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2008/7/28 - 最近の驚いたこと2つ何かと忙しく過ごしているうちに、前回の雑記帳の更新から2か月も経ってしまいました。NS工房で販売している管球アンプの改良や、データ測定、徹底分析などをしていたのですが、いろいろと収穫の多い時期でした。 ファインメット211®アンプのステレオ機「NS-211S」、従来型トランスを搭載した211/845コンパチブル・アンプ「NS-211T」も、廉価版とはいえ、たいへんコストパフォーマンスの高い製品にグレードアップできました。実は、NS-211Tは、あるお客様の「求めている音」をお聞きしている中で誕生した企画なんです。20万円台と30万円台は「気に入れば購入するお客様」と「気に入っても購入を断念せざるを得ないお客様」が分かれる境目になると気付かされました。10万円台と20万円台も(いろいろな意味で)境目になりますよね? 今日の記事では「10万円台」の企画もご紹介します。 このステレオ機 2機種については、管球王国誌の最新号(2008年夏/Vol.49)に試聴記事が掲載されます。広告代理店から見本誌をいただき、一足先に目を通したところ、非常に中身の濃い記事ですね! わずか1ページの限られた文字数に2機種(実質上は“3機種”)の解説と試聴感を載せるわけですから、評論家の先生の文章力には脱帽です。特に試聴感の一つ一つの言葉には沢山の思いが込められていて、読者としては“行間を読む”ような姿勢が必要だなぁ、と感じました。開発者としても、たいへん参考になる試聴記事を書いていただいたことに深く感謝しております。 ファインメット®211アンプのモノラル機「NS-211FM」のほうも、測定データと聴感上の印象の両面で、これまでで最高と思える品質までグレードアップできました。このアンプにGE製VT4C軍用NOS管を挿して聴くと、見事な臨場感、繊細かつ生々しい表現力、圧倒されるような迫力に加えて、なんとも心地よい上品な音を堪能できます。「一生もののアンプ」として、ぜひ皆さまにご検討いただきたいと願っております。 管球王国誌の試聴記事を読むと分かりますが、管球アンプを愛好する皆さんの多くは、845の音に慣れておられて、一般的な845アンプが鳴らす楽器の音や演奏会場の空気感にリアリティをお感じになるようですね。その反面、出力管に211を採用した従来の市販パワーアンプ(大まかに'80〜'90年代以降に販売されたキット/完成品)は、せん越ながら、「211本来の音」を鳴らしていなかったのではなかろうかと私は感じています。管球王国誌をはじめとするオーディオ専門誌の試聴記事が『211らしからぬ音作り』といった趣旨の試聴感になるのには、そんな背景があるのかもしれません。あるいは、211という真空管に対する先入観や固定観念といったものも関係しているのでしょうか。 また、パワーアンプと組み合わせるスピーカーの高域が20〜40KHzあたりまでしか伸びていないと、211本来の音を鳴らしきれないのではないか、とも感じます。いわゆる「スーパーツイーター」を追加するなどして50KHz以上の音も空中に放出してやると、きっと211と845の印象が逆転すると思います。845アンプからは ほんのり“845の色”に染まった音が聴こえ、211の実力を最大限に活かして設計された211アンプからは ほとんど無色透明な音が聴こえます。薄味なので、どんなジャンルの音楽でも、ソロ演奏から小編成や大編成、フルオーケストラに至るまでリアルに再現できる「オールラウンド・アンプ」と言ってよいでしょう。オールラウンドのアンプなどない! とお考えのオーディオ愛好家の皆さまからは呆れられてしまいそうな発言ですが、薄味でクセのない(強い個性のない)音が持ち味の211無帰還シングルをどうぞお聴きになってみてください。目から鱗[うろこ]が落ちる体験をできること請け合いです。もっとも、その音が好みに合うかどうかは別問題ですが…。 前置きが長くなってしまいました。本題に進んで、この2か月間の成果と言いますか「驚いたこと2つ」をご紹介します 驚愕のサウンド! ― ファインメット®搭載EL34無帰還シングル ファインメット®211アンプの「徹底分析」のページを書くに当たって、管球王国誌に掲載された過去の“上杉アンプ”の中からシングル・パワーアンプの製作記事をいくつか拾い読みしました。すると、「EL34の3極管接続化によるプレート特性/Ep-Ip特性は、すこぶる優秀です」という解説に目が留まりました。ちなみに「プレート特性が優秀」とは、別の言葉では「直線性が良い」ということで、入力信号レベルに対する出力信号レベルの比例の度合いが正確であることを意味します。この比例の度合いが全音域や特定の音域で微妙に異なっているような真空管は、それが1つの個性となって、その出力管独特の味わい深い音が鳴ると考えられます。 「徹底分析」では、211をドライブするために、プレート特性が優秀なEL34の三結を利用したのは理屈の上からも正解だったことを、測定データから確認できました。初段からの情報を可能な限り正確に増幅して出力段に送り込むのがドライバー段の「役割」なので、直線性の良いEL34(三結)は適任というわけです。 それなら、EL34を出力管にしてファインメット®でパワーアンプを組んだら、リアルな音が鳴るんじゃないかなぁ?
これが切っ掛けでした。「面白そうなことがあるとすぐに試したくなる」という、いつもの私のクセが出て、参考書を見ながら回路を設計し、突貫工事で組み立てたのが右の写真にあるアンプです。 トランスはすべてノグチトランスのオリジナル・トランスで、出力トランスはファインメット®の6Wコア品(FM-6WS)、チョークトランスもファインメット®(FMC-0519H)、電源トランスはごく標準的なPMC-170Mです。トランスの角穴だけ開けてあるシャーシも一緒に購入しました(これがあると、シャーシ加工の時間をずいぶん短縮できますね)。 管球アンプの自作愛好家の間では、ファインメット®のトランスは解像度が高いという評価が既に固まっているそうです。そして、NS-211FMの開発過程で、「解像度が高く、情報量が多い」ということを我が家でも実際に体験してきました。その特長を生かすには「情報量の多い増幅回路を採用するのが鉄則」と、私は考えるようになりました。 真空管アンプの世界に「情報量」という言葉は似つかわしくないかもしれませんが、このような設計ポリシーを念頭に置いてアンプ回路や使用真空管を選定すると、ファインメット®・コアのメリットを最大限に活用できます。 そこで、初段は6SN7をパラ接続で使うことにしました。増幅度は低いですが、相互コンダクタンス(gm)が高い球です。gm値が高いとは、グリッド電圧の変化に対するプレート電流の変化が大きいことを意味しますので、入力信号の少しの変化にも敏感に追従する「解像度が高く、情報量の多い」増幅をしてくれることを期待できます もちろん、厳密にはもっと多くの要因が関係していると思います。だれか、真空管を「現代の視点」から分析・研究してくれないでしょうかね。オペアンプICであれば、入力信号の変化に対する出力信号の変化の速さを表すデータ値「スルーレート(V/μs」が高い」≒「情報処理能力が高い」と考えてよいと思いますので、真空管の「スルーレート」に当たるものを測定する基準や技法を確立すればよいのでしょうか・・・ そして、出力段はEL34を三極管結合で使用し、無帰還アンプとして製作しました。クリップ時の出力は期待通りの5.5Wに仕上がりましたが、その際の入力電圧が1.5Vも必要な「低感度パワーアンプ」になってしまったため(覚悟していたことです)、ちょっと裏ワザを使って対処しました。詳細は後日また。 さて本題の「驚いたこと」ですが、それはこのアンプの鳴らす音です。なんと、ファインメット®211アンプと同じ音が聴こえてきたんです! 繊細で、滑らかで、無色透明で、迫力満点で、どんなジャンルの音楽でもリアルに鳴らします。とても6Wの小型出力トランスを使っているとは思えません。最初に聴いたときのスピーカーはリビングのサンスイ製SP-1000で、能率は88dB/mしかありません。近所迷惑覚悟で、短時間だけ音量をドンと上げてみました。耳が痛くなるほどの音量になっても歪んだり割れたりすることなく、見事なフルオーケストラを奏でていました。
