給枚数に余裕は無いから,とくに注意すること。
 リフロー炉の入り口と中央部で幅が違うものがある。搬送チェーンの支持方法によっては,調整ハンドルの送り側と戻し側で幅が違ってくるので,一旦,少し狭くしてから合わせる。
 幅調整ハンドルの1回転が何mmであるかに留意すること。

 次に,条件の設定を定められた手順でおこない,最適の温度プロファイルを記録する。

[ 熱   量 ]  不足・・・・・・・・・・やや不足・・・・・・・・・・適正・・・・・・・・・・・・・・過剰
[はんだの状態] 生焼け 黒い色      光沢あり   くすんだ色
                  銅箔・基板の変色

 1台だけ流す場合と密集して流す場合では,熱の伝達がかなり異なるので,マウントのサイクルで流す時の仕上がり状態をみて,最適条件を決定する。
温度プロファイルは必ず記録すること。これは,出荷後に異常がみつかった場合,客先から条件設定が正しかったかどうかの確認がくるからで,記録がなければ証明ができない。

 

5.2.9 ローダ(アンローダ)とラックの要点  

 ラックの幅は上側・中央・下側と出側・入り側の全部を正しく合わせる。アンローダ(ライン出口側)のラック幅が狭いと,基板割れにつながる。割れ易い基板とは,厚さの薄いもの,Vカットやスリットの多い多面取り基板,それにベークライト(フェノール樹脂)の基板である。
 ラツク幅の調整時には生基板の取扱いに注意し,素手でパターン部分を触って表面状態を悪くさせたり,落として破損させないようにする。
 幅調整をしたラックは,アンローダに入れて,手で(プッシャーでなく)基板を押し込んでみて,コンベアから引っかかりなく入ることを確認する。いきなりプッシャーを使うと,調整できていないときは基板を壊してしまう。

サ 上下連結ボルトを強く締め付け過ぎると,ワッシャがアルミフレームに食い込んで変形してしまい,次の幅調整がますますやりづらくなる。弱いとラックの持ち運び時に(どうしても斜めに持つので)緩んでくる。ボルトを締めていって,当たりがとれてから,さらに 1/4回転締め込むのが適当である。

 

5.3 その他自装に関する注意点


 

5.3.1 デバイス装着時の注意  

 新機種では慣れていない部品が多いわけであるから,型名のチェックは充分にしなければならない。
 使用部品は,そのロットとして出庫されているものに限る。同じ機種の次のロット,同じ客先の違う機種,違う客先の部品を混用してはならない。

サ 表面実装部品は,角チップ(CR)と少数の部品(コイルやフィルター)を除いて,すべて向きがあると思っていて間違いない。
 向きのある部品にはなにかのマークかリード(電極)の太さの相違かパッケージの切り欠きがある。ただし,6本電極のミニモールドのトランジスタで印刷以外に識別がないものがある。クリスタルには向きのあるものとないものがあるが(クリスタルとクリスタルオシレータ),向きのないものはテープの中で揃っていない。

サ SOP ICは製造ミスでない限り,型名の印刷が読める向きに見て,左手前側が 1pinである。しかし,QFPは型名の印刷向きと 1pinの位置は対応していないものがあるので注意する。
サ ミニモールドの6本電極の部品はSOPではなくて,1pin の位置は部品により異なる。SOPとミニモールド部品は型名の付け方が違うので見分けがつく。
  QFJ(PLCC)は辺の中央が 1pinである。


サ 部品の型名は複雑であるが,アルファベットや数字の意味を理解して間違えないようにする。
 TTL ICの場合は,各部品メーカーから同じ機能を持つものが出されていて(コンパチ;コンパーチブル)型名が複雑であるが,「74」の次に続く記号を読む。
 角チップの場合は,例えばロームのコンデンサであれば「MCH21」が「2125サイズのコンデンサ」の意味である。→詳細については 8章 電子部品の周辺知識を参照のこと。
 角チップ部品(極性がないもの)で,部品の末尾に付く「-T」はTapingの意味であり,無視できる。
 TTL ICで,部品の末尾に付く「FP」は Flat Package の意味であり,これも無視できる。
 「TL」「T1」「T147」などは巻き方向であるから無視できない。これらの記号は部品により異なる。

サ 巻き方向は,リールを手前から奥に送りだしたとき(角チップやエンボスでは送り穴を左側にしたとき)の部品の向きを左(L)向きという。
 ICの現品およびリールには,型名の他に製造ロット記号(大抵は2〜8桁)が印刷されている。通常,これは無視する。無視しないで記録することもある。

 

5.3.2 欠品の発生した場合の処置  

 マウントミスによって,1台に何点かの欠品が生じた場合は,わかるように表示をする。客先によって捨て基板にマジックインキで書いてもよい場合といけない場合がある。トラブルによって連続して欠品が続くようであれば,その全部にいちいち表示するのは効率的でないから,まとめて表示してもよい。
 リフロー前で部品が動いてしまって正しい位置に載っていないのを見つけた場合は,余程明確に間違いがないと判断できる以外は,欠品のままとする。手載せで間違ったとしても,リフローを通ると機械装着と手載せの見分けがつかなくなり,不良修理の際に非常に困難になる。

 部品の数量不足によって欠品が生じる場合は,責任者がそれを後付けする工程を確認してから欠品進行を決定する。状況によっては,欠品のない台数で生産を打ち切るのよい場合がある。

 

5.3.3 ロス部品の取扱い  

 支給部品の数にまったく余裕のない客先がある。また,一見余裕があるようでも,基板に装着しなかった部品は有償であるから(つまり売上は完成された基板の台数によるわけであるから),ロス部品は全部回収しなければならない。カスタムICなど,再手配が難しいものがある。
 ロス部品は次の場所で発生する。機種切り替え時にはここを完全にきれいにする。支給数に余分の無い場合は,これを後付けしなければならない。

カートリッジ交換台の周辺(リール装着時のこぼれ)
機械内部(ノズルからの脱落)
画像処理エラーのパーツを捨てるポケット
エンボスの空テープを収納するチャンバー(吸着できなかったもの)
裁断された紙テープの中(リールごと送られたもの)

 ロス部品は機種名を表示した小箱にまとめる。違う機種をごっちゃにしてはならない。
 ロス部品は機械側に滞留させず,それを必要とする工程に速やかに渡すこと(再テーピング,手載せのための仕分け,手挿,修理,資材などの工程)。

 

5.3.4 現品表示  

 現品表示はラックまたはコンテナの1台ずつにおこなう。いくらコンテナの数が多くなっても,1つずつについて表示する。慣れれば面倒なことではない。
 新機種の場合,正式品名を確認する(プログラム名とは異なる)。

サ 記入はよく見えるようにマジックインキを用いる。大事な内容は赤文字としたいのが人情であるが,そもそも大事でない内容などないのであり,また,異常はどんな時でも必ず通常以外の処理を伴うわけであるから,赤文字(警戒色)は異常の表示に限ることとする。
 

5.3.5 稼働率とカートリッジ(マガジン)交換  

 稼働率の向上はどの工場でも急務であろう。
 機械の停止要因を入力・集計する器具もあるが,ここではカートリッジ交換の稼働率に占める割合を義務教育程度の算数で計算してみる。

 いま,マウンターの搭載速さを,0.20 sec/ケ (カムスピードの減速を考慮)とする。
 チップの1リール当たり個数は,形状・サイズでちがうが,3,000 ケ/リール とすると,1リールを搭載するには,
3,000 ケ/リール × 0.20 sec/ケ = 600 sec/リール
を要する。

 すなわち,10分に1回のリール交換が発生し,24時間では 144回の回数となる。特定の機種について計算しようと思えば,各デバイスのリール個数と搭載速さを掛ければよい。

 カートリッジは機械が部品切れとなって停止する前にあらかじめ用意しておくのがベストであるが,カートリッジが不足しているか古くなっているために,元のカートリッジにリールを着け替えなければしないとすれば,そのために 2分を余分に要したとして,2 分 × 144 回 = 288 分/日 となる。   マウントラインのコストを7,000 円/時とすれば,なんと,33,600円/日である。
 M社のダブルカートリッジやF社のデバイスチェンジモードは,この点を考えている。

 同じように,リール交換が20秒遅れたとして(停止した機械に駆けつけるのが遅い,うまくリールをつけられないのでリカバリーアップするなど),一日では 2,880 sec,つまり 5,600円となり,金額としては大きいが,売上高(加工賃)に占める割合は案外に少ない。

 部品が切れる前に新しいリールを用意する時は,機械の検出するテープエンドのメッセージを頼りにするわけであるが,テープエンドが出ても,基板1枚あたりの使用数が多いものが早く使われていく。バイパスコンデンサなどはテープエンドが表示されてからで間に合わない。
 正しくは,表示されたデバイスの使用数とテープの送りピッチを考えて,早く無くなるものからリールを準備するわけであるが,いちいち割算をするのは面倒であるので,どうしても5本程度は先読みして準備することになる。
 テープエンドの検出センサーから吸着ポイントまで, 4mmピッチの部品であればで 75ケが並んでいるので,基板1シートに 3ケの使用数とすると,25シート分である。サイクルが 60秒であるとすると,25分後に部品が切れる。これが 25ケつかいの 104Zであれば,1分後に切れてしまう。考えるのが面倒であれば,早見表を作っておくとよい。

 リール交換の際,たとえばオペレータAがあらかじめカートリッジを用意し,デバイスNo.を記入しておいて,オペレータBが停止時にデバイスリストと現品を照合すれば,新旧のチェックを二人がかりでおこなう時間が省略できる。

 なお,リール交換時の新旧のチェックは大切であって,万一違う部品を取り付けると,大変な後ろ向きの仕事が発生する。リールの保管棚にデバイスNo.を表示しておいて,ひとりのオペレータでリール交換をするやり方もあるが,まずは人の注意力には限界があると思うべきである。

 

5.3.6 クリームはんだの材料費の考え方  

 クリームはんだは単価が高いものなので,コスト削減の対象項目となりやすい。コスト削減は大切なことなので,ここでクリームはんだについて考えてみる。

 いま,クルームはんだAとクリームはんだBで,QFPのはんだ不良の発生が基板1台で1件違うとする。はんだ不良の修理にマテハン込みで90秒を要するとして(検査時間は同じ),時間単価を 1,200円/時とすれば,30円の違いである。
 一方,クリームはんだの目付量をロス込みで 5g/台とすれば(実目付は電子秤で簡単に計れる),価格の差を 1,000円/Kgとして,5円の違いでしかない。
 実際には,1,000円の価格差のあるクリームはんだの性能は,基板1枚当たり1件の不良の差程度ではない。

 経理の立場からすれば,副資材の支出は目に見えるが,はんだ修正の人件費は見えにくい。これも,人手に頼ることの多いアッセンブリー業の習性だと言えば,言い過ぎであろうか。
 

5.3.7 チッソリフローとはんだ接合  

 チッソ(N2)リフロー炉が実用域に達してからしばらくになる。
 はんだ付けは溶接のひとつである,と言えば,意外に感じる人のほうが多いと思う。意外に思いながらも,機械工学の知識のある電気屋さんは,「そう言えばそういう分類になっていたかなあ」と知ったかぶりをするであろう。これはあくまでも「知ったかぶり」にしか過ぎない。
 では,なぜこれを知ったかぶりであるかと言うと,はんだは電気的接合を主眼としているのに対し,その他の溶接手法はすべて機械的接合を主眼としている違いが言われていないからである。もちろん,物理学(半導体工学)の立場にある人には,この辺りの違いはすぐにわかるだろうが,はんだを論じる電気屋さんは,大抵は物理の思想を忘れているものなのである(忘れなければ電気屋としてやっていけない)。
 すべての物質は,絶対零度で原子の動きが止まる。鉄鋼の場合,それよりはるかに高い,約1,800゜Kが,原子が自由に運動する温度で,これを融点という。はんだの場合は,融点は約460゜Kであるが,いっぽう,室温は 293゜Kである。これを鉄鋼の尺度に直せば,はんだの室温とは,鉄が真っ赤に焼けた状態である。すなわち,室温ははんだの融点手前であるから,原子は激しく運動をしている状態である。

 (なお,高温の物質が 赤-橙-黄-白 の色に見えるのは,原子の運動状態ではなく,原子の中の電子の状態で色を発し(色温度),その温度であれば,鉄鋼も金も陶器も同じ色に見える。)

