最初は走り慣れたルート9を東に向かい,ボストンを取り巻く環状線のルート95を北上する.途中でマス・ターンパイクに入りいよいよ東を目指す.この道路は珍しく有料だが,アメリカの高速道路はほとんどが無料だ.ガソリン代だって安いし,アメリカで貧乏旅行をするには車はもってこいのツールというわけだ.実際旅行中至る所で,へえこんな所にあんな遠くから来てるんだ,とびっくりするようなマイカー族やキャンパーをたくさん見ることになる.もちろん私たちもご同類というわけだが.
高速道路の標識は非常にわかりやすい.車音痴の私でも十分ナビができるくらいに親切だ.入り口・出口の道路名,あと何マイル行けば出口があるのか,休憩所までは何マイルか,どこにはどんなファーストフードや施設があるのか,泊まるのに良いモーテルはどの出口に何があるか,等々.地図も見るけどこの標識を見てここで休もう,お昼はマックじゃなくてバーガーキングが良いからもう一つ先の休憩所までがんばろう,とかいろいろ検討しながら進むのだった.
もっとも今日のお昼は初日と言うことでおにぎりを用意した.タングルウッドに行くときに良く止まった休憩所に入る.ここはピクニックエリアがあって椅子とテーブルが備え付けてある.これもアメリカ標準仕様.どこへ行っても木で出来たこのセットはある.日本みたいに各地でデザインをかえたり工夫したりすることはないのだろう.おかげで一目でわかるから良いし,こういうことにお金をかけないから無駄な出費もないのかな.なんてテーブルに感謝しながらお昼をほおばる.7月中旬になるので気温はかなり暑い.とはいってもここはまだ緯度も高いので日陰は涼しくて気持ちよい.
ここからしばらく私が運転する.今回の旅では私もしっかり運転しなければならないことになっているのだ.ボストンで少し慣れてきたとはいえ,私の運転技術はまだまだ心許ない.しかし大陸横断を全て夫に運転させるのもちょっとかわいそうなので,今回ばかりは私もがんばらねば.郊外のフリーウェイは比較的交通量も少ないのでゆったり走れる.道もまっすぐだしね.でもまだまだ緊張しているので,回りの景色を楽しむ余裕は無い.まあ1ヶ月もドライブしていれば,そのうち度胸も着くだろう.
100マイルほど走って,また孝さんと運転交代.やっぱり助手席の方が楽だ.窓の外を落ち着いて眺められる.まわりはまだまだ住み慣れたニューイングランドと同じ雰囲気の景色だ.針葉樹と落葉樹が混じりあって,緑が多い.牧場のような農地もたくさん見える.のどかなのどかな田舎の風景.北海道の風景と同じようなものだ.
夕方近くになって道路からエリー湖が見えてきた.そろそろ今日の目的地.だいたいニューヨーク州とペンシルバニア州の境目辺りにあるキャンプ場だ.KOAの地図をたよりに4時半頃キャンプ場に到着.キャンプ代は借りるサイトの種類によって異なるが,私たちは電源も使わない一番原始的なテントと車だけのサイトなので,一番安く17ドル10セント.もちろんクレジットカードで支払える.
まだ日も暮れてないし,芝生のサイトに小さなテントを張ってちょっとひと休み.まわりを見渡すとバスのようなキャンピングカーがそこここに止まっている.たいてい大きなモーターボートも一緒だ.昼間はエリー湖でフィッシングということなのだろう.キャンピングカーのなかはクーラーも暖房も入るのだから夜も快適そうね.うらやましい.
夕飯はどうしようか.スーパーに行く時間は無かったのでメインディッシュが無いのだ.ご飯を炊くことにして何か主食になるものを買おう,ということになり車でそこらへんを探検する.湖は夕暮れ時でヨットを降りてくる人や遊びから帰る人がちらほら.そんな風景を見て夫はニコニコ.うらやましそうに見ている.そうだね,こんなきれいな湖のそばに住んでたらヨットも身近な物よね.高速を降りてからキャンプ場に来るまでの間,住宅街を通り抜けて来たけど,どの家にも多かれ少なかれ水遊びグッズが庭においてあった.小さなボートが置いてある家が多かったね.そんな様子を見ると夫はため息つきつき「いいなあ」を連発する.日本とは違うよね.
そんな湖のほとりの小さな店に入る.まともそうな店はここしかないが,いかにも地元の典型的な小さな料理屋さん.大丈夫かな.日本人カップルなんて珍しいだろうな.テイクアウトができると書いてあったのでステーキとクラムチャウダーを頼む.それなりにお客さんがいるので座ってしばらく待つ.びっくりしたことに目の前で冷凍庫から冷凍の肉を取り出し,いきなり焼きだした.う〜ん,やっぱりアメリカ人だ.でも焼いている臭いはまあまあだ.文句を言っても仕方がない.食いっぱぐれるよりはましだ.焼きあがった肉を持って,冷めないうちにテントへ戻ろう.
二人で静かな湖のほとりで夕食.なんだか1日の疲れも吹っ飛ぶね.まずはいい滑り出しだね.夕食も済み,シャワーを浴びても9時ごろなのだが,なんだか真っ暗なキャンプ場にいると眠くなってきて私はそうそうに寝袋にもぐり込む.夫はランタンの側で椅子に座り,コーヒーなど飲みながら明日の事を考えている様子.私は緊張の一日が終わったためか,すぐに熟睡.朝まで目は覚めなかった.