部品の取り付け段階が終了し、ここからは本配線とCR類の取り付けになります。手配線のキットでは、ここからが作業の山場と言えるでしょう。私にとって手作りの醍醐味をいちばん楽しめる段階でもあります。
配線は、実体配線図が4つに分類して用意されていますので、その順序で配線していきます。「フロントパネル、リアパネルの部品から天板取付け部品への配線」→「アース回路の配線」→「ACライン、ヒーター回路」の配線」→「+B、信号ラインの配線」と進みます。ハンダ付け不良などがないように1箇所ずつ確実に配線し、各段階ごとに配線チェックを念入りに行ないます。
下の写真は、配線が終わったところです(まだ結束はしていません)。確実に配線したつもりですが、決して美しい配線とは言えませんので、参考程度にとどめていただきたいと思います。
5番目の実体配線図は「CR取付」です。シャーシ内部の写真や回路図と照らし合わせながら作業しました。電解コンデンサとダイオードの極性には十分に注意します。カップリングコンデンサに極性はありませんが、いわゆる“方向性”のようなものはありそうですので、写真を参考にして、左右チャンネルとも同じ“方向性”で取り付けました。
いゃー、それにしても、CR類が多いですね。ひとまとまりごとに「位置決め」「ハンダ付け」「チェック」を行い、小休止を入れながら作業しました。
ダイオードの極性の見分け方は電子工作の基本だと思いますが、久しく使っていなかったため、いささか自信がありません。マニュアルの写真でだいたい確認できますが、念には念を入れてインターネットのGoogle検索でも確認しました(万一逆に取り付けて、虎の子の高圧ダイオードを壊してしまっては大変ですので)。
また、チューブラ型の電解コンデンサの極性も、意外と勘違いしやすいんですよね。実体配線図からも分かりますが、筒にくびれのある方が+で、矢印の指している方が−です。
下の写真は、CR類の取付が終わった様子です。ただし、配線の結束は動作確認が完了してから行ないました。
念入りに配線チェックをした後、いよいよ動作確認です。1000V近い電圧のかかる真空管アンプの製作は今回が初めてですので、余計に緊張します。
動作確認の手順と、電圧を確認するべき箇所が、マニュアルに詳細に記載されていますので、まずは熟読します。「電圧チェック時には五感をフル回転してください。異音、異臭、煙の発生等、異常事態が発生した場合には直ちに電源を切ってください」という記述がうまいですね。ベテランの真空管アンプ製作者ならではアドバイスだと思います。五感をフル回転させるためにも、製作中には小音量で流していたBGMを切り、精神を集中します。
このアンプは、出力トランスよりも出力管845の方が背が高いので、動作確認時にシャーシを裏返すのには工夫が必要です。皆さま、いろいろな流儀をお持ちのことと思いますが、今回私は横に倒す方法を試してみました。横に倒したとき、出力トランスの下に1.5cm厚ほどの本を挟むと、安定して自立してくれます。出力管は非常に高温になりますので、挟んだ本と接触しないように注意します(余談ですが、以前別のアンプの動作確認のとき、トランスの保護のために巻いてあったプチプチ(エアキャップ)が真空管に接触して融けてしまい、せっかくの真空管を汚してしまうという、なんとも情けない経験があります)。
それから、感電防止のため、マニュアルの説明に従ってゴム手袋を手にはめます。「テスター棒のショート対策」も、なるほど!と思いました。これなら、込み入った箇所の電圧をチェックするとき、誤ってショートさせる危険性を最小限にできますね。
ここまで準備したところで、いよいよ“火入れ”です。
まずは真空管を挿さずにチェック。“五感をフル回転させながら”スタンバイスイッチをオン。異常なし! とりあえずひと安心しながらヒーター電圧に異常がないことを確認。
次に真空管を挿してチェック。またまた“五感をフル回転させながら”スタンバイスイッチをオン。異常なし! 845のヒーターはさすがに明るく輝きますね。緑のLEDは、発色がやや薄めですが、とりあえず点灯しています(直列に入っている抵抗の値(10KΩ)が大きすぎるような気がしますが、真空管より“控えめ”に光るような設計になっているのでしょうか)。再度ヒーター電圧を確認したのち、とりあえず電源を切って、気持ちを落ち着けます。
さて次は、いよいよメインのパワースイッチをオンにする番です。テスターの黒棒は、両端に「みのむしクリップ」の付いたケーブルで信号系のアースポイントに固定しました。こうすると、電圧チェック時に赤棒だけに注意を集中できるので安心です。
スタンバイスイッチをオンにしてヒーターが温まるのを待ち、再び“五感をフル回転させながら”パワースイッチをオン。目と耳と鼻を総動員してアンプの様子を見守ります。異常なし! マニュアルのチェックリストに従って各部の電圧を測っていきます。いちばん高電圧のところにテスターの赤棒を当てるとき、緊張が最高潮に達します。設計値は914V。こんな高電圧を測定した経験は今までありません。問題なし! よかった! 再度気持ちを落ち着けてから、余計なところに触れないよう十分に注意しながら測定を続けます。すべて問題ないことを無事に確認できました。マニュアルに「ここまでくればひと安心」と書いてあるのが嬉しいですね。まさに、ひと安心です。
ここでまた電源を切り、底板をネジ止めし、アンプを起こします。スピーカをつないでハムバランサの調整です。ほぼ中点付近で綺麗にハム音が消えてくれました。セルフバイアスのアンプですので、調整箇所はこれだけです。ハムバランサの調整も、天板に少し顔を出しているVRの軸をマイナスドライバで回せばよいのでたいへん助かります(底板を取り外して、高電圧のかかるシャーシ内部を触る必要がありません)。
CDをつないで少しだけ音出ししてみます。いい音で鳴ってくれました。やったぁー、一発で完成! これも、ザ・キット屋さんの素晴らしい組み立てマニュアルのおかげです。部品点数が非常に多く、配線も複雑ですが、マニュアルに従って段階ごとに組立て・配線・チェックをしていけば、問題なく完成させることができると思います。