 鉄鋼の溶接で誰でもすぐに思い浮かべるのは,電気アーク(被覆棒)溶接であろう。被覆溶接棒のフラックスはガスを発生して,融けた金属から酸素と窒素を遮断している。アーク溶接は現場的であるから,門外漢の目に触れる機会が多いが,工場ではこのような被覆棒(多量のフラックス)を使わないで炭酸ガスなどを吹き付けて積極的にを雰囲気をコントロールする溶接方法が主流となっている。この他に,アルゴンガスを用いる溶接法も一般的である。
 (なお,炭酸ガスは酸化性であるから,溶接ワイヤ中に脱酸成分が入っている)。

 はんだ付けは低温でおこなわれるので,フラックスの化学的な働きが論議の中心になりがちである。
 それはそれで間違いはないのだが,酸素が介在していない状態がもっともいい条件であることは間違いない。
 チッソリフローはその点で原理的に優れている。設備費やランニングコストが高価であることは,はんだ不良にかかるコストと対比し,要求される品質を考えてみればよい。
 Pb(鉛)フリーが問題となっていて,新しい合金の開発が進められているが,それを機会に普及するようになるのではなかろうか。

 

5.3.8 オペレータの心構え  

 自装機のオペレーションは,通常運転の時はそれほど過酷な仕事ではない。機械を止めまいとすると結構忙しいが,適当に走り回ることで,肉体的な疲労は少ないと言える(ファインピッチのクリームはんだの手刷りと夜勤は別である)。
 自分ひとりの手仕事でなく,機械を操作すること,つまり道具のように自分の体の一部になるようなものでなく,独立して機能する相手を使うことは,相手があるだけに難しい。
 肉体的に疲れていなくても,精神的に疲れていれば仕事ははかどらない。
 では,どういう場合に精神的に疲れるかというと,真面目にやろうとしても思ったことができないとき,思うようにはかどらないときである。

 思うように行かないのであれば,思うのをやめればよい。すなわち,今の事態が自分の技能と知識の欠如や方法の間違いによるものなのか,機械の技術的な問題なのか,材料の特性によるものか,命令指揮系統の不備によるものかどうかを考える。
 原因がわかれば,頭の中が整理され,落ちついて対処できる。
 また,いつも次にするべきことを1時間,半日,1日,1週間のスパンで頭の中に置いておく。仕事に追われる状態では余裕がないので,ますます追われるようになる。

 

[ 安全について ]  

 自動装着機は安全について充分に対策しているが,メンテナンスでバイパスキーを使っているときは,機械の動きに充分に注意し,自分と他人に声をかける。
 一般的に言って,電子機器の組立では労働災害の発生は少ないので,安全への意識が薄いように見受けられる。組立ラインでははめることが褒められる品管手袋のまま,ボール盤を使うなどとんでもないことである。
 電動機とエアーの力には,人間の腕力は絶対に勝てない。


 

6.手挿


 

6.1 試作組立

 新機種に取り掛かる際は,まず1台の試作組立をおこなう。目的は次の通りであるので,項目毎に整理する。

  @  技術上の問題点を明らかにする。当然ながら,作業に携わる人の技能を考慮してのことである。
(各項の内容を参照)

A  必要な工具・治具や副資材とその数量を確認し,不足するものは手配または要求をする。
治工具の消耗品,スペアパーツにも留意する。

B  各工程の工数をもれなく予測し,作業の割当をする。頭の中の予測工数は短くなりやすい。
 とくに後付け(手はんだ)工程と目視検査工程は,要求される品質と作業者の技能を勘案して慎重に決定する。

C  予測した工数から,生産計画を検証する。生産計画が必ず厳密な分析の上で立てられているとは限らないし,別の営業的な意味合いで納期が決まる場合もある。いずれにせよ,産業機器では納期は交渉できるが,品質は交渉できない。
 なお,流れ作業の場合,ラインバランス(個々の作業時間の差)は 15%以内としなければならない。

D  起こり得るミス,不良,二次不良を想定する。人は間違いを起こすものであり,間違いを起こさないと宣言しているのは新約聖書の神とその亜流にしか過ぎない。おしゃかさまはただ笑っておられる。

 E  作業指導票を作成する。
 作業者がこれだけを見て,受け持ち内容を理解できる書き方とする。
 挿入の作業指導票は,基板の平面図と部品構成表(部品に番号を付けたもの)を並べ,部品と挿入位置を作業者に示す。挿入全体あるいは後付け作業の全体を記入したおおもとの指導票に,各作業者の受け持ちをそれぞれ蛍光ペンで記入して,個々の指導票とすれば,作成時間が短くてすみ,作業者にも全体の流れがわかるので具合がよい。ただし,原本の保存に留意すること。

サ 1人の受け持つ種類が多い場合は,市販の丸いラベルに部品番号を書いて,平面図の部品位置に貼って示すのが最も判りやすい。
平面図は客先からの組立図を流用するのが簡単であるが,点数の多い基板は,基板の現物になるべく近い図(シルク図か,生基板のコピー;モノクロかカラーの反転コピーがベスト)が見やすくてよい。
 図面の配置は,流れ方向に合わせることに気をつける。

サ 重要な内容を蛍光ペンなどで強調する際は,作成者の自己満足的な色塗りは避けること。作業者が自分のためだけに強調するのは,とくに構わない。人間が直感的に識別できる色は3種類までであり,強調されていない箇所を見落とすことがある。

F  作業割当表(工程のフローチャートと担当作業者と作業時間)を作成する。
 はんだ修正と後付けについては,標準時間を必ず設定する。この場合の標準時間とは,品質を守るために最低限これだけは必要であるという意味合いである。時間は実際に流してみて修正をする。
 割当表は,作業者がこれだけを見て,作業全体の流れと一人一人の役割がのみこめるような書き方が望ましい。口頭説明は誤解と混乱を招きやすい。
 作業割当は次の視点から決定する。

最も効率のよい順序であること
ミスを発生しにくいこと
生じたミスをそれ以降の担当者でチェックできて,流出しないこと
各作業者の作業時間がバランスがとれていること

 

6.2 部品の確認と配分

 出庫された部品を出庫表と部品構成表に基づいて型名と数量とロケーションとを確認する。この内容は4.1節と同じであり,確実であれば二重におこなう必要はない。確実でなければ二重にしなければならず,すなわち,後ろ向きのコストを掛けざるを得ない。
 数の管理は独特の才能が要求されるので,その意味では製造の段取りに忙殺される立場の人がこれをおこなうのは適当でない。とはいえ二人の担当が交錯すればややこしい。もっとも望ましいのは,頭の切り替えである。

 基板についても,前工程の自装から払い出されるものに欠品・数量不足がないかどうか確認する。
 部品と基板の払い出しが遅れているようであれば,生産計画に影響があるかどうかに気をつける。

 次に,部品を前加工・挿入・後付けの各工程に分け,現品にロケーションを明記する。ロケーションは容易に読めるよう,マジックインキ(黒)を使う。必要であれば,ラベルを工夫する。
 部品を親箱から取り出すとか前加工のために,荷姿が変わることに留意する。現品票を移し替えるのが最もよい。

サ P-ROM,GAL ICなどは,ICのメーカー型名が同じでも,書き込まれたプログラム(印刷または捺印してある)が違うと別の部品である。まれに出庫表に区別されていないことがある。EPROMでラベルが貼ってなくてチップが見えているものは,書き込み前である。

@  挿入前取付部品
 挿入がかたいので,ラインでできない部品は準備作業で取り付ける。

A 挿入部品
 @B以外の部品である。

B 後付け部品

 基板の縁からはみ出すために挿入できない部品
 挿入では姿勢が安定しない部品(LED,センサー,長いコードなど)
 大型のコネクタなど,はんだ槽ではどうしても浮いてしまう部品
 フラックスが付着したり上がったりする部品
 はんだ槽の熱で変形したりダメージを受ける部品
 はんだ面に取り付ける部品
 洗浄する基板では,洗浄禁止の部品
 ビスなど,はんだが付着する部品
 ランドに直接はんだ付けするリード線,ジャンパー線など
 検査の都合で,先に取り付けられない部品
 ソケット挿入のIC,ラベル,バッテリー
 その他,指定部品

 

6.3 前加工(準備作業)

 部品のうち,フォーミングなどの準備が必要なものについて加工を施す。次のようなものがある。

  アキシャル部品(抵抗・ダイオードなど)のフォーミングとリードカツト
  ラジアル部品(電解コンデンサ・コイルなど)のリードカット
  LEDなど,横に向く部品のフォーミングカット
  パワートランジスタなどのリードフォーミング
  パワートランジスタなどの放熱器取付(シリコングリスの塗布の有無がある)
  基板から浮かせる部品のチューブ挿入
  DIP ICのリードフォーミング
  後付け部品,ビス座,カードエッジコネクタについて,マスキングテープ貼り
  挿入が固くて,ラインで挿入できない部品の挿入

極性の見にくい部品(LEDなど)をスポンジなどに挿して揃えておく
後付けのジャンパー配線の定寸切りと口出し(ストリップ)
設計変更によるパターンカット
その他,指定される事項

 リードのフォーミングとカットには適当な成形治具を用いる。フォーミング時にリードの取付部分にストレスをかけないよう注意する(とくに電解コンデンサとガラス封止部品)。
 簡単な部品のようでも,初めの1つを挿入してみる。うっかり切り過ぎたものは元に戻らない。
 前加工済みの部品は,箱または袋に現品票とともに整理しておく。部品の入っていた袋が整理に具合が悪ければ,袋を替える。抵抗など 100本単位で小口に分かれているものはそのままの単位でまとめておく(進捗と残数の管理)。

サ カットの際の寸法出しは,人によってニッパーの当て方にかなりのばらつきがあるので,注意深く決定しなければならない。
カーボン抵抗はどうしても浮きやすい。折り曲げ寸法を挿入ピッチぎりぎりに大きくし,多少変形させながら挿入すると,幾らか浮きの発生が少なくなる。
 基板の挿入ピッチと部品の寸法が異なることがある。フィルムコンデンサ,サージアブソーバで,リードの付け根に樹脂があって,スルーホールに落ち込むものがある。産業機器では,スルーホールの上 まではんだが上がっていなければならない(例外規定もある)。
 ヒューズ抵抗,2W以上の抵抗などの発熱部品は,基板から浮かせなければならない。組立図上でとくに注記されていない場合が多いので注意すること。

サ トランジスタなどの放熱器(ヒートシンク)には,シリコングリスを塗布する場合とそうでない場合がある。

サ 基板を筺体(きょうたい;ケース)にとりつけるビス座にはんだが盛り上がると具合がわるいので,はんだレベラーであれば通常はマスキングする。
マスキングテープは糊残りに注意する。外観が悪いだけでなく,後付けのはんだがのりにくい。
 また,金メッキ部には糊残りの少ない専用のテープ(千住金属;No.260など)が適当であるが,よく押さえないと剥がれやすいので注意する。
 このため,秤の上でテープを貼ってみて,たとえば 2Kgの押さえる加減を覚えるとよい。

サ リードにチューブを挿入するという工程があっても,チユーブが支給されていないか,カットされていないものが支給されていることがある。ジャンパーに用いるすずメッキ線や被覆線も同様である。こ れらは電子部品でないので,購入手配から漏れるというのが支給忘れの理由である。あるいは副資材と して扱われる場合がある。
 シリコングリス,接着剤などの副資材も支給されない場合がある。なお,フラックス,棒はんだ,糸はんだ,マスキングテープ,はんだ上がり防止剤などは,自社手配と支給の両方の場合がある。

 

6.4 挿入

 部品の挿入は,挿入しにくいものからおこない,姿勢が不安定なものを後にする。
 基板によっては,挿入場所が目に浮かびにくいものがあるので,挿入の目安となる部品を先にする。
作業者への割当は,間違いを生じにくいように工夫する。

同じ形状のものを3点以上持つと誤挿入のおそれがある。
同じ形状のものを多く持つ場合は,ロケーションを離す。
極性部品を多く持つと混同が生じる。
つまみにくいアキシャル部品は,落として他の部品と混ざることがある。

 大型基板(約 250mm以上),あるいは重い部品の載っている基板は,はんだかぶりとコネクタの浮きを防ぐため,ソリ防止金具をはめる。ソリ防止金具は基板の厚さに合ったものを用いる。
 はんだの熱で,基板はかなり軟らかくなり,部品の重さやコンベアの締め付けでたわんでしまう。

