このアンプは現在手元にありませんが、私が初めて製作した本格的な真空管アンプということで、思い出深いものです。
今から16年ほど前、私が社会人になって数年たった頃、雑誌の広告か何かでCDケースサイズの真空管アンプキットが紹介されていました。おそらくエレキットだったと思います。球は6BM8です。
真空管は、確か小学校5年生のとき、真空管式の短波ラジオのキットを買ってもらって製作した経験があります。購入した店は、確か科学教材社だったでしょうか。インターネットで検索してみると、ありました、ありました(科学教材社のホームページ)、今でもラジオキットを販売しているんですね。
そんな懐かしい気持ちも手伝って、本格的な真空管アンプを作ってみたくなりました。雑誌の広告を見ると、秋葉原の三栄無線というところでいろいろなキットが売られています。10万円の予算で買えるものとしては、シングルアンプになります。単純に「出力が大きいほうがいいだろう」と考えて、KT88シングルを選んでみました。いずれにしても、試聴させてもらってからがよいと思って、秋葉原に出かけました(子供の頃から通い慣れた町です)。
三栄無線の店頭には、人だかりができていて、皆熱心に弦楽四重奏に聴き入っています。その当時の私は、クラシック音楽をそれほどたくさん聴くわけでもなく、どちらかというと交響曲などを好んでいました。なかなか割って入る機会がありませんでしたが、曲が途切れたとき、KT88シングルの試聴をリクエストしました。音質の違いなどはよく分かりませんでしたが、とにかく聴いてみました。お店の人は「クラシックならこっちがお勧めだよ」と言って、6B4Gシングルアンプも聴かせてくれました。やはりよく分かりませんでしたが、何となく弦楽器の響きが良いように思いました。KT88シングルの出力が8Wであるのに対して6B4Gは3.5Wでしたので、「交響曲なんかはどうですか?」と尋ねると、メンデルスゾーンのイタリア交響曲をかけてくれました。けっこう力強く鳴っていました。「真空管アンプ出力はその数字の10倍くらいの半導体アンプと同じ能力があるんだ」などと話してくれました。
といったいきさつで、その日は6B4Gシングルのアンプキットを購入して帰りました。ご存知のとおり、6B4Gという球は、有名な2A3の親戚のような球で、ヒーター電圧が6Vです。
少し後の休日、朝からキットの製作に取り掛かりました。ずいぶん前のことなので、詳細は忘れてしまいましたが、とにかく夢中で組み立て、夢中で半田付けしました。子供の頃読んでいた「初歩のラジオ」誌や「ラジオの製作」誌で、真空管アンプはきれいに配線することが大切だと読んだのを覚えていましたので、なるべく美しい配線を心がけました。
今から思うと、よくできたなぁと関心するのですが、その日の夜には完成して、音出しまでしていました。まだ若くて気力や体力が充実していましたし、学生時代にもたくさんの電子工作をして慣れていたからこそ、1日で作り上げることができたのだと思います。それにしても、初めて自分で作った真空管アンプの音を聴いて、とても感激したのを覚えています。このとき以来、オーディオを本格的に趣味にするようになり、現在に至っています。
10年以上使った後、まだ真空管のヒーターが切れることもなく(その頃は使用時間が今ほど長くありませんでした)、問題なくいい音を出していましたが、他のアンプを製作した関係で置き場所がなくなり、このアンプはオークションで売却することにしました。
落札価格が \49,000 まで上がったのには、正直言って驚きました。落札してくださったのは神戸市の男性でしたが、送り先がビルの一室で、喫茶店か何かの名前が宛先になっていました。2001年7月のことです。今でも、その喫茶店で、真空管らしい、やわらかくて表現力豊かな音を響かせていることでしょう...。
おまけ:
オークションに出品するときに撮影したシャーシ内部の写真です。裏ブタを開けてみて驚いたのですが、思いのほかしっかりと綺麗に配線できていました。
(公開: 2004/8/30)