現在、リビングで、主として大編成のオーケストラ曲を中音量で聴くために使用している 300Bpp アンプの紹介です。最近行なった改造や300B JJへの交換などについても説明しています。
エレキットの300Bシングルアンプを購入することになったのは、秋葉原に出かけた時にたまたま三栄無線が定休日だったから、といういきさつは以前に書きました。その後、別の機会に三栄無線でいくつかの真空管アンプを試聴することができました。プッシュプルアンプの音をぜひ聴いてみたいと思ったのです。
比較試聴したのは、店頭にあった「300Bシングル」、「2A3プッシュプル」、「300Bプッシュプル(カットコアトランス仕様)」の3台でした。ざわざわと人通りのある中での試聴ですから、細かいところまで聴き分けるのは難しいですが、同じプッシュプルでも300Bの方がはるかに音質が上だと感じました。オーケストラの楽器の定位、広い音場感、豊かでリアリティあふれる響き。すっかりこのアンプに魅せられました。店員さんのコメントでは、真空管の違いのほかに、トランスの違いも大きいとのことでした。
しかし、私にとってこの真空管アンプキットはやはり高価です。数年後には手に入れたいものだと願いつつ、その日は帰宅しました。
その後、鎌倉市に移転することになり、いろいろと不要なものをYahoo!オークションで売却することにしました。そのお金を、念願の300プッシュプルを購入する「足し」にしようと思ったのです。子供の頃に買ってもらったナショナルのBCLラジオ、祖父母の家の建て直しのときに物置部屋から出てきて貰い受けた古い真空管ラジオ(戦時中のものかもしれません。銘板に「ナナオラ 放送受信機 44型」とありました。木製筐体の曲線が見事です。いわゆる「再生式」回路のラジオで、長めのアンテナ線をつなぐとかすかに受信できました)などが高く売れました(数万円の単位です)。驚いたのは、子供の頃に数百円で買った真空管ラジオ回路図集の本で、何と1万円の値が付きました(驚いて落札した方に尋ねたところ、この種の本は今では手に入らず貴重なので、この値段で充分に見合うのだそうです)。

転居後、落ち着いてから、さぁアンプキットを買おうと思ったときのことです。インターネットで検索してみたところ、目に飛び込んできたのは「閉店しました」という告知を載せた三栄無線のサイトです。もっと残念だったのは、既に終わってしまった店じまいセールのページに、あの「300Bプッシュプル」が載っていたことです。あぁ、もっと早く買っておけばよかったのに...。
それから2年ほど経ったある日、時々チェックしていた三栄無線のサイトを見たとき、「300B P.P. ご希望の方はご連絡ください」というメッセージが目に飛び込んできました。復刻版の計画が持ち上がったようです。喜び勇んでさっそくメールしたところ、トランスの用意ができ次第すぐに連絡しますとの返事でした。ご存知のとおり、三栄無線が閉店した直接の理由は、「タンゴ」ブランドのトランスの製造元である平田製作所が廃業したことです。その後、三栄無線では、代わりのトランスを作れるところを探していたようですが、ようやく見付かったんでしょうね。以前と同じ仕様のカットコアトランスを特注で製作してもらい、シャーシの在庫分だけは300Pppを再販売してくれたのだと想像します(現在、そのメッセージは表示されていませんから、おそらく「完売」したのでしょう)。
一度はあきらめた、あの念願の300Bプッシュプルがいよいよ手に入ります。製作する楽しさ、そして何よりも、耳に残っているあの響きを満喫することができます。楽しみ、楽しみ。
三栄無線のキットは、10年以上前ですが6B4Gシングルを以前にも作ったことがあるので、説明書などの雰囲気を懐かしく思いました。ザ・キット屋やエレキットの説明書ほど詳細ではありませんが、必要なことはきちんと書かれています。それに、手書きなんでしょうね、あの職人芸のような実体配線図が見事です。あと、完成後の配線の写真をカラープリントしたものも入っていました。
ちょうど1週間ほど仕事が切れる時期があったので、さっそく製作に取り掛かりました。機構部品の取り付け、配線、CRパーツの取り付けと作業を進めます。さすがにプッシュプルは部品点数が多く、手間がかかりますね。CRの足が交錯する箇所には、エンパイヤチューブをかぶせます。
ちなみに回路構成は、初段が12AX7のパラ接続、2段目は12AU7による位相反転、3段目が12BH7Aによるカソードホロワドライブ、最後に300Bの出力段(固定バイアス)となっています(自分で回路図を見て解釈するのは私には無理なんですが、説明書にそう書いてあります)。カップリングコンデンサは2段目と3段目の間に400V 0.047μF(ごく普通のフィルムコンデンサが付属)が使われており、他は直結です。ヒータはすべて直流点灯となっています。
