8日目:もうちょっとサンタ・フェでぶらぶら

7月22日(走行距離:孝明 221mile 美枝 103mile)
 昨夜の雷雨が嘘だったように朝から太陽が照りつける.ほんとにどうなってるのかな,ここの天気は.木立の日陰が欲しいと思いながら,テントを傾け日に干して乾くのを待ちながら朝食を済ます.

 私たちは天気予報というものを知らずに過ごしている.昨夜の雨を教訓に天気予報を知りたいね,と話し合うのだがラジオではやってないし,テレビも無い.わざわざ新聞を手に入れるのもキャンプ生活ではめんどうなので,結局この先も運を天に任せることにする.しかし,人間無ければ無いなりに五感を働かせるようになる.この砂漠の気候に慣れるのだろうか,この後も期待とは裏腹に,しばしば,いや毎日スコールに見舞われることになるのだが,最後には降りそうかどうかまでわかるようになってしまった.雲行きを見ることができるようになった.

 さて,サンタフェの雰囲気にすっかり魅せられた私たちは本来なら先へと進むはずを,もう半日ほど観光にあてることにした.町の中心部からちょっと住宅街へと歩くとギャラリーが並んでいるのだ.多くのアーティストが住むという所を見ておきたい.再び,ダウンタウンに向かう途中でスーパーに寄る.この辺りは同じ田舎町とはいえ,今まで通ってきた所と違う.正直言って都会だ.ショッピングモールもある.買い物客も都会的な人が多く,観光地であるだけでなく,実際の住人にお金持ちが多いことを伺わせる.この木も水もないような砂漠の土地にかなり近代的な住宅が立ち並んでいることからも想像できる.

 お目当てのギャラリー街は高級住宅地の中にある.ここだけは緑が豊かで自然にあふれていて,不思議なギャップを感じる.この国の環境はどうなっているのだろうか?移植なのか,もともとオアシス的に緑が多いのか,ボストン郊外と言っても通用する.ギャラリーはそんな雰囲気の中に並ぶので,自然と観光客やアッパーな人が多く覗いてる.インディアン風の民芸品,アクセサリー,色鮮やかなポスター・絵画.見ているだけで飽きない.ニューヨークのビレッジを郊外に移設したという感じだ.残念なことに時間的余裕はそんなにないので,早足で歩き回った後,町へと引き返す.最後にもう一度ブリトー風のメキシカンでお昼を簡単に済ませ,いよいよグランドキャニオンを目指すことにする.今日も長旅になりそうだ.

 サンタフェから南へ下り,再び40号へと合流する.途中,サンタフェで見たサンタフェ鉄道と平行しながら走る.この鉄道の詳しいことはわからないが,貨物専用のようだ.先頭はかわいい赤や青の機関車で,胴体に大きくSanta Feと書いてある.長い長い貨物の車両の列は数え切れないほど続く.昔は唯一の交通手段だったのだろうが,すっかりさびれて日に何回運転されるのかな,と思うほどだ.それでも,元鉄道少年の夫にはおもしろいらしい.助手席でパチリと写真に納めていた.

 アルバカーキといういかにもインディアンの地名らしい町を抜け,アリゾナ州に入る.(後にアルバカーキはマイクロソフト発祥の地ということを知り,コンピューター屋の夫は感動していた.)ニューメキシコも赤土の国だったが,ここはもっと激しくなる.赤い岩々の山が現れ,ますます砂漠が進んでる感じがする.アリゾナに入ってすぐの休憩所でインディアンの土産物屋さんに入る.ベニア板に赤,黄,青のペンキで"Welcome to ARIZONA"という,素朴なくせに派手な看板が目立つ.店員さんはもちろんネイティブ・アメリカンだ.名札を付けていたので何気なくみると"Mina"とかいう日本人の名前と変わらないような名前.日本にもあなたと同じ名前の人がいるよと話しかけたところ,向こうも私たち東洋人の皮膚の色とは相通づるものがあるのかニコニコしながら相手をしてくれた.遠い昔,アジア大陸とアメリカ大陸がつながっていた頃,渡って行った人たちがエスキモーやアメリカ・インディアンとなり,南米ではインディオとなって文明を築いたという説は頷けるものがある.彼らの顔を見ればいかに私たちと似ていることか.血がつながっているんだな,と感じて親しみを覚えた.

 さて今日はグランドキャニオンの入り口とも言われるフラッグスタッフまで行く予定だったが,サンタフェで寄り道のため,行けそうにない.夕暮れ前にホルブルックという一つ手前の街にたどりついたので,そこのキャンプ場に泊まることにする.昨日の雷雨に懲りて,もし取れたら今日はログ・キャビンに泊まろう,という私の意見が通った.この日も走りながら各地で雷雨を見ていたからだ.見渡す限りの地平線なので遥か彼方で雷雨が起こってるのがはっきりとわかるのだ.始めは一カ所だけ黒雲が立ちこめ,黒い柱が地面に立っているかのように見えたのだが,しばらくするとそれは雨だということがわかる.ほんとに局地的な雨で止むのも早い.そんな光景があちこちで見られた.南西部特有のスコールなのだ.このキャンプ場でもいつスコールにやられるかわかったものではないし,車の中に寝るのはごめんだ.フロントで聞いてみるとログ・キャビンは空いていたので,迷わずキャビンに入り込んだ.

 KOAのキャビンには始めて入った.総丸太造りのほんとのログ・キャビン.2段ベッドが2つついて4人家族用.入り口には二人掛けのブランコがついていて雨もしのげるし,椅子をだせば夕涼みにはもってこいだ.かわいい家で私は気に入ってしまった.これならキャンプも楽しい.テントを張る必要もないし,虫や寒さ,雨の心配もいらない.とても快適.やっぱり人気があるようで,予約で埋まっていることが多いそうだ.値段は少し高く,26.69ドル.それでも高いモーテルに比べれば安いものだ.

 今夜はこの快適なキャビンで,夕暮れ前になんとステーキ・ディナー.このステーキは,キャンプ場のスタッフが余興として野外で焼いてくれたもので,レストラン程のものではないが近くに店も何もなかったので買ってみた.ともかく満足満足の二人.ゆっくりブランコにも乗って子供のようにいニッコリの私.こういうキャンプって悪くない.


Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on May 15, 1997.

[7日目:芸術の街サンタ・フェを徘徊.キャンプ場で大雨!(7/21/94)]

[9日目:いよいよ最初の国立公園グランドキャニオンへ(7/23/94)]

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