 長いコネクタはそれ自体の熱膨張と収縮で浮きが生じる。重石(簡易には棒はんだ)を乗せて防ぐしかないが,専用の複雑な形状のものの製作には時間がかかる。
 マスキングにつまようじを使うと,はんだ槽で外れることがある。2.54mm(100mil;ミル)ピッチであれば,スルーホールプロテクタが適当である。
 フラックス上がりがある部品は,防止剤を基板に塗布する。CLEAN COAT TC-110M は溶剤(IPA)が蒸発してしまわないと効果がないので,ラインの先頭または準備工程で塗布する。フラックス上がり防止剤の使用は,ある客先は図面で指示するが,別の客先は必要であるのに特別な指示しないという場合があるので充分な注意が必要である。

 挿入の向き・極性はシルク印刷と組立図によって判断する。シルクの表示の様式は客先によって様々であるので,これに慣れるのは経験と電気的知識がいる。産業機器では極性のない部品でも,向きを揃えるのが普通であるが,カーボン抵抗の向きを揃えるなどは工数のかかる作業であり,不必要なことをすることはないので,正しくは客先の基準に従う。極性のある部品はなんらかの表示がシルクで施されている。

[極性のない部品]

*  カーボン抵抗,酸化金属抵抗,アキシャル型のセラミックコンデンサ・コイルは,カラーコードで数値と誤差が表されていて,ロケーションのシルク印刷が読める向きに見て,左から第1色帯とする(ランク帯が右となる)。また,立てて実装する場合は,上から下へ読めるようにする。
*  ラジアル型のセラミックコンデンサ,フィルムコンデンサ,サージアブソーバ,バリスタ,サーミスタなどはシルク印刷が読める向きで,表示面を手前とする。部品に隠れて読めないときはこの限りでない。
*  アキシャル型のアレスタは整流ダイオードに似ているが,極性はない。
*  水晶発振子(クリスタル),セラミック発振子の2本・3本リードも表示面をシルクが読める向きとする。
クリスタルと同じパッケージで,3本足のクリスタルオシレータ(電源,グラウンド,出力)があるが,これは当然方向がある。
*  フェライトビーズは無極性であるが,外観上方向性があるものがある。
*  フィルターは2本リードのものは極性がない。3本リードのものは指定のあるものとないものがある。
*  コイルは通常は向きを区別しない。高周波回路では巻き始めと巻き終わりを揃えることがあり,その時は組立図の注記かシルクで表示がある。
*  ヒューズ抵抗,巻線抵抗でフォーミング加工済みの部品は向きを揃えられない。
*  アルミ電解コンデンサでバイポーラは無極性である(滅多に使われない)。
*  ジャンパーヘッドはコネクタに似ているが,向きはない。ただし,4ピンを正方形に配置したものは,ヘッドに挿入するショートプラグの向きがある。
*  ショートプラグは上下左右の向きがあるものとないものがある。同じ部品について客先によって指定向きが異なる場合がある。


[極性・向きのある部品]

*  ダイオードは帯がカソードである。立てて実装する場合は,指定がなければカソードを基板側とする。ツェナーダイオード以外のガラス封止タイプには本体に型名表示がないので,混同に注意する。
*  LEDは長いリードがアノードであるが,カタログまたはアナログテスターで確認する。フィラメントの向きは逆のものがある。
*  トランジスタ,FET,レギュレータIC,サイリスタは上からみた形状をシルクに表す。放熱面を持つパッケージのものでは,放熱面を2重線で表わしたりする。
 まれに放熱面のない小型パッケージについて,型名表示面を2重線で表す場合がある。
 他にも,小信号トランジスタの向きは解りにくいものがあるので,シルクの配列記号と組立図の注記をよく参照すること。回路図が出図されていれば,それで確認する。
 トランジスタの端子配列は,型名表示面を正面に見て,左からE(エミッタ),C(コレクタ),B(ベース)のものが圧倒的に多いが,EBC,CBEの配列のものもある。
*  ネットワーク抵抗(抵抗アレイ),ZIP IC,SIP ICは1番ピンを2重線で表すが,挿入時に見落としやすい。
 滅多に使用されないが,ネットワーク抵抗にはコモン端子が1番ピン以外のものもある。
*  トランスは逆方向に挿入できないようになっているものが多いが,そうでないものはボディに切り欠きがある。
*  DIP IC,DIP SW,は1ピンマークまたは向きの印刷がある。ICソケットももちろん同様である。
*  QFJ(PLCC)パッケージのROM,CPUとそれを入れるICソケットは,1辺の中央部が1ピンで四角のひとつが切り落とされて違う向きに入らないようになっている。
 これを無理に入れると,ソケットが簡単に割れる。
*  コネクタの向きは解りにくいものがある。ひとまずシルクの枠を頼りとしていいが,新開発の機種(基板のバージョンが初めてのもの)では,枠の印刷が間違っていることもありうる。
 これは,基板設計時に裏から眺めた配置(Bottom View)を使うのが理由である。
 配列( 1または・)が記されていればそれで確認する。
 ストレート型では,壁側を2重線で表すことが多い。JST製の壁のないポスト型では, 相手側のハウジングの壁を2重線で表すことがある。
 逆方向に挿入してもシルクの枠からはみ出さないものにはとくに注意する。
*  コネクタをはんだ面に取り付ける場合は,組立図とシルクでは,部品面から見ると隠れているという意味で破線(点線というは俗称)であらわされている。図面に特別な注記がないことがあるので注意する。
*  組立図で部品の向きを矢印で説明する際に,客先によって,←の向きから見えるようにするのか,→の向きに向くのか,2通りの表現がある。通常は,←から見えるように(矢視)表す。
*  部品の向きを間違えると,後ろ向きの作業が増えるだけでなく,2次不良が発生する。不確かなものについては,先入観のない(思いこみのない)別の人が確認し,判らないものについては客先に質問する。

 

6.5 フローはんだ(自動はんだ槽)

 融けたはんだの噴流の上を,傾斜したレールで基板を搬送してはんだ付けする方式をフローはんだ(Flow;流れる)という。以前は静止槽に浸漬するディップ(Dippng)方式が主流であったので,いまでも自動はんだ槽をディップということがある。なお,DIP(Dual Inline Package)とは意味が違う。

@  フラックスの種類を確認し,適当なものに替える。客先の指定があれば,それとする。
 はんだ面にチップがある場合は,はんだ付け性のよいものとする。
 無洗浄の場合は,それに対応したものとする。無洗浄フラックスを洗浄すると,基板が白濁するものがある。
 この決定は責任者がおこなう。製品にどのフラックスを使用したかは,出荷後の品質に大きく影響することなので,記録として残さなければならない。

A  予熱,噴流,引取速さ,傾斜角度(通常は変えない)を決定する。
 熱容量の大きい基板,多層基板は充分に予熱をする。
 スルーホールの基板,とくに4層以上の多層基板ははんだが上がりにくいことに注意する。引取速さは通常 1 m/min以下である。
 ベークライトの基板を低速ですると,熱変形で部品が浮きやすい。1.5 m/min以上とする。
 チップの密集している基板では,引取速さと噴流の高さ(浸漬時間・流れ),仕上げ槽の流れと傾斜角度(つまり,ピーリングバック),はんだ温度(流動性)の条件が大切である。
 はんだの流れをみるには,竹クシのようなものを軽く持って,はんだの中に立てて手ごたえをみるとよい。

B  幅調整をする。大型基板では熱膨張(約 1%,幅 200mmの基板では 2mmにもなる)を考慮し,搬送爪で挟まれて基板に反りが出ないようにする。幅を広げすぎると,基板を搬送保持する力が弱くなり,噴流槽で引っかかることがある。噴流槽を出た所でガタがない程度がよい。
 幅調整は,送りハンドルの1回転の送り寸法(ピッチ)を目安におこなう。最適の幅が決定したら,そのハンドル位置にマーキングして,再現を容易にする。
 幅調整の失敗は,引っかかりによるはんだカブリまたは焼け,あるいは落下となって大変である。

C  フラックスの濃度と発泡状態を確認する。エアー圧が強すぎるか,フラックスが古い,または濃度が適切でない場合は,均一な発泡とならない。
 フラックスが吸湿するとはんだ付け性は悪くなる。空気中の水分の他に,エアーのドレーンも原因となる。
 フラックスが搬送爪にかかっていると,はんだが爪に残り,思わぬ事故になる。基板が爪に噛み込むと爪が破損して,それを修理するまでラインストップとなる。
 フラックスのしぶきが飛散して,コネクタの接触面に付着していないか確認する。

D  最初の1台(1シートのこと,以下同じ)をはんだ槽に通す。
 噴流の所で基板が引っかかることがあるので,それに備えて待機する。また,部品の踊り具合を観察して,欠品と浮きの発生を予測する。
 スリットや穴へのはんだの盛り上がり具合で,高さの見当をつける。
 品質をチェックして,合格レベルになるまで条件の見直しをおこない,1台ずつ流す。この間に初品確認を完了させる。1台ずつ流す理由は,不良の台数を多くしないためであるが,時間が空くと仕上げ槽の表面に酸化膜が張るので注意する。
 条件がほぼ確定したら,連続して10台を流し,連続することによる仕上がりの変化と品質のばらつきを確認する。

E  初品確認は次の手順で行う.装着点数が少なくてもこれを怠ってはならない。点数が少ないと気がゆるみ,落とし穴に陥る。
 初品確認は挿入の時点で始めること。間違っている場合にやりなおしがきく。

責任者(品管担当)を1人決める(挿入担当者以外)。
部品構成表,組立図のコピーを用意する。
基板の部品型名・極性と図面とを照合する。
(基板にラップフィルムをかぶせ,マジックで消していく)
(図面を蛍光ペンで消していく)
確認結果の図面を保管する。


F  マスキングテープ剥ぎは,はんだ槽を出た直後の,やや冷めた状態でおこなう。
 ただし,金メッキ用などのシリコン系の糊は,逆に完全に冷えた状態で剥ぐ。金メッキ部分に後工程ではんだが付着する可能性があるので,はんだコテを使わない工程まで進んでから剥すこと。

G  はんだ不良の要素は,フラックスについてはその種類,濃度,水分,劣化度,発泡であり,はんだについては,温度,噴流の高さ(基板のたわみも含む),噴流の流れる向きと速さ,噴流孔の目詰まり,はんだ中の酸化物(目に見えるカスの他に,溶け込んでいる微細なものもある),はんだ中の不純物(主に溶け出した銅分)があり,この他に予熱,引き取り速さ,傾斜角度,室温がある。

 

6.6 はんだ修正

 はんだ修正は,品質を直接に左右する工程でありながら,目視という官能検査であるために困難さがつきまとう。
 ここで大切なことは,作業の標準時間と作業内容をはっきりと決めることである。作業者の恣意のままに流すと,まず不良ロットとなる。経験を積んだリーダーと作業者であれば,「とりあえず流してみる」というやりかたであってもいいように思えるが,新機種は誰にとっても初めてなわけであるから,落とし穴に陥らないよう,これらの手順を守らなければならない。
 産業機器(不良流出があってはならない基板)では,次の計算で工数を見込んで工程を組む。不良修正の所要時間が予想と異なるようであれば,全体の工数配分をやりなおすこととなる。
修正作業の時間見積は,次の目安が産業機器レベルである。

[ 工 程 ] [ 1 台 当 た り 所 要 時 間 ]  [ 作 業 内 容 の 概 要 ]

リードカット リード本数   × 0.9 sec 許容長さ以上のリードのカット
部品面修正 リード本数      × 0.3 sec 欠品,浮き,傾き,極性
+予想不良件数 × 40 sec
はんだ面修正 はんだ付けポイント数 × 0.55 sec ブリッジ,未はんだ,ズレ,欠品
+予想不良件数 × 2.5 sec

 

6.6.1 リードカットの要点  

 リードの長さは,客先指定がある場合とない場合がある。指定がないようでも,電子機器メーカーは基準を定めているが,1.0〜2.5mmの範囲であれば問題ない。筺体に当たるなどの理由で長さの制限がある場合は,図面指示の他に,現物で確認出来ればなお確実である。
 コイルなどの細く柔らかいリードが,客先の工程を含めて取扱い中に曲がり,ショートを起こす可能性があれば,そのおそれのない長さとする。
 カットしたリード屑が基板に付着しないよう,細心の注意を払う。これは当然ながら導電体であるから,致命事故の原因となり得る。はんだ面に付着したリード屑は,ハブラシでも完全に落とすのは難しい。カットの作業場所にフードがなければ,リード屑はかなり遠くまで飛んでいく。

