朝の冷え込みは変わらず.今日も昨日と同様朝食抜きでまず出発.せっかく緑豊かな公園に来たのだから歩こう!が今日のテーマ.あまりハイキングできるゆとりがなかったので,待望のイエロー・ストーンではぜひ歩いてみようと思っていた.もちろんハイキングコースは数多くあり,上級者向けが多いので,簡単なコースの方が選びにくいほどだ.旦那が選んだコースはキャンプ場からも程近いキャスケード・レイク・トレイル.ピクニックエリアからの出発で,ビーバーポンドと言う池までの2.2マイルだ.草原の中を歩いて湖に出るというものなので簡単そうだ.冷えた体を温めるにもちょうど良いだろう.
ピクニック・エリアに車を止めるとカメラ,軽食をリュックに詰めて出発.天気も良く,空気もすがすがしく,人もいない.あたり一面を貸し切り状態のようで気持ち良い.いさんで出発.木立の中を抜けるとすぐに見晴らしの良い草原に出る.人が一人通れるくらいの細い道が草原を横切るように続いている.膝ぐらいまでの背の低い草で覆われていて,所々に花が咲いている.公園ではよく見かける小さな紫の花だ.黄色の花も咲いている.あまりにひっそりと咲いているので記念にカシャッ.私の写真はもっぱら花が多い.旅をしている時,よく花の写真を撮った.名前もわからない花だがこれは良い思い出だ.
このあたりの木々は山火事を逃れたのだろうか,緑が深い.広い草原を渡り終えると再び木立の中へと入る.道はほとんど起伏の無い平坦なところだが,川とも言えないほど細い水の流れがあったり,岩のごろごろした道があったりとそれなりに変化はあった.途中,幾人かのハイカーにも会う.皆もっとハードなトレイルをあるているのかな,釣りかもしれないね,と旦那と話し合う.家族連れではなく,男性一人で歩いているのが主だった.再び木立を抜けるとまた見晴らしの良い所に出て,向こうの方に目指す湖が見える.
1時間ほど歩いただろうか.もうすぐだね,と喜ぶと,道の真ん中に一頭のバイソン発見.あれ,またバイソンだよ,と旦那は最初うれしがったが,なんとこのバイソンはまさに私たちの歩く一本道の上にしっかり陣取って,微動だもせずにゆっくりゆっくり草を食べている.バイソンというのは非常に動きの鈍い動物と言われているので,これは動いてくれるのかな,とイヤな予感.私たちが近づいていっても,まったく知らん顔で悠々と食べ続ける.最初は大丈夫,横を通れば良いじゃない,と軽く考えていたのだが,近いづいてみると非常に大きいしやっぱり恐い.道は狭いくて横を通り抜けることもできない.今は草を食べているだけだけれど,近くを通ったら何するかわからない.怒ってこちらに向かってこられたら,身を守るすべは無いのだ.と思うと急に進めなくなってしまった.ゆっくりゆっくり近いづいて時間を稼いだにもかかわらず,バイソンはまったく動かない.なんでこんなにゆっくり食べるのよ!と思わず言いたくなるくらい動かない.しびれをきらして,こちらが迂回しようと道をそれて腰まである草むらの中を進むことにする.ところがこの草むらがまたくせ者で,池が近いせいか足下がぬかるんでいる.草が深くなって下が見えないので,どうなっているのか検討もつかない.二人で用心しながら進んだが,どんどん水っぽくなるのでこれまた不安になり,途中で断念.あと少しで湖なのに,ちっとも進まなくなってしまった.とまあ,こんな寄り道でしょうがない,とあきらめかけた頃,ようやくバイソンが移動し始めた.ああ,助かった.ふたたびもとの道に戻る私たち.遠ざかるバイソンを近くで眺めながら,やっぱり大きいね,と呟く.このバイソンのアップ写真はなかなかのものだろう.
