今日は早朝ヤコブ・レイクのキャンプ場を出発して,ノース・リムでミュール・ツアーに参加することになっている.夫のたっての希望で一度ミュールに乗ってみたいというのだ.ミュールとは馬とラバを掛け合わせた動物で,馬よりおとなしく初心者でも簡単に乗りこなせるためツアーに使われる.夫はサウスリムでこのツアーを見つけた時からやってみたくてしょうがなかったらしい.今回は始めてということで,ほんの2時間くらいのツアーに初挑戦.申し込みは昨日しておいた.注意事項がいくつかあり,帽子,長袖シャツに長ズボン,スニーカーなどの準備で参加する.二人とも馬にも乗ったことはないので,完全に初心者.どきどきの出発.
集合場所には10人程集まり,ツアーの先導者がミュールをつれてやってきた.乗る前にミュールの操縦方法をいくつか教えてくれる.進む時は脇腹を両足で軽くポンとたたく.右に行きたいときは右の手綱をグッと引く.左はその反対.簡単だから大丈夫だよ,と先生は気楽に出発するが,私にまわってきたミュールはとってもマイペース.人の指示なんか聞かないって感じであっっちに寄り道,ここで道草,どんどん前の人から遅れてしまう.馬って人を見るっていうけどこれは完全にバカにされてるのかな.まったくもう!と言いたくなるほど言うことを聞かない.後ろにいた夫はとても快適そうに乗りこなしているのに憎らしい.緑や林の中を進み,いくつか眺めの良い所もあったのだろうが,そんなことに気を向ける暇もないほどこのミュールの操縦に手間取った.おまけに鞍ってやつがお尻に当たって痛いのなんの,たったの2時間くらいだったのにそのあとしばらくお尻の骨が痛くて痛くて,私にはさんざんな経験だった.
ようやくミュールをおりて精神的にはすっかり疲れた私.旦那は私のよたよたミュール・ツアーがよほどおかしかったらしくいつまでも笑っていた.さて,まだ昼前,今度は気を取り直して車でノースリムのビューポイントめぐりにしよう.まず始めにこのリムにある唯一のロッジ,グランドキャニオン・ロッジからの眺めを紹介しよう.ロビーのある建物には峡谷に張り出しているサンルームがある.昨日の午後,ミュールツアーの予約をしたときに寄ってみたのだが,岩造りのデッキからは谷底がのぞめるくらいの迫力ある眺望が見られた.
ケープロイヤルというポイントには,狭い断崖にちょうど房総半島の形のような穴が開いているところがあった.柔らかい地層の部分だけが浸食された奇妙な,危なっかしい断崖だ.遠くからみるとその上を観光客が歩いていくのがわかる.私たちもその上を歩いてみたが,上からでは単に岩山の尾根を歩いているという感じで,まさか自分たちの足下に大きな風穴があるとは思えない.この穴がもっと大きくなったらいつかこのトレイルも歩けなくなるのだろうな.
ノースリムは全体的にサウスリムより緩やかな砂の残丘を臨むようなポイントが多かった.時折小雨が降ったり,風の強い時もあったので視界としてはあまり良くなかったが,観光客が少なく,のんびりとした雰囲気で落ちつけた.夕方ノースリムのキャンプ場にチェックインし,夕飯の支度をしていると,大きな鹿が迷い込んできた.人をこわがらず,慣れたようにキャンプ場を歩き回っていたがこんなに近くで鹿を見たのは始めてだった.このキャンプ場では始めて焚き火に挑戦.夕方はかなり涼しく,私は長袖にスパッツという昨日までとはうって変わったスタイルになった.前に泊まった人が残していった薪があったので,旦那が焚き火に挑戦したのだが,湿っていたのかうまく付かない.焚き火って結構難しいのね.
余裕の夕食を終えて,のんびりとキャンプ場周辺を散策し,倒れた木の上に座ってキャニオンに夕日の沈むのを眺める.サウス・リムのサンセットと違って,周りにはだれも人がいない.なんだかとても静かで,ゆったりとしていて久しぶりにのんびりとしたキャンプだった.毎日,これくらい余裕があるといいね.
[14日目:ザイオン国立公園でショート・トレッキング(7/28/94)]