なぜ「同じ音」なのか? 歪率特性をグラフ化すると、見事な直線になりました。211無帰還シングルと同じですね。低域の歪率だけ高い位置を推移しています。出力トランスが小型であるのが原因か、初段も無帰還の「オール無帰還」が原因か、いくつか試行錯誤して改善を目指しましたが、うまくいきませんでした。聴感上は低域の力感は十分すぎるほどで、歪みっぽいことなどまったくありませんので、このままで「よし」としましょう。歪み成分をオシロスコープで観察すると、最大出力付近の4Wあたりまで、3つの周波数とも綺麗なサイン・カーブが見えます。それを超えると、波形が少しずつ乱れていきます。つまり、2次歪みが大半なので、1KHzの1W時の歪率が2%を超えていても、響きの豊かな211無帰還シングルと同じ傾向の音が出るのだと思います。周波数特性は 29Hz〜25KHz(-3dB)ですが、信じられないほどよく響くナチュラルな低域と、どこまでも澄みわたるような透明度の高い高域を楽しめます。 これは凄いことですよね! 私はこのようなリアルで迫力満点で、しかも美しく繊細な音は、211無帰還シングルでなければ鳴らせないと思っていました。ところが、1ペア数千円から1万円程度で買える、あの細身のEL34(6CA7)と、古い電圧増幅管6SN7と、いちばん小型のファインメット®製コアで作られたトランス類を組み合わせたら、211無帰還に肉薄する音が鳴るとは! しかも、発熱量が大幅に減りますから、夏場でも部屋の温度を“無駄に上昇させずに”済みます。 結構いい音が出るんじゃないかなと期待してはいましたが、期待を大きく上回る音に、小躍りしたくなるような感動を覚えました。もちろん、厳密に聴き比べると差が出ますが、“セコイアの背比べ”にもう1台のアンプが名乗りを上げたことに間違いはありません。真空管のブランドをいくつか試したところ、EL34がSvetlana(Sロゴ)、6SN7がSovtekのとき、いちばん好ましい音と感じました。ユーザーの好みに応じて、いろいろなブランドに挿し換えるのもまったく自由ですから(初段も出力段も自己バイアスなので、挿し換えても調整不要)、いろいろと遊べるアンプです。 朗報です。これを製品化しない手はありませんよね。既に製品化に向けて準備を始めています。シャーシはオーディオウィンズのオリジナルシャーシでいちばん小型のW350を使います。幅35cm、奥行き23cmです。キットを主体にします(予価 \128,000)。入力VR部分と「裏ワザ」部分、それにヒーターの整流回路(電圧可変の三端子レギュレータを採用)のみ完成基板として添付し、それ以外の大部分は手配線で組み立てていただきます。完成品も販売します(予価 \168,000)。もちろん「推奨真空管つき」の価格です。 オール・ファインメット®≠フアンプは、自分で回路設計をする自作マニアの皆さんがいろいろと試行錯誤して製作しているのが現状だと思います。キットであれば、そしてこの価格であれば、試してみたいという自作派の皆さんがきっとおられると思います。秋には発売できそうです。ファインメット®の感動を、さらに多くの皆さまに提供できること、本当に楽しみです。ご期待ください。 レコードの情報量に驚嘆! この「驚き」の体験をしたのち、NS-211FMに関心をお持ちのお客様から電話で問い合わせがありました。結婚を機にオーディオ機器はすべて手放したが、来年が定年なのでまたレコードを聴きたいとのお話でした。1000枚近いレコードは、保管箱に入れて大切にしまってあるそうです。アンプをいちばん重視すると言っておられました(私も同じです)。NS-3FMがフォノイコ内蔵でないことを残念がっておられました。 レコード再生は装置類が大掛かりになりますし、コストもかさみますので、その世界に足を踏み入れるのを私は躊躇していました。現状のシステムであれば、CDでも充分に滑らかで美しい音と響きを楽しめる、というのも理由の1つです。 旧バージョンNS-3を試聴後にご購入いただいて以来なにかと懇意にしてくださっているお客様にファインメット®211アンプ「NS-211FM」をお届けしたとき、「今度はフォノアンプを作ってくださいよ。シンプルなのがいちばんですから」と言われたのですが、私にはそのスキルがありませんので、と、やはり躊躇していました。真空管で作ることばかり考えていたせいもありますが。 そんな中、電話をいただいたお客様のために外付けのフォノアンプでコストパフォーマンスの高いものを探そうとインターネットから情報をピックアップしていたところ、オペアンプICを使うとシンプルなフォノアンプを自作できることを知りました。これなら私にも作れそうです。 オペアンプを利用したフォノアンプは、パーツを調達し、さっそく試作しました。そうそう、肝心のレコードプレーヤーも調達しないといけませんね。オーディオ誌の記事や広告を見ると、誰が買うんだろうと思うような(NS-211FMがとっても安価に見えるような)プレーヤーやカートリッジや昇圧トランスが並んでいます。よく利用する楽天市場で検索すると、ありました! お手頃価格の入門機が。DENON製で、MMカートリッジが付属し、MM専用のフォノアンプも内蔵しています。大特価2.7万円の通販で購入しました(定価は確か4.5万円ほど)。本格的にクラシックを聴くには、やはりMCカートリッジも必要だろうと考え、さらに検索すると、あるんですねぇ、お財布に優しい商品が。オーディオ・テクニカの1万円弱(定価はもう少し高価のはず)のカートリッジも購入しました。 考えてみたら、我が家にレコードは1枚もありません。オーディオウィンズさんで最近、コロムビアレコードから復刻販売されている「懐かしのレコード」を販売し始めたことを知っていましたので、EL34アンプ用のシャーシ加工と一緒にブラームスの交響曲第1番のレコードもお願いしました。それが届くのは少し先なので、アマゾンで「ドヴォルザーク 交響曲第9番新世界より/ノイマン指揮チェコフィル/1972年録音」も購入しました(→詳細・購入(Amazon))。これはすぐに届きますので。 内蔵MMフォノアンプ、標準添付のMMカートリッジ+自作フォノアンプ、ハイ・コストパフォーマンスMCカートリッジ+自作フォノアンプの順に聴いていきました。さすがに内蔵のフォノアンプからファインメット®211アンプにつないで鳴らすと、情報量が足りない感じでしたが、自作フォノアンプではMMでも結構いい音でした。翌日だったでしょうか、MCカートリッジが届いたのでさっそく聴いたら・・・ これが「驚いたこと」の2つめです。 レコードには実に沢山の情報が収録されているんですね! もちろん優秀録音として表彰された名盤ということもありますが、録音がいまひとつのCDより はるかに臨場感があります。ティンパニやコントラバスの低音が実に自然な響きで聴こえるのも驚きました。管楽器のバリバリいう音、木管の柔らかな響き、弦楽器群の滑らかな音や きしみをあげる強奏部の音。どれも非常に生々しく聴こえてきました。ダイナミックレンジが予想以上に広いことも意外な驚きでした。 そのようなわけで、このフォノアンプ、NS-3(在庫限り) / NS-3FM の購入時オプションとして製品化することに決めました。 管球プリアンプに半導体製のフォノイコを内蔵させるなど「もってのほか」・・・、でしょうかね? でも、低レベルの信号を正確に周波数補正して低ノイズ/低歪率で数百倍〜数千倍に増幅するというフォノイコの役割を考えると、オーディオ用のオペアンプで作るのも決して邪道ではないかな、と私は思うんです。まぁ適材適所と言えば聞こえがいいですが、レコードの全盛期には真空管を使うしか方法がなかったわけで、増幅度を上げるとノイズが大きくなりすぎるのでMCカートリッジには昇圧トランスを使う方法が主流になったんですよね? しかし、今の時代は、いろいろなデバイスを使う選択肢があります。カートリッジ、昇圧トランス、単体フォノアンプのいろいろな個性を組み合わせながら、自分の求めている音を探し出すというのも、趣味として大いに楽しめると思います。ただ、資金と時間が限られた中で、何百枚ものレコードを次々に聴きなおして「懐かしいあの音楽、あの響きにもう一度浸りたい」という往年のオーディオ愛好家/音楽愛好家の皆さんが定年を迎える時代、コストパフォーマンスの高いフォノイコで手軽に、しかもクラシックやジャズをリアルに鳴らす高品位の音でレコードを楽しめるような製品を世に出すのは、筋が通ると思います。だからこそ、フォノイコ内蔵でリーズナブルな価格のレコードプレーヤーや、レコードの音をA/D変換してUSB経由でパソコンに送り込む機能の付いたレコードプレーヤーがオーディオ機器メーカーから販売されているわけでして・・・ 個性の強いオーディオ装置を組み合わせる場合、どうしても相性の良し悪しという問題に悩まされます。それを避けるには、無色透明なフォノアンプ、昇圧トランスなしでMCカートリッジから最大限の情報量をピックアップして増幅できるフォノアンプが最適だと私は思います。そんな考えから、すっかり“ゼータク耳”になった私たち夫婦が聴いて「この音は素晴らしい」と感じることのできたフォノイコをNS-3に搭載することに決めた次第です。 そのお客様にフォノイコ内蔵予定のことをお伝えしたところ、近いうちに試聴に来たいとのことでした。自宅 兼 作業場なので試聴には不向きな場所ですが、無造作に置いただけの貧弱な聴取環境でも、NSのおかげで幅広い音場を楽しめることを体験していただこうと思います。ちなみに、ステレオ録音のレコードでは、NSレベルを適切に調整すると、非常に奥行きの深い音場を楽しめることにも気付きました。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2008/5/26 - 貴重なアドバイス