サ 長さを目で判断するのは,人によって驚くほどのばらつきがあるので,DIP ICのリード長さ(1.5 mm)を目安とするとよい。
 ニッパーの切れ味は,紙が切れるのが最低条件である。切れ味の落ちたものでも結構紙は切れる。切れ味の悪い場合,むしり取るような手の動きになり,パターン剥離やはんだのクラックを発生させる。

サ リードカットのニッパー(クニペックス)は軟らかいリード線専用とし,刃先の保守に気を付けなければならない。固い物を切って傷んだ刃を研ぎ直すのは,大変な労力を要する。コネクタ(ストレートヘッダ)で金メッキの太いリードやクリスタルのリードは地金がしんちゅうであるから,切らないほうがよい。銅線であってもφ(マル;直径)0.8mm 以上は不可である。
 ニッパーの保守に限らず,道具への愛着の程度は大体,技能の程度と正比例すると言える。もっとも,生産性と正比例するというわけではない。

 

6.6.2 部品面の修正の要点  

 部品面修正の作業は,部品の実装箇所(誤挿入)と欠品と極性・向きのチェック,部品の姿勢,はんだの上がり,リードの挿入状態などである。品質基準に基づいて修正する。

 部品の浮きなどは,通電検査ではわからないので,この工程が唯一の関門である。浮きなどの品質基準が図面では明確であっても,実際に適用すると曖昧であったりすることがある。曖昧でないとしても,見た目で判断するのは人によって誤差がある。なるべくゲージとか限度見本を工夫するとよい。
 部品の浮き・傾きは,通常は軽欠点である。ただし,コネクタの浮きは重欠点である。これは後でコネクタに接続するときにパターン剥離を生じる可能性があるからである。コネクタの浮きの程度は客先基準によるが,密着(0〜0.1mm,または 0〜0.3mm)でなければならない。
 浮き・傾きは誰の目にもわかりやすい不良項目であるが,軽欠点であるので必要以上に時間をかけないようにする。初心者の場合,これに気を取られて,重欠点の発見がおろそかになりがちである。
 はんだコテで修正できない浮き・歪みは,卓上はんだ槽で修理する。

ケ 修正時には,2次不良を発生させないよう,細心の注意を払う。2次不良の発生は技能が低いことの明らかな証拠であって,客先の不信感につながる。
起こりやすい2次不良は,次のようなものがある。2次不良が発生してしまった場合は,その場でNGマークを付けること。2次不良を後で見つけるのは大変難しい。


○ コテ先に注意が行き過ぎて,隣の部品を焦がす。最も多い。
○ コテ温度が高すぎるか,押しつけ過ぎるか,またはコテ先が傷んでいて基板を傷つける。
○ 新しいはんだを足さないか,温度が低すぎて,コテを押しつけ過ぎ,滑らせてしまう。
○ はんだが融けきらないうちに部品に力を加えて,パターン剥離を起こすか,部品を壊す。
  ○ コテの運びが悪いか,クリーニングを怠って,はんだクズを基板に付着させる。
○ コテに溜まったはんだが落ちて,部品に付着する。
○ コネクタのリードに熱を加えすぎて,プラスチックを溶かす。
○ 浮いたカーボン抵抗などを熱い状態で無理に押して塗装皮膜を壊す。

サ はんだの上がりにくいのは,2層基板(両面基板)ではグランドで,4層以上ではグランドと電源に接続されるリードである。DIP ICの1ピンとラストピン,電源のリップルを吸収するバイパスコンデンサ,クリスタルのケース側,コンバータなどの金属ケース,コネクタの端のピンなどがそうである。 一見,スルーホールにはんだが埋まっているようでも,なじみが悪くて動作不良となることもたまにある。また,はんだ槽のはんだに浸かりにくい,基板の端に生じやすい。

サ 部品の欠品は案外に大型の部品を見落とすことがある。
 多ピンのコネクタの1本が入っていないとか,ICのリードのはみ出し・折れ曲がりは見つけにくい。
 バイパスコンデンサ(通電検査で有無を検出できない)が多数あるときは,目視用のテンプレートを製作するとよい。
 極性のチェックのために,マジックチェックが指定されることがある。あるいは客先の承認を得て自主的にマジックチェックを取り入れてもよいが,単にマジックを塗るだけになりやすいので注意する。

サ 極性のない部品の向きを揃える指定のあるとき,たまたま間違って挿入されていても修正はしないのが大抵の客先基準である。ただし,挿入工程にフィードバックはする。

 

6.6.3 はんだ面の修正の要点  

 はんだ面修正の作業は,部品の実装箇所(誤装着)と欠品と極性・向きのチェック,部品の位置ズレ,はんだの状態,リードの挿入状態などである。品質基準に基づいて修正する。

 はんだ面はボンディング工程の後では修正せず,はんだ槽を通ってから修正するのが通常の工程である。ただし,ボンドのはみ出しが異常に多いときは,修正(予備はんだ)を施してからはんだ槽を通すと重欠点不良のスルー(次工程への流出)が低減する。
 はんだ面には不良の発生が多く,その内容は重欠点のものが多い。初期不良の数が多ければ,当然ながら,スルーする数も多くなる。
 目視で不良を見つけるには,光源,見る角度,使用器具(裸眼・拡大鏡・顕微鏡)の条件で検出率が異なってくる。蛍光灯は安価な光源であるが,某社の3波長タイプが認識性に優れている。

 未はんだとブリッジは,はんだ槽の条件によることが多く,はんだの流れの悪い場所に発生しやすく,一定の傾向がある。
 はんだレベラー基板の未はんだは,真上から見たのでは見逃しやすい。
 ブリッジは比較的見つけやすいが,SOP ICのリードの奥でブリッジしているものは,真上からでは見逃しやすい。
 はんだが古いか,コテをあてすぎて酸化した時,マイクロショートができることがある。顕微鏡でも見つけづらいものがあって,これは修理が困難である。(両面リフローのA面は高温を2回通っているので,フラックスの残渣が固着していて,マイクロショートがでやすい。)
 角チップが密集していて,向きが整列していない基板では,不良の発見が難しくなるので,検出率を低く設定する。
 ボンドのはみ出しで未はんだとなっているものは,修正は確実にすること。上からはんだを足しただけでは,未はんだが直らずに隠されてしまうことがあって,後で見つけるのが困難になる。SOP ICにボンドがはみ出してはんだ量の不足となっている時は,ICを外した方が速く修理ができる。

 

6.6.4 目視ということについて  

 はんだ修正は,目視により不良を見つけることで,これは官能検査であるから,かならず一定の割合で漏れが生じる。
 100件の不良のうち,90件の不良を見つけたとして,この時の検出率は90%であるという。普通,検出率は 85%が最大である。
 不良の表し方には2通りあり,目的に応じて用いる。1つは不良の件数をはんだ付けのポイント数で割って%で表す方法で,不良を現象として捉える際に都合がよい。もう1つは直行率の観点から,何台中に何件の不良があったかをいうもので,不良件数をロット台数で割って%で表す(100台中に1件あった時が 1%である)。
 いま,検出率と不良流出件数には,ロット台数を 100台として,次のような事情がある。

目視の  初期不良率 初期不良   不良総数    検出率  流出不良台数
ポイント数 件数
(1台当たり)  (件/台) (ロット当たり)

100 2,000 PPM 0.2 20   85%   3.0 %
100 500 PPM 0.05 5   85%   0.75 % ァ
100 2,000 PPM 0.2 20   85%   3.0 %
1,000 2,000 PPM 2.0 200   85%   30.0 % ケ
1,000 2,000 PPM 2.0 200   85%×85%   4.5 %
1,000 2,000 PPM 2.0 200   85%×85%×85%   0.68 % ァ


 これから分かるように,不良の流出割合は,ポイント数が多く初期不良率が高いほど増え,これを減らすには目視を繰り返す(スクリーニング)しかない。初期不良率が高いということは,製造の技術レベルが要求水準より低いということである。

 基板の修正の難易度について,部品の点数と見た目の混み入りようで直感的に決め易いが,部品の点数とポイント数は基板の回路の種類によっても異なるが,見た目と違って逓倍の関係にあり,部品点数が2倍になれば,目視すべきポイントは4倍になる。
 さらに,部品点数が増えるほど,また基板が大型になるほど,品質を決める要素が不安定になり,初期不良率は高くなる。したがって,2重の意味で製造がむずかしくなる。
 不安定要素には次のものがある。


基板が大きくなると,クリームはんだの印刷が均一にならなくなる。
部品点数が多くなると,自装のサイクルが長くなり,欠品,位置ズレが出やすくなる。
目を配るべきアイテムが多くなるので,能力が分散され,ヒューマンエラーを招きやすい。
基板が大きくなると,はんだ槽で均一なはんだの当たりが難しくなる。
はんだ槽で基板がたわむと,部品の浮きが発生しやすくなる。
目視の範囲が広いと,注意力が分散し,検出率が低下する。

 

6.7 はんだ付けの技能

 はんだ付けは,軟ロウ付けといわれる溶接法である。ここでは普通見逃されていることだけに簡単に触れる。

 

6.7.1 初心者の教え方  

 はんだ付けの初心者に教えるとき,まず基板の銅箔の上に自由にはんだを溶かすことから始めるとよい。不要な基板か,サンハヤトのエッチング前の基板を使う。
 いきなりリードと基板の接合をすると,コテ先にはんだを供給するクセがつきやすい。
 銅箔の上にきれいな盛り上がりの丸いはんだが揃ってできるようになるまで自由に練習させる。そうすると,次の上達が早い。これに要する時間はせいぜい半日である。
 同時に,はんだは低温の部分から高温の部分に流れることを観察させる。

 早い時期に,電子秤の上ではんだ付けをさせてみて,コテを押しつける力を少なくする習慣を身につけてもらうこと。やがてベテランになると,どうしても力が入りがちとなるが,最初の頃に教えられたことは印象に残っているので,思い出すのは容易である。

 つぎに,表面実装の角チップのはんだ付けから入るのがよい。もし,チップをボンドで仮付けしている基板があればベストである(チップをピンセットで位置決めするのは難しいので)。
 チップは熱容量が揃っているから,案外に上達がはやい。たとえば抵抗とかコネクタなど,熱容量のバラバラなものを続けてはんだ付けさせると,予熱時間や保持時間が違うので,コツを飲み込みにくい。
 なにに限らず,パラメータの数が少ないところから入っていくのが上達の早道である。なお,本番の緊張感もパラメータのひとつである。

 はんだ付けの品質を後の検査で完全に見届けることはできない相談であるから,品質は作業者の技能次第に懸かっている。そこで,次の方法で技能の上達を図る。

(1) 時間を充分に与え,その人のベストの腕前をみる。
(2) 時間を制限して,数を多くあげることを練習する。品質はある程度荒れるであろう。
(3) (1)〜(2)を繰り返す。
(4) できれば,何度か試験をして細かく採点し,技能の上達(の喜び)を意識させる。

サ 実体顕微鏡をのぞきながらはんだ付けをすると,表面実装に要求されるはんだ付け技能の上達がきわめて早い。チップのフィレットをリフローと同じくらいにきれいにするには,顕微鏡下での経験は不可欠である。
 顕微鏡で見ていると,糸はんだの供給の微妙な加減がよくわかるので,はんだとはんだのはんだ付けも簡単にできる。一度顕微鏡でおぼえたカンは,裸眼でもできるようになるから不思議である。

 

6.7.2 はんだコテ  

 はんだコテは他の工具と意味合いが違うので,よく検討するべきである。
表面実装のコテは,温度調節ができるのがよい。一度温度調節になれると,元のはんだコテには戻れないくらいである。
 温度調節機能付きのコテでは,エディスンインターナショナルのものが,比較的安価で,しかもコテ先の交換や握り具合など使いやすい。温度表示はないが,コテ先が違えばヒータの温度は大幅に変えるので,表示は必ずしも必要ではない。
 コテ先は作業内容に応じてまめに交換するべきである。ひとつのコテ先でなんでもやってしまうのは,はんだ付けの名人(曲芸師)かもしれないが,産業人としての職人ではない。

