28日目:テラスカントリーを歩き回る(8/11/94)

8月11日(走行距離:孝明 94mile 美枝 0mile)

 冷え込む朝は変わらない.寒さの中で朝食を食べるのが辛いので,まず出発することにした.今日はイエローストーンの3日目.北へ向かい,再び温泉見学だ.今日の温泉は昨日のような間欠泉ではない.その名も「マンモス・ホット・スプリングス」,つまり「巨大温泉」.日本語にするとなんだか田舎くさくなるなあ.

 昨日通ったノリスまで同じ道をたどり,ノリスから北へと進路を取る.もうモンタナ州までとどくかというところだ.ワイオミング州の半分近くを占めようかというこの公園の西北のはずれへと向かう.途中,日が昇って暖かくなってきた頃,ピクニックエリアで遅めの朝食.こうすると温かいものでなくても体が冷えないので楽ちん.お腹が空いたのを我慢して出発したのは正解だった.これからはこのペースでいこう.

 ノリスからの道は約13キロ.比較的早く着いた.このエリアはアッパー・テラスとロアー・テラスに分かれる.ロアーにはお目当てがあるのだが,その前に車で回る見学ルートがアッパーにあるのでそこから攻めてみることにした.

 マンモス・テラス・ドライブという一方通行のルートだ.距離は1.5マイル程なのだが,ゆっくり走れという標識がでている.車の数も多くはない.ここは林の中に所々温泉が噴きだしているという程度のもので,あまり迫力のある景観ではない.その昔は実は「風呂」だったという温泉があった.危険ということで今はどこもそんな気の利いた趣向はないが,やっぱりアメリカ人も温泉を「風呂」として使ったことがあるんだなあ,と二人で話し合う.

 あっという間にドライブを終え,さらに先へと進むと目指すメイン・テラスのちょうど下を通り,駐車することにした.ここからは歩きになるが下から見上げるともうそこかしこが白っぽい階段状のテラスになっている.この白さは石灰の白であることは一目瞭然だ.それにしても太陽の日差しを受けて反射し,眩しくて目がくらむほどだ.所々で蒸気も上がっている.今も休むことなく地底から温泉が流れ落ちてくるそうで,暑い上にも熱さが感じられる.決められたルートをたどって歩くと,そこには絵はがきでお馴染みの真っ白で美しい階段状温泉が広がっている.残念なことに想像していた程水量がなく,白さも均一ではなかった.毎日形が変わっているそうなので無理もないだろうが,ここはハガキで見るのが一番のポイントだろう.とはいえ,白やエメラルド色の見たこともないような温泉であることは確かだ.吹き上げるダイナミックな間欠泉とは違うが長い時間かけて少しづつ作られてきた静かな温泉なのだ.私の印象があまり良くなかったので早々に引き上げる.

 ビジターセンターによってこのあたりの歴史の展示を見たり,芝生の広場でゆっくりと休んだりした.そしてここから5マイル先の北口へ行ってモンタナ州に入り,買い出しでもしようということになった.一つでも多くの州に行ってみようという欲張りな私たち.公園の入り口になるので,きっと店もある町に違いない.と思ったのは大間違いでこれまた実に小さな町だった.ここからのルートは利用者が少ないのだろう,見事に普通の町だった.それも西部の田舎町という雰囲気で,昼過ぎではあったが人っ子一人見あたらない有り様だ.店も開店休業のように静まり返っている.うーん,やっぱりモンタナかな・・・と訳の分からないことをつぶやきながら,少々物足りなさを感じる.一件あったスーパーはこじんまりとして感じが良く,しっかり買いだめ.今日は早く帰ってゆっくりとし,ステーキディナーとしましょうか.

 早めにキャンプ場に着いたので,夕食の前に明日の予定にしていたイエロー・ストーン滝の見学に行くことにした.とはいってもほんの近場で滝を遠くから眺める.滝の様子は峡谷のあちこちから眺められるようになっている.車でキャンプ場から少し行くとインスピレーション・ポイントがある.ここからの眺めは一番遠いので遥か彼方に滝が見える具合だ.アッパーとロアー,二つの滝が同時に眺められる.峡谷はなんと28kmも続いているが,こうして見るとほんの小さな川ぐらいに見えてしまう.明日はもっと滝に近づいて見るので楽しみだ.ここまで見た所で今日のは帰ろう,ということになった.その時,まわりの観光客がざわつく.なんだろうと振り向くと,小さな黒い熊がちょこちょこ走っている.うわー,熊だよ!急に興奮する.熊にはなかなかお目にかかれなかったのでうれしくなってしまった.すぐに走り去ってしまい,見えなくなってしまったが,貴重な一頭の小熊の写真を撮った.だが後で冷静に考えると結構危険なことらしい.小熊は必ず母熊が一緒で,こうして大勢の観光客の中なんかに現れると興奮して何をするかわからないそうだ.事実,この小熊騒ぎのあとはレンジャーが見回ったようで,危険はなかったから良いようなものの,あんな狭い場所では逃げようが無いのだ.うーん,動物と会うって言うのも難しいものなんだ.ついつい観光客は動物に会うとうれしくなって近づいてしまうが,そうして熊に襲われる事件が必ず起こっているのだ.毎日,何件かそんなことがあったと話に聞く.命あっての楽しい旅,注意,注意.

 熊にあった興奮冷めやらぬ二人だったが,夕食を終えると今日はキャンプ場についている野外劇場(アンフィシアターという)で行われるお話会にいってみることにした.アメリカ人は野外劇場が好き,と断言できると思うが,こうしたところでも趣向を凝らした催しを夜毎行っている.今までは疲れてそれどころではなかったのだが,今日は余力もあるし,一度くらいどんなことやっているのか見てみようということになった.ありったけの服を着込んで,コーヒーをもち,劇場の椅子に座る.プログラムは子供向けの自然教室って感じで,レンジャーのお兄さんがクイズ形式で子供達に動物のことを教えているようだった(と思うが英語なので細部はわからない).寒いのに結構人が集まっている.みんな元気だなあ,と感心するが,こうしたプログラムを用意する公園側の努力もすごいと思う.今回の旅で感動したことの一つに,公園のレンジャーがあったのだが,本当に大勢のレンジャーが管理と案内のために多種多様な仕事をしている.深い緑と茶色の制服にカウボーイ・ハットを被り,真面目そうでとても感じの良い人たちばかりだった.かっこよかった.憧れちゃうよね,と話会う私たちだったが,もし,アメリカ人だったら子供をレンジャーにしたいものだ.こんな美しい素晴らしい公園を守る仕事ってやりがいあるよね.夜の自然教室は寒さのために早々と失礼し,いよいよ明日最後の一泊を残すのみとなってしまった.明日は早朝トレッキング.楽しみ,楽しみ.


Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on May 11th, 1998.

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