NS工房だより

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09/07/20
新製品に関する近況報告

09/07/03
“無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(4)

09/06/15-16
“無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(3)

09/06/10
“無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(2)

09/06/07
“無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(1)

09/05/19
ハイエンドオーディオショーで究極のオーディオ・セットを試聴できます!

09/05/04
思い出の「SV-2(2003)」の改造に再度挑戦

2009/7/20 - 新製品に関する近況報告

まず体調の回復具合についてですが、心身の疲労が かなり癒えてきました。一番こたえたのは「耳の不調」です。フォノEQアンプや300Bアンプの改良を進めようと意気込んでも肝心の聴覚が不調で、音が割れて聴こえたり、ざらついて聴こえたり、という状況でした。ようやく数日前から“耳を信用できる”時間帯が1日の中で少しずつ増えてきたように感じています。

単体フォノEQアンプ「NS phonoEQ」は限定数販売

トップページでお知らせしたとおり、単体フォノEQアンプの販売を「限定7台のみ」とさせていただくことにしました。

その最大の理由は、この機種を製作・販売するだけでは「商売として成り立たない」からです。もともと旧機種「NS-1 Ver.3」に内蔵していたフォノEQ回路を単体の製品として取り出して さらに音質を改良した製品で、正直なところ、こんなに大きな反響があるとは思いもよらないことでした。そのため、この価格設定では「利益分が少なすぎる」ことに後から気づいたという次第です。恥ずかしながら…。

他の新製品の研究開発が完了し、製作作業がスムーズに進むようになったとき、もしご要望が多ければ単体フォノアンプとしても販売を再開するかもしれません。

とはいえ、「NS phonoEQ」の真価を発揮させ、レコードに収録されている膨大な情報量が耳に届くようにするための「早道」は、当工房の新製品アンプセットをご利用いただくことだろうと考えております。耳の肥えた音楽愛好家の皆さんであれば、今お使いになっているオーディオ装置に「NS phonoEQ」を接続してお聞きになった場合でも「音質や表現力の違い」を感じ取っていただけると思います。しかし、設計・開発者としては是非とも、「音楽信号を劣化させず、情報量を減らすことのない、解像度の高い増幅を行なう」ことが最大の特長であるNS工房の菅球アンプ製品と組み合わせてご利用いただきたいと願っています。

[09/07/23 内容を一部訂正]
最終的に改良の終わった製品版フォノアンプのスペックや試聴感をお知らせしておきます。RIAA偏差は下のグラフのとおりです。測定方法については2009年6月15-16の記事をご覧ください(出力 1V 時の入力電圧を測定していますので、実際に音楽を聴くときに近い測定結果と考えられます)

改良後のRIAA偏差

[09/07/21 訂正事項]
本日、販売用の NS phonoEQ をチェックしていたところ、入力インピーダンスを1MΩにすると、レコードプレーヤーの出力端子から NS phonoEQ の入力端子への接続で少しの接触不良があるだけで大きなノイズが出ることに気付きました。入力インピーダンスが高く、微小電流しか流れないため、接触不良が起きやすいようです。そこで、従来の47KΩに戻しました。スペックを再測定して明日にでも公開します。

RIAA偏差のグラフ(入力インピーダンス 47KΩの測定値)を見ると、曲線が なめらかで、目立った凹凸がないことが分かります。高域が下がっているというのがユニークなスペックに思えますが、耳で聴く限りでは高域の透明感が素晴らしく、細かな音の表情もよく再現されます。これは私の当て推量ですが、レコード時代のマスターテープに含まれる「ヒスノイズ」を抑えるのに効果があるのかもしれません。また、情報量が多いにもかかわらず、硬質感や冷たさのない、柔らかで温かい雰囲気の音を鳴らすのに寄与しているようです。

MC昇圧トランスの功罪

レコードの全盛期には、特に一般家庭で使用するオーディオ装置のハムノイズ等を実用レベルにまで引き下げるにはMC昇圧トランスを利用するのが一般的だったのだろうと推察します。しかし、電圧の変化をいったん磁力の変化に置き換えた後、それを再び電圧の変化に戻す過程で「昇圧する」という、MC昇圧トランスの動作原理を考えると、「電気信号 → 磁場 → 電気信号」という変換の際に どうしても「情報のロス(損失)」が起きてしまうと考えられます。

しかし現在では、「情報を変化させず、減らすこともしない増幅」に最適なデバイスとして各種のオペアンプICをリーズナブル価格で入手できますので、これを使わない手はないと私は思います。そのうえでプリント基板の設計をとことんまで改良し、アンプ回路定数や使用パーツを厳選して完成したのが「NS phonoEQ」です。このフォノEQアンプでは、MCモードでもS/Nが非常に高いために昇圧トランスを省略することができ、いっそう正確でロスのない増幅を行なえるのが利点だと思います。測定スペックとしては、MMモードで86dB、MCモードで64dB(いずれもJIS-A補正)ですが、主たるノイズが高域のホワイトノイズなので、聴感上はノイズが耳に届くことはありません。

というわけで、特定のMCトランスの「味わい」を気に入っているなどの理由がない限り、「NS phonoEQ」ではMC昇圧トランスを使わないことをお奨めします。

情報量が多いと音楽はどのように聴こえるのか

NS工房の管球アンプ製品(旧製品)は「情報量が多い」「解像度が高い」とオーディオ専門誌で評価されてきました。また、analog誌の製品レビューにも「情報量の多い/少ない」を評価する項目が掲載されています。そもそも「情報量が多い」と、音楽はどのように聴こえるのでしょうか?

我が家では「音楽がゆっくりに聴こえる」と表現することがよくあります。実際、単体フォノアンプを改良した最終段階でもそのように感じましたし、300Bアンプの回路定数を変更したときにもそのように感じました。もちろんテンポが遅く感じるわけではなく、「聴きごたえがある」という意味で「ゆっくり」に感じるのだろうと思います。演奏時間12分あまりの「モルダウ」(スメタナ作曲)を聴いていると、12分しか聴いていないのに もっと長時間の演奏を聴いたかのような満足感があります。

また、知らず知らずのうちに音楽に聴き入って心酔してしまうので、逆に「時間が早く経つ」ように感じることもあります。お客様からの感想として「楽しいのでCDを3〜4枚どんどん聴いてしまい、時間が経つのを忘れる」とお聞きすることがあります。

もちろん、「楽器のリアリティが増す」、「ホールトーンや雰囲気感まで再生される」、「フルオーケストラでも楽器の分離がよく、小さな音も聴き分けられる」といった言い方もできますが、「音楽が以前よりゆっくりに聴こえる」というのも便利な判断材料だと思っています。皆様も、そんな観点からオーディオ装置を試聴してみてはいかがでしょうか。

