25日目:ティトンでさらにトレッキング

8月8日(走行距離:孝明 94mile 美枝 0mile)

 冷え込みの厳しい朝だ.否応なしに目が覚める.静かなキャンプ場だが,あちこちで歩く音,火を焚く音がしてくる.これからはずっとこうした朝が続くのだろう.今までは暑さのためにキャンプが辛いと思ったが,寒さのために辛くなってきた.水で顔を洗うと,手はかじかんで冷たくなる.もっと日が高くなって暖かくなれ!と願うようになった.

 さて今日は懸案事項の「毛布」を調達することにする.キャンプ場の側の店には実用的な物がなく昨日は我慢したのだが,これから北の公園に行くには町は無い.今のうちに何か用意しないと大変だ.あまり寒さを感じない夫を説得して今日は公園を南に下ってジャクソンの町に買い物に行くことにする.

 まず午前中は湖畔を散策する.この公園の良さは山だけでなくその湖にある.ジャクソン湖はかなり大きな湖だが,とても澄んだきれいな水だ.そのため,いろいろな野鳥が見られる.鳥についてはまったくわからないので詳しいことは語れないが,この日も車を止めて少し歩くと朝夕などには湖面に降り立つ鳥,岸辺で餌をついばむ鳥が見られた.旦那はペリカンが飛んでいるのを発見.思わずシャッターを切っていたが,私はしばらく何のことだかわからなかった.ペリカンが飛んだ所なんて今まで見たこと無かったのだ.

 湖と野鳥のみならず,ここではヨット,ボートがたくさん係留されている.つりが大きな楽しみらしい.これもまたわからない分野なのでコメントできないが,この先の公園ではつり人の姿が多かった.これだけ澄んだ水だからさぞかし魚もいることだろうが,あちこちで竿を片手に釣り糸を垂れている人がいた.そしてその姿が日本の釣りとは違って,いかにも外国の釣りって感じ.かっこいいんだなあ.LL.Beanのカタログに出てくる世界がここにあったんだ.こうやってこちらの人は釣りをするのだと納得した.

 そんなふうに見て回りながら湖の一番大きな施設のあるコルター・ベイという所に来た.ちょっとした観光地というくらい立派な施設が並んでいる.お目当ての毛布は発見できなかったが,ここで湖の側を歩きながら岸辺でランチをとる.ヨットが係留されていたがここにしょっちゅう来られる人っていうのはどんな人なのかなあ,とどうでもいいことを考えてしまう.アメリカのこういう費用というのは日本の比ではないから意外と普通の人が借りているのだろうが,ほんとにうらやましいね.ついつい愚痴がでる.

 ランチを済ませると公園を南に下ってジャクソンの町を目指す.途中,旦那がかねてから見つけたいと言っていた「廃墟」探しをする.キャンプ場やモーテル探しに利用しているAAA(Amerikan Automobile Assosiationの略)のTravel BookのWyoming州編の表紙に,美しいモラン山をバックに農家の廃墟が草原の中にひっそりと佇んでいる姿が写っていて,丹那はすっかりこの写真に惚れ込んでしまい,なんとか自分もこのシーンをカメラに収めたいと言う.山がこの角度で見えるのだからだいたいここらへんか・・・などとあたりをつけて行くのだが,なかなか見つからない.思い立ったらとことん,という性格なのであちこち車を走らせる.だいたい何にもないようなところなのだからすぐ見つかりそうなものなのだが,どうしてどうして.見つからないままにすっかり時間を食う.

 ついでに小さな古い教会にもお邪魔する.ここはなかなか由緒正しい教会で古いながらも趣がある.祭壇の後ろが一枚のガラス張りの窓になっていて,遠く氷河を頂くティトンの山々の姿が一望できる,という絶好のロケーションなのだ.私は信者ではないが,こうした趣向にはいたく感動する.キリストというよりは山々の神を奉りたい気分だ.

 まだ「廃墟」に未練を残している夫を説得して,再び南下してジャクソンの町に入る.この町は思っていたより都会で,おもしろい雰囲気の町並みだ.木造の平屋建ての店が道路の両側に建ち並び,さながら西部劇の映画に出てくる町みたいだった.車を止めてしばし散策.お土産やさんが多く,最近こうした所にはご無沙汰だったので楽しんでしまう.ついついアイスクリームまで食べ始め,すっかり観光気分だ.しかしお目当ての毛布は無い.う〜ん,どうしよう.最後に町のはずれのスーパーへ寄り,今日の食料と薪等を買い込む.ここで私はひらめいた.もうこうなったらビニールシートの大きいのを寝袋の上にかけよう.保温が目的で体に直接かぶるわけではないので,無いよりはましだ.これでいこうと提案.呆気にとられる旦那.このシート,実は車や薪を覆うらしい.おれたちは薪じゃないんだぞう,と言いながらも寒がりの私が真剣に訴えるので承知してくれた.毛布がビニールシートに化け,ぐっと安上がりで7ドルほどの買い物となるが,結果してこれは正解.早速この夜使ってみたのだが,朝起きたら寝袋に水滴がついていた.つまり暖かい空気がこのシートで外に逃げるのを抑えてくれたわけだ.ほーらね,という私に旦那はあきれていた.真っ暗なテントの中でガサゴソとシートの音が響く.何やってんだろうね,あの日本人,と思われているかもね.でも暖かいのが一番,この際体裁はかまっていられない.(後日談だが,このシートは帰国時にしっかり日本に持ち帰り,今でもBBQ等の時には荷物置きなどのために重宝している.なんという賢い買い物!)

 いろんな角度から感動を与えてくれたグランド・テトンとも今日でいよいよお別れだ.明日はこの旅のメインイベントとも言うべきイエロー・ストーン国立公園へと向かう.グランド・テトンからはほんの目と鼻の先なのだが.なにしろ巨大な公園で人気も高い.もちろんキャンプ場の争奪戦は今までの比ではないらしい.夏場とのなれば早朝からサイトの確保のために長い行列ができるそうだ.なんとして宿泊地を確保したいので,明日は早起きして急いで移動しなければならない.今日は早めに寝なくちゃね.


Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on March 3rd, 1998.

[24日目:グランド・ティトンでトレッキング(ジェニーレイク)(8/7/94)]

[26日目:イエローストーンで野生動物探し(8/9/94)]

[USA国立公園キャンピングのホームページへ]