 はんだコテに限らず,工具は金儲けの手段であるから,費用対効果の計算は必ずするべきである。
 ともすれば,経営者は投資金額の大きい設備に目を奪われがちであるが,この点を忘れてはいけない。
 いま,はんだコテの作業従事者が10人として,一日に 6時間,月に23日とすれば,年に約 16,000時間の作業時間となる。
 はんだコテの違いにより,作業能率が 1 %だけ違うとすると,

16,000 時間/年 × 0.01 × 1,200 円/時 = 192,000 円/年

 となり,無視できない数字となる。
 同様の試算は,作業環境や作業モラルについてもしてみるのがよいであろう。

 

6.8 ICT

 ICT(ボードチェッカー)は,回路の素子(C,R,Di,Tr,L)を高速で測定するプリント基板専用のチェッカーで,動作不良流出の防止に極めて有効である。
 ICTは素子の全部が測定できるわけではない。どれが測定不可能かは,その基板のフィクスチュア(ピンボード)を製作する際に明らかになる。ICの未はんだは通常のチェッカーでは測定できない。CPUのバスラインはその性質上,ブリッジの疑われる箇所があちこちにある。

 ICTのフィクスチュアをメーカーで製作した後,工場で実際の量産に使用する際は,測定値や許容範囲,ジャンプなど,かなりのデータ修正をしなければならない。
 後工程で検出される不良,検出されない不良を勘案し,もっとも効率的で信頼性のあるデータとなるようにもっていくのは,結構手間がかかる。

 ICTのフィクスチュアを製作する際に必要なのは次のものである。多面取りの場合は,不良修理と基板割れに備えて,1台だけでもかけられるようにしておくとよい。

回路図
生基板・・・1枚
完成基板・・・1〜5枚


サ ICT(イン サーキット テスター)という言い方は,アッセンブリー業界の方言であって,電気屋では少し違う意味に用いる。
ボードテスターはオカノの商品名であるが,他社では素子チェッカー,インピーダンスチェッカーという言い方もある。

サ ICTは電気測定であるから,当然,はんだの外観はみない。極端な場合,パターン剥離をおこしていても,導通があればGOODとなる。

 

6.9 後付け

 6.2 A項で示した部品を取り付ける。主にはんだ付け作業が多い。
後付けの出来具合は作業者の技能に頼る割合が大きい。部品によって勘所が色々であるから,試作の1台では気づかない注意点が埋もれていることがあるので,量産の前にある程度の数をこなして検討してみるのがよい。併せて,能率のよいやりかたを考える。

 基板の設計変更のためのジャンパー配線は充分に気をつける。きちんと取り付けられているかどうかを,作業者毎,時間毎にチェックすること。ジュンフロン線(テフロン被覆)の単線は,芯線折れとテンプラはんだが出やすい。
 ジャンパー線の固定には,ホットメルト,シリコンゴム(RTV),シリコン系接着剤,その他の接着剤,テープによる張り付けがあり,どれによるかは指定がある。

 はんだ付けの他には,ビス取付などの組立作業,ネジロック,ペイントロック,ソケットへのIC挿入,ラベル貼り,捺印などの作業がある。はんだ付け作業の難しさに気をとられて,注意をおろそかにしないこと。

サ 起き得る不良は,6.6.2 項の2次不良と同様である。とくに起きやすいのは,基板やパターンの損傷,はんだボールやはんだクズが出ることである。滅多に起きないが,はんだを送り過ぎて基板の反対側でショートすることや,コネクタのリードにコテを当て過ぎてプラスチックが溶け,リードが動いてしまうことがある。

サ バッテリーの取付は,はんだ不良のために放電することの無いよう,テスターチェックをしてからおこなう。テスターチェックはあらためて客先から指示されていないことがある。回路によっては,ショートピンなどを設けてあって,後工程でチェック出来るようになっているものもある。
 バッテリー取付の後は取扱いに注意して,導電シートや基板の積み重ねで放電しないようにする。
 なお,バッテリーの種類と基板の設計によっては,挿入で取り付けることもある。

サ 基板に不滅インクで捺印するのは,表面が滑るために案外習熟を要する。不要な捨て基板で練習をするとよい。

 

6.10 作業確認

 人の手による作業は必ず,継続しての確認が必要である。とくにはんだ付け作業と機構部品の組立作業では欠かしてはならない。
 初めての作業に取り掛かったばかりの時には要領を飲み込んでいないので仕上がりが悪いが,すぐに飲み込んだとしてとして,初めは慎重であるから仕上がりはよい。
 次に慣れてくると仕上がりが悪くなる。同時に,自分なりに飲み込もうとして定められた仕様を誤解してしまいやすい。この時間は取り掛かりから1〜3時間である(作業の難易度と類似の経験の有無により異なる)。
 2・3日から1週間経って充分に慣れれば,品質は安定し,所要時間も当初の時間より最大で 1/3まで短くなる。ただし,ポカミスの発生が出てくる。
 産業機器の基板は少量生産であることが多いから,慢然と流していては慣れないうちに終わってしまう。次のステップを意識して繰り返すのがプロの仕事であろう。

品質を確保することに神経を傾注する。時間はかかる。
次に,手早くすることを心掛ける。品質は荒れる(ブレる)が限度内であればよい。
品質を安定させる。時間は少し余分にかかる。


 リードの隠れる部品のはんだのなじみ具合であるとか,手をかけた本人でなければ仕上がりが判らないことは多い。後からの検査ですべてを見つけるのは困難であるし,コストもかかる。すなわち,手作業の品質の信頼性は作業者の技能にすべてがかかっている。

 

6.11 目視検査

 目視検査は,内容としては 6.6章のはんだ修正と同じである。ただし,はんだコテを持たないことを特徴とする。そもそも人間の目による検出には限界があるうえに,はんだコテを持っていると注意力が分散して検出率はさらに低下する。製品に高い信頼性を期待する場合は,必ず検査単独の工程を入れなければならない。
 目視検査で見つかった不良は,NGポイントマークを不良箇所に貼り付け,良品と区別しておく。
 併せて,不良結果を修正担当者にフィードバックすることが大切で,それによりロットの品質が向上する。

サ NGポイントマークとは,赤色(警戒色)か「NG」の文字を入れた矢印のあるラベルである。単に矢印だけでは社内では通用しても社外では通用しないことがある(実例あり)。NGポイントマークの代用にテープを使うのは好ましくない。テープで不良部分を隠してしまうのは他人にもう一度検査を繰り返させるわけであるから,避けるべきである。テープを使う時は,矢印と不良内容をマジックで書き入れる。
 ポイントマークを付けただけでは,うっかり良品として流してしまう危険がある。捨て基板に書いてよい場合はそこを使うか,豆エフで不良のロケーションを書いておくと漏れがない。基板をチェックする際には平面で見るので,コネクタの浮きの表示をコネクタの横にラベルを貼ると次の人が見逃して流してしまいやすい。
 針金付きの豆エフは,ばか穴に限り使用して,スルーホールは使わないこと。また,バッテリー付きの基板では放電に注意する。

サ 同一作業者がはんだ修正と検査を兼ねるのは好ましくない。出来るだけ別の担当とする。どうしても兼ねなければならない場合は,思い込みによるスルーを避けるため,日を改めるか,場所を変えて区切りをつけるようにする。

 

6.12 洗浄

 産業機器では,基板の信頼性を確保するため,洗浄をすることがある。以前は必ず洗浄していたが,特定フロン(フロン113など)によるオゾン層の破壊問題により,無洗浄化または代替フロン,もしくはそれ以外の洗浄剤による洗浄に切り替わってきている。
 現在は小規模のアッセンブリー専業の企業では,フロン以外の洗浄装置が高価であるため,洗浄はおこなわれていない。
 下記の内容は,フロンでなくIPAを使った洗浄にもある程度適用できる。

 洗浄禁止部品は,洗浄剤に溶け込んだフラックスで摺動面が固着するのを避ける部品と,超音波によって弱い部分が損傷するのを避ける部品の2通りがある。同じような部品でも洗浄対応になっているものとそうでないものがある。また,客先によって同じ部品でも解釈が違う場合がある。洗浄部品については客先から指示があるのが普通である。
 一般的に,洗浄禁止部品は次のようなものがある。表面実装部品も同じ事情であるので見落とさないこと。

   ボリュームの一部
   スイッチの一部
   可変コイル
   トリマーコンデンサ
   DIP(Dual Inline Package)スイッチの一部
   タクトスイッチ
   スチロールコンデンサ,ポリスチロール(PS)(フロンで変色する)
   スーパーキャパシタ(大容量コンデンサ)
   コネクタ,ソケットの一部
   リレーなどでハーメチックシールになっていないもの
   圧電ブザー
   アルミ電解コンデンサは長時間の浸漬は不可(フロンの場合)

超音波洗浄禁止 クリスタル(内蔵を含む)
   リレーの一部
   コイルの一部


 洗浄槽(3槽式)による洗浄は次の順序でおこなう。洗浄の後は,仕上がりをよく観察すること。

   (1) 蒸気洗浄でフラックスを殆ど落とす。    2〜5分間。
(浸漬槽をなるべく汚さないため)
   (2) 浸漬槽に漬ける。 2分間
   (3) 必要により超音波をかける。 30秒間
   (4) リンス槽に漬ける。 30秒間
   (5) 蒸気槽に置く。 約 3分間(基板が蒸気の温度になるまで)

 この他に洗浄の方法には,部分的に洗浄剤をつけて歯ブラシなどで洗う「部分洗浄」と,洗浄剤をウエスに染み込ませて拭き取る「拭き取り洗浄」とがある。歯ブラシはこすることによって帯電しにくい豚毛のものを用いなければならない。
手はんだ付けの洗浄は,はんだ付けの直後にするほど容易にきれいになる。

サ 洗浄カゴには,コネクタの内部に洗浄剤が溜まりにくい向きに基板を入れる。
リフローのはんだボール,手はんだのはんだクズは超音波でも落ちにくい時がある。

サ 無洗浄のクリームはんだ,フラックス,糸はんだは,残渣が白く残るので洗浄できない。

サ 無洗浄でよく言われるRMAとは,Mildly Activated Rosin の略で,腐食しにくいヤニという意味である(MIL規格)。従来のフラックスはRAである。

サ 部分洗浄にはIPA(イソプロピールアルコール)が適している。メチルアルコールは適さない。なお,世間では単にアルコールと言えばエチルアルコールを指す。

 

6.13 梱包・出荷

 出荷時の梱包は,専用梱包材が用意されている場合とそうでない場合がある。
 専用でない梱包では,基板の静電気の保護と緩衝を兼ねてエアーキャップで包み,輸送中(公共便,専用便)の損傷を受けないよう,充分な緩衝材を詰める。

 基板の収納方向は振動に強い,垂直の向きとする。基板からはみ出しているコネクタ等の向きに注意すること。また,上から数が容易にカウントできるようにすること。

 社内の流通はコンテナでよいわけであるが,空のコンテナは使用前にひっくり返して,内部に落ちているゴミなどを掃除しておくこと。部品などをうっかり落とした時に探しやすい。
 梱包には横側に現品票(社内様式または指定様式)を貼り付ける。納品伝票(社内様式または指定様式)を同梱し,梱包数が多い場合は「伝票在中」の表示を梱包の上側に付ける。公共便の送荷伝票は,バーコードを読み取りしやすいように,梱包の上側に貼り付ける。

サ エアーキャップの帯電防止面は平らな側(色がついてる)であるから,この面を基板側とする。帯電防止効果の持続は製造後 約3ケ月である。

サ 納品時に限らず,基板をコンテナやラックに保管する際は,向きを揃え整列しておくこと。乱雑であると不要なことに神経を使うようになるので,結果として能率が下がる。

 

7.検査

 必要なフォーマット:作業ロットNo.(製番,シリアルNo.)
            品質検査基準
検査結果の記録用紙


 2.節[概略]に記したように,産業機器と民生機器とでは,出荷後の信頼性についての考え方が異なる。工程の途中と最終に検査があるのは同じにしても,意味合いは少し違ってくる。
 産業機器では,検査(品質管理)は製造工程の脇役に位置するのがよいように思える。いわく言い難いところであるが,客先の要求する高度なレベルの商品に追随していこうとして,検査に重きを置いて,製造の本質をみていないときがある。品質水準を数値化するための検査と,客先の要求に応える品質保証と,
 それを実現するための品質管理は,なるべく区別して考えるのがよいだろう。