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2009/7/3 - “無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(4)

バイオリンの音色を本物らしく聴きたい

今回は、つい先ほどまでトップページに掲載していた「2008年NHK音楽祭(4)」での諏訪内さんのバイオリン演奏ににまつわるエピソードをご紹介します(アシュケナージ指揮のフィルハーモニア管弦楽団との協演)。

皆さまご存じのとおり諏訪内晶子さんは1990年のチャイコフスキー・コンクールで優勝したバイオリニストです。そして、大半の国際的なコンクールの優勝者や入賞者と大きく異なる点としてこの番組でも解説されていたのは、受賞した後すぐに演奏家として活動を始めたのではなく、音楽以外の様々な芸術分野についても海外の大学院などで見識を広めてから演奏活動を再開したということです。それが「独自の音楽性を発揮する」ために大いに役立ったとのことですが、私も確かに、今年のシベリウス・バイオリン協奏曲の演奏をNHK BSの録画で聴いて「これは名演だ!」と感じました。もちろんそれは、私が諏訪内さん独自の音楽性を「好む音楽愛好家」だからこそのことですので、皆さまの中にはもっと“華やか”とか“個性の強い”といった演奏をお好きな方々もおられると思います。

ちなみに、「サカリ・オラモ/バーミンガム市交響楽団」と協演したシベリウスのバイオリン協奏曲(→詳細・購入(Amazon) は長らく私のお気に入りディスクだったのですが、2002年に収録されたその演奏よりさらに繊細で完成度の高い「世紀の名演」とさえ私は感じております。このCDでもオーケストラは見事ですし、独奏バイオリンも見事です。しかし、今回のNHK音楽祭での演奏は、オーケストラとバイオリンの演奏のどちらについても格上ですし、映像つきでも音楽のみでも今のところ市販されていませんので、私が自分でPC録画したこの演奏会は当分のあいだ我が家の「お宝」になりそうです。著作権等の面倒な問題さえなければ、NS工房のお客さまでクラシック音楽愛好家の皆さまにお配りしたいほどです…。

実は私は、「キィー、キィー」という印象が強くてバイオリンの音が苦手でした。そんななか、諏訪内さんがチャイコフスキー・コンクールで優勝したとの報道をNHKのニュース番組で見聴きしたとき初めて「この人のバイオリンはキィーキィーしない」と感じました。その時に聴いたのが「モノラル型」の古いテレビで、スピーカーが1つだったというのが非常に興味深いなぁ、と、今になると懐かしく思い出します。自分ではまったく意識せずに、1スピーカー方式のメリットを感じ取っていたんでしょうかね。さらには、この演奏をニュースで聴いた時の時のように「バイオリンの音を本物らしく、しかも美しい音色で聴きたい」という願いが、私が管球アンプ類を自作したり、NS工房の仕事として開発したりする過程で常に目指してきた事柄の1つです。

この曲はオーケストラの演奏するパートが短かくて途切れ途切れの部分が多いので、独奏バイオリンの奏者と、指揮者やオーケストラ全体との「相性」が重要ではないかと私は思います。そのため、以前に別のバイオリニストと楽団の演奏をTV番組を聴いたとき、これはオーケストラの力不足だなぁ…と不満を感じたこともあります。しかし、この演奏は、指揮者とバイオリニストとオーケストラの全員が協力して奏でた、まさしく「協奏曲」だと感銘を受けました。

我が家の試聴環境で
諏訪内さんによる
シベリウスVn協奏曲を聴く

私が特に興味深いと思ったのは、独奏バイオリニストと一緒に映像に映ることの多かった第2バイオリン・パートの奏者たちの表情です。諏訪内さんの演奏から学び取ろうとして真剣に聴き入っていたり見つめたりしている女性奏者たち、少しのライバル心を持っている最前列の主席・次席の女性奏者、「私には こうは弾けない」という諦めのような笑顔を時おり見せる2列目の女性奏者(画面の左端)、「この演奏は気に入らない」または「日本の小娘のくせに…」といった渋い顔で見ている初老の男性奏者たち等、実に様々なんです。

主旋律を弾く第一バイオリンと“ハモる”ことが使命とも言えそうな第二バイオリン・パートは、突然 小さな音で鳴らしたりすることの多い この協奏曲では特に演奏が難しいと思います。その奏者たちの中に「余裕を持って弾きながら見ている」人たちと、「自分が演奏しないときには真剣に見入ったり聴き入ったりして学んでいる」人たちがいるんですよね。

加えて、コンサートマスターの隣に東洋系の女性バイオリニストが座っているのも見事な配列と思いました。オーケストラ全体の中で、コンサートマスターの演奏と独奏女性バイオリニストの演奏とのパイプ役として適任と考えられるからです。

…と、まぁ、いろいろ書いてしまいましたが、諏訪内晶子というバイオリニストは「オーケストラが合わせやすいように弾く」と同時に自分からも「オーケストラと合わせながら弾く」のだと感じて、全体のまとまりが見事だったというのがこの演奏を見聴きした私の感想なわけです。指揮者を含め全員が協力して 創り上げた、一期一会の名演奏だと思います。

そして、何よりも感動したのは、みんなが楽しそうに演奏していることです。特に独奏の諏訪内さんは、この難曲を弾き終える各楽章ごとにニコッと笑顔で指揮者のアシュケナージさんに目で合図を送っています。また、全体を弾き終えた後には、聴衆に挨拶することはもちろん、指揮者とオーケストラ全員に「ブラボー」の感謝と感動を伝えて「見事に演奏できて嬉しかった!」という気持ちを表情や振る舞いで表現していたのも、たいへん印象的でした。

このシステムの特長

上記でご紹介した写真は我が家のリビングに設置したメインシステムで、友人・知人に“究極のオーディオ”を体験してもらうときに使っています。

壁の中央上方に取り付けてあるのはONKYO製の小型2ウェイ(D-308M)で高域が100KHzまで伸びていて色付けがほとんどないため、当工房のアンプ類の「調整つまみ」を回すだけで“タンノイ風の音”でも“JBL風の音”でも鳴らせます。そしてもちろん、無色透明で解像度の高い、ライブハウスやコンサートホールの特等席で聴いているような雰囲気も楽しめる オールラウンド・スピーカー です。プリメイン・タイプやセパレート・タイプの管球アンプをお買い上げのお客様には、この「ONKYO D-308」1台をサービス品として標準添付いたします。

