すっかり気に入ってしまったブライス・キャニオンを後にして,今日はユタ州最後のの国立公園,アーチーズへと向かう.アーチーズへの道は簡単にはいかない.トロピックから再び89号に戻り北上を続ける.途中で70号に合流し,東へと進路を変える.ようやくインターステイト・ロードに入っても結構な距離.最近,隣接する国立公園巡りばかりしていたので,急にロングドライブとなって再び暑さが身にしみる.
アーチーズも地理的にはグランド・キャニオンやレイク・パウエルと続くコロラド河の上流に沿ってある.コロラド河というものがこんなにも不思議な地形をアメリカに産み出したのだとは全く知らなかったので,大きな発見だった.私たちが立ち寄った公園などはごく一部の有名な所ばかりだったが,このほかにも大小様々な見所がいっぱいある.きっと日本に紹介されていはいなくとも,もっと観光客の少ない美しい渓谷や森,岩の数々が無数に見られることだろう.アメリカに住んでいればいつか見ることもできるだろうが,2年程の滞在ではこれが限度だ.少々残念.
結局この日は一日中移動になってしまった.70号から191号に南下してアーチーズの近くのモアブという町についたのは夕方だった.この町にあるKOAのキャンプ場を確保する.とにかく暑い!暑さを少しでもやわらげようと,キャンプサイトにそれぞれ木でできた日除けが設置されているのだが,暑いものは暑い!なんだか昨日までキャンプ場の涼しさに味をしめていたので,すっかりげんなりしてしまう.長居は無用と,テントのセッティングを終えるとすぐアーチーズを目指す.
急坂を上っていくと再び真っ赤な岩だらけのアーチーズの入り口に到着.午後もだいぶ遅くなっていたが,それでも外の暑さを考えるとこのくらい日が傾いた頃の方が観光には良いのかもしれない.まだ日が沈むには時間があるし,せっかくだからちょっと覗いてみよう.車から一歩外に出るとクラっとするほどの熱気.正直言ってもう歩きたくない気分.公園内の地図を見ると,かなり広い範囲に渡ってアーチ状の岩々が点在している.アーチーズのアーチとは文字どおり弓形に穴のあいた岩を意味しているのだ.ここは東京23区の約半分の地域になんと200以上ものアーチ型をした岩があるそうだ.雨,風,霜,激しい温度差によって200万年もかけて作られたという.激しい温度差に納得.何遍も言うが,ここはほんとに暑い.
各ビューポイントへは車で回れるので,近場からせめてみた.最初のポイントはコートハウス・タワーズ.モニュメント・バレーの岩のように真っ赤な平地からいきなり垂直な岩の壁が立ちはだかっている.かなり大規模な岩の群だ.遠くから眺めているのだが,巨大な高層ビル群という印象.オルガン,バベルの塔,シープ・ロックなどと名前がついているが,正確にはどれがどれなのかちょっとわからない.
そして,さらに進むと今度はバランス・ロックが見える.その名の通り非常に危なっかしい状態で岩が重なっている.こういう岩はあちこちに見られたがだいたいが上下2部に別れてて,下が比較的しっかりと安定した柱になって,上に非常に大きな岩の帽子がのっかっているような状態だ.今にも崩れ落ちて来そうな様子なのだ.現実にはいくつかのバランス・ロックが崩れているそうだ.すぐ下まで歩いていけるが,下から見上げただけでもなんだか今にも岩が落ちてきそうで恐い感じがする.この見事な自然のなせる技も今後,いつまでその状態を保てるかわからない.自然のままにおいておくのだろうから,いつの日かこうした景観も消滅する日がくるのだろう.
このバランス・ロックの地点からさらに奥に進むとウィンドウセクションといっていわゆる岸壁に窓が開いたようなアーチがいくつもある場所にでる.ここで私は歩いていく気力がなくなり,遠目で見るだけで断念する.実際,遠くから見ないと全体の様子は解らない.「北の窓」「南の窓」と名付けられた穴や2つの穴が横に並んで見えるので「メガネ」と呼ばれる岩,アーチが二股に分かれている「ダブル・アーチ」など,不思議な不思議な風景の数々.近くで見たらもっと迫力を感じるのだろうが今日の私にはこの暑さの中を歩く気力が無い.灼熱地獄にももう飽きた,というのが本音だった.いくら素晴らしい眺めでも食傷気味.キャンプ場に戻り,日除けのおかげで幾分涼しさを感じるテントサイトで夕食を取り,早々に寝てしまった.
[18日目:感動!デリケートアーチへの岩山トレッキング(8/1/94)]