経験豊富な先輩のアドバイスには耳を傾ける必要がありますね! 1か月ほど前、私のオーディオ・ライフの恩師・米国アラバマ大学の高橋先生から久しぶりにメールをいただきました。ファインメット®211アンプ「NS-211FM」の製品化を祝福するメッセージとともに、高域特性が悪すぎるのは測定ミスか、回路のどこかに問題があるに違いないとのご指摘がありました。 ちょうど同じ頃、『管球王国』誌の2008年夏号(Vol.48)の見本誌も届き、NS-211FMがJBLの超弩級大型スピーカー「Project EVEREST DD66000」を朗々と鳴らしたとの内容に驚き、音質面でも高い評価をいただいたので恐縮していました。出力わずか8W、モノラル1台 12.2Kgの小兵ながら、馬力は充分とのお墨付きをいただいた形です。そんなこともあり「このアンプは数値データは悪くても音質は十分に高いので、このままでよいと思うのですが…」という返信を、最初のうちは何回かお送りしていました。 しかも、その時点でのNS-211FMにスーパーツイーター(120KHzまで再生可能なもの)を接続すると、それまでよりはるかに透明感のある、高域までよく伸びた音、リアリティにいっそう磨きのかかった音が鳴ることも分かりましたので、私はますます「今のままでよいと思います」と“言い張って”しまいました。全段無帰還、オーバーオールでも無帰還なので、周波数特性の高域が伸びないのは普通のことと思い込んでいたのです。ただ、高橋先生のお作りになった211無帰還シングル・アンプは、B電圧が1050Vでタンゴの最高級の出力トランスを搭載し、高域が40KHzまでフラット、200KHzでも10dBしか落ちていないという文面には驚きました。無帰還でも周波数特性がこんなに良いとは、なぜ??? そんなやり取りをしていた最初の頃は、注文品の製作スケジュールが詰まっていたこともあり、回路の問題点の調査や改良まで気が回らなかったのですが、仕事にひと区切りついたとき、頭を冷やして高域が落ちている原因を調べてみました。すると、意外なところに原因が見つかり、そこを改良すると「15Hz〜33kHz(-3dB)」という周波数特性が実現し、たいそう驚きました。そして、大先輩にたてついた自分が恥ずかしくなりました。無知とは怖ろしいものです… それと同じころ、ロシア製Tung-SolブランドのEL34が手に入りましたので、ドライバー管を挿し換えてみたところ、またまたビックリ仰天。音場がさっと左右に広がり、いっそう透明感のある音が鳴り出したんです。いったいこのアンプはどこまで“進化”するのだろう? 211無帰還シングルにファインメット®製コアのトランス類をフル搭載し「これで頂上だ」と思っていたのに、実は頂上などないのではないか… そう考えると一種の恐怖感すら覚えました。
こうなると、ドライバー段に局部帰還(ローカルNFB)を掛けてみなさいとのアドバイスも試さずにいられません。さっそく右の写真のような“テスト環境”を作り、最適なNFB抵抗値を探してみました。すると、音質にさらに磨きのかかる抵抗値が見つかりました。周波数特性は35KHzで-3dBまでと、高域が少し伸びただけですが、音質や表現力の改善はもっと大きいと感じました。 こうなると、私の好奇心がむくむくと沸きあがります。「このアンプの音はなぜこれほどまで魅力的なのだろう」と、つくづく不思議に思うようになり、アンプの数値データを徹底分析することにしました。その結果は、近日中に私設HP「真空管アンプ自作の醍醐味」で公開する予定です。お楽しみに! これと同じ時期に別の先輩からも意外な盲点を突いたアドバイスをいただきましたので、その点もさっそく改善し、単に音が良いだけでなく、オーディオ製品として恥ずかしくない水準のパワーアンプに改良することができました。 ちなみに、改良後のアンプでは、「シンバルの音が丸くなる」という管球王国誌の試聴感が改善されました。試聴記事で使われたジャズCDを鳴らすと小気味良い「シャン、シャン」「チン、チン」というハイハット・シンバルの音が響きます。 5/21発売の『オーディオ・アクセサリー』誌 2008年夏号(vol.129)にも試聴記事を載せていただけました。井上千岳先生は「直熱管としては異例に駆動力が高い」と驚いておられるご様子。ただ、ヴォーカルに「もうひとつふくよかさが欲しい」と書いておられました。 先生が「個人的には…」と書き添えておられるとおり、これは「好みの問題」と私も思います。典型的な300Bシングルなどの音に比べると「あっさりしている」と感じる方々がおられるだろうと予想がつきます。でも、薄味の料理って、素材の持ち味を堪能できますよね? それと同じで、ファインメット®搭載211無帰還シングル・パワーアンプ「NS-211FM」は“薄味”が信条です。雑誌広告のキャッチコピーで「限りなく生の音に近いクセのない表現力が聴く者を虜[とりこ]にします」と謳っているとおり、コンサートホールで聴く生の音は、実は“薄味”なんです。少しだけ誇張された“コッテリ味”は短時間 聴くぶんには満足感があると思いますが、“薄味な”このアンプは一日中鳴らしても聴き疲れしないところが気に入っています。 あっ、それと、このアンプにフルレンジ・タイプのスピーカーを組み合わせると実力が発揮されません。ぜひとも2ウェイ以上で鳴らしてやってくださいませ。小口径のツイーターから再生される20KHz超の音波が「リアリティあふれる音」の鍵を握っているからです。
― 経験豊富な先輩のアドバイスには耳を傾けるべきである ― [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2008/3/7 - 真空管ステレオ・アンプのクロストーク対策真空管アンプなどのオーディオ機器を自作する際によく問題になる課題として「アースの配線が難しい」ということがあります。私も20代のころ、オペアンプを利用してマイク・アンプを自作したときにハム・ノイズが出て困った経験があります。 しかし、『情熱の真空管アンプ』という真空管アンプの設計・製作に関する解説書(→詳細・購入(Amazon)))を読んでからは、“筋道だてて考えるコツ”を理解できたため、アースの配線にだんだん上達することができました。 話が少し変わりますが、世間一般で常識のようにして行なわれている物事にも、実は“問題がある”という場合があります。例えば「エスカレーターに乗るときは片側を空ける」という習慣がそれに当たるかもしれません。これは、急ぐ人が歩いて上れるようにという親切心から始まった一種のマナーのように思えます。でも、よくよく考えてみると、エスカレーターは立ち止まって乗るように設計されていますから、「歩いて登る」ことや「駆け上る」ことは安全上“問題がある”というわけです。 スミマセン、前置きが長くなりました。何を書きたいのかと言いますと、真空管アンプを製作するときには「筋道だてて考える」ことが大切ということです。そうしないと、ステレオ構成のアンプを製作したときに、ハム・ノイズに悩まされたり、知らないうちにアンプ内部で左右チャンネル間のクロストークが発生してしまったり、という問題に直面するからです。 私が仕事にしている「NS工房」の名前の由来となった「ナチュラル・サウンド(NS)復元法」は、左右のスピーカーから出た音が聴く人の両耳に届くまでの間に発生するクロストークを解消することによって、音楽ソースが本来もっているステレオ感を正確に復元し、余韻やホールトーンなどの雰囲気感を容易に聴き取れるようにする手法です。これはつまり「ステレオ装置で音楽を再生するときにはチャンネル間クロストークをできるだけ減らすことが大切」ということを意味しています。しかし、アンプの内部で発生してしまったクロストークは、NS装置を利用しても解消できないのです。 「アースの配線」と「アンプ内部で発生するクロストーク」という一見なんの関係もないようなことが、実は密接に関連しあっているということを、この後ご紹介しようと思います。ここで書く内容はすべて、上記の『情熱の真空管アンプ』という解説書や、その著者のHPにある「クロストーク対策」というページを読んで私が学んだ内容です。
右の回路図をご覧ください。NS-211FMのドライバー段です。この図でオレンジ色の点線はプレート電流の流れを示しています。 ここで大切なのは「電流(信号)には必ず“行き”と“帰り”があり、ループを形成している」ということです。一般に、カソードの抵抗とコンデンサは「アースに落とす」という言い方をします。では、プレート抵抗経由で供給されたB電源の電流は、回路図のアース記号の後、どこを通って戻ってくるのでしょうか? ごく簡略化して言うと「アンプ回路全体のアース部分を通って戻ってくる」ということになります。もう少し詳しく言うと、アンプ回路の電源部にも「アースに落とした」箇所があるので、そこを通って「B2」として戻ってくるというわけです。