オーディオラックの天板に載っているアンプは、旧機種「NS-5FM」の内部パーツを一部変更し、フィラメント点灯用に別の電源トランスも使用して作成した300Bシングル無帰還アンプです(この「NS 300FM」専用の電源トランスは、発注して既に手元に届いています)。右側の300Bはロシア製エレハモ(electro-harmonix)ブランド、左側の300Bはスロバキア製JJブランドです。300B/JJのレベルを上げると音の繊細さや透明感がアップし、300B/エレハモのレベルを上げると全体的な躍動感や低域の力強さが増します。音楽ソースによっては、300B/JJと300B/エレハモのレベルを様々に微調整することで、いっそうリアリティあふれる自然な響きで音楽を鑑賞できます。

別のアンプの話になりますが、「845派」とか「211派」とか意見が衝突することが多いのが管球オーディオ界の厄介な部分ではないかと感じています。本当は「優劣の問題」ではなく、単に「好みの問題」なんですよね。新製品「NS 211FM」は、その両方の音をミックスした “いいとこどり” で、845の繊細さ211の迫力や躍動感音楽ソースに合わせて上手に配合することにより、いろいろなジャンルの音楽を、実に様々な雰囲気で堪能できます。

当工房のイチ押し管球パワーアンプ「NS 300FM」も そのような操作性は全く同じです。しかも 音楽性の面では「NS 211FM」より明らかに格上 と感じています。もちろん「日本人好み」というニュアンスもありますが、211や845が送信管とオーディオ管の兼用の用途で設計されたのに対して、300Bは何と言ってもオーディオ専用に設計された真空管です。そして、“アメリカ味”の濃い「WE 300B」という高価な真空管を使わずとも、リーズナブル価格の「JJ」と「エレハモ」で充分というところもまた嬉しいではないですか!

20〜30年以上お使いになっている古いスピーカーは“最も重要な部材”ともいえる磁石の磁力が経年変化で低下し、性能が劣化しています。タンノイ、アルテック、JBLといった往年の名機と讃えられるスピーカーをお使いになっている皆さま、この機会にアンプとスピーカーを一新してはいかがでしょうか? 音楽そのものを楽しく堪能できる、「音楽通の必須アイテム」と言って過言でないアンプですので、購入をご検討いただければ幸いです。

再生中のDVDは、前述のとおり2008年のNHK音楽祭の最終回を録画したもの(古いアナログ録画タイプのキャプチャー装置を使用)です。しかし、この演奏をあの広いNHKホールで堪能するには少々無理があると思います。どのコンサートホールでも座席によって音楽の聴こえ具合が変わりますし、特に東京のNHKホールはクラシック音楽のコンサート会場としては広すぎます。

しかし、この録画など、NHKその他の番組を録画し、当工房のアンプセットを使用して自宅で鳴らすと、最上級の響きが聴こえる位置に設置したマイクで収録された最高の音楽を、自分好みの音質や音量で鑑賞できます。これこそ “贅沢の極み” ではないでしょうか? しかも、往年の名演奏から、豊かな感性を備えた新進気鋭の音楽家たちの演奏まで、どんなジャンルの音楽でも楽しめるのです

現時点でお奨めCD/SACD/DVDプレーヤーは「パイオニア DV-610AV」、D/AおよびA/DコンバータはONKYO の SE-U55SX (→詳細・購入(Amazon)) です。CDやSHM-CDだけの再生でしたら、ONKYOの C-705FX2(→詳細・購入(Amazon) がお奨めです。どちらの装置も、ONKYO の「VLSC」という特許技術を利用して D/A 変換が行なわれる非常に滑らかな再生音で、音の微妙な表情まで再現してくれます。とはいえ、いま開発中の新製品プリアンプ「NS preFM」では、どんなCD/SACD/DVDプレーヤー(“安物”でない限り)でも最高の音楽を堪能できるはずと期待しています。

次回は、この SE-U55SX という“白い箱”(← 我が家での呼称) の「A/D」変換機能もたいへん優秀で、レコード音源をデジタル化したり、CD音源を「32ビット / 192KHz」という超高精度で“リマスタリング”したりすると、レコードやCDをそのまま再生するよりもっとリアリティあふれる演奏を聴けることについてご紹介するつもりです。

演奏会の雰囲気を余すところなく聴き手に伝えることのできるNS工房のアンプセット。ぜひ大勢の皆さまに購入して楽しんでいただきたいと願っています。

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2009/6/15〜16 - “無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(3)

単体フォノEQアンプ「NS phonoFM」のRIAA偏差の測定結果

今回は、単体フォノEQアンプ(製品版 最終試作機)のRIAA偏差の測定結果と、その測定データに関する私なりの考察をご紹介します。

まず、RIAA偏差の測定値(MCモード。各音域でライン出力が1Vになる時の入力電圧(約0.15mV〜18mV))をグラフにすると、次のようになりました:

NS phonoEQ のRIAA偏差

このグラフを見ると、20Hz〜5KHzあたりまでは非常に正確なRIAA特性を示しており、それより上の高域はRIAA偏差の数値が急激に落ちていきます。つまり「NS phonoEQ」のライン出力は、レコード針からピックアップされた情報を可能な限り多く出力している(=解像度が高い)ものの、高域については出力される音圧が下がっているという意味です。

この測定結果と、レコード時代の録音装置の性能を推測して考え併せてみると興味深いと思います。たとえば、1972年に録音されたレコード、ノイマン/チェコフィルによる「ドボルザーク 交響曲第9番 ≪新世界より≫」(→詳細・購入(Amazon))は、これまでの「NS phonoEQ」では、どうしても高域のリアル感が不足しているように感じていました。特に管楽器の音色に今ひとつリアリティがほしい(贅沢な悩みですね…)という鳴り方でした。これは、最近になってリプレスされた新品レコードです。

そのレコードを今回の「製品版 最終試作機」で聴くと、惚れ惚れするような木管楽器や金管楽器の響きを楽しめるだけでなく、奥行きのある音場空間や、低域の響きのナチュラルさという面でも、明らかに向上しています。これはなぜか? と考えてみると、1972年当時のチェコスロバキアにある録音機材の性能が他の西欧諸国より劣っていたがために、録音用マイクや録音機材に限界があり、特に高域ほど余分なノイズや歪みが含まれているのではないか、という考えに至りました。とすると、そうした高域部分は少しだけ音圧を下げた状態でフォノEQアンプからラインレベルの信号を送り出し、最終的な味付けによって“無色透明で感動できる音楽”に仕上げるのは、パワーアンプの真空管に任せるのがベストと私は考えています。その点、当工房の新製品ラインナップでは、2つの銘柄の真空管を混ぜ合わせるというユニークな方法で、様々な味付けを、聴く人の好みやその日の気分に応じて簡単に調整できます。これがリーズナブル価格のアンプセットなのですから、ぜひとも購入をご検討いただきたいと願っております(まず単体フォノEQアンプで試してから とは仰らずに・・・)