思わぬ事件で時間をくったが,目指す湖は小さく澄んだ水がきれいだった.釣り人が糸を垂れている.すっかりお腹の空いた二人はここでちょっと休憩.後から来る人もおらず,のんびりと静かな湖を眺める.ちなみにこの湖はビーバーポンドというのだが,ちゃんとビーバー(だと思う)を発見.静かな湖面をスーイと頭を出して泳いでいく姿が印象的だ.バイソンにも会い,ビーバーも見,満足の二人は再び帰途へとつく.
帰りは来るときよりも早く感じるが,もう一つおまけに木立の向こうに大きなムースが2〜3頭動いているのを発見.ムースはなかなか見られないので貴重な一枚を加えた.角がないのでメスだろうが,走り去る姿もなかなか優雅だ.いろんな動物に会えて満足満足.駐車場に戻るとすっかり日も高くなり,暑さが戻っていた.今の感動を日本の両親へ,とハガキを書き,パンケーキでランチを済ませる.
さて本日のメイン・イベントはイエロー・ストーン滝の見学.昨日遠くからは見たので,今日は滝の側まで行けるトレイルに挑戦.最初にロウアー滝へ向かう.車を降りて,斜面を下りていくトレイルがある.誰でも行ける程度の距離だが,少々急だ.とことこと歩いていくとちょうど川から滝壷へ水が落ちていく所にでる.この眺めは迫力だ.コンクリートの展望台が滝の真上に張り出している感じなので,のぞき込むと吸い込まれそうだ.落差94メートルもの高さからとうとうと水が流れ落ちていく.水量から言えばカナダのナイアガラには負けるが,眺めのすばらしさは引けをとらない.以前,ヨセミテ公園で同じように滝を真上から見おろすことができたが,それと同じ趣向だ.どうやってこの展望台を作るのかなあ,と思うがおかげで私たちは素晴らしい眺めを堪能できるわけだ.
このロウアーだけでも満足のいくものだったが,さらにアッパー滝の眺めがすごかった.こちらは車でぐるっと川の反対側まで回り,再び斜面を下りるトレイルを行く.アンクル・トム・トレイルという名が付いていたが,これはなんと鉄骨でできている階段を下りていくものだった.つまり,斜面から張り出した階段で,下が丸見えの階段は手すりが付いているとはいえ,目がくらむような眺めだ.谷底へまっ逆さまという感じを味わいながら,恐る恐る下りていく.これが長かった.まだなの!と言いたくなるくらいだった.さすがに高齢の人は少なかったが,100段以上はあったのではないか・・・.なかなかスリルのある階段を下りきると落差33メートルの滝をちょうど真正面から眺めることができる.ほんの数人しか立っていられない展望台なので,順序よく写真を撮って束の間,滝を眺める.こうして見ると33メートルとはいえすごい迫力だ.どちらの滝もおもしろい趣向で眺めさせてもらえた.
満足の一日だった.
この公園でも最後の夜となる.4泊はあっと言う間だ.いよいよ明日はお別れということで,今夜は公園内のレストランで食事をすることにした.最初の日に行った,ルーズベルト・エリアに一件ある小さなロッジに決めた.カントリー風で素朴,人も多くないこじんまりとした店が二人の目についたからだ.滝見学を済ませると,再び車を走らせ北へと向かう.これが見納めだね,と少々感傷的になりながら車からの風景を楽しむ.ロッジでは二人ともトラウト(鱒)を食べる.このあたりでは川で釣れるそうで,レストランではよく見かけるメニューだ.魚をスーパーで買うことのできない私たちにとっては貴重なものであるし,シンプルに焼いてレモンをかける程度の料理なので淡泊で日本人向きだ.暖かい店で,温かい料理を食べる.ゆっくりとコーヒーを飲む.食事の後も暮れゆく公園の風景を眺めながらテラスの椅子でゆっくりとくつろぐ.最後の夜は満ち足りた気分でいっぱいだった.