 大量生産でロット判定方式をとる場合は,抜き取り検査でロットの合否判定をおこない,合格であればある割合以上の不良は含まないと考える。これは少量生産でも同じであって,母数が小さいだけである。
 抜き取り検査の目的は,その段階,たとえば基板組立完了で,一定以上の品質(Quality)を保証(Assurance)することである。これがなされていないと,次の総合組立で不良が発見されたとき,製品の全数についてあらゆる疑いをかけなければならないことになる。
 全数検査としない理由は,それをおこなえば,担当工程の責任感がどうしても薄くなりがちであるからである。検査自体で品質がよくなるわけはないので,不良発生の根本原因とその対処にたどり着くのを最終目的としなければならない。

 検査の結果,不良率が異常であれば,関係部門に連絡し,対策を決定する。異常であるとみなす基準は通常5%である。

 検査したロットの判定が不合格であれば,そのロットは担当工程に返却する。返却のために生産計画が狂うようでも,不良ロットを客先に納品してもやはり返却されるわけであるから,同じことである。
 不良ロットの見直しは,担当工程の担当作業者がするのが正しい。そうでなければいつまでも同じ不良の発生が続く。
 抜き取り検査は,たとえば次の基準でおこなう(MIL-STD-105D 通常検査水準−U  AQL=1.0)。


[ロットの大きさ] [抜き取り数] [致命欠点] [重欠点] [軽欠点]
Ac Re Ac Re Ac Re

2 〜 15 全数 0 1 0 1 0 1
16 〜 25 13 0 1 0 1 0 1
26 〜 50 13 0 1 0 1 0 1
51 〜 90 13 0 1 0 1 0 1
91 〜 150 13 0 1 0 1 0 1
151 〜 280 50 0 1 1 2 1 2
281 〜 500 50 0 1 1 2 1 2
501 〜 1200 80 0 1 2 3 2 3
1201 〜 3200 125 0 1 3 4 3 4
3201 〜 10000 200 0 1 5 6 4 6

 


8.電子部品の周辺知識

  この章の内容はとくに覚えていなくてもアッセンブリーはできる。とはいえ,自分の仕事の周辺知識を知り,産業界での自分の位置付けができているのが,本当の意味でプロというものであろう。


 

8.1 電子部品の種類

 電子部品には実に様々な種類がある。まことに,人の智恵はここにまで至ったのかと感じ入るほどである。それに引き換え,われわれの日々の生活のなんと歩みの遅いことか。
 さて,人々が長年を経て開発してきた電子部品のすべてを覚えることは到底出来ることではないが,おおまかには知っていなければならない。電気はなにか1つが違っていても設計通りには流れない。
 工業界には英語の用語が多いが,電子機器にはことさらに多い。( )に示した英語は憶えなくてよいが,意味の理解のために参考とされたい。


 

8.1.1 機能別分類  

 電子部品はその名の通り,電子の流れ(電圧と電流)を利用して人間の役に立つ動作をさせるものである。半導体の発達は飛躍的にエレクトロニクスを進歩させた。

電子
 物質の最小構成単位である分子は,原子と電子からなる。エネルギーを与えら(エレクトロン)れることで電子は原子の束縛を離れ,電気エネルギーを伝える。金属の電子は特定の原子に属していないから,電気の良導体である。プラスチックや木は自由な電子が少ないから,絶縁体といわれる。
 電子は明かりをつけたりモーターを回すなどの,電気エネルギーの伝達の他に,電話やコンピュータのように,信号を伝える働きがある。

半導体
 金属と絶縁体の中間の性質を持つのは半導体(Semi-conductor)であるが,シリコン(珪素)などの結晶に微量の元素を注入し,それらを組み合わせるすることで,色々な性質のものが作られる。物質の電気的な性質を利用して人に役立つものを作り出すことをエレクトロニクスという。
 半導体には,正の電流で動作するものと負の電流で動作するものとがある。定義上,電子(マイナスの電荷を持つ)の流れる反対の向きに電流が流れるという。

電子部品を機能で分けると大まかに次のようになる。

(1) 集積回路  

(1-1) IC(Integrated Circuit;集積回路),LSI(Large Scale IC;大規模集積回路)

 トランジスタ,抵抗,コンデンサなどに相当する要素をシリコンの基盤に数多く集積し,複雑な回路を1つのパツケージに納めたもの。大規模集積回路をLSIという。
 一口にICというものを用途・機能や製法で分類するとたくさんの種類に分かれる。しかもメーカーによって型名の付け方が色々である。型名はアルファベットと数字の組み合わせであり,覚えやすいものではない。それらの理由により,多くの部品を整理して間違いなく実装するのは,簡単なことではない。
 ICという言い方は総称であって,機能によって,マイクロコンピュータ,メモリー(ROM,RAM),ロジックIC,リニアIC,セミカスタムIC,専用ICなどといった言い方に分かれる。

 ICは静電気に弱いのが特徴である。また,熱にも弱い。熱(常温でも)によって半導体の中の原子が動き(拡散という),性能が劣化する。原子が動かない温度を絶対零度(-273℃)という。

(1-2) ROM(Read Only Memorey;ロム),PLD(Programable Logic Device)

 ROMの種類にはEP ROMなどがあるが,ユーザーでデータを書き込みできるものにはメーカーの部品型名とは別に,データの内容を表す型名が付く。メーカーの型名だけをみて混同して実装した例があるので,この点に注意すること。
 ROMを内蔵するワンチップマイコンも同じである。
 PLD IC(商品名;GAL,PAL)はROMでなくてロジックICであるが,ユーザーで書き込みできるもので,型名の事情は同じである。

(2) 個別部品(電子回路を構成する要素)  

 トランジスタ(Tr;Transistor),FET(Field Effect Transistor),ダイオード(Diode)LED(発光ダイオード;Luminoius Effect Diode)などの能動素子は半導体を接合した構造になっていて,熱に比較的弱い。
 抵抗(Resistance)やコンデンサ(Condencer;キャパシタンス),コイル(Coil:インダクタンス)は受動素子といわれ,物質の性質によって電気的な働きをする。
 IC(インテグレート)に較べて,これらの個別部品はディスクリート(Discrete;分離している)部品と呼ばれる。普通にディスクリート部品といえば,挿入部品を指す。
 IC以外の小型表面実装部品はチップ(Chip;細片)と言い慣らわしている。チップという言葉を表面実装部品,たとえばCPUを指して言うこともある。
 個別部品は電気回路図で1つの記号(シンボル)で表されるもので,次のような働きをする。電子回路はこれらの働きを巧みに組み合わせて人間の役に立つ機能を実現するものである。

(2-1) 抵抗
 電流を流すと抵抗がそれを流しにくくすることによって電圧を生じる(オームの法則)。
 抵抗は,材料と定格電力,形状で分類される。単位は,Ω(オーム)である。

 抵抗アレイ(Array;整列)は,数個の抵抗を1つのパッケージに収めたもので,表面実装部品と挿入部品があり,挿入部品には向き(コモン端子)がある。


(2-2) コンデンサ
 電子を一時貯める働きをする。貯める材料と貯められる量(容量)によって流れる電流の周波数に応じて流れ方が変わるので(周波数特性),その特性を利用する。
 コンデンサは材料と定格電圧,容量によって分けられる。単位はF(ファラド)であるが,コンデンサの種類によって,μF(マイクロ ファラド)とpF(ピコ ファラド)を使う。まれにnF(ナノ ファラド)でいう種類もある。
 アルミ電解コンデンサとタンタル(電解)コンデンサには極性がある。アルミはマイナス極を,タンタルはプラス極を表示してある。その他のコンデンサは極性がない。フィルムコンデンサとは,ポリエステル(マイラー)フィルム,ポリプロピレンフィルムなどの総称である。
 よく使われるチップ積層セラミックコンデンサは,セラミック(粘土を焼き固めたようなもの)なので機械的強度が弱い。

(2-3) コイル
 電子が流れると周囲の空間に電場と磁場が生じる。逆に磁場の中を電子が動くと力を受ける。この現象を利用したのがモータである。
 導体をコイル状に巻くと隣合った部分の作用で,高い周波数の電気が流れにくくなり,ちょうどコンデンサと逆の現象になる。これを利用して無線(高周波)の回路によく使われる。
 単位はH(ヘンリー)で,mH(ミリ ヘンリー),μH(マイクロ ヘンリー)でいわれる。

(2-4) ダイオード
 異なる性質の半導体の2種類を接合すると,境界の障壁を電子が乗り越えようとして変わった挙動をする。ひとつは整流作用で,電流が1方向にしか流れない。
 ダイオードには色々な種類がある。ツェナー(定電圧)ダイオードは,英語読みでゼナーダイオードということがある。
 極性は,電流の流れ込む側をアノード(陽極),出口側をカソード(陰極)といい,カソードに帯で表示する。

(2-5) トランジスタ
 半導体を組み合わせることで信号の増幅作用などをする素子の代表的なものがトランジスタである。普通のトランジスタは電流動作であるが,電圧で動作するFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)もある。
 トランジスタの極性を簡便に調べるには,アナログテスターを抵抗測定レンジにして,黒リード(電池のプラス側)をPNPであればコレクタにあて,赤リードをエミッタにあてる。つぎに指をコレクタとベース間にあてると,バイアスが かかって指針が振れるので極性が知れる。デジタルテスターの場合は,赤リードが電池のプラスである。


(3) コネクタ,スイッチなどの接続要素  

(3-1) コネクタ
 基板から電源や信号を外部に簡単に接続・切り離しをするためにコネクタが使われる。
 リードピッチはインチ単位のものとmm単位のものとがある。100 mil(2.54 mm)のコネクタをフルピッチといい,50 milのものをハーフピッチという。

(3-2) スイッチ
 信号の流れを変える部品である。
 プリント基板によく使われるものに,タクトスイッチ(キースイッチ,ライトタッチスイッチ)がある。軽い操作力とストロークで信号のON-OFFをおこなう。


(4) 基板(PCB,PWB)  

 昔の真空管時代には,ラグ端子に部品を固定して,部品のリードからあちこちに電線(ワイヤ)を引き回して配線していた。プリント基板は板の上に配線を印刷で作っているので,部品を挿入してはんだ浴に漬けるだけで回路ができ,大量に同じ物を作るのに適している。
 そういうわけで,基板のことを PCB(Printed Cirkit Board)あるいはPWB(P.Wiring B.)という。厳密には,部品実装をしていないものを PWB(印刷配線板)といい,実装されて回路を形成したものを PCBと言ったりするが,普通にはとくに区別していない。
 部品が実装されていない基板を通称で生基板という。英語でベアーボード(Bare;裸の)ということもある。

 基板は基材に銅のパターン(厚さは主に35μ,他に18μ,70μ)を形成した構造で,銅箔(導体層)の層数により,1層(片面),2層(両面),4層,6層がある。
 基材は,産業用ではガラス繊維にエポキシ樹脂を圧延したガラスエポキシ基材(ガラエポ)が普通である。製造時の方向(縦横)で物性が若干異なる。
 コストを問題とする民生品では基材にベークライト(これは商品名で,フェノール樹脂のこと)などが使われる。ベークの両面基板では,両方のパターンを接続するために穴に導電物質を充填する方法が用いられ,これを銀スルーという。ベーク基板は常温とはんだ付け時の機械強度が弱いので,注意が必要である。
 ガラエポ基板には,銅箔の処理によって,銅そのままのもの(プリフラックスを塗布してある),
 はんだをコーティングしたはんだレベラー仕上げ,はんだメッキ,金メッキがある。
 2層以上の基板では,各層の接続と挿入されたリード線を強固にはんだ付けするため,穴をあけて内面にメッキを施す。これをスルーホールといい,とくに接続だけの目的の小さいスルーホールをバイアホール(Via Hole)という。

 基板の裏表の呼び方は,フローはんだ(ディップはんだ)の工程がある場合は簡単であるが,両面リフローの場合は工程の区別がないので分かりにくい。設計した時点で決めた呼び方が約束事になる。
 両面リフローの場合,どちら側を先に実装するかはケースバイケースである。重量で脱落する部品があればそれが後であるが,ファインピッチのICがあって印刷が難しい面を,基板がリフローで変形する前にしたのがよい。


[ 面 : Side ] [  呼 び 方  ]