上記のリンクをクリックしてみたら、ノイマン/チェコフィルによる「スメタナ “わが祖国” 全曲 」(→詳細・購入(Amazon))のレコードが再版されたことを知り、さっそく注文しました。聴いてみるのが楽しみです。バーツラフ・ノイマンという指揮者は、あまりにも“大物”で“天才肌”の指揮者クーベリックの後任だったためか、クーベリックのほうが芸術性が高くて好きだ という皆さんもおられるかと思います。かくいう私も、クーベリックの演奏が大好きです。特に最近購入したCD「クーベリック/チェコフィル “わが祖国”」(→詳細・購入(Amazon))は、この曲を美しく雄大に聴かせるという意味で、他の指揮者には到底マネのできない名演奏! と感動しました。

↑ と、昨日(6/15)は書いたのですが、今日の昼食時にもう一度クーベリックの演奏(上記のCD)を聴いたところ 「荒々しく激しい怒りや憤りのような感情を表現した中に、ところどころ美しく歌わせる箇所が少しだけ混じっている」 という印象に変わりました。というのも、昨晩、上記のノイマン/チェコフィルによる 「スメタナ “わが祖国” 全曲 」のレコードを聴いたとき、ノイマンの温厚な人柄がよく表われた、決して自己主張せず、音楽の美しい部分を引き出す演奏に感服したからです。ここで、特に強調したいのは、その演奏にどっぷり浸り、感動し、リフレッシュされたのが 夜10時という 遅い時間帯 であることです。当工房の1スピーカー方式による管球アンプセットでは、このような夜中に 控えめな音量で鳴らしても、小さな音からフォルテシモまで、音量を下げることなく、しかもマンションという集合自由宅の環境でも 窓さえ閉めておけば 決して両隣や上下の部屋の住人に 迷惑をかけない からです。ピアニシモで奏でられる美しく感動的なメロディーから、音楽がフォルテシモに達してティンパニーが強打しているような箇所でも、スピーカー本体はもちろん、床や壁が振動することがなく、ただ空気の振動だけが 心地よい音楽として耳に届くからです。

ここで気に掛ったのが、先ほど聴いたクーベックのCDが「1991年11月2日、サントリーホールでの演奏を、NHKのレコーディング・エンジニアがデジタル録音した音楽ソース」を、さらに「32ビットでデジタル・リマスタリングしたもの」という点です。というのは、演奏会当日にサントリーホールでの演奏会を生で聴いた聴衆が熱狂的な拍手とブラボーで感動している「その感情」が、このCDを聴く私たち夫婦には伝わってこないからです。そこで私は、もともとの録音が良くない のか、それとも 32ビット・リマスタリングが何か悪さをしている のか、どうしても確かめたくなり、さっそく元の録音そのものを収録したCDを注文しました。明日それが届きますので、それを聴いた結果を、この後に付け加えようと思います。

↑ この内容を公開できないままフォノEQアンプの改良と他の新製品の試作、作業スペースの片付けを続けております。クーベリックとノイマンの音楽性と録音技法に関する私なりの考察は、近日中に記事として公開します。

とはいうものの、スタンダードな演奏でありながらも、高度な芸術性を備えていても聴く者を感動させてくれるのが、晩年になるにつれてどんどん穏やかで温和な表情になったノイマンという指揮者の個性と芸術性ではないか、と私は感じております。これもやはり「優劣の問題」ではなく「個性の違い」であって、どちらも素晴らしい演奏を聴かせてくれる名指揮者であることには変わりありませんよね。

RIAA偏差の測定方法(NS工房の場合)のご紹介

皆様ご存じのとおりレコードに収録されている音楽信号は、音楽信号に対応した溝の振幅(ギザギザの変化量)が、低域ほど小さく、高域ほど大きくなっています。これは、音楽信号の周波数の高い低いに関わらずに溝の振幅量(レコード針がなぞっていく溝の最大幅)がほぼ一定になるようにするための工夫です。レコードが生まれた初期のころは様々な規格が乱立していたそうですが、LPレコードになってからは「RIAA」という規格に統一されました。フォノ・イコライザーアンプの出力する音楽信号がRIAA規格に対してどの程度ずれているかを表わすのが「RIAA偏差」というデータです。

NS工房での
RIAA偏差の測定方法

RIAA偏差を測定する方法には多種多様なものがあるようですが、当工房では右図のように、市販の測定器2台(日本オーディオ製「UA-3S」Agilent製「U1241A」)と、自作の測定補助器具を使用して、実際にレコードを聴く際の状況に近いスペックを測定しました(かなり厳しい条件下でのスペックだろうと思います)

「UA-3S」で20Hz〜20KHzの正弦波を出力し、それを1/100の電圧に落としたものを「NS phonoEQ」(MCモード)に入力し、出力電圧が1.0Vになるように「UA-3S」の出力レベルつまみを調整します。このときの正弦波のAC電圧は非常に微小なため、AC信号のTrue RMS(真の実効値)を有効数字4桁(10,000カウント)まで測定できるデジタルマルチメーターで測定します。このとき、NS FonoEQ、UA-3S、および測定補助器具のGNDを相互に接続してアース電位を共通化すると、正確な測定値を得られるようです。

測定値から、この記事の冒頭に掲載したExcelグラフを作成するときは、1KHz時のRIAA偏差を「0dB」とし、その値からの「ずれ」を他のスポット周波数におけるRIAA偏差とみなします。したがって、UA-3Sの出力信号の電圧を落とす測定補助器具の「1/100」という分圧比率は、高精度である必要はありません。毎回の測定度に同じ測定補助装置を使用すれば、かなり正確なRIAA偏差スペックを測定できると思います。

RIAA偏差の
簡易的な測定補助器具

最初の測定では、右図のように抵抗だけを使った簡易的な補助器具でスペックを測定しましたが、低域側と高域側で補助器具のインピーダンスに起因する測定誤差が多いようでした。

そこで、低雑音/低歪率のオペアンプICを使って測定補助器具を次のような回路に変更したところ、もっと正確なデータを測定できました。

RIAA偏差の
測定補助器具
[低雑音オペアンプを利用]

フォノEQアンプの改良を粘り強く続けた理由

NS工房で私がこれまでずっと目指してきた「ナチュラルな響きを鳴らせるオーディオ装置」、「音楽そのものを主役として引き立てる無色透明なオーディオ装置」にとって、ノイズは大敵ということです。特に、MCカートリッジから出力される微小電圧の音楽信号を約1000倍に増幅するフォノアンプでノイズを減らすと、レコードという音楽媒体に記録された貴重な音楽信号を非常に高い解像度で、かつ非常に正確に 後続のオーディオ装置に伝えることができます。