話を解りやすくするために、電源部も含めた回路図を書いてみます。 右図で水色の枠で囲んだ部分が、電源部でドライバー段のB電源「B2」を生成する回路の概略です。電圧降下抵抗「RB2」の後に接続する電解コンデンサ「CB2」は、一般に平滑用のコンデンサであると言われます。そのこと自体は間違っていません。しかし、オレンジ色の矢印で示したとおり、ドライバー段のプレート電流はこのコンデンサ「CB2」を通って1つの信号ループを形成していることに注目してください。つまり、この電解コンデンサは単にリップルを除去する平滑用であるだけでなく、ドライバー段で増幅された音楽信号の通り道にもなっているのです。 ここで思い出していただきたいのは、ステレオ構成の真空管パワーアンプの場合、このコンデンサ「CB2」はアンプの電源回路で1つだけであるのが通例という点です。ということは…、RチャンネルとLチャンネルの音楽信号が1つの同じコンデンサを通るということ…、になりますよね? えぇっ! と驚く皆さんが多いかもしれませんね。これではRとLの信号が混ざってしまうではないか! そう、そうなんです。でも、なぜかこのことを話題にするアンプ設計者はほとんどいません。 ただ、完全に混ざってしまうとしたらステレオとして立体的な音場が聴こえてくるはずがありませんので、信号がクロストークする程度はさほど多くないようです。そして、解説書によると、このようにして電源部でクロストークを起こすのは主に低音域だそうです。そして、電源部のチョークトランスの後に150Ω以上の抵抗を挟んでからLとRで電源部を分離し、各段にB電源を供給する「電圧降下+平滑回路」を2つ用意すれば、このクロストークをかなりの程度まで解消できるとのことです。もっと完全に分離するには、LとRで共用するのは整流回路までにして、チョークコイルを2つ使うという方法があります。実は、雑記帳2008/1/14でご紹介した、ファインメット®搭載211無帰還シングル・パワーアンプの貸出機(ステレオ構成)では、チョークコイルを2つ使用するという万全のクロストーク対策を電源部に施しました。 少しこみ入った説明になってしまいましたが、電源回路をL/Rの各チャンネルで共用するという「真空管アンプの設計・製作でほとんど常識的に行なわれていること」が、実は、筋道だてて考えると“問題あり”と言わざるを得ない設計技法なのです。 [ハムノイズ対策の基本 → 信号ループを最小に!] 前半でご紹介した解説書やWebページを読むとさらに詳しく書かれているのですが、アンプ回路にはこのような「信号ループ」が数多く含まれています。そしてハムノイズが発生する大きな原因の1つに「配線の都合で信号の流れるループの面積が大きくなり、それがアンテナのような働きをして電源トランスなどのノイズを拾ってしまう」というものがあります。ですから、信号ループが広い面積を占めないように、1つの信号ループを形成する配線はなるべく密着させるという方針で配線することが重要です。 上で紹介したドライバー段について考えてみてください。カソード抵抗とカソード・コンデンサのアースは、どこに接続するのが最善でしょうか? 信号ループを最小にするには、電源回路の「G2」の部分に接続するのがベストです。そして、B2 → ドライバー段 → G2 という配線をなるべく密着させると、信号ループが小さくなります。
そのような配線を意図して、私が「NS-211FM」で設計した電源回路のプリント基板には「B2+」と「G2-」というリード線の接続端子を用意しました。そしてアンプ回路とこの2つの接続端子をつなぐリード線を密着させて配線するようにしています。こうすれば、無用なハムノイズを防止できるからです。 [空中を伝ってのクロストーク] 前述の解説書の著者が「クロストーク対策」というページで公開している別のクロストークとして、空中を伝ってのクロストークというものがあります。これは、出力段の真空管の内部を高電圧で飛び交っている電子がガラス管の壁から飛び出し、初段管に飛び込むことにより発生するクロストークです。このクロストークは、主として高音域のセパレーションを悪化させる原因になるそうです。 それに対する対策として、私が趣味として、あるいは仕事で製作する真空管アンプでは、LチャンネルとRチャンネルの真空管の間に「防護壁」となるものを置くように工夫しています。例えば、2A3シングル・パワーアンプをステレオ構成で製作したときには左下の写真のようにトランスをシャーシ中央に配置して防護壁にしました。6L6プッシュプル・パワーアンプでは、出力トランスが大きかったので、右下の写真のように大きな防護壁になりました。
NS工房の新製品アンプ「NS-211FM」でトランス類を右側に集めて配置したのも、防護壁を意図してのことです。そして、たいへん興味深いことに、貸出用のステレオ構成のアンプを製作した後で簡単な実験をしてみたところ、出力管から飛び出した電子が初段管に飛び込むことによるクロストークが実際に音質に影響を与えていることを初めて耳で確認できました。下の写真のように、出力管211の脇に薄い銅板を立てると、音がスッとクリアになり、音場の広がりも増すことを耳で感じ取ることができたのです!
従来型のトランスを使ったステレオ・アンプで同様の実験をしたとき、同じように音の変化を聴き取れるかどうかはよく分かりません。もしかしたら、ファインメット®系トランス類をフル搭載して解像度が非常に高くなったアンプだからこそ、このような微小なクロストークを取り除くことによる音に変化を耳で感じ取ることができたのかもしれません。いずれにしても、非常に興味深い体験でした。 ちなみに、このステレオ構成のアンプ「NS-211S」は、正式にNS工房の製品として販売することにいたします。使用する電源トランスの電圧が少し高いため、出力は「11W + 11W」にアップできました。アンプ回路はモノラル機の「NS-211FM」と基本的に同じですので、音質の傾向も同じとお考えください。近日中に製品版1号機をご紹介できると思います。万全のクロストーク対策を施しますので、このステレオ機の音がモノラル機の音にどこまで近づけるか、たいへん興味あるところです。今のところ、モノラル機の音質レベルを200とすると、ステレオ機は170〜180くらいにはなりそうだと感じています(試聴用の貸出機を聴いて判断しました)。とすると、NS-211Sの価格 \328,000 は「お買い得!」になりそうですね。いずれにしても、一人でも多くの皆さまにこの素晴らしい音、“究極のナチュラル・サウンド”を体験していただきたいと願っています。モノラル機より割安感のあるステレオ機のご購入を検討していただければ幸いです。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2008/1/27 - 『管球王国』誌に試聴記事 − ファインメット®搭載211アンプ『管球王国』誌の2008年冬号(Vol.47)の見本誌が、昨日、広告代理店から届きました。正式な発売日は1/28(月)だそうです。 試聴記事は1ページで記事本文は800文字です。この限られた文字数で、評論家の高津修先生は「NS-3FM + NS-211FM」の特長を端的に要約して見事に論評してくださいました。記事の中から試聴感の部分だけ引用させていただきます。
NSオフでの音は、直熱三極送信管の持ち味が素直に活かされた たいへん好ましいものである。少し硬いがソノーラスで鮮やかな切れ込み。なによりも音楽に活気があり、溌溂としているのがいい。 ― 『管球王国』誌 Vol.47 p.32。
筆者註: ソノーラス=よく響く、朗々とした。 溌溂=はつらつ これを読んだとき、「そのように感じていただけて光栄です!」と言いたくなりました。音楽が活き活きとして聴こえるのは211無帰還シングルの元々の特長ですが、その長所がファインメット®系トランス類の搭載によっていっそう際立つようになりました。 「少し硬い」というのも当たっていると思います。このような試聴感を高津先生がお持ちになったのは、標準的な管球パワーアンプの「柔らかで温かい音」が、演奏会場で生演奏を聴くときの音よりも「穏やかで角の取れた音」である場合が多いからではないかと思います。それに対して、NS-211FMはリアリティ溢れる音で、例えばピアノの打鍵時の鋭い音や金管楽器のバリバリと炸裂する音などをそのままストレートに鳴らしますから「少し硬い」という印象になったのかもしれません。また、雑誌社での試聴では、一般家庭で聴く場合よりかなり大きい音量で試聴するのだそうです。その場合、「リアルな音」が演奏会場で聴くよりさらに大きな音で耳に届き「少し硬い」という印象につながったのかな、とも思います。 この「硬さ」については、本物らしい音を聴きたいのか、真空管の個性によって色付けされた音を聴きたいのかに応じて好みが分かれるかもしれません。とはいえ、一般家庭で常識的な範囲の音量で聴くのであれば「硬い」という印象より「豊かに響く心地よい音」という印象のほうが強いのではないかと私は感じています。