部品が実装される面:   部品面:(一般的な呼び方)
  C面(Conpornents Side)
  リフロー面
主な部品名,例えばQFP面
A面

はんだがあたる面: はんだ面:(一般的な呼び方)
(表面実装はボンディング) S面(Soldering Side)
フロー面
主な部品名,例えばLCD面
B面


 

8.1.2 形状別分類と名称  

 これらの電子部品を実装工程と形状で分類すると,表面実装部品(SMD;Surface Mount Device)と挿入(Insirt)部品の2つに分かれる。
 SMDはその名の通り,リードが平面で基板に接するようになっていて,部品の形状は英語の略で呼ばれる。スペリングは覚えなくてもよいが,形状の分類を知らなくては部品を指し示すのに,「あれ」「こいつ」と呼ぶしかないので不便である。
 挿入部品は部品本体からリード(引き出し線)が出ていて,これを基板の穴に挿入して,パターンにはんだ付けする。


(1) 表面実装部品

IC:
QFP   Quad Flat Package  4辺リードのフラットパッケージ
SOP  Small Outline Package  小さな2列リードのパッケージ
QFJ  Quad Flat J-leaded Package  QFPでリードがJ形(PLCC)
SOJ  Small Outline J-bend Package SOPでリードがJ形
TQFP  Thin Q F P 薄いQFP
TSOP  Thin S O P 薄いSOP
BGA  Ball Glid Array QFPより高密度の格子状リード

トランジスタ,ダイオード:
ミニモールド ボディが2125以上のパッケージ
スーパーミニモールド ボディが1608のパッケージ


抵抗,コンデンサ
1005,1608,2125,3216,3225,5025,6432 角チップはボディの平面寸法で呼ぶ。
  2125(ニイイチニイゴ)とは,2.0×1.25のサイズをいう。

 なお,工業界では長さについて数字でいう時,単位はmmが常識である。
3216(3.1×1.55),3225(3.2×2.5)
この2つは実寸と異なる。


(2) 挿入部品

IC:
DIP (ディップ) Dual Inline Package 2列にリードが並んだパッケージ
SIP (シップ) Single Inline Package 1列にリードが並んだパッケージ
ZIP (ジップ) Zigzag Inline Package ジグザグ(千鳥)にリードが並ぶ
PGA Pin Glid Array 格子配列にピンが並んだパッケージ

 挿入のICのリードピッチやボディの幅などの寸法は,インチが基準になっている。コネクタのピッチはインチとミリメートルの両方がある。


(3) アキシャルリード形部品

 抵抗,ダイオード,コイルなどの挿入部品で,リードとボディが一列に並んでいるものを,アキシャル(同軸状)部品と言い,自動挿入ができる。パナサート(松下電器産業)などの機械の仕様にあったテーピングでないといけない。挿入ピッチは 5mmと10mmである。挿入機によってはこれ以外のピッチ(12.5,15.0,17.5mm)も可能であるが,一般的でない。
 テーピングの部品を手挿入でする場合,準備にフォーミング機(ハッコー154)が使え,速くできる。ハッコー154 の操作は若干習熟を要する。
 アキシャルリードをラジアルにテーピングした形状(縦型フォーミング)は,表面実装の普及とともになくなってきている。

(4) ラジアルリード形部品

  コンデンサなど,2本のリードがボディの片側から出ているものを,ラジアル(放射状)部品と言い,アキシャルと同様に自動挿入ができる。ピッチは 2.5mmと 5mmである。機械により,半固定抵抗,小型のトランジスタ,LED,抵抗アレイなどの部品も自動挿入できる。基板の穴径は1.0mmが必要である。産業用の基板(ディジタル回路)はスルーホール間にパターンを走らせるために1.0mm以下の場合が多い。
 テーピング部品の準備加工にフォーミング機(ハッコー155)が使える。これの操作は154 より容易である。

(5) その他の挿入部品

 大型のトランジスタ,FETでは,絶縁の目的でリード間の沿面距離をとるためにフォーミングする場合が多い。エキセンプレスなどで型を使ってフォーミングする。
 コネクタでは,基板の設計が不適切であるために,挿入が固い場合がある。また,リードの本数が多いものは,うっかり変形させてしまうと挿入が大変やりづらくなる。
 基板から配線を引き出す電線(ワイヤ)のこともリード線という。自動はんだで取付可能でなければ後付けとなる。リード線とコネクタが一体となったものとか,何本かのワイヤーを結束したものをワイヤーハーネスという。
 その他,挿入部品には様々なものがある。

 

8.1.3 その他の材料  

 基板の組立には,電子部品以外の補助材料が使われる。いずれも機能に影響するものであるから,設計部門の指定で使われるが,材料の手配は電子部品とは別ルートとなることがあり,そのため,作業開始にあたって材料が揃っていないことにあわてることがある。


(1) ジャンパー配線用被覆線

 設計変更で,基板に印刷されたパターン以外の配線が必要な場合は,ジャンパー配線をおこなう。
 配線材料には次のものがある。

○ 機器配線用塩化ビニル(PVC)被覆線:被覆の材料が塩ビであるもの。芯線(導体)には,裸軟銅線,スズメッキ軟銅線,はんだプリコートがある。はんだコテを当て過ぎると熱で被覆が収縮する。PVCは燃えても自己消炎性をもつので,電子機器にはよく用いられる。

○ 放射線照射塩化ビニル被覆線:被覆の耐熱性を高めたもの。作業性がよい。

○ ジュンフロン線(商品名):テフロン(Dupont社の商品名)の被覆で,耐熱性がある。芯線が単線であるのが普通だが,ストリップ(皮剥ぎ)時に傷つけやすい。テフロンの架橋残渣が芯線表面についていて,はんだのなじみが悪い。

◎ ワイヤのサイズは機器配線用では,AWG (American Wire Gage)を単位でいう。数字が大きくなるほど,断面積が小さくなる。なお,一般の電気配線用ではサイズは導体の断面積(o2)でいう。


(2) スズメッキ軟銅線(TA;Tin Aneeled Cupper Wire)(ジャンパー線)

 基板のパターンの接続を変えるときに,スズメッキ軟銅線を挿入する。大抵はメッキ線をフォーミングカットして使うが,あらかじめ挿入できるピッチにフォーミングされた部品を用いると能率的である。
 片面のベークライト基板は,民生機器に多用され,必ずジャンパー線があるので,ジャンパー配線だけを専門の工程でおこなう。
 ジャンパーの目的ではないが,横に寝かせるクリスタルの固定などにもメッキ線が用いられる。
 スズに限らず、金属には常温でも原子が動いて金属間化合物を作る現象がある。これを拡散というが、スズや銀にはこれが著しい。
 古いスズメッキ線は、光沢があっても、はんだが馴染まないのは、これが原因である。

(3) チューブ

○ イラックスチューブ(商品名):架橋ポリエチレンのチューブで,耐熱性にやや優れている。
 自然色(着色しない樹脂そのものの色),白色,黄色などがある。リードに差し込んで部品を浮かせたり,絶縁のために用いる。

○ ULチューブ(俗称):UL規格の難燃性の要求をみたすPVCチューブで,太さにより,リード線やワイヤの保護に用いられる。熱収縮しない。

○ ガラスチューブ(エンパイヤチューブ):ガラス繊維をチューブ状に編んだもので,耐熱・不燃性であるので,部品の保護に用いられる。ワニスなどで塗装していないものは白色である。

○ ヒシチューブ(商品名):PVCの熱収縮チューブで,外観はULチューブの黒色と同じである。約80℃で収縮する。部品の保護と固定に用いられる。ヒシチューブ以外の収縮チューブで,半透明のものもある。

○ スミチューブ(商品名):EPゴムの熱収縮チューブで,約180℃で収縮する。収縮後の直径は約60%になる。


(4) 接着剤

 接着剤は接着する材料と目的によって選ばなければならない。接着剤と名がつけばどれでもよいわけではまったくない。
 電気回路に接着剤を用いる際は、その影響を十分評価できる部門の指示に従わなければならない。そうでなければ、不測のトラブルが生じることがある。
 また、同じ種類・商品のシリーズでも、グレードが違えば性質が異なるので、指示の内容を確認すること。

○ RTVシリコン:シリコンゴムで1液性のものをRTV(Room Temperature Vulcanization)という。空気中の酸素により約2時間で硬化する。チューブ容器のノズルは放置しているうちに硬化するので,短時間であれば,つまようじを軽く差し込んでおく。一晩放置する場合は元のキャップを締め,ノズル内のゴムは硬化させてしまうのが扱いやすい。硬化後の溶剤はない。
 接着強度はかなり弱く,固定とかシールの用途に用いられる。
[注]シリコンと名のつくものは,他にシリコングリス,シリコンオイルがあり,とくにグリスは見た目が似ているので混同しないこと。

○ エラストマー(ゴム)系接着剤:アクリロニトリルその他のゴムを溶剤で液状にして,溶剤が蒸発することによって硬化(乾燥)する。安価なため,コストを問題とする機種に用いられる。缶容器のものはジェットオイラーに移し変えねばならない。ソニーボンド(SC-608)はポリエステル樹脂系で扱いやすい。硬化後も溶剤(容器に記載)に長時間浸すと剥離できる。
 市販の汎用のゴム系接着剤(クロロプレンゴム)は分子構造が有極性であるので,電灯線以上の電圧の絶縁には不適当である。

○ ホットメルト:EVAなどの温度により粘度の変わるプラスチックを,高温で融かして塗布し,冷却すると硬化することで接着する。専用のガンを使用する。接着表面が汚れていると強度が極端に落ちる。

○ ロックタイト(商品名):アクリル系の樹脂を硬化剤で硬化させる。短時間のはんだ槽に耐えられる。接着強度とフローはんだで脱落しない接着力があるが作業性は悪い。

○ 瞬間接着剤:シアノアクリレート系の樹脂で,空気中の水分により硬化する。平滑な表面でないと強度が得られないので,基板には仮止めの目的以外には用いられない。耐熱性はない。硬化後の溶剤はアセトンである。軟らかいプラスチックには適しない。うまく条件を整えれば接着強度はあるが,衝撃に弱い。

○ ネジロック:接着剤ではないが,ビスの緩み止めのための固着剤である。スリーボンド社のもの(1401)がよく使われ,溶剤(メチルアルコール)が蒸発することで固まる。ビスの頭の側面から基板にかけて,円周の 1/3程度の微量を塗布する。ジェットオイラーの中に空気が多くあると,それが手の暖かさで膨張して吐出量が多くなる。

○ エポキシ接着剤:基板には用いられないが,治具製作用に便利である。主剤と硬化剤を等量混ぜ合わせ,熱によって硬化する。充分な強度が欲しい場合は,温めて流動性をもたせ,完全に混合する。短時間に硬化するタイプのものも,見かけの粘度が増加して硬くなっているだけなので,強度が要る場合は約1昼夜静置する。急ぐ場合は高温に保って硬化反応を促進させる。
 ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),塩化ビニル(PVC)など軟らかいプラスチックの接着には適さない。

○ PVC,アクリルには専用接着剤がある。
 また,ポリエチ(PE),ポリプロ(PP),テフロン(PTFE)など,エチレン基のあるプラスチックは通常の接着剤では強度のある接着はできず,火炎処理,プライマー処理が必要になってくる。

○ 木工用ボンド:木以外は接着できないので,誤用しないこと。

 

8.2 型名の見方


 

8.2.1 数値の読み方  

 抵抗,コンデンサ,コイルはそのものの大きさ(量)を持っている。量は数値と単位で成り立つ。
 単位はそれぞれ次のようなものである。大文字と小文字の区別をつけるのが本当は正しい。

抵抗: Ω(オーム;ギリシャ文字のオメガ)
コンデンサ: F(ファラド)
コイル: H(ヘンリー)

(参考)電圧: V(ボルト)
電流: A(アンペア)
電力: W(ワット)
周波数: Hz(ヘルツ)
利得(ゲイン): dB(デシベル)(d;10−1)

数値は大きすぎたり小さすぎるので,次のような接頭語をつける。

G(ギガ) × 1,000,000,000 =9乗
M(メガ) × 1,000,000 =6乗
K(キロ) × 1,000 =3乗
     × 1 =100
m(ミリ)  × 1 / 1,000 =10-3乗
μ(マイクロ) × 1 / 1,000,000 =10-6乗(ギリシャ文字のミュー)
n(ナノ)  × 1 / 1,000,000,000 =10-9乗
p(ピコ)  × 1 / 1,000,000,000,000 =10-12乗