たいへん興味深いことに、1スピーカー方式で音楽を聴くと、オーディオシステム全体の「音楽性」や「表現力」の違いが、従来の2スピーカー方式で聴いた場合よりも “一聴瞭然” になることに気付きました。その結果として、211/845アンプよりも、もっと安価に製作できる300Bアンプのほうが音楽性の高いことが分かりました。そして、「NS phonoEQ」については、各パーツの役割を十分に意識して改良すると、抵抗やコンデンサの種類を1つ変えただけでレコードからピックアップされる音楽情報の量が激変しますので、これには驚きました。そして、ようやく「これでOK! どこへ出しても恥ずかしくない製品になった」と確信することができたんです。

さらに重要な点として、「NS phonoEQ」を改良する過程で得た「ノイズを減らし、情報量を増やすコツ」は、他のアンプ製品の基板を設計し、配線材料を適切に選択し、アースをどのように引き回すかなどの面で、貴重なヒントを与えてくれます。そんなわけで、このあとの新製品の試作・開発は、もう少し早いペースで進められるのではないかと期待しております。

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2009/6/10 - “無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(2)

単体フォノEQアンプ「NS phonoEQ」が高く評価されるのには“陰の努力”があるからこそ

今回は、ガレージメーカーだからこそ製作できる、こだわりのフォノEQアンプ「NS phonoEQ」の製作過程の一部をご紹介します。

前回の記事では「ノイズを減らす3つの工夫」について説明しました。「NS phonoEQ」の性能を評論家の先生たちが高く評価してくださるもう1つの要素として、抵抗やコンデンサの種類を適材適所で使い分け、しかも出来るだけ正確な値のパーツを選別して使うという点が挙げられると思います。抵抗は±0.1%の精度、コンデンサは±1%の精度に手作業で選別しています。

このフォノEQのオペアンプ回路では2種類の抵抗を使い分けています。レコードに記録された情報をRIAAカーブに従って補正する回路のパーツは高精度である必要がありますので、最初はごく一般的な国産の金属皮膜抵抗を採用していました。しかし、最近、タクマン電子の「REY25FY」シリーズのオーディオ用金属皮膜抵抗がリーズナブル価格(100本あたり\1,900ほど)で販売されていることを知り、さっそく購入して試したところ、音質が格段にグレードアップしたのには驚きました。この抵抗はRIAA補整に関わる部分のうち“流れる電流が少ない箇所”に使用しています。

もう1種類の抵抗はタイコ・エレクトロニクス社の「Neohm」ブランドの抵抗で、流れる電流が比較的大きい2箇所に使用しています。そのうち1か所はRIAA補正に関わる抵抗なので、±0.1%の精度で選別しています。

コンデンサは、RIAA補正に関わる2か所に小型のメタライズド・フィルム・コンデンサを選別して使用することでノイズ低減と正確な補正を達成しています。また、前回の記事でご紹介したとおり、直流成分をカットする3か所にはニチコンのオーディオ用Fine Goldシリーズの電解コンデンサを使用しています。耐圧と容量値とサイズを勘案して「16V 100μF」を選びました。容量値を大きくしたほうが解像度が増すからです。

抵抗やコンデンサの選別

・・・と、まぁ、書くのは容易ですが、実際の選別作業にはかなりの根気が必要です。今までは私自身で製作時に選別しながら4台ほど試作機を製作しましたが、先日から選別作業を家内に任せています。こういった作業は女性のほうが適任のことが多いですね。私の2倍以上の速さでどんどん選別してくれます。

左の写真のように4000カウントのLCR専用テスターで抵抗とコンデンサを選別し“合格したパーツ”をパーツ箱に入れていきます。測定しやすいように、合格値の範囲と抵抗のカラーコードを紙に書いて貼り付けてあります。

カラーコードの違い

意外に厄介なのが、精度5%の一般的なカーボン抵抗と、精度1%の金属皮膜抵抗でカラーコードの「帯の数」が異なることです。右の写真は、上側が10KΩのNehom抵抗(フォノアンプでは使用しません)、下側が10KΩのオーディオ用金属皮膜抵抗(今後はNS回路のLPF回路にもREY25FYシリーズを使用)です。

すぐにお気づきのとおり、カーボン抵抗のほうがサイズが大きくてカラーコードも識別しやすい(見慣れている)と思います。私などは子供のころから3桁目の「乗数」が橙色であれば「10KΩ台」と頭に刷り込まれていますので、下側の4桁表示のように色の違いが紛らわしいうえに、「乗数の色」が一般的な抵抗より「1桁ずつ小さい(10KΩ台は“赤”)」というのが頭を混乱させる原因となります。

また、基板に取り付ける際に位置を間違えてハンダ付けしてしまうと、取り外して正しい位置につけなおす際にプリントパターンを痛めてしまいがちなので、明日から「NS phonoEQ」基板にこうした抵抗類を家内にハンダ付けをしてもらうときは、和室に座卓を置いて向かい合わせに座り、最初のうちは間違いがないかどうか私も一緒に確認しながら作業するつもりです。私は何をするかといいますと、新製品「NS 300FM」のシャーシ設計(大まかな設計は今日のうちに終わっています)を仕上げようと思っています。

オマケ写真 - 1スピーカー法に到達するきっかけとなった“幻のNS-7FM”

出力管の光が奇麗ですね

これは取材日当日の深夜 2:45 ころに撮影しました。このあと少し休憩してから残りの配線などをしたのですが、バンク便を手配してあった朝8:30の直前に音出しチェックをしてみたら、何と左チャンネルの音が出ませんでした。そのまましばらく睡眠をとり、どうせなら片チャンネルだけでも音質を確かめてみようと思ったら、何と、その当時の旧製品NS-211FMに肉薄すると思えるほどの立体音場と表現力に驚愕しました。

「NS 300FM」をはじめ、新製品ラインナップ゛のうち管球パワーアンプでは、出力管の光を見て楽しめるようなシャーシデザインを計画しています。この開口部は網の目状になったアルミ薄板で内側から覆い、“排熱孔 兼 真空管アンプらしさの演出”に加えて、ほこりの侵入を最小限に抑えるよう工夫します。6/22(月)の取材日に間に合えば、管球王国誌7月号の新製品紹介で取り上げていただける手はずですが、さて、間に合うでしょうか・・・。どうぞ、楽しみにお待ちください。

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2009/6/7 - “無色透明なオーディオシステム”に至るまでの歩み(1)

