22日目:ロッキーを下山し、美しい街ボルダーを散策

8月5日(走行距離:孝明 212mile 美枝 0mile)

 ロッキーでの最後の日になってしまった.体調を崩したのが大きく影響し,なんだか何にもしてない2日間になってしまった.天気も良いし,少し調子も良くなってきたので,せっかくだから短いトレイルでも歩いてみようということになる.

 キャンプ場を後にして,再び公園東口へとトレイル・リッジ・ロードを登る.途中,例の大陸分水嶺を見ようと立ち止まる.大きな立て看板に「Continental Divide」と説明書きがある.天気が良いとはいえ,空気はひんやりとして私には寒いくらいだ.ここからコロラド川の源流が見られるというので,短い距離だし,慣れ親しんだコロラド川,一目見ようと歩き出す.

 ミルナーパスという道が続く.コロラド川はここではなんとも細く,ちょろちょろとした流れだ.川というよりは湧き出た清水の流れ,という感じだったが,きれいな澄んだ水で飲めそうなほどだ.この細い細い流れがあちこちの流れと合流し,少しづつ大きくなって岩や赤土を切り崩し,いつしかあの怒涛のごとく激しく早く流れる茶色の流れになっていくのかと思うと不思議だ.今ここに見られる清水は青々とした草や小さな可憐な花々に囲まれたうつくしい流れなのだ.そんなことを感じながら川に沿って上っていくと次第に山の斜面へと通じていく.ここが本当の源流なのだろう.この上はもう地中から染みだしてくる水にすぎないのだ.グランド・キャニオンから始まった私たちのコロラド川をさかのぼる旅はここでおしまい.灼熱の砂漠の流れから緑の山の源流まで長い長い旅だった.

 このハイキングで気分も良くなり,少し欲が出てくる.長いトレイルは体力的にも時間的にも無理なので,きれいな湖と評判のベア・レイクの周りを歩いてみることにした.公園入り口の付近から奥に入っていくと谷の奥にひっそりとあるという.氷河に削られてできた湖ということで水は澄んでいて美しい.あまり大きくないので,家族連れからお年寄りまでたくさんの観光客が湖一週の歩道を歩いていた.私たちも車から降りて散策開始.湖の周りには青々とした針葉樹がぐるりと取り囲み,大きな岩がごろごろとしている.天気がとても良かったので湖面に映る雲や山がきれいだ.最後の日になってようやくロッキーの美しさを堪能できた.せっかく元気も出てきたのにここを去るのは惜しい.また今度ゆっくり歩いてみたいと思わせるほどコロラド州は気に入ってしまった.湖の畔でお昼のお弁当を食べながら最後のロッキーの風景を目に焼き付ける.また来たいと思う所を残しておいた方がいいよ,という旦那の言葉に慰められながらロッキーの山を後にする.

 再びエステス・パークの町を通り抜け,次はいよいよ今回の旅のハイライト,イエロー・ストーン国立公園へと向かう.ロッキーからはまた西に戻ることになる.ハイウェイに入るために,州都のデンバー方面に向かうが,その途中,学園都市として名高いボールダーの町がある.私の友人夫婦が以前住んでいて,たいへん良かったという話を思い出し,どんなところかちょっと寄ってみようということになった.

 ボールダーは有名なコロラド大学のふもとにあるいわば学園町.治安も良く,学生,研究者などが多い落ち着いた雰囲気の町だと聞いている.旦那にとってはスポーツ天国のようなこの町のスポーツ店巡りが楽しみらしい.ボールダーには町の北側から入った.山から下りてくると,家々が大きく高級住宅街が続く.ボールダー郊外なのだろう.教授が住んでいるのかな.詳しい町の地図がないので私のナビではどこが中心地なのかさっぱりわからない.こうなると旦那の動物的感に頼るしかなくなってくる.これが良く当たるので,私はもう口出しせずただ待つのみ.町の中心はかなり交通量も多く,都会的なので車を止めるのが一苦労だったが,なんとか駐車場を探して町歩き開始.

 時は金曜日の昼下がり.平日なのだが町には家族連れ,若者達が大勢歩いている.この中心地は完全に車が入れないように歩行者専用道路となっており,道の両側にはきれいなレストラン,スポーツ店,気のきいたインテリア・雑貨店,本屋などがびっしりと並んでいる.歩行者道にはベンチがおいてあり,木立の下でアイスクリームを食べながら休む人,子供を遊ばせながらくつろいで話しているお母さん達がいる.なんとも優雅なのどかな光景.あまりにも感じの良い町並みなので,私たちもすっかりうれしくなってウィンドウ・ショッピング.スポーツ店をのぞいたり,品揃えの充実したインテリア店で時の経つのを忘れ,ついつい先への足が遅くなる.こんな町だったらボールダーに住むのも悪くないね.悪くないどころか,ちょっと車を走らせれば素晴らしい自然があり,どんなスポーツでもでき,その上コロラド大学もあってそこそこ治安も良ければ言うこと無いのだ.今度留学するならこんなところがいいなあ,と他人事の私はつぶやく.

 ボールダーを後にして25号に合流し一路北に走る.ボールダーでの遊び過ぎが祟って,またまた時間が遅くなった.ようやくコロラド州を抜けてワイオミング州に入る頃には日も暮れかけている.さっそく宿を探さなければならなくなった.ワイオミング州に入るとすぐに州都のシャイアン(と発音するのだろうか?)に出るのだが,さすがにこの辺りにはキャンプ場はない.ロッキーでの汗もゆっくり落としたいので今日はモーテルとする.州都とはいってもかなりな田舎町だ.それになんとなく西部っぽい.どこがどう田舎とか西部とかっていう根拠はないのだが,長い間車で走ってきた勘,とでも言おうか,なんとなく町にそう感じさせるものがある.モーテルもどことなく古くさい感じで,都会的な雰囲気のものはない.そんな雰囲気が逆に旅をする私たちには新鮮なのか,いかにも土地的な雰囲気のするモーテルに入った.安そうだ.受け付けでキーをもらって部屋へ移動するが,ここで大きく失敗したことに気づく.タバコ臭い!部屋は妙に広いが,古臭いくてちょっと汚いぞ.そういえば外にはバイクがたくさん停まっていた.バイク・ツーリング客とかが多いのだろう.アメリカのバイカーというのは総じていかにもタフでマッチョな感じの男が多いから,タバコもまだ吸ってそうだ.う〜ん,こういうモーテルに彼らは泊まるのだ.納得.今更嘆いても仕方ないので,とにかく今日はここでゆっくり寝ることだけを考えよう.ロッキーとボールダーですっかりいい気分になっていた私たちは,少々がっくりしながらもシャワーとベッドでぐっすり眠る.なんだか私はどこででも寝られるようになってしまった.


Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on February 11th, 1998.

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