シカゴ中心地へと向かう.都会の道路は恐いので運転はもっぱら旦那まかせ.さてこの道路,もちろん平日だったので,通勤車でいっぱい.ひどい運転だ.スピードもすごい.というよりホントに田舎道ばかり走っていたのですっかり感覚がずれてしまっていたのだ.ボストンだってこれと負けず劣らずの運転マナーだが,慣れるまではさすがの旦那も焦っていた.知らない道だし,このスピードだし,地図はろくろく持ってないし,ナビする私も横でおたおたしながら旦那に怒鳴られる.わかっているんだけど,頭がついて行かないよ〜!
都会での運転で忘れてはいけないのは治安のこと.どこでも行かれるとは限らない.ボストンに入ってはいけない場所があるように(もちろん,そんなこと公には誰も言わない,けれど歴然とした事実でよそ者が入れない所はあるのだ),ここシカゴにもあるはずだ.大都会にはほんの道一本でそうした場所と安全な場所が分かれるところがある.これを知っているのと知らないのでは気分的なものがぜんぜん違う.私たちはシカゴのことについて何も知らないので,車で中心地に入るのはちょっとした冒険だった.そのため誰でも知っているようなオフィス街の観光地から攻めることにした.とはいえ,そのあたりは車も多く,駐車場を探すのも一苦労.都会に多い一方通行に悩まされながらなんとかかんとか車を停める.ふ〜,都会って疲れるなあ.朝から疲れててどうするのか,というところだが実際気を使って緊張気味.のんびり公園の自然に親しんでた数日前が懐かしい.
気を取り直してシカゴ探検開始.さて,このシカゴのオフィス街では有名なビルがある.もちろんシアーズ・タワーだ.世界一というその高層ビルをぜひ登ってみよう.それにしてもシアーズ・タワー以外にも高層ビルが立ち並ぶ.ニューヨークに匹敵するほどだ.ボストンとは規模が違う.なるほど全米第二の都市とも言えるシカゴの底力というのか,その発展ぶりには驚くものがあった.また,ビルそれぞれに個性があって,なかなかおもしろい.有名な建築家が設計しているのだろう,知っていればそれなりの楽しみ方があるのだろうが,何せ素人二人.自分たちの感性でおもしろそうなビルを探してはカメラをカシャリ.
シアーズ・タワーは110階建て,高さ443m.といっても今一つピンとこないほど高い.切符を買って高速エレベータに乗ると程なく展望台についてしまう.展望台からはさすがに良い眺めで,この日はお天気も良かったので遠くまで見渡せた.視界が悪いと隣のビルさえも見えないのだそうだ.ラッキーな出だした.観光の始めにこういう所から眺めておくと,実際の町歩きに役立つのだ.私は方向音痴なのでなんともだが,旦那はこうして方向感覚と見所を押さえてしまう.あそこにこんな物があったとか,ここらへんに行ってみようとか,実に簡単に把握してしまうようだ.今回もだいたいのビルを押さえて,町の東に位置するミシガン湖を眺めた.どこでも水辺の雰囲気は良い物だ.ぜひあのあたりは行ってみよう,と話しながら次に見て回るビルなどを物色した.

シカゴの摩天楼群には上ばかりではなく地上にも面白い物がある.著名な芸術家達が作った彫刻があるのだ.例えばデイリー・プラザ・ビルにはピカソの作品「無題」,ブランズウィッグ・プラザにはミロの「シカゴ」といった具合だ.というわけで,シアーズ・タワーを下りると,上と下の両方をキョロキョロしながら歩くはめになる.急ぎ足で歩いていくビジネスマン達の邪魔にならないよう気を付けなければ.私はピカソ,旦那はミロのファンなのでこの二つは必ず見よう.ピカソは巨大な鋼鉄の猿(?)のような像だ.もちろん猿ではないだろうが.ミロはお馴染みの丸と円錐のようなものの組み合わせだがこちらはビルとビルの間の隙間にすっと立っている.ミロのは女性像だが,どちらもその存在感は圧倒的だ.さわろうと思えばいくらでもさわれるところがまた良い.ファスト・インターナショナル・バンクの広場にはシャガールのモザイク画がある.これまた壁いっぱいに作られた大壁画で「四季」の題がついていた.近くで見たのではなんの絵なのかわからないほどだ.私が気に入ったのはフェデラル・センター・プラザのカルダー作「フラミンゴ」.真っ赤な鉄(と思うが)で作られた作品はなかなか色といい,形といいこのビル群に似合って,そして軽やかな雰囲気だ.後に帰国して現代美術を勉強するようになってみて,いかにすごい作品があったのか,今更ながらに感動する.二人で見て回ったのはほんの一部で,まだ他にもいろいろあるのだ.どの作品も高層ビルに引けをとらないダイナミックで迫力のあるものばかりだ.あちこち上を見ながら歩き回ったがやはり町は楽しい.が同時に疲れる.午前中を町歩きに費やして,午後はシカゴ美術館を見学する.
この美術館はアメリカの3大美術館の一つ(他の二つはニューヨークのMET,ボストンのボストン美術館)と言われているので期待は大きい.そして期待以上の素晴らしさだった. METに負けないほどの規模と量で迫ってくる.どれを見たらいいのか迷うほどだ.とても全部は見られないので,私たちは印象派以降を中心に見たが,その作品の充実度は感動的だ.ピカソは一部屋まるまる展示されていて,私の大好きな「母と子」があった.モネの「つみ藁」も同じ対象を同じ位置,異なる時間,季節で描きわけたものだが5〜6枚並んでいたろうか,その微妙な色や陰,季節の変化を比較して見ることができてとてもおもしろかった.また,いつもアメリカ絵画はねえ,と言いながらあまり見ることがなかったアメリカ美術だが,ここではエドワード・ホッパー等の作品がたくさん展示してあり,すてたもんじゃない,と思わせてくれた.一日中歩き回って足は棒になったが,シカゴの印象はなかなか良い.
[35日目:フランク・ロイド・ライトの街オークパークを歩く(8/18/94)]