単体フォノEQアンプ「NS phonoEQ」の音質向上の経緯

この連載トピックの最初の記事では、新製品ラインナップの発売 第一弾となる「NS phonoEQ」について、この単体フォノEQアンプを井上千岳先生が『analog』誌 Vol.23(2009年・春号)で 「レコードに収録されている情報をほとんど完全に再現しきっている」 とまで誉めてくださったのは「なぜのか?」。そのあたりから話を始めようと思います。以前にトップページにも書きましたが、その時点で ご試聴いただいたのは試作段階のもので、近く発売される『Analog』誌 Vol.24(2009年・夏)の試聴記事も、製品版より音質や解像度が まだ かなり劣っている試作機をお聴きいただいたレビュー記事となります。最終的な製品版の試聴記事は『管球王国』誌 Vol.53(2009年・夏)に掲載されます。

つい先日、あるお客さまからのメールに、この単体フォノEQアンプに関してとても興味深く、私にとって示唆に富んだ質問が書かれていました。質問の要旨は「オペアンプ回路による2段構成のフォノEQ回路で、出力段のカップリングコンデンサとしてニチコン「Muse」シリーズの無極性電解コンデンサを使っているが、フィルムコンデンサに比べて (1) 特性(2) と経年劣化 に不安がある。電解コンデンサとフィルムコンデンサの音質比較などをしてみたのか?」というものです。

ここで私は、ハタと考え込みました。井上先生にお聴きいただいた試作機ではカップリングコンデンサとして、入力部分(微小であるとはいえオペアンプの入力バイアス電流がカートリッジの磁気コイルに流入して悪影響を与えないため)と、オペアンプの段間(出力オフセット電圧[直流成分]を、増幅度の高い2段目に伝えないため)、そして2段目の出力部分(出力信号から直流成分をカットするため) という3か所に使用しており、入力部分と出力部分にはMUSEシリーズの無極性電解コンデンサ(4.7μFと10μF)、段間にはフィルムコンデンサ(0.22μF)を採用していました。

このお客様が心配しておられた「(2) 経年変化」が問題になるのは、真空管でフォノアンプを製作した場合のことです。オペアンプによるフォノアンプではケース内部の温度が室温とさほど変わりないため、電解コンデンサの寿命はかなり長い(経年変化による劣化は、真空管式のアンプでなければ度外視して構わない)と考えられます。

次に「(1) 特性 = 音質」の点では、オーディオ・グレードのコンデンサであれば、その種類がフィルムコンデンサであるか電解コンデンサであるかによる差は僅かだろうと私は考えております。むしろ、レコードに収録されている情報を「可能な限り多く、かつ可能な限り正確」にフォノアンプに取り込んで、その情報に何の色付けも加えずに出力することのほうに重点を置いて回路定数を設計する必要があることに気付きました。

こうした考察の結果、現状の最終試作機(回路定数は製品版と同じ)では3つのカップリングコンデンサにニチコンのFine Goldシリーズの有極性電解コンデンサ(容量は100μF)を使うことに決めました。そして今までいちばん「感動できる音楽」を鳴らすのに苦労していたノイマン/チェコフィルによる「ドボルザーク 交響曲第9番 ≪新世界より≫」(→詳細・購入(Amazon))のレコードが非常に美しい音質と響きで、そして耳を疑うような高解像度で鳴るようになったのです。特に木管楽器の音色には惚れ惚れしました。1972年当時のチェックフィルの演奏会場での録音機材が他のホールより性能が劣っていたのが原因かと思いますが、カップリングコンデンサの容量を大きくして初めて、必要十分な情報をレコードから取り込むことができたと考えられます。

つまり、オペアンプという「入力インピーダンスの非常に高い増幅素子」を使用する場合は、段間のカップリングコンデンサは「なるべく容量が大きいもの。しかし、なるべく小型のもの」を採用するのが正解だったと言えるでしょう。

単体フォノEQアンプでS/Nを改善するコツ

このフォノEQアンプの性能を向上させるために積み重ねた様々な試行錯誤の中で、(1) ベタ面アースは逆効果であること、(2) アンプ基板のGNDはケースと接続しない(つまり“シャーシアース”はとらない)こと、そして (3) パーツはできるだけ小型のほうが良い、という3つのコツがわかってきました。

まず、パーツをできるだけ小型化すれば、パーツそのものが“アンテナ”のようになって周囲の電磁ノイズを拾わないようにできます。ではチップ部品を使えばいいかというと、チップ部品を「誤差0.1%以下」までの精度で選別するのは現実的ではありませんので、手作業で扱える通常サイズでオーディオ・グレードのパーツを使いながらも、なるべく小型の部品に切り替えました。初期の試作機ではパナソニックのRIAA補整製回路にフィルムコンデンサを使っていましたが、特に0.1μFのコンデンサはサイズが 15mm×12mm程度 とかなり大きいので、ここからノイズを拾ってレコードに収録されている微細な音声信号がそのノイズでかき消されてしまっていたと予想されます。

(2) の「シャーシアースを落とさない」というコツは、従来の手法と逆かもしれませんが、実際に試してみたところ、このほうが確かにハムノイズが減りました(この原理に関する詳細は、また後日)。ついでながら、オペアンプICを±12Vの二電源方式で動作させるよりも、24Vの単一電源で動作させたほうが音の微妙な表情が十二分に再現されることも分かりました。これは、二電源方式が真空管パワーアンプの「プッシュプル方式」に似ており、単一電源方式が「シングル方式」に似ていることと関係があるとお考えください。

最後に (1) のベタ面アースを廃止した理由ですが、ノイズを減らす目的で従来からベタ面アースが主流のようでしたが、実際にはプリント基板で広い面積を占めるベタ面アースがノイズを拾う“アンテナ”になっているに違いないと予想して、思い切ってこれを廃止したところ、良い結果につながりました。

プリント基板のベタ面アースが有効かつ必要な機器は…

もっとも、パソコンなどの複雑で高速クロックで動作するプリント基板(PCのマザーボードなど)では、ベタ面アースが入念に張り巡らされています。その目的は、ギガHz単位に達する高速なデジタル信号がパソコンの周囲に強力な電磁波を放出するのを防止するところにあります。

少し話が脱線しますが、以前にトップページに「第三次世界大戦を引き起こしかねない新型爆弾」に言及したことがあります。これは、お客様として製品をお買い上げいただいた方と電話でいろいろとお話しながら、好奇心旺盛な私がいろいろと質問を投げかけているうちに、そのお客様から教えていただきました。この新型爆弾は「大規模なコンピューターシステムの設置された公共施設や軍事施設の付近で、強力な電磁波を発生する爆弾を炸裂させることにより、そうしたコンピュータシステムが誤作動して社会機能がマヒしてしまうことを狙う小型の爆弾とのお話でした。

いま現在、真空管を製造している主要な国はロシアと中国で、アメリカは表立っては真空管を製造していないようですが、かつて米ソの冷戦時代にそうだったように、アメリカも秘密裏に同様な新型爆弾を研究開発しており、その防御策も同時に研究しているわけです。

強力な電磁波が放射された場合に一番ダメージを受けやすいのは、ネットワークケーブルの接続端子など、コンピュータの内部への入力端子です。その入力端子から強力な電磁波から発生した大電流から流入してきたとき(落雷の時と同じような現象です)、その大電流からコンピュータシステムを防御するには、入力端子部分すべてに真空管を取り付けるのが最も効果的なのだそうです。

たまたま中国製の211と845を使用した管球パワーアンプを製作・通販していた零細ガレージメーカーの責任者である私が、その恐ろしい新型爆弾のことを知ってしまったがゆえに、すわ一大事とばかりにアメリカの信頼できる真空管商社(BOI AudioWorks に、その分野での中国人関係者によるスパイ活動を阻止するよう“救援要請”をしたのです。何といっても、私は戦争が大嫌いですから!

