アスペンはとても美しいリゾート地だった.車で向かう道すがら緑の山々が見えてくる.これがあの有名なスキー場.冬に来たら全く違う雪景色が見られるのだろうが夏の山もなかなかのものだ.町の中心地から山を見ると緑の山肌に何本ものスキーのコースがちょっと白っぽく見える.観光マップによればここのコースはなんと中・上級者用のみ.下手なスキーヤーは滑れないってことだ.確かに下から見ても随分急斜面に見える.今は単なる夏山にしか見えないのにね.
久しぶりの町なのであちこち散策してみる.スキーを始め各種アウトドア用品のお店,カラフルなファッションの店,高級そうなレストランやかわいいコーヒーショップ,ホテルや長期滞在者向けの貸し別荘,B&Bなどなど.町並みはボストンに戻ったかのように街路樹にあふれていた.町のはずれには大きな感じの良いスーパー兼ショッピングセンターがあり,絵はがきを買って久しぶりに日本へと便りを出す.郵便局のおじさんはとても優しくて,何を思ったか,私の英語が良くできていると誉められた.なんだか単純な私は妙にうれしくてアスペンの印象はすこぶるよろしい.実際,天気はいいし,緑の山々を眺めて二人ともリフレッシュし,去り難い気持ちだった.
なんとしても今日はロッキーを目指すので,後ろ髪を引かれながらも次へと進む.余裕があれば,アスペンに並ぶ有名なスキーリゾート,ベイルにも寄ることが可能だ.82号をそのまま東へ進み,24号を北上していく.途中,細い山道を通っていったが,きれいな川が流れ,緑の草原が続き空気も澄んで気持ちの良いドライブが続いた.一カ所,道路工事のため一方通行となりかなり長い時間(30分くらいかな)待たされた.怒る人もいない,みんな諦めて車をおり,写真を撮ったり,ドライブ疲れを歩いて癒したりとそれぞれ過ごしている.ここらへんが日本と違って鷹揚な人柄だ.焦っても仕方ないので,私たちも周りに習ってゆっくりとする.こんな気持ちの良い道路なので,ちょっと車を停めて腹ごしらえ.場所柄か,あちこちにハイキングコースがある.車を停めるにはもってこいだった.少しトレイルを入ればきれいな流れの川があり,大きな岩がごろごろしている.日陰もあるし腰をおろしてお昼を食べるには最高だ.夕べのピザがたくさん残っていたのでそれを食べてしまおう.旦那は冷たい川の流れに足をひたしてとても気持ちよさそうだ.暑くないってことは良いことだ,こうして外でお昼を食べるのも楽しさを感じることができるのだから.昨日までの砂漠ではこんなこと考えもしなかった.緑のコロラド州,二重丸.
24号を北上し,再び70号に合流するともう一度寄り道.アスペンと並ぶスキーのメッカ,ベイルがすぐ側だ.今ではアスペンよりも人気があるかもしれないというほど,小さな町にもかかわらず観光客が大勢いる.アスペンよりも小さいが新しいのでさらに良いところが凝縮された保養地といった所だ.洒落たブティックやレストランが軒を連ねて歩くだけでも楽しい.もちろんスキー場も近くて,夏でもリフトが動いてマウンテンバイクやグラススキー,ハイキングその他のスポーツが楽しめるらしい.家族連れが非常に多く,一家で夏休みを過ごしているといった様子.長居はできないのでコーヒーとケーキでお茶にする.
さて,この後すっかり遅くなってしまったので今日のキャンプ場へと向かうことにする.ロッキーの手前ではセントラル・シティというところにKOAのキャンプ場がある.少しロッキーの山の中に入った所らしい.運転に疲れた旦那に代わって私がハンドルを握ったが,これが悪夢のドライブに変身.途中までは今まで通り,何の変哲もない道だったが,だんだんに州都のデンバーに近づいているせいか通行量が増えてきた.それに伴ってカーブと高低が出てくる.なんだか山道だぞ,と思ったときにはもう遅い.これははっきり言って山越えだ!山道の嫌いな私は今回の旅でもいっさいしてこなかったので大パニック.隣の旦那は眠そうにしているし,時折いつものシャワーも降ってくる.もちろんサービスエリアは当分ない.うわー,どうしたらいいの!という私の悲鳴にさすがの旦那も目を覚まし,真剣にアドバイスする.アクセルを踏めどもパワー不足でどんどんスピードは落ちるし,周りの車はすごいスピードで駆け抜けて行く.一番右車線でトラックの後についてゆっくり走ることにするが,さすがにトラックよりはスピードが出てしまうので,これもまた大変.接近してしまっても抜くことができない.全身冷や汗,頭に血が上り,目はチカチカで心底疲れ切る.涙ながらに山越えを終了して旦那にバトンタッチしたときには,ぐったりして口をきく気力もなかった.地図を見て考えてみれば,私はロッキー山脈を越えたというわけだ.かなりの高低差があったと思う.旦那はそれでも日本の山越えに比べれば道路は広いし,カーブも緩やかだよ,と言っていたが・・・.自信が付いたかって?冗談じゃない!こんな経験は二度としたくない.
70号から119号に入り,一般道になる.山と川の間の曲がりくねった道を進んでいくとセントラルシティにはいった.昔はゴールドラッシュで栄えたそうだが,いまではカジノの町になっている.カジノと言えばラスベガスだが,アメリカにはこのように小さなカジノの町があちこちあるようだ.私たちは始めてだったので好奇心いっぱいで眺めていたが,何にもない田舎の山の中にいきなりネオンの派手なカジノや小さなホテルが建ち並んでいるのでびっくり.昔は一攫千金を夢見て金を掘りにきた人たちと金を掘り当てて金持ちになった人たち,夢やぶれた人たち,いろんな人たちでさぞ賑わったのだろう,そんな光景が目に浮かぶ.
とりあえず町を通り過ぎていっそう山の中に入り,ようやくキャンプ場に到着.これまたみごとな山の中のキャンプ場.周りは何にもない.最初はテントサイトを頼んだのだが,管理人さんの手違いでダブルブッキングになっており,コテージを使えることになった.しかもテントサイトの値段で.ラッキー.さて,急いで飛ばしてきたので食べ物が何もない.あわてて先ほどの町へ引き返してスーパーを探す.しかし,ここにはスーパーらしきものが全く見あたらない.ハンバーガーショップすら見あたらない.探している間に土砂降りの大雨が降ってくるし,さんざんな目に遭い,ようやく見つけた小さな雑貨屋でソーセージと卵を買って仕方なく引き返す.まあ雨の中テントで調理という状態を避けられたわけで,暗くてもコテージのデッキであったかいご飯と簡単な料理をいただけたのだから,良しとしなくてはいけないだろう.この夜は今までの岩山&砂漠とは大違いで,さすがにロッキーの山の中,結構冷え込んだ.コテージに泊まれてうれしい誤算.快適で暖かいコテージに運転疲れも吹き飛んだ.
[20日目:脱!岩山.緑美しいロッキー国立公園へ(8/3/94)]