NSオンにするとわずかにハムノイズが増えた。しかし、うまくレベルを調整すると、心地よい空気の広がり、アコースティックな臨場感の向上が容易に聴き取れる。 ― 『管球王国』誌 Vol.47 p.32。
NS回路の効果を「容易に聴き取れる」と書いておられます。実は、ファインメット®211アンプで音楽を聴くと、NSオフでもかなり定位が明瞭で音場の広がりや奥行きがあります。それでも、NSオンにすると、空気感や臨場感がいっそう自然な感じで耳に届き、からだ全体が音楽に包まれるような気分に浸れます。これは、ファインメット®化によって非常に情報量が増し、解像度が高くなったために「従来の管球アンプでは耳に届かなかったような かすかな空気の震えや雰囲気感」までもが再生され、耳に届くようになったからだと私は理解しています。そして、NSオンにして初めて、そのかすかな「音にならないような音」が適切な位置から聴こえるように感じられて、高津先生の言葉にある「心地よい空気の広がり」という印象につながるのだと思います。 「NSオンにするとわずかにハムノイズが増えた」と記事に書いておられるのは、いかにも高津先生らしいと感じました。高津先生の試聴記事では、どのメーカーの製品であっても、気が付いたネガティブな面を鋭く指摘しておられることが多いからです。そして、NSオンでハムノイズが増えるのは、確かに事実です。ただ、スピーカーの能率が100dB/m以上であるとか、いつも非常に大音量で音楽をお聴きになるといったオーディオ環境でない限り、ハムノイズは耳に届かないと考えていただいてよいと思います。
真空管の音質とマルチチャンネルふうのリアリティを両方感得できる実に貴重な製品だ。なお、部屋の響きは抑え気味にするほうがよい。 ― 『管球王国』誌 Vol.47 p.32。
「真空管の音質」とは211無帰還シングルの、あの甘美な二次歪み(倍音成分)をたっぷり含んだ音や響きのことだと思います。そして、この雑記帳やNS-211FMの紹介ページでご説明しているとおり、このアンプセットの奏でる音楽は実にリアルです。どんなジャンルの音楽でも、そのジャンルの音楽として再生してくれます。このことを「マルチチャンネルふうのリアリティ」と表現しておられるのがたいへん興味深いと感じました。 マルチチャンネル化したオーディオシステムでは、音域を2つ以上に分割し、それぞれの音域を別々のアンプで増幅して別々のスピーカーを駆動します。その分だけ、どの周波数で分割するか、どの程度のクロスオーバーを持たせるかなど、色々な考慮点、調整点が増えるので使いこなしが難しいわけですが、各アンプが処理するべき情報量が減りますので、いわば各アンプが余裕を持って音楽信号を処理できることになります。こうして、いっそうリアリティのある音楽が再生されるんですね。 ところが、NS-3FM + NS-211FM というアンプセットでは、マルチチャンネル化しないでも「マルチチャンネルふう」の音楽が聴けるという感想を高津先生はお持ちになりました。これは、とりもなおさず、211(VT4C)という大型直熱三極管を無帰還シングルで動作させた場合の「情報処理能力の高さ」を示しています。そして、その「情報処理能力」を飛躍的に高めたのが、B電源の微小ノイズを極限まで除去し周波数特定を高品位にしたファインメット®製コアのチョークコイルとノイズフィルターです。さらに、そのB電源を利用して211無帰還シングル動作の出力段が元々の音楽ソースの波形を忠実に増幅し、しかも絶妙な二次歪みによって“美音化”を施してくれたものを、正確なエネルギー量を保持してスピーカーに伝達してくれるのがファインメット®製コアの出力トランスであるわけです(従来型コアの出力トランスでは小さい音ほどエネルギー量が減衰してしまう傾向があります)。 最後に「部屋の響きは抑え気味に」というアドバイスまで加えてくださったこと、本当に感謝したいと思います。そして、たいへん勉強になりました。NS装置を組み込んだオーディオ・システムでは、音楽ソースに元々含まれている「響きや余韻の成分」が余すところなく復元され、音楽を聴く私たちの耳に届きます。そこへスピーカーから出た音が部屋の床や壁で反射して発生する「響き」が加わると、本来の音場が崩れてしまうというわけですね。 もしこのファインメット®搭載211アンプに関心をお持ちの方で、『管球王国』誌(vol.47)を書店などで入手するのが難しい方がおられるようでしたら、アマゾンのサイトで購入すれば送料無料ですので、こちらからアクセスなさってください。 [ * 「ファインメット®」「ファインメット(R)」は日立金属(株)の登録商標です] 2008/1/14 - 貸出用の試聴機を準備中 − ファインメット®搭載211アンプNS工房の新製品「ファインメット®搭載211無帰還シングル・パワーアンプ NS-211FM」に関心をお持ちの皆さまも多いことと期待しております。とはいっても、かなりの高額商品ですので「貸出用の試聴機」を用意することにしました。今月中には試聴場所もオープンする予定ですが、遠方にお住まいの方や、自宅でじっくり音質を確認したい方にご利用いただきたいと思います。
詳しい仕様は後日ご紹介しますが、上の写真のように「ステレオ構成」で製作しました。幅43cm×奥行き30cmのシャーシに収容しましたので、サイズとしてはモノラルアンプNS-211FMを2台並べたときとほぼ同じ大きさです。外観はごく一般的な真空管アンプのスタイルですね。重量は22Kgです。これを、ぴったりサイズで特注した厚手の段ボール箱に真空管も一緒に梱包して1箱で発送できるように計画しています。一緒に使うことを推奨しているNS回路内蔵のプリアンプ「NS-3FM」も含めて、2個口での発送になります。 このアンプ・セットの貸し出しについては、たいへん恐縮ながら、梱包送料の一部として「\3,000」を試聴希望のお客様にご負担いただきたいと思います。代引きのヤマト宅急便で発送いたしますので、お受け取りの際にお支払いください。ご試聴の後、製品をご購入いただいた折には、この金額を割り引いた代金を請求させていただく予定です。 また、貸出用の試聴機として製作した「ステレオ仕様のファインメット®搭載211アンプ」の音質を確認したところ、ファインメット®系トランス類の効果を十二分に発揮していることがわかりました。そこで、廉価版の商品「NS-211S」を発売することにいたします("S"は「ステレオ構成」の意味)。購入のお申込みをいただいたときに製作する「受注時製作」の扱いとし、シャーシの加工は販売店(オーディオウィンズ)にお願いします。価格は¥328,000(税/送料込)です。詳細については、近日中に紹介ページを作成したいと思っていますので、しばらくお待ちください。 貸し出しのご希望はメールで ns_kobo@nifty.com 宛てにお知らせください。 [ * 「ファインメット®」「ファインメット(R)」は日立金属(株)の登録商標です] 2008/1/9 - 年末年始のお楽しみN響の「第九」 この年末に「第九」の生演奏を聴きに出かけた皆さまも多いことと思いますが、ここ数年、私はNHKで放送されるN響の第九を楽しんでいます。今年の指揮者はアメリカ出身のアンドリュー・リットンで、たいへんユニークな演奏を聴くことができました。 最初に聴いたのは2007/12/23(日)の夕方、NHKホールでの公演の1時間後に放送されたFMラジオ番組でした。出だしのメロディーを聴いたとたん「なんとアメリカ的!」と声を上げてしまいました。アメリカの指揮者との紹介を聞いた直後だからという理由もあるとは思いますが、どことなくスタンダードな演奏とは違う印象を受けたのです。「でも、なぜだろう? よく解らないけれど、とにかくアメリカ風に感じる」。