組み立てが終わり、配線チェックのあと、いよいよテストと調整です。電源を入れ各部の電圧をチェックしたところ、異常なしでした。プッシュプルは調整が面倒だとよく言われますが、キットの場合は説明書どおりにすればよいので、私はさほど面倒とは思いませんでした。まず300Bのバイアスを左右別々に調整します。次に、DCバランスを左右別々に調整します。ハムバランサ3つも調整します。三栄無線のアンプは、調整ボリュームがすべてシャーシ内部にあるので、完成後に再調整するときがちょっと面倒です(といっても、その当時私はこの方式しか知りませんでしたので、それが当然なのだと思っていましたが)。
キットに付属の真空管は、300Bがエレクトロ・ハーモニクス製、MT管はUSA製でした。
さぁ、いよいよ本格的な音出しです。音が出た瞬間、秋葉原で最初に聴いた思い出がよみがえりました。幅広い音場感、豊かな響き、素晴らしいです。ただ、弦楽器の響きがやや硬いようです。これが「三極管はプッシュプルよりシングルが良い」と言われる所以かなと思いました。
でも、何週間かして、300Bのエージングが進むと、弦楽器(特にバイオリン)の音にもずっとやわらかさや温かみや艶がでてきて、満足できるようになりました。真空管というのは、何か生き物のようですね。
今年(2004年)になって、このアンプの音質をさらに改善することに関心が向くようになりました。コンデンサを変えると音が変わるという話がありますので、自分でも試してみたくなったのです。小俣光之氏のページを見たことも、私を駆り立てました。
このアンプで使われている信号系のコンデンサは、入力ボリュームの直後にある250V 0.1μF、初段12AX7のカソードのパスコン(16V 100μF)、二段目(位相反転)のグリッドからアースに接続されている250V 0.47μF、そして二段目と三段目をつなぐカップリングコンデンサ(400V 0.047μF。片Chあたり2本で合計4本)です。
カップリングコンデンサには、前述の小俣氏のページに載っていた「ビタミンQ」を使おうかと思いましたが、高価なので躊躇していました。そんなとき、東一電機のコンデンサのことを知り、音も良いという感想をWebに載せている人もいましたので、それを購入することにしました(0.1μと0.047μ)。このときの購入先はテクニカルサンヨーの通販です。たまたま10% OFFの特価セール中だったのでラッキーでした。そのほか、若松通商の通販でも購入できます。
他の2種類のコンデンサは、Yahoo!オークションに出品していたオーディオパーツ屋さんから購入しました。スプラグの銀タンタル100μと、スプラグのフィルムコン0.47μを安価に入手できました。
さて、パーツを交換した後、どんな結果になるかドキドキしながら音出しです。劇的な変化というよりは、長く聴いていくうちにじわじわと効果を実感できたように思います。楽器の表現が豊かでリアルになったなぁと感じる瞬間が度々ありました。また、一番大きな変化は、低域のパワーとリアリティが増したことです。右側から響いてくるコントラバスが、今までよりぐっと存在感を増した感じでした。
今回の改造に要した費用は\4000ほどでしたが、その効果と満足感からすると「安く済んだ!」という感想です。コンデンサの品質は音質にかなり影響するんですね。真空管アンプの専門家や愛好家の方々の話が本当であることを体験できました。
私自身のオーディオ熱が高まっているこの時期、サンバレー「ザ・キット屋」の力作、SV-91Bという300Bシングルアンプキットの製作記事が「管球王国」誌のVol.32(2004年春号)に掲載されるというので、さっそくその雑誌を入手しました。記事を読むと、なかなか作り応えのあるキットだなぁという印象を受けました。WE製の300BとサンバレーオリジナルのPrime Tubes 300Bの個性の違いも書かれていて、興味深く読みました。このキット、大人気だそうですね。
実は、この号で私がもう1つ大いに関心をそそられたのは、上杉佳郎氏の 300B プッシュプル・モノーラルパワーアンプ TAP25 の記事でした。このアンプのパーツ一式の頒布を申し込もうかどうかと、何週間も真剣に悩んだほどです。でも、特注シャーシに、タムラの特注トランス、CR類も特注ということで、高価なんですよね(真空管なしのパーツ一式で\220,000。ちなみに、既に申し込み期限を過ぎています)。コンパクトなシャーシレイアウトなのに、素人でも美しく配線できるように細部まで配慮が行き届いていることに感心させられました。いかにも良い音を出してくれそうじゃないですか。それに、モノラルアンプならでは高いセパレーション特性から生まれる音の良さを上杉氏が力説しておられることにも惹きつけられました。しかし、結局はTAP25パーツ一式の購入はあきらめて、ザ・キット屋の SV-2 (2003) を買うことにしたんですが、この記事は、私の300Bppアンプをさらに改造する上で参考にさせていただきました。
まずは、スタンバイスイッチの増設です。