そうこうしているうちに「スパイ合戦ではアメリカ側の勝ち」という趣旨のメッセージが届きましたが、その直後にアメリカ Penta Lab.社に在庫していたすべての中国・曙光電子(Shuguang)製211と845を全数即金で買い取った人物がいて、在庫切れとの連絡も入りました。中国人関係者なんでしょうね・・・

すると今度は、日本でゴールデンウィークが始まる前ころから「メキシコで豚インフルエンザ発生」のニュースが飛び込み、あれよあれよという間に西欧諸国に飛び火し、日本では「新型インフル」とニュースで報道されるようになりました。私がいちばん怖れていたのは、海外旅行や出張から日本へ帰国する人たちが「保菌者」となることはもちろんとして、お土産などとして持ち帰る荷物です。もしその荷物に新型インフルエンザのウィルスが付着していたとすると、それを自宅で開梱した時点で新型インフルエンザのウィルスがその家のあちらこちらに付着し、同居している家族も保菌者となり、そのような人たちが電車で通勤すれば次々に人から人への感染が広がり・・・、という事態です。

NS工房も中国やアメリカの商社から輸入された真空管がEMS小包などで届きますので、荷物を開梱する際には台所用のアルコール殺菌スプレーで真空管の箱やクッション材を十分に消毒するよう配慮していました。ウィルスというのは細菌と違って細胞膜のない、いわば“裸の状態の DNA 塊”のようなものですから、例えば塗れ雑巾で拭くだけでもウィルスは水分によって破壊されます。

幸い、たいへん不思議なことに、今は小康状態です。しかし、1918年に世界中を震撼させた「スペイン風邪」の際にも数か月間は流行が収まったかのように見えた後、突然に大流行が再開して数千万人の死者が出たということ、そして今回のウィルスがスペイン風邪のウィルスとDNA構造が似ていることが非常に心配です。

この面で、“水際対策”を指揮した舛添 厚生労働大臣の機敏な行動や、日本で最初の患者が発生した関西地方では橋下知事らが敏速に行動して、パニックの発生を巧みに抑止しながら、感染拡大に尽力しておられる姿を毎日のニュースで見て、こうした頭脳明晰な人格者たちの立派な行動に私は感銘を受けました。

今回のウィルスは「感染力が強い」、しかし「毒性は弱い」という特徴があると報道されています。これを聞く私たちは「毒性が弱いのだから、もし新型インフルエンザに感染して発病しても、家で何日か静養していれば治るだろう」と安心するかもしれません。NHKをはじめ、各報道機関は、そのような情報を公表することで、1970年代前半のオイルショックの時のように「トイレットペーパーやティッシュペーパーを大勢が買いに走ってパニックになる」という状態が起きないよう、慎重に物事を扱っていることを推察できます。

しかし、盲点があります。世界的な大不況のなか、多くの日本人はストレスで体力が落ちています。また、若者や子供たちの中には、「病原体が体内に侵入したら発熱して病原体を死滅させる」という人間本来の本能的な機能が生まれながらに十分に機能しない人たちもいるようです。海外の研修旅行先から帰国した高校生グループの中で、40代の引率教師は高熱の症状が出たのに対して、10代の高校生たちは微熱で済んだようです。

しかし、人体の免疫機能がウィルスと闘っている間は体力をひどく消耗するため、新型ウィルスに感染して発症した患者が、普段は通常の免疫機能で病気を引き起こさない“ちょっとした大腸菌など”にも同時感染すると、それによって吐き気やおう吐、下痢といった症状が引き起こされます。年配の方の場合には、細菌によって喉[のど]に炎症が起こり、その炎症が 気管支炎 → 肺炎 と進んでいくと、命が危険にさらされます。

そう考えてみると、もしかしてこれは「新型の細菌兵器」なのではないか、という不安が私の頭に浮かびました。アメリカ、ロシア、中国が「強力な電磁波を放射する新型爆弾」を同時に研究開発していたのであれば、この「新型の細菌兵器」もそれら3国が同時に開発しているに違いないと考えるのは道理にかなったことです。

私の危惧している事態は、いったん小康状態を保っているかに見える新型インフルエンザが再び大流行し、先進国や・発展途上国を問わず、地球上の全人類が死滅してしまうのではなかろうかということです。

世界同時の大不況を解消するには「人」や「物」が国内はもちろん、世界各地を移動する必要があります。しかし、新型インフルエンザがフェーズ6「パンデミック」の状態になったとしたら・・・

これは、小松左京のSF小説「復活の日」で描かれていた状況と似ていると思われませんか? この小説はあくまでもフィクションですから、南極大陸だけに人類が生き残り、なんとか全滅を免れたという小説ですが、もし仮に新型ウィルスが世界的に大流行したとすると、現実的に考えると、やはり人類全滅ではなかろうかと・・・

この危機的な状況を救えるのは、私たちが所属しているボランティア団体「エホバの証人」が全能者として忠誠を誓っているエホバ神に頼るしかない! というのが今の時点での私の認識です。はたして、事態はどう推移していくのでしょうか。皆さん、ぜひ エホバの証人の公式ウェブサイトの記事をお読みになり、そのエホバ神ならこの危機的な状況を必ずや打破してくださるはず、とお考えになってみてください。

蛇足ながら、私は子供の時からいろいろな分野に対して好奇心が旺盛で、小学校の卒業文集に下記のように自分が書いたのを最近読んで驚きました。「いろいろな政治形態の良いところをとる(ミックスする)」、「自分の夢は技術者になること」、こんな考えをいまでも持ち続けている、好奇心旺盛な45才のおじさんが、私・名取俊忠 という不可思議な人間 なのです。

卒業文集の内容

今日のところは、ここまでといたします。お休みなさい。

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2009/5/4 - 思い出の「SV-2(2003)」の改造に再度挑戦