演奏後にナビゲーターの女性が解説者の音楽評論家と話し合っている中で、 12/28(金)にBSハイビジョンで放映された同じコンサートをパソコンで録画してDVD化し、今度は「どこが“アメリカン”なのだろうか」と見極めることも念頭に置きながら鑑賞してみました。どうやら、メロディーのフレーズごとに“語尾を延ばさずに、歯切れよく”演奏しているところが一般的な「第九」の演奏と違っていて、その歯切れよい軽快さが第九の重厚な雰囲気を和らげ、楽天的な印象を聴衆に与えていたようです。そして、実年齢より若く見える小太りで陽気そうなアメリカ人の指揮者が、音楽を指揮することや耳に入ってくる見事な響きを本当に楽しみながら指揮している様子は、テレビを見ている私たちまでも楽しくさせてくれる、そんな感想をもちました。 ただ、たいへん残念だったのは、音質が悪かったこと。テレビで聴く程度では判らないかもしれませんが、オーディオ装置で聴くと明らかに「音が変」でした。ホールの響きが聴こえてこないんです。もしかしたら、ステージ上の各所に設置した各楽器群の音を収録する個別マイクの音だけをミキシングした音声が放送されたのではないか、ステージの天井から吊っているマイクの音をミキシングせずに放送したのではないか、そんな気がします。どうしても気になったので、思い切って電話でNHKで問い合わせたところ「担当者に確認して今日か明日に連絡します」と言われたまま、もう何日も過ぎてしまいました。この番組をご覧になった皆さま、音質はどうでしたか? ウィーン・フィルの2008年ニューイヤーコンサート 今年の指揮者は83歳のジョルジュ・プレートル氏で、歴代最高齢とのこと。そして、フランス人の指揮者は初めてだそうです。 今年のコンサートは実に楽しく、例年に増してリラックス気分に浸りました。まず指揮者のプレートル氏自身、実に楽しそうに指揮しますし、それにつられるようにして演奏者たちの多くも笑みを浮かべながらの演奏でした。とはいえ、テンポや強弱の変化が多彩で、メリハリのある、活気に満ちた演奏でしたから、演奏者も聴衆も、そしてテレビを見ている私も、プレートル氏の手や指揮棒に目をやりながら「次はどう演奏するのだろう」という ちょっとした緊張感も味わいながらの音楽鑑賞です。にこやかにゆったり演奏していたかと思うと、テンポを速くする部分で指揮棒を実にきびきびと振って指揮している様は年齢を感じさせません。でも、指揮台から昇り降りするときは足元に気をつけることを忘れないあたり、怪我でもして指揮台に立てなくなることなど決してすまいというプロ意識といいますか、指揮することへの愛着といいますか、そんなプレートル氏の心意気を感じました。 ゆったりした曲と軽快な曲が交互に並んだプログラムでしたが、その対比が非常に際立つような指揮ぶりも見事でしたね。最後のほうで演奏された「皇帝円舞曲」、よく耳にするスタンダードな演奏とは一味も二味も違う名演だと感服しました。非常にゆったりとした弱奏部と、軽快で活気あふれる強奏部の対比が見事で、長年オペラの指揮をしてきた指揮者ならではなんでしょうね、とてもドラマチックな演奏でした。アンコールの定番「美しく青きドナウ」でも同じ印象を持ちました。 こうしたメリハリのある演奏を楽しくリラックスした気分で堪能しているうちに、おそらくコンサート会場に居合わせた聴衆とステージとのあいだに一体感が生まれたのだと思います。ラデツキー行進曲の“拍手”が、指揮者の意図通りに整然と強弱を付けて鳴っていました。終わると一斉に「ブラボー!」の声が上がり、その声がまるで合唱のよう。ウィーン・フィルの楽団員を見事に統率しただけでなく、聴衆までも惹きつけてこの一体感を生み出したジョルジュ・プレートル氏、音楽家としての才能はもちろん、きっと年の功が発揮されたのでしょうね。見事でした。 もし見逃した方がおられるならアマゾンでDVDを予約注文できますので、こちらからどうぞ(映像付きがお奨め!)。CDはこちら。 オマケの写真
2007/12/5 - NS工房よもやま話ファインメット®搭載211無帰還シングル 製品版1号機完成! NS工房のトップページで11/22にひっそりと暫定版の製品紹介(パワーアンプのみ)を公開し、その後、11/28にプリアンプとパワーアンプの製品紹介を正式に公開しました。皆さま、既にご覧いただけましたでしょうか? まだでしたら、こちらからアクセスできます。 既に1件、予約注文をいただいております。ただ、試聴場所をお借りする予定の真空管オーディオ・パーツ店で店舗(倉庫)の増築工事をしているそうで、試聴場所のオープンは2008年1月下旬になりそうです。「1号機」は某オーディオ専門誌の編集部に試聴機としてお届けしましたので、ことがうまく運べば、それと同じ頃に試聴記事が公表されることになります。さて、どんな評価が下されるでしょうか…。期待が90%、不安が10%といった心持ちです(自信もちすぎ… かな?)。 ファインメット®製コアのトランス類を“フル搭載”した211無帰還シングル・アンプの音は、聴けば聴くほど虜[とりこ]になっていきます。この音を我が家で独り占めしているのは勿体無い限りですので、ぜひ皆さまにもこの音を体験していただきたいと願ってやみません。 雑誌広告のメリット 2006年4月発売の『ステレオ・サウンド』誌(2006年春/Vol.158)に最初の広告を載せて以来、『オーディオ・アクセサリー』誌、『管球王国』誌、『MJ』誌、『アナログ』誌に、何回かずつ広告を載せてもらいました。 オーディオ専門誌に広告を載せることのメリットは、何といっても「持続性」だと思います。インターネットをご覧にならない方への広告効果があることはもちろん、インターネットをご覧になるお客様であっても、特定のキーワードで検索しない限り、NS工房の製品に出合う機会がありません。オーディオ専門誌を購読する読者の方々は、折に触れて広告を眺めておられます。そんなとき、「“理想響”ここにあり」というキャッチフレーズに目が留まり、広告の内容をお読みなり、インターネットで詳細を調べたり、電話で問い合わせたり、中には葉書で資料請求をお寄せくださった方もおられます。 驚いたのは、今年の2月、いちばん最初の広告をご覧になった方からお電話があり、試聴機の貸出から「NS-1 Ver.2」のご購入まで、とんとん拍子に進みました。1年近く前の広告がお客様の目に留まったというわけです。 つい先日も、ステレオ・サウンド誌の広告をご覧になった方から電話で問い合わせがあり、NS-3の試聴機をお送りしました。アルテックやJBLのスピーカーを部屋のコーナーに内振りで置いて聴いておられるとのことでしたので、NSの効果を出すためには少し狭い間隔で真正面を向けるとよいとご提案しました。すると、数日後にお電話で「こんなに良い製品なのに、なぜもっと普及しなんでしょうかね」とたいへん嬉しいお言葉。ちょうど試聴機を特価\90,000で販売していましたので、さっそくご購入くださいました。ちなみに、現時点でNS-3の試聴機は貸し出し中のものが1台残っており、我が家で使用していたNS-3も特価販売用に残してあります。 その同じお客様から昨日の夕方にお電話をいただき、NS-3に標準添付のECC83(スロバキア製/JJ社)ではジャズのピアノを聴いたとき「柔らかくなりすぎて、輪郭がぼやける」印象だったが、手持ちのGE製に換えたところ「やや線が細くなったが、輪郭がシャープになり、低域も増した」との情報を教えていただきました。 JJ製は私の好みの音質・表現力で、新製品パワーアンプNS-211FMとの組み合わせではジャズもシャープに鳴っていたこともあり、プリアンプNS-3の球に関して他の銘柄を試すところまで頭が回らずにいました。 お客様からの電話でせっかくそのことに気付かせていただきましたので、手持ちの他の銘柄(現行球)をさっそく試しました。ロシア製Mullardの12AX7は、ジャズ派の皆さんを満足させるであろう高域の鋭さを聴かせてくれましたが、低域の量感が不足しており、クラシックを聴くと高域が硬すぎる印象でした。 もう1つ、ロシア製Tung-Solでまずクラシックを鳴らしたところ、これには驚きました。JJより情報量が数段多くなり(つまり解像度が高くなり)、今までよりはるかに多い余韻がたいへん美しく響くようになったんです。ただ、ジャズを鳴らすと柔らかすぎで、低域の量感も不足気味でした。ただ、この情報量の多さは捨てがたいと思い、昨夕からつい先ほどまで20時間ほど音楽を通し続けてエージングしました。すると、エージングの甲斐あって、ジャズを元気よく鳴らせる高域のシャープさと低域の量感が出るようになり「これはJJをはるかに超えている!」と大喜びしています ロシア製Tung-Solの情報量の多さは、NS-211FMの初段に2本をパラで使用することに決めたときから分かっていましたが、プリアンプに使うと ここまで効果が上がるとは思いも寄りませんでした。お客様とのコミュニケーションは本当に大切ですね! 念のためロシア製Mullardもエージングして試聴してみますが、新製品NS-3FMにはおそらくロシア製Tung-Solを標準添付することになりそうです。