これは、メインスイッチとは別にB電源をON/OFFするスイッチで、SV-2 (2003) にも設置されています。少し前から、300Bのヒーターのエージングをできるようにするためにその種のスイッチを付けたいと思っていたのですが、素人ならではの壁がありました。私の300BppのB電源はAC 330Vのトランス巻線から取られています。しかし、通販で購入できる大型トグルスイッチの耐圧はAC 250V10A/125V20Aです。流れる電流は少ないとはいえ、この耐圧で大丈夫なのだろうかと不安だったわけです。そこで、TAP25のパーツリストからスイッチの型番を確認し、メーカーのサイトで仕様を調べると「125V 15A」でした。何だ、普通のスイッチで大丈夫なんですね。それから、スイッチを入れる位置が、整流用のブリッジダイオードの「−端子」と「アース」の間というのも、そのまま使わせていただきました。
上杉氏のTAP25にはユニークな機能がもう1つあって、NFBのオン/オフを切り替えるスイッチが付いているんです。しかも、単純にNFBをオフにするだけではオンのときと音量差が生じてしまうので、それを補正する回路まで付けてあります。試聴結果の説明は、「NF-OFFの場合は、カマボコ型の周波数特性になるためか、中音域の密度がぐっと濃くなり、ヴォーカルが眼前で歌っているかのごとく、音楽的に生々しく迫ってきます。これはヴォーカルファンにとってはたまらない魅力といってよいでしょう」となっています。
それで、私の300Bppにも、この種のスイッチを増設することにしました(考えてみたら、以前に製作したエレキットの300Bシングルにも、私の工夫としてこの種のスイッチを付けていたんですよね。このページを書いていて思い出しました)。もっとも、NFBオンとオフでの音量差をなくす工夫は省略しました。それと、チャンネルセパレーションに悪影響が出ることを恐れて、6Pスイッチではなく、左右を独立させて3Pスイッチ2個を使うことにしました。
改造の結果は上々です(このページの先頭に載せた写真は「改造後」のもので、増設した3つのトグルスイッチが前面パネルに写っています)。
まず、B電源をオフにするスイッチは、新しく購入した300Bのヒーターをエージングするときに活用しています。普段の電源オンのときにも使うとよいのでしょうが、ヒーターをオンにしてしばらくしてからB電源をオンにすると、なぜか真空管がパッと明るく光ります。かえって良くないような気がして、今のところB電源のスイッチは常時オンで使っています(SV-2 Ver.2003 のスイッチではそのようなことはないんですが、どこが違うんでしょうね)。
我が家で“ボーカルモード”と呼び習わしている「NFBオフ」のときの音も、期待通りでした。私はボーカルをあまり聴きませんが、妻はボーカルファンなので、このモードが大のお気に入りです。たしかに、歌い手がぐっと前に出てくる感じで、臨場感が増します。
上杉氏のTAP25の購入をあきらめたことから、現在持っている三栄無線の300Bppの音を少しでも良くしようといる気持ちが高まりました。以前からJJ製の300Bに興味がありましたし、もしTAP25のパーツセットを購入したとしたら、自分で購入する300BはJJにしようと思ってもいましたので、思い切って購入することにしました。
いくつかの通販サイトを調べてみたところ、2004年6月の時点では300B/JJを日本の店で購入すると、マッチド・ペア(MP)で\3.5万程度でした。それに対して、アメリカにある BOI AudioWorks という店では、300B/JJ の MP が $214 ということでした。為替レートにもよりますが、1$=\110で換算するとMPが\23,540で買えることになります。このサイト(日本語になっています)のFAQを調べると、国際速達小包 (EMS) で発送した場合の送料は $20〜$30 とのことですので、2ペア購入するとしたら、送料を加算しても、日本の通販で買うより安く上がりそうです。そこで、この会社に注文することにしました。
届いた300B/JJは、動作確認のために軽く音出しした後、ヒーターのエージングを行ないました。先日の改造で増設したスイッチが、ここで役立ったわけです。
さて、最も関心のある音の傾向ですが、これまで使っていたエレクトロ・ハーモニクスの音を「堅実で、しっかりした音」と表現するとすれば、JJの方は「やわらかいが、中低域の迫力も充分で、音楽の表現力が豊か」といったところだと思います。「管球王国」誌 Vol.20 に掲載されている各社300Bの比較試聴の記事でも、JJの300Bに対して好ましい論評が載せられていますが、その評価通りの音を聴くことができました。
実は、その後、ザ・キット屋から、このアンプで使用するMT管3種類合計6本を購入しました。すべて Ei Elite 製です。キットに付属のUSA管に比べて、ダイナミックさや迫力を保ちながらも、耳に心地よいやわらかさ、まろやかさが加わったようで、なかなか満足です。
私の“オーディオ熱”の波もそろそろ下降気味で、今は“HP制作熱”の方が高まってきているようです。当分の間は、この状態の 300Bpp アンプで音楽を楽しみたいと思っています。
(公開: 2004/8/30)