バイクの出発する音で目が覚める.久しぶりのベッドだったのでゆっくり眠ってしまったらしい.フロントのはもう人影もまばらだ.早く出発しなければと思うが,旦那がキーを返す間にしっかりと今日の朝食となるコーヒーとペストリーを抱える私だった.
今日はイエローストーンの手前にあるグランド・テトン国立公園を目指す.旅もいよいよ後半の大詰めだ.長いドライブの一日になりそうだ.25号から西へ80号へと進路をとる.地図を見ていてもワイオミング州は何にも無い.つまり大都市も道路も他の州に比べて極端に少ないのだ.観光の目玉ともいえる2つの大きな公園を持つ割にはそこへ通じる幹線道路がない.結局一般道しかないのでかなり時間がかかりそうだ.80号を走り始めるとすぐにララミーという町に入る.これって小さい頃TVドラマで見た「ララミー牧場」のことかな,と私の頭をよぎったのだが,旦那は覚えがないそうで,真相は定かでない.しかし,旦那の友人でこのララミーに住んでいる人がいるそうだ.ワイオミング大学に留学している.途中で電話をしたのだが不在.夏休みでどこかへ遊びに行っているのだろう.会えなくてもどんな所に住んでいるのか楽しみだ.モーテルから持ってきたコーヒーと甘いペストリーを食べながら走っていくと,何にもない道路の向こうに町らしき家並みがでてくる.あれがララミーかな.なんとも小さな町だ.遠目からでも端から端までが見えてしまうほどだ.これは退屈しちゃうんじゃないだろうか.でも自然には恵まれたところなんだろうな.あれが大学かな.なんて話しているうちに,あっと言う間に走り抜けてしまった.
ララミーを過ぎるといよいよ町らしい町は無い.行けども行けども果てしなく続く平原.豊かな自然に囲まれた風光明媚な所,とでも言えば聞こえはいいのだが.グランド・テトンまでの道のりはとても長かったはずなのに,言葉にするとあっけない.
一日中走ったのに,結局公園まではたどり着かなかった.あと少しという所で日が暮れてきた.たぶんそんなことになるだろうとは予想していたので,今日は公園手前にあるキャンプ場に泊まることにした.287号沿いのモランという小さな町だ.夕方になったので泊まれるかどうか心配だったがなんとか滑り込めた.グランド・テトンのすぐそばという立地条件に恵まれているせいか大勢のキャンパーがいた.さすがに国立公園の中でもトップクラスの人気を誇る公園だけあって,今までとは格段に旅行客が多そうだ.小さな子供を連れた家族も目立つ.皆私たちと目的は同じなんだろう.明日の計画に備えて早々と静かになっていく.日が暮れそうになるのを眺めながら遅めの食事を用意して一日の疲れを癒す.明日も晴れそうな夕焼け空だった.
この晩の冷え込みは尋常ではなく,覚悟はしていたつもりだがあまりの寒さに何度も目が覚めた.ありったけの服を着込んでいるのだが地面から伝わる冷えはなんともしようがない.隣の夫はそんな寒さもどこ吹く風,といった様子でスースー寝息を立てている.憎らしいったらありゃしない.朝になったら文句言ってやる.まんじりと夜があける.
[24日目:グランド・ティトンでトレッキング(ジェニーレイク)(8/7/94)]