20日目:脱!岩山.緑美しいロッキー国立公園へ

8月3日(走行距離:孝明 149mile 美枝 0mile)

 緑の中で目を覚ます喜びを感じて,コロラド州へ来たのだな,という実感を味わう.涼しいコテージのデッキで暖かいコーヒーに舌づつみをうちながら本日の予定を考える.ロッキーへ直接行くのならそう遠いわけではない.キャンプ場からはハイウェイに戻らずに,山道をとことこ走ることにする.時間はかかるがこうした名も知らぬ,人家もほとんどない小さな道路を走っていくのはとても楽しい.その土地の雰囲気がよく伝わってくるし,意外にこぎれいな町並みやお店などを見つける喜びがある.今日もそんなふうにのんびりと,道に迷いそうになりながら珍道中を繰り広げることにしよう.

 ロッキー・マウンテン国立公園はセントラル・シティから119号を北上し,72号,7号と進み,公園入り口の町,エステス・パークから入る.急に観光客やキャンピングカーが増える.グランド・キャニオン並かそれ以上の混雑だ.久しぶりの渋滞にも遭遇.エステス・パークはホテルやモーテルがひしめきあっていて一大観光都市になっている.今まで小さな公園ばかりまわってきたので少々びっくり.これは早く着かないとキャンプ場も泊まれないかな,と急に不安になる二人.公園入り口近くのビジターセンターにかけ込んでキャンプ場の様子をチェックするが,予想的中,便利の良さそうな所はすでに全て満員だ.山を越えた反対側のティンバー・クリーク・キャンプ場というところしか空きがない.それでも泊まれればよしとしなければならない.観光はともかくまずはキャンプ場へと向かうことにする.

 とはいっても,キャンプ場はロッキー山脈の反対側.公園内の通常の観光コースを通って行くことになる.このロッキー越えの山道はトレイルリッジ・ロードと呼ばれ,全長44マイル(約70km)の舗装された山岳道路だ.なんと最高地点は3713mを通り,車で行かれる世界では最高の地点だそうだ.富士山より高い所へ車でドライブできてしまうのだから恐れ入る.やっぱりアメリカらしいね.公園マップにはさすがに高山病を意識してか,ゆっくりとしたスピードで走ること,といった注意書きがあった.今日は交通量も多いので始めからそれほどスピードはでていないようだ.後で何度も見かけたが,時々レンジャーの車がスピード制限をするためにゆっくりと走って後続の車のお手本を示している光景にでくわした.やはりこうしないと,猛スピードで走る車があるのだろう.

 走るにつれ,ずっとお世話になっていたクーラーも必要なくなり,だんだん涼しくなってくる.当然のことながら,自然は次第に高山どころかツンドラ地帯へと入って行くのだ.「ツンドラ」って地理では習ったけど,実際日本にはツンドラ地帯なんて存在しない.これがツンドラの気候なのか,とまたまた体験学習が始まった.公園入り口の辺りにはたくさん木々も見られたが,この辺りになると木は無い.夏なので地面にびっしりと緑の草が生えてはいるが,山の陰になって日の当たらないところには雪(氷)が残っている.これがいわゆる氷河というものだそうだ.3713mの地点になるとさすがに感動する.自分が富士山より高い所にいることがなんだか不思議だ.こんなに簡単に登って来られるのも舗装道路のおかげだろうが,最初に山に入った人たちは自分の足で登ってきたのだ.外に出ると風は強くて寒いが空は晴れて青空だ.

 3595mのところにあるビジター・センターから少し上まで歩いて登ってみる.息切れがして歩くのが辛い.頂上まで登ると遥か遠くの山々,背の高い木が生えているところと木が無くなるところの境がはっきり見える.登って来たんだな,っていう実感が沸いてくる.この高地に2匹の大きな鹿がゆったりと歩いて来るのが見えた.ミュール鹿よりは大型だ.エルクかな?はっきりとしたことはわからなかったが,「つがい」なのだろう,仲良さげに草をついばみながらすわっている.しばらくするとコヨーテもやってきた.こちらは一匹狼だ.厳しい自然の中で生きる動物達,早速見られてラッキーだった.この道路,もちろん秋から春までは積雪のため通行できず閉鎖されている.6月から10月始めまでのほんの短い間しか通れないため人気のスポットということだろう.次々と車が続いて来るのが見える.こんなに観光化されてて,自然に影響はないのかな,と心配になる.

 ドライブの途中,何カ所かで車をおりてみたが,ジャケットがないと寒い.昨日までの服装とはうって変わり長袖シャツとジャケットを着込む.それでもなんだか私は体がだるく,頭が痛くなってきた.眠気もでてきておかしいな,昨日はゆっくり寝たしそんなに疲れている感じはなかったのだが急に体調が悪くなる.冷静に考えれば軽い高山病だったのだが,まだその時は気づかずに風景を眺めようと思っても,なんとなくやる気がでなくてボーっとしていた.周りの観光客や子供達は最高地点でも平気で走ったり,歩き回っている.私だけが高山病とは思えなかったのだ.もちろん旦那は元気いっぱいでいつもの通り,カメラ片手にニコニコしている.私だけ変だな,と思いつつなんとか山を下り,急いでキャンプ場へと入る.

 だいぶ公園をはずれたような鄙びた雰囲気のキャンプ場だが,100サイトあるのでまだ空きはあった.サイトは指定されるのかな,と思っていると入り口に自分でサイトを記入してお金を入れてポストに投函すれば良いとある.なんだか拍子抜け.急いで来たのにね.ともかく車で奥へと進みながら空いているサイトを確保する.林間キャンプで感じはとても良い.サイトも結構広いし静かでゆったりできそうだ.ほっとしてテントを張り,これから2泊の用意をする.

 この日は結局トレイルリッジ.ロードを通っただけになってしまったが,ロッキーの自然について少々お話しておこう.ロッキーは言わずと知れたロッキー山脈を形成している長い山々のほぼ真ん中にある国立公園ということである.面積は1067Iで,3500mを越える山が72個もある.自然も先ほど書いたように針葉樹林からツンドラ,氷河までと変化に富んでいる.公園内に生息する動物も多く,ミュール鹿やエルク,ビッグホーン・シープ,コヨーテなどがいる.今回の旅でどれだけの動物に会えるかも楽しみの一つだ.また,ロッキー山脈というのはアメリカ大陸を西と東に分断する大陸の分水嶺になっている.今までの旅でずっとお馴染みだったコロラド川もこのロッキー・マウンテンに源を発している.「分水嶺」って何だろうと最初は首を傾げたが,つまり分水嶺から東の水流はミシシッピ川となって大西洋側へ,西の水流はコロラド川となってグランド・キャニオンを通り,太平洋側のカリフォルニア湾へと続いているのだ.壮大な大陸の川の流れが想像できる.

 キャンプ場の夜は冷え込む.これからは焚き火が必需品になりそうだ.夕方キャンプ場から南へ下り,グランド・レイクという湖側にある小さな町に買い物へ行った.スーパーの店先にはたくさんの薪の山ができていた.キャンプ場にも薪は売られていたがこちらの方が安い.これからは車の中に薪を置くスペースを作らなくてはならない.ここでまた気候が変わったことを実感させられる.旦那はグランド・キャニオンで失敗に終わった焚き火を取り返そうという気持ちと私の具合が悪いこともあって火をおこしてくれたが,慣れない火興しに手間どう.まわりの家族連れのお父さん達はとても上手に火をおこしている.最初は悔しそうにしていたが,数日もするとすっかりコツを飲み込んで,旅が終わる頃には焚き火の名人になった.  


Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on February 9th, 1998.

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