私が「UV211」という巨大な真空管のことを知ったのは、確か1970年代前半の小学生の頃でした。そのあたりの思い出話と、サンパレーさんの「SV-2(2003)」のキットを購入して自作・改造したことについては、私設ホームページの「SV-2(2003)Ver.2 製作記」と「改造レポート」に記録を残しました。

その後アラバマ大学の高橋先生のアドバイスを受けつつNS回路を考案し、さらには211無帰還シングル(モノブロック)をはじめ、いろいろな管球アンプを自作しながら、参考書やインターネットの情報、さらには沢山のお客様から教えていただいた事柄からも知識を得て、ノイズの少ない、リアリティあふれる音を真空管から引き出すコツのようなものをつかむことができました。その結果として、今の「新製品ラインナップ」の構想ができあがったわけです。

パーツ類を取り除いた
シャーシ内部の写真

今日から取り組んでいる課題は、新製品「NS 211FM」の試作を兼ねて、思い出ぶかい「SV-2(2003)」を改造することです。最初の自作品は手離してしまいましたが、ちょうどYahoo!オークションに自作完成品が出品されていましたので、勉強のためにと入手してありました。この出品物です。

最初にこのキットを製作したときは、アースの引き回しなどを説明書どおりに行ないましたが、いま改めてシャーシ内部を見てみると、ノイズを拾い、音質や耐久性を損なう要素がたくさんあることに気付きました。そこで、とりあえず、交換する必要のあるパーツ類や配線を取り除いていきました。その結果が、左の写真のような状態です。

ブロック電解コンデンサなどは、このアンプのシャーシ内部がかなり熱くなることを覚えていましたので、最初から交換するつもりで、ニチコンのブロックコンデンサを購入してありました。そのほか、不要な配線や、配線方法を変更する箇所のリード線を取り除いていったら、このような状態になった次第です。

実はこのアンプ、標準添付で譲っていただいた「Prime Tubes 845」+「NS-1 Ver.3」で、なかなか聴きごたえのある音楽を鳴らしてくれました。やはり、曙光電子(Shugaung)製の真空管は、1年くらいの単位でグレードアップしているようですね。ただ残念なことに、しばらく聴いているうちにシャーシ内部でパチパチッと音がして、初段管とドライバー管のヒーターが点灯しなくなりました。以前に店主日記で読んだことがありますが、直流点火用のブリッジダイオードのねじがゆるんで過熱し、ショートしてしまったようです。今日になって内部を開けてみたら、やはりその部分が少し焼けていました。

しばらく多忙のため、しまいこんでありましたが、今回これを土台にして新製品「NS 211FM」の試作実験をしようと思い立ちました。ドライバー管は「ロシア製TungSol」の6SN7をパラ接続で使用します。そして、片チャンネルは211専用、もう片チャンネルは845専用の自己バイアス抵抗を入れ、オール無帰還構成を計画しています。製品版では、初段は真空管ではなくバーブラウンのオペアンプ(単体フォノEQに搭載しているのと同じもの)を使います。

今日の作業はここまでになってしまいましたが、明日、計画している回路を組んで音を鳴らしてみようと思います。もしかしたらファインメット®・コアのトランスが必要ないかも? という予感がしています。さて、どんな結果になるでしょう…。

今後の計画としては、パワーアンプの試作実験のあと、単体フォノEQをさらに性能アップした「製品版 最終試作機」の製作と測定を行い、その後「NS preFM」のシャーシ発注やプリント基板の製作に取り掛かります。また、Golden Dragonブランドの211より音楽性の高い211(Shuguang製)の中にも、管壁のプリントの違いによってかなりの音質差があることにも気付きました。管壁のプリントは「正式な機種名(ブランド)」ですが、どうやらOEM先ごとにグレードの違う211をOEM製造しているようです。明日は、そのあたりの比較試聴も行なってみたいと思います。

また進展があれば、ここに書き足していきますね。楽しみにお待ちいただければ幸いです。

[ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です]

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2009/5/19 - ハイエンドオーディオショーで究極のオーディオ・セットを試聴できます!

トップページでもご紹介しているとおり、当工房で発売予定の「NS 211FM」のデモ機を、東京・有楽町の東京交通会館で5/22(金)〜5/24(日)に開催される「ハイエンドオーディオショー」の音元出版ブースで、井上千岳先生の講演の時間枠に紹介していただけることになりました。急なお話で驚きましたが、井上先生が当工房のアンプをぜひともお聴きになりたいとのことで、この企画が実現したそうです。

[訂正情報] トップページのお知らせ欄に書きましたとおり、井上先生の講演枠(日曜日)でご紹介いただけるのは単体フォノEQアンプです。「NS 211S」のデモ機は金曜日の炭山先生の講演枠でお聴きいただけます。通常の2スピーカー法による他メーカー様の管球アンプとの比較試聴のような形になるかと思いますが、右側の211の音量レベルと左側の845の音量レベルを少し調整したりすると「211と845をミックスさせた音」を体験できるはずです。NS-1 Ver.2も一緒に接続していただきますので、どの席に座っていても明瞭なステレオ感を堪能できます。また、NSレベルを少し調整することで音場が狭くなったり広くなったり、といった変化を感じ取れることもデモしていただくようお願いするつもりです。なお、当工房のアンプをお聴きになる際には、両耳の後ろに手のひらを軽く当てがって“収音”すると、非常に細かい音までよく聴きとることができますので、どうぞお試しくださいませ。

そこで鳴らしていただくデモ機として、当工房に1台残っていた「NS-211S」(貸出機)の内部パーツを一部交換するなどして、211と845をミックスして1スピーカー方式で音を鳴らせるように急きょ準備をしました。下の写真にあるアンプです(前述のとおり、ハイエンドオーディオショーでは通常の1スピーカー方式でのデモとなります)。

オーディオショー用のデモ機

外見は旧機種「NS-211S」そのものに見えますが、左側の真空管は中国・曙光電子(Shuguang製)の211で、同メーカーのオリジナルブランドである「Electron Tube」とそのロゴが管壁にプリントされています。右側の真空管は、サンパレーさんで「米国製 CETRON 845」として販売されている球を購入したもので、ベース部分には確かに「Maid in U.S.A.」とプリントされていますが、内部の部材や、金属ベース部分の外観などを見ると、どうもShuguang製のように私には感じられます。その真偽のほどはともかく、どちらの球も私が今まで耳にした211/845の中で最高の音楽性を備えた音を鳴らす真空管であることは確かです。

そのあたりの情報や「中国製211/845で音の良いもの」を見分ける方法などについて、明日にでもご紹介しようと思います。

[ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です]

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