 たとえば,1,000 Ωは 1 KΩ(キロ オーム),0.000047 Fは 47 μF(マイクロ ファラド)のように言う。部品の表記は次項のように,指数方式で表されていることが多いが,通常は単位をつけて呼ぶので,混乱しないように注意する。
 接頭語のM(メガ)は,オームの前につく場合に限り,メグオームと読む。メガオームと読むと素人である。

 

8.2.2 抵抗(R;Resistance,VR;Variable Resistance)  

 抵抗の型名は次の(1)〜(6)の内容を表している。表し方はメーカーにより異なるので,憶えるのが面倒である。

(1) 品名(種類) チップ固定抵抗器
チップ半固定可変抵抗器
リードレス炭素皮膜固定抵抗器(メルフ)
チップネットワーク抵抗器(抵抗アレイ)
炭素皮膜固定抵抗器(カーボン抵抗)
金属皮膜固定抵抗器
酸化金属皮膜抵抗器
可変抵抗器
ネットワーク抵抗器(抵抗アレイ)
その他

(2) 定格電力;そのパッケージで許される電力。
2125角チップ 1/10 W
カーボン抵抗 1/6,1/4,1/2 Wがよく使われる。
酸化金属抵抗 1〜3 Wがよく使われる。

(3) 値の許容差(ランク)

D ±0.5%
F ± 1%
G ± 2%
J ± 5%
K ± 10%

通常は J ランクが使われる。

(4) 抵抗温度係数 表示なし 一般仕様

X ±100PPM/℃
W ±200PPM/℃

通常は一般仕様である。
(5) 公称抵抗値

J ランク以下は有効数字2桁とそれに10を何回掛けるかの数字1桁の,合計3桁の数字で表す。
G ランク以上は有効数字が1桁増える。


例: 682 68×102 = 6,800 Ω(オーム) = 6.8 kΩ
220 22×100 = 22 Ω(オーム)
4R7 4.7 Ω(オーム)

(6) 包装・加工仕様

 リールの直径,テープの中の部品の向き,バルク(Balc;バラ),リードの形状などの形態を表す。
 リード付き部品は,リードの形状と包装仕様を1文字で表すメーカーと別々に表すメーカーがあるので難解である。
 SMDのテーピング仕様(送り穴の径とピッチ)は統一されているが,自動挿入のテーピング部品は機械の仕様によって違う。通常はパナサート仕様である。

[参考] カラーコード

 カーボン抵抗,コンデンサ,コイルのアキシャル部品は,ボディに数字を意味するカラーコードを印刷して,公称値と許容差を表示する。なお,この色の順は虹の色の順番である。
 許容差のランクを表す帯は,±5%の金色帯であれば判りやすいが,G ランク以上は赤(2%)とか茶(1%)の帯になるので見分けにくい(有効数字の帯より少し離れてやや太い)。

1 茶 8 灰
2 赤 9 白
3 橙 0 黒
4 黄
5 緑
6 青 ±5% 金
7 紫 ±10% 銀
  [参考] 公称数値の系列

 抵抗,コンデンサ,コイルの数値は特定の値が用いられていて,E12,E24,E36の数値系列がある。
 中途半端にみえるのは,常用対数をとったときに当間隔になるためである。通常はE12かE24系列が用いられる。

E24系列
1.0  2.2  4.7
1.1  2.4  5.1
1.2  2.7  5.6
1.3  3.0  6.2
1.5  3.3  6.8
1.6  3.6  7.5
1.8  3.9  8.2
2.0  4.3  9.1

 

8.2.3 コンデンサ  

 コンデンサの型名は次の(1)〜(6)の内容を表している。表し方は,これもメーカーにより異なるので,憶えるのが大変面倒である。

(1) 品名(種類) 積層セラミックC

セラミックC
アルミ電解C
タンタルC
トリマー(可変)C
フィルムC (材料名)ポリプロ,ポリエステル,その他種類が多い

(2) 定格電圧;動作する電圧をあらわす。

 アルファベット1文字が数値を表していて,その前の数字は,その数値に10を何回掛けるかを表す。チップの場合はメーカー独自の表現がある。


例: 1H ・・・5 × 101 V 3H ・・・5 × 103 V = 5 KV


1A ・・・ 10 V   A ・・・ 1.0
1B ・・・ 12.5 V  B ・・・ 1.25
1C ・・・ 16  V  C ・・・ 1.6
1D ・・・ 20  V  D ・・・ 2
1E ・・・ 25  V  E ・・・ 2.5
          F ・・・ 3
          G ・・・ 4
1H ・・・ 50  V  H ・・・ 5
          J ・・・ 6
1V ・・・ 35  V  K ・・・ 7

F,G,H,J,K などは高圧コンデンサで用いられる。

(3) 値の許容差(ランク)

C ±0.25pF (10pF以下)
D ±0.5 pF ( 〃 )
F ± 1 pF ( 〃 )
J ± 5%
K ± 10%
M ± 20%
N ± 30%
Z + 80%,−20%
P + 100%,−0%


 コンデンサはスチロールCを除いて高精度のものができないので,C,D,Fは抵抗と異なった意味である。


(4) 容量温度係数

 温度によって容量がどのように変化するかを表す。メーカーにより様々であるが,大抵はアルファベット1文字で表す。
 温度による変化の少ないグレードのものは,精密さを要求される部分にだけ使われるので,ひとつの基板の中に同じ数値の一般仕様のものと混在する場合がある。このような時には部品の型名の1字が違うだけなので,注意する必要がある。

(5) 公称静電容量値

 抵抗と同じく,有効数字2桁とそれに10を何回掛けるかの数字1桁の,合計3桁の数字で表す。

(6) 包装・加工仕様

 抵抗と同じような要領で表される。


 [コンデンサの型名の例]

ローム 積層セラミックチップC MCH 21  2  F 104 Z  K

シリーズ名 形状・寸法 電圧 温度特性  公称容量値   許容差 包装仕様

松下  積層セラミックチップC ECU  V   1E 104  Z  F  N

シリーズ名 形状・包装仕様 電圧  公称容量値   許容差 温度特性 設計番号

京セラ 積層セラミックチップC CM21 Y5V 104  Z 25V A T

シリーズ名   温度特性  公称容量値   許容差 電圧 電極形状 包装仕様

 

8.2.4 汎用(標準)ロジックIC  

 ロジックICと言われる,一定の機能を持った様々なICが各社から出されている。
 元はテキサス インスツルメント(TI)から74シリーズとして発売され,各社が追随した。いわゆるコンパチ(コンパーチブル,互換性)品であって,各社の製品が同じ機能とピン配列になっているので,メーカーが違っても混用できる場合が多い。ただし,設計によっては混用できないこともあるので,設計者に無断でしてはならない。
 部品の型名は,そのメーカーのICのファミリーを表す記号に,74****をつけて表す。たとえばTIでは SN74,東芝では TC74,日本電気ではμPC74,日立では HD74といった具合になる。

 ロジックICは初期のもの(スタンダード)から段々と発展し,現在では構造がTTL(Transistor- Transistor Logic)とCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)があり,さらに省電力,動作速度,動作電圧の違いで,下記のシリーズが作られている。
 パッケージはDIPとSOPの2種類がある。


[よく使われる74シリーズ(TTL)]


スタンダード(ノーマル) 現在では7438あたりが使われるだけである。
74LS         最も広く使われている。
74ALS        LSの改良型
74F          高速版


[よく使われる74シリーズ(CMOS)]

74HC    LSに近い能力で,主流になりつつある。
74HCT   HCの入力特性がTTLと同じもの。
74AC    HCの高速版
74ACT   ACの入力特性がTTLと同じもの。

 これらの他に,S,AS,BC,C,BCTのシリーズがあるがあまり使われていない。

 

8.3 静電気による部品破壊

 半導体は一般に静電気(高電圧)に弱い。とくにCMOSは保護回路がついて昔ほどのことはなくなったと言われるものの,取扱いには充分に注意が必要である。
 CMOS構造は,LSIの高集積度にともなって増えているが,扱う部品がそうであるかどうかを調べるのは手間がいることであり,また,ちょっと複雑な回路には大抵CMOS部品があるので,要するにICはすべて静電対策をとるのがよい。なお,ワンチップマイコンを使用した回路は一見,簡単に見える。

(1) 人体の静電対策

 アースバンド(リストストラップ)を手首に取り付け,アース母線に接続する。
 アースバンドは,手首にしっかりと巻き付けなければならない。肌が乾いているタイプの人は注意が必要である。接続がきちんとしているかどうかは,ハッコー498などでテストする。
 化繊の衣服は静電気を発生しやすい。また,激しく動き回れば,化繊でなくても静電気は発生する。
 アースバンドは,内部に1MΩがあり,これを介して人体を接地するようになっている。その理由は,電気事故で漏電(地絡)があった場合に人体に影響を及ぼさないためである。
 また,静電対策用の靴は床に静電気を逃がすので,床が静電対策がとられている場合は大変有効である。

(2) 作業台と床の静電対策

 作業台は導電マットを敷き詰め,これを接地する。導電マットは導電率(体積固有抵抗)の比較的高い表面層(緑などの色がついている)に,導電率の高い,カーボンを含有する層を張り付けた構造になっている。または,全層が導電ゴム(ビニル)であるマットを使用する場合もある。
 導電ゴム(ビニル)はカーボンが入っているので黒色であるが,黒いマットが導電であるわけではない。
 人が立って動く場所で,しかも裸の部品に触れる自装などでは,その場所に導電マットをしくのがよい。
 接地は (1)と同じ理由で,たとえばモーターを使っているコンベアの本体に接続してはならない。
 なるべく,分電盤の接地端子か,それに近い場所に接続すること。



(3) 工具などの静電対策

 ハンダコテは直接に部品に触れる電気機器であるから,注意が必要である。原理的に絶縁抵抗の劣化しないヒータになっているエディスンインターナショナルのコテでも,ユーザーの要求で接地をとったモデルを出している。
 絶縁抵抗は,ホーザンのH−753などでテストし,対地10MΩ以上あることを確認する。
 その他の工具についても,静電対策を施しているものが多くなっているので,非対策品より若干高価であるが,なるべくそういったものを採用するのがよい。

(4) 除電設備

 イオナイザーなどは,空気をイオン化することで空気に導電性をもたせ,物体から静電気を逃がしやすくするものである。効果のある空間はそれほど広くない。
 除湿器も場所を限定すれば有効である。空気中の湿度が 70%以上であれば,静電気は発生しない。
 ただし,70%の湿度はかなり湿っぽいものである。

(5) 梱包材料

 静電対策の材料には,帯電を防止する(電気は通さない)だけのものと,電気を通す導電性のものとがある。部品単体の保管では導電性のものが適当である。
 帯電防止になっていてコストの安いエアーキャップは,ピンクやブルーの色がついていて,平らな面が帯電防止面である。古くなったものは効果がないので,注意すること。
 静電でなく導電になっているシートは,黒色(カーボン)か黒色半透明(ニッケル蒸着)かアルミ(ラミネート加工)の色をしているが,高価である。DIP ICの保管は導電ウレタンフォーム(スポンジ)が便利である。
 プラスチック製のコンテナは,導電でないものは塵挨がこびりついているのが見られるように,とても帯電しやすいので,基板には用いない。

(6) その他

 接地抵抗の測定はメガーを用いる。また,帯電電位の測定は専用のテスターを用いる。
 接地線は緑色というのがだいたいの決まりであるから,緑の電線はAC配線(U,V,W)に用いてはならない。

 弱電技術者が専門家(?)であるゆえに案外に錯覚することに,単相3線の中性線の電位である。
 中性線は図面上では接地のように見えるが,負荷が不平衡である時は対地に電圧がある。かつて,客先から静電対策の状況を調査に来て,この中性線の電圧を測定し,「この工場はアースがとれていない」と言った人がいた。
 まったく,電気屋さん(のごく僅かな一部の人)には,(他分野の人に較べて)自分の理屈しか頭にない人がいるから面白い。

 電気は自然現象であるから,人間の意図とは関係無く流れる。



最後にひとこと



整理・整頓をやかましく言うのは,道徳教育をしているのではない。
単に,仕事をやりやすくするための手段である。


工夫して,考えずにすむようにすること。

馬鹿な人ほど自分で自分の仕事を難しくする。




1996・03・08
高山雄介


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