ちなみに、アンプをエージングするための「必須アイテム」と思って購入したのが、右の写真にあるソニーのメモリー内蔵型の携帯音楽プレーヤー(WALKMAN / NW-E016)の4GBタイプです。これにクラシック曲を約20時間分、ジャズやポップスを約5時間分入れてあります(まだメモリーが残っています)。長年、自宅仕事ばかりでこの種の携帯型の装置とは無縁の生活だったのですが、長さ8cmのライターみたいな小型装置に なかなか高音質の音楽が何十時間分も入るとは、驚きました。 パワーアンプはこれを使って丸2日ほどエージングすると、BlackGateコンデンサの活性化、ファインメット®製コアの出力トランスのエージング(低域が豊かになります)、そして出力管211 / VT4Cをはじめとする各真空管のエージングが進み、お客様にお届けした時点ですぐに見事な音質と表現力を楽しんでいただける状態になります。発熱量の非常に多い送信管を使ったアンプですが、外付け冷却ファンの効果もあって、40時間以上の連続稼動をしても「全く問題なし」です。出荷前のいい耐久テストにもなりますね。 そのお客様は、さらに「いゃー、オーディオ観がすっかり変わりましたよ。内振りにしないで狭い間隔で置いたほうがずっといいですね」と言っておられました。NSの効果を発揮させるのに最適のスピーカ配置です。そしてNSの効果によって音楽の臨場感がいっそう増しますので、ジャズやクラシックなどのアコースティック系の音楽をお聴きになる皆さまには、NS装置をぜひお使いいただきたいものです。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2007/11/8 - 製品版 最終試作アンプ・セット完成!心底から感動すると「言葉を失う」ものなんですね。 製品版として最終試作した211無帰還シングル・パワーアンプ「NS-211FM」モノラル機2台が完成してステレオとして鳴らしたとき、プリアンプ「NS-3FM」が完成してパワーアンプとセットで鳴らしたとき、2回とも そんな体験をしました。
何と言って表現したらよいのか分からない…、でも、とにかく以前より ずっと リアルで、身震いするような音の響きが体を包み込んでくれる、そんな印象です。 パワーアンプは、以前の試作機の最終段階のときよりも確実に解像度が増しており、メリハリの効いた、エネルギー感の満ち溢れる音を出してくれます。その上、プリアンプを、ファインメット®のノイズフィルターを搭載し、抵抗を非磁性体のオーディオ用カーボン抵抗AMRS(1本50円)に変更するなどした新プリアンプ「NS-3FM」に置き換えると、いっそう解像度が増し、澄みきった音に磨きが掛かります。・・・と書けば、それはその通りなのですが、これだけでは言葉が足りません(試作機の最終段階の音については、雑記帳 2007/10/11 や「エクス・フィールド主宰者試聴記」をご覧ください)。 211無帰還シングル(モノラル構成)アンプは、もともと、どんなジャンルの音楽でも「そのジャンルの音楽らしく」鳴らしてくれました。その211が、ファインメット®系トランス類の力添えにより、今までは埋もれていた「潜在能力」をフルに発揮するようになり、非常に情報量の多い、解像度の高い音楽を再生するようになりました。その音楽信号がNS回路の働きで正確なステレオ音像として再現されると、今までの211無帰還シングルに関する試聴感がさらにグレード・アップします。音楽ソースが表現している音楽情報をそのまま全部ストレートに余すところなく再現し、「まさしくそのジャンルの音楽として」、生演奏であるかのように奏でるようになったのです。クラシック音楽はクラシック音楽として、ジャズはジャズとして、ポップスはポップスとして、実に生々しい音楽を堪能できます。ヴォーカルを含む音楽であれば、ヴォーカリストの個性がにじみ出ているのがよく分かります。211無帰還シングルのクセのない表現力が、この変幻自在の音楽再生を可能にしたのだと思います。 しかも、その生演奏さながらの音楽が、我が家のコンパクトなオーディオ・セット、リビングの片隅にほとんど無造作に置いたステレオ装置から聴こえてくるのです。そのようなステレオ装置を手軽に手に入れることができるのです。
この手軽さを「オーディオ革命(Audio Revolution)」と称したいと思います。 この呼称が決して大げさでないことは、ぜひ皆さまご自身の耳で、身体で、じかに体験していただきたいと願います。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2007/11/2 - 寂しい… ファインメット®の音を聴けない9月29日に我が家のメインシステムの211無帰還シングルアンプにファインメット®製コアの出力トランスを搭載することで、このアンプのいわゆる“オール・ファインメット®化”が完了しました。電源トランスは従来型のオリエント・コアのままですが、管球パワーアンプの最重要な電源と言えるB電源回路にファインメット®のチョークコイルとノイズフィルターを導入することにより、電源トランスそのものに高価なファインメット®製コアを利用するよりもコスト・パフォーマンスのずっと高いファインメット®化を実施できます。それに加えて、やはり管球アンプの性能を決定付ける出力トランスをファインメット®化することで、主要トランス全部にファインメット®製コアを搭載した“オール・ファインメット®・アンプ”となったわけです。 その後、これを製品化するための諸作業に取り掛かり、メーカーに穴あけ加工とシルク印刷を依頼したシャーシケースが10/26(金)の午後に届きました。最初は設計ミス等のないことを確認するため、割高になりますがモノラル2台1組用に、ケースは2台だけ注文し、さっそく部品類を取り付けながら最終試作に取り掛かりました。これは、結構時間が掛かるんです。いちいち確認しながら作業を進めますので。完成したのは10/31(水)の午前中でした。完成状態の写真はNS工房のトップページに掲載してあります。写真では見づらいですが、つまみには赤色、いちばん小さいトランス(ノイズフィルター)の上面には黄色のビーズをあしらって、ちょっとした飾りにしてあります。輝きがとりわけ美しいことで定評のあるクリスタルガラス製ビーズの一級品「スワロフスキー」です。また、正式な製品では、大きいトランス2つの上面に、真鍮エッチングの銘板(発注済み)を貼り付けて、高級機にふさわしい外観を整えたいと思っています。
1台目の製作では、“最終試作”というその名の通り、製品の完成度を高めるために改善の必要な問題点がいくつか明らかになり、その対策も考案できました。水曜日の午後からは2台目の製作に取り掛かりました。1台目の試作の教訓を活かして、どのパーツを先に取り付けるべきかという順序も大方定まっていましたので、その順序で問題ないことを確認しながら、今度は比較的順調に仕事が進み、昨日(11/1(木))の時点で右の写真の状態にまで到達しました。内部配線は「途中まで」の状況です。おそらく今日中には完成しますので、晴れて2台揃った「ステレオ」として、あの素晴らしい音を再び堪能できます。211のフィラメントをDC点火するための整流ダイオードにショットキー・バリア・ダイオードを使用しましたし、電源トランスもオリエント・カットコア使用の高級仕様になりましたので、音質がさらにグレードアップしていることを期待できます。 いゃ〜、それにしても、この1週間はファインメット®の音を聴けませんでしたから、何とも寂しかったです…。ファインメット®の出力トランスは高価ですので、試聴用に購入した2個だけしか、まだ手元にありません。仕事場で旧211無帰還シングルの音楽を鳴らしながら作業をしていましたが、やはりメインシステムのあの得も言われぬ美音が恋しくなりました。そこで、昨夕、スイッチを切り換えて出力トランスのみオリエント・コアの状態(雑記帳 2007/8/27 でご紹介した状態)で音楽を流してみました。昨夕の気分に合わせて、ヘンデルの合奏協奏曲集(室内管弦楽曲)のCDです。8/27にグレードアップした時点では大いに満足していた音と響きなのですが・・・
「やっぱりいい音ねぇ。でも、何か物足りなくない?」 このアンプ「NS-211FM」はモノラルアンプ1台1組で \470,000(消費税、送料込)の販売価格を予定しています。同時発売のNS回路内蔵の管球プリアンプ「NS-3FM」(電源部にファインメット®のノイズフィルターを搭載。抵抗を高音質オーディオ用で非磁性体のカーボン抵抗AMRSに変更。携帯音楽プレーヤー入力付き)は \147,000(完成品のみ)、このプリアンプとパワーアンプを同時購入の場合には特別価格 \600,000 です。 この価格、決して安くはありません。とはいえ、このアンプの音や響き、美しくて、本物以上にリアルで、雰囲気感や空気感まで伝わってくるような、この立体的な音場感に価値を認める方々にとって、これは決して高い買物ではなく、むしろ「この値段で、この音が手に入ったのか!」と驚かれることでしょう。音楽そのものを存分に味わい尽くしたい皆さまに自信をもってお勧めできるアンプ・セットです。
