昨夜の雨が嘘のように良く晴れた朝だ.このキャンプ場とも今日でお別れ.寝に帰って来るだけのような状態だったのでよく見てなかったが,芝生が豊かで広々としてなかなか良い所だ.こんな所でゆっくりキャンプしたら楽しいのになあ,と思うが,早速帰り支度にとりかかる.今夜はどうなるか考えてはいないが,どんなにかかってもあと2〜3日ほどの旅.このテントともそろそろお別れ.昨日の雨で濡れたのでしっかり乾かして出発.
今日は市内半日観光.昨日湖の南半分を見たので,北側に行ってみたいという旦那の希望でまっすぐビーチへ向かう.湖畔沿いに眺めの良い道路が通じていてそこからお目当てのあたりで下りてみる.平日の昼間というのにビーチ沿いの駐車場は早くもどこも満車.いったいどうなってるの,ここの人たち.あちこちの駐車場にトライするのだが,水着姿の若者,女性達がパラソル,ござ片手にどんどんビーチへ向かう.これじゃ停まれないかも,と半ばあきらめ気味だったが,はずれの駐車場でようやく隙間を見つけた.滑り込みセーフ.ヨット・ハーバーも遠くになってしまい,見る影もない.まあそれでも湖の雰囲気は楽しめるよ,気を取り直して歩き出す.車を停めるのも至難の業だったけれど,本当に人が多い.水着姿で日焼けにいそしむ人,人,人といった感じだ.服で歩き回ってる私たちはなんだか場違いのようだ.同じ水際でもボストンの川沿いにはこんなに日焼けの人はいないなあ,と思うほどだ.冬の寒さはボストン以上だからだろうか,海から遠いせいだろうか,と取り留めもなく考える.
ミシガン湖はとても広い湖なのでもちろん対岸など見えるはずもないが,湖畔沿いに高層ビルとアパートがひしめきあって立ってるのが眺められる.なかなか良い眺めだ.ちょうどここらへんは高級住宅街が見える所で,そこの住人達がこうして昼日中から日焼けしているのかなあ.南の方は空気が淀んで視界が悪い.昨日,一昨日見てきた町がガスに煙ってぼんやりと姿を現している.大都会シカゴのはずだが,こうしてのんびり湖畔を歩くと,ここがそんな所とは思えない.早く出発しなければならないはずなのになんだか芝生にでも腰をおろしてゆっくりしたくなってくる.結局,昼過ぎまでぶらぶらしてしまい,あわててシカゴを離れることになった.
晴れ上がった暑いシカゴを離れ,道は再び90号へと入る.一ヶ月以上前に走り始めたあの90号へとまた戻ってきたのだ.シカゴから隣のインディアナ州ではこの90号,80号と合流して走ることになる.東へと向かうまっすぐな道だ.このあたりからはもう都会が多いので今までのような田舎道とは違う.交通量も道幅もぐっと都会的になるが,ひたすら飛ばして行く.というわけでこのインディアナ州などはまったく記憶に無い.ひたすら走っていた.地図を見ればわかるのだがシカゴからボストン,かなりの距離である.これを2日か3日で帰る予定なのでざっと考えても一日400マイル近くは走らなければならない.まあ見るべき物は全て見た.国立公園で思う存分自然を楽しみ,全く違う気候と地形に触れたあとではこうした中途半端な都会は色あせて見える.不思議なものでこの頃になると,あの灼熱の真っ赤な大地も真冬のような寒さもなんだか良い思い出になってしまっている.あれほど帰りたいと思っていたのが懐かしい.今は別の意味で早く家に帰りたいと思う.
インディアナ州,そして隣はオハイオ州.再びエリー湖のほとりまで帰ってきた.スペインでもないのにトレドという地名におかしさを感じながら通り過ぎ,道は再び北を通る90号とニュー・ヨークへと向かう南の80号とに分かれる.来た道を戻るのもつまらないし,という単純な理由で今回は80号を選択.このあたりでさすがに日も傾いてくる.なんと走行距離は二人で500マイル以上になった.モーテルでも良かったのだが,旦那がペンシルバニア州のはずれにキャンプ場を見つけた.最後までキャンプにこだわる奴だが(都会になるとモーテルが高いということも理由の一つ),今回はこのキャンプ場に大満足という有終の美を飾ることができた.日も暮れかかってきたというのにもうひとがんばりしてペンシルバニア州まで行かなければならないのは私としては少々渋った.久しぶりのロングドライブでかなり疲れていたからだ.早くどこかで落ちつきたいなあ,と思っているのにまたキャンプか.
80号から南に少々下るとマーサーだ.来るときに寄ったピッツバーグにも60マイルと程近い.緑深いかなりの田舎町だ.キャンプ場案内によるとおもしろいことに近くにアーミッシュの村があるそうだ.ここでアーミッシュを知らない旦那に映画「目撃者」(もちろんハリソン・フォード主演のあの映画)の解説を行う私.なんだかおもしろそうだ,ということで勇んでキャンプ場へむかった.その説明書き通り,木々に囲まれたとても広いキャンプ場で,サイトは一つ一つが広く,ゆったりとして,静かでとても快適な所だった.一ヶ月以上キャンプ暮らしをしてきたが,こんなに良い所は始めてだ.二人とも大感激.苦労して遠くまで足をのばしたかいがあったというものだ.一泊では惜しいくらい私も気に入ってしまった.しかし皮肉なことで,こういう所には長くはいられないものだ.日も暮れてはいたが,思いがけない素晴らしいキャンプ場で,妙に疲れも吹き飛んで,簡単な夕食をつくり,旅の思い出など語り合いながら夜を過ごす.暑くもなく寒くもなく快適な夜だ.このキャンプ場では長くキャンプをしている人がいるのか,キャンピングカーの周りに凝った照明をしている人たちが何人もいてびっくりした.ここに住んでるのかな,と思わせるほど「家」と化している.暗くてよく見えないのだが,七色に光る電球をぶら下げたキャンピングカーが静かなキャンプ場に点在する.なんとも不思議な光景だが,のんびりとしたキャンプ生活がうかがえておもしろい.私たちのような忙しいキャンパーとは対照的だ.気持ちよいキャンプ場での夜は更ける.疲れ切った私たちは寝袋にもぐりこんでぐっすり眠った.
Written by Mie Takeuchi. Edited by Takaaki Takeuchi. Last Modified on August 28th, 1998.
[35日目:フランク・ロイド・ライトの街オークパークを歩く(8/18/94)]
[37日目:真夜中にボストン到着.お疲れさま!(8/20/94)]