フロアタイプの大型スピーカーでなくても、専用のリスニングルームがなくても、ブックシェルフやトールボーイタイプほどの小型〜中型のスピーカー、2ウェイ以上のワイドレンジのスピーカーで十分です。あと40万円をプラスしてコストパフォーマンスの高いCDプレーヤーと小型スピーカーを購入すれば、100万円の予算で、リビングや書斎の片隅に手軽にセットして、コンサートホールで聴く以上の音楽を堪能できます。何しろS席よりもっと音の良い、録音マイクの位置で響いている生演奏を自宅で聴けるのですから! そして、そのステレオ音場を部屋中のどの場所でも聴くことができます。NS回路のなせる業です。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2007/10/18 - エクス・フィールド主宰者試聴記先日、最終的な状態にまで完成した我が家のファインメット®製コアのトランス類を搭載した211無帰還シングルアンプ・システム(試作機)を試聴するため、「Ex.Field(エクス・フィールド)」というブランド名でファインメット®の各種トランス類を販売している会社の主宰者氏が、NS工房の自宅 兼 作業場のマンションを訪問してくださいました。このアンプの音をオーディオ専門家に聴いていただくのは初めてですので、夫婦ともども緊張していましたが、結果としてはファインメット®系トランス類の性能が十分に活かされ、素晴らしい音が鳴っていると評価していただけましたので、ホッと胸をなでおろしました。 その後、当日の試聴の様子を「試聴記」にまとめてくださいましたので、ここでご紹介したいと思います。なお、下記の文中で太字は編集者である私が設定したものです。 過日、NS工房宅を訪れ少ない時間ながら楽しく有意義な時間を過ごさせて頂いた。目的は主に2つ。一つは当方が納品したファインメット®系トランス類を搭載する211パワーアンプの音質性能を確認すること。もう一つは当工房主宰者ご自慢のNS回路なるものの効果を確認すること。 弦楽の小編成CDで出迎えられ、早速プリアンプにあるNS機能ON/OFFにてその効果を確認する。正直、一瞬にして驚いた。NS回路をONにすると目の前にフワッとリアルな音場が浮かびあがる。そしてその音像が微動だにしない事に更に驚かされた。ファインメット®化された211パワーアンプの音は私が普段聴いている音質グレードそのものだが、自然に近いバランスの高密度なエネルギー、そして極めて高純度な鳴りっぷりは211という出力管特有の性能なのか。顔は平静を装いつつ、持参したソフトを鳴らしてもらう。
まず1枚目は沖仁のスパニッシュ・ギター。3曲目の出だしから聴こえる街の雑踏音はまるでそこに自分が居るがごとく。内心唸る。ギターの弦を弾く瞬間、弦が揺れる様と余韻、左右から聴こえるパルマ(手拍子)の微妙な音の違いやズレまで明確に鳴らし切るとは。旧サンスイのブックシェルフ・スピーカーで…。
2枚目はデュ・プレのチェロ。弓が弦を擦り始めた瞬間からステージが浮かびあがる。彼女の身体の揺らぎや弓の角度が見えるように、そしてチェロ特有の胴鳴り音やステージの反射音まで明瞭に聴き取れることに背筋が疼いた。彼女とオーケストラの距離感も実に立体的で鮮明。試聴環境としては小規模だが、音場表現は驚くほどリアル。普通のオーディオシステムではあり得ないこと。オーディオ・システムとは音楽を聴くためにあるのであって、音を聴くためではないということを今更ながら痛感させられた。
3枚目はポリーニとボーム指揮ウィーンフィルのベートーベン「皇帝」DVD。ポリーニの天才的なピアノ演奏とオーケストラの合奏音響がどこまで明瞭且つ立体的に聴こえるかがカギ、と思いつつ演奏が始まると、すぐにのめり込んでしまっている自分が居た。鍵盤を走るポリーニの指使いを視ながらピアノ一音一音の立上がりと響き、そして指揮者ボームに操られた各楽器演奏者の奏でる極上の音楽は、聴く者を演奏会場の特等席、否マイクがある位置に連れていかれた感覚。改めて現代では聴けない名演との認識を強くした。そして主宰者の指示によりスピーカーの遥か外側までリスニングポイントを外れてみた。それでもスピーカーのセンターにきちんと音場が表現され、そこから音が聴こえてくることはこの日最大の驚きだった。どんなに有名ブランド高性能機器を取り揃えたシステムでも決してこうはならない。
4枚目はメトロポリタンで演じられたビゼーのカルメンDVD、8〜9トラック目。バルツァの並外れた歌唱力と彼女の声の美しさそしてその表現力が、ステージと化した前方に見事に浮かび上がり展開される。更に数本のマイク間を行き来する声の変遷までも極めて明瞭に表現。その様を離れた場所で聴いて居られた奥様も理解された[編集者註: 妻は左スピーカーの左後方に大きく外れたダイニングテーブルの椅子に座って聴いていました]。勿論これらの表現力には、ファインメット®化された211無帰還シングル・モノブロック・パワーアンプが備える並外れた音質性能あってのもの、という条件がつく。それにしてもNS回路とは恐るべし。内振りではなく平行に置かれた2本の小型スピーカーを中心に見事なまでリアルな音場が再現されるのだから。 1時間の予定がかなりオーバーしたためご迷惑をかけてしまったが、立ち去る時も興奮覚めやらず、後ろ髪を引かれる思いだった。オーディオ・ユーザー宅を訪れてこのような心境になったことなどこれまで皆無。贅を尽くした大規模システムにこのNS回路を採り入れた場合、どのような音楽が聴けるのか、是非聴いてみたいが…、止めておこう。そんな必要などないのだから。この日試聴させてもらったアンプシステムは近く同工房から製品として発売されるとの事。より多くの方にNS工房の音楽を試聴して頂きたいと願って止まない。試聴された方に必ずや衝撃と感動を与えるであろうから… 普段は、リビングルームのオーディオ装置前のソファ付近やダイニングスペースの其処此処にも、梱包資材やら、アンプや各種NS装置を製作するためのパーツ類の箱が積んであるので、とても人さまに試聴していただける状態ではないのですが、この日はそのようなものを別の部屋に移して試聴スペースを整えておきました。そんなわけで、製品の発売後は別の試聴場所をお借りする予定にしています。 この日、私がエクス・フィールドの主宰者氏から教えていただいたことが2つあります。 今までの211アンプでNS回路を通した音楽ソースを聴いていた私は、コンサートホールの特等席で聴くような雰囲気を自分は味わっているのだと考えていました。しかし、8月半ばからファインメット®のトランス類を211無帰還シングルアンプに順次取り付けていくに従って、目の前に再現される音場は次第に変化していきました。非常に解像度が高く情報量の多い響き、今までよりはるかに滑らかな音になりました。そして最終的に出力トランスをファインメット®製コアで「211シングル専用に設計・開発していただいたカスタム品」に交換したところでその変化は頂点に達し、今までは聴こえなかったような小さな音までハッキリ聴き取れるようになったのです。これは、従来の出力トランスでは小音量の音が減衰してしまうのに対して、ファインメット®の出力トランスを利用すると、どんな音量レベルの音でも正しいエネルギー・バランスでスピーカーから放出されるようになるからだそうです。 この時点で、私たちオーディオ・システムを聴く者の「居る位置」が変化しました。ステージ上で演奏されている音楽がいちばん良い音、いちばん良い響きで聴こえる位置に移ったのです。それは「録音マイクの位置だ」ということを、この日、主宰者氏から教えられました。この考え方には驚きました。でも、よ〜く納得できました。CD等に自分たちの演奏を収録する音楽家がいちばん望んでいるのは、自分たちの奏でる音楽を最高の音で収録してCDとして販売し、それを購入する音楽愛好家が自分たちの演奏を最高の音と響きで聴いて欲しいということだと思います。ということは、その演奏を録音するマイクは、音楽が最も良い音で響いている位置に設置されているはず、と考えるのが道理というものです。 このことから、適材適所にファインメット®系トランス類を搭載したアンプ・システムで聴くことのできる音は、コンサートホールで聴く以上に、もっとずっと「情報量の多い」音や響きであると理解できます。そして、そのアンプ・システムにNS回路も追加して音楽を鳴らすと、上に引用した試聴記でエクス・フィールド主宰者氏が書いておられるとおり、独奏チェロリストが体を揺らしながら熱演している様子や、オペラ歌手がステージ上を動き回りながら熱唱している様子を「耳で聴いて」感じ取ることができてしまうわけです。これはまさに「コンサートホールで聴く以上に素晴らしい、臨場感溢れる音楽」です。しかも211無帰還シングルの特長である「耳に心地よい」「とても甘美な」音と響きでその音楽を堪能できます。 この日に教えていただいたもう1つの点は、『スピーカーの遥か外側までリスニングポイントを外れてもスピーカーのセンターにきちんと音場が再現される』というNS回路の効果をもっとアピールするとよい、ということです。当日もそのことを強調しておられましたし、上に掲載した試聴記でも「どんなに有名ブランド高性能機器を取り揃えたシステムでも決してこうはならない」と断言されています。 今までも、その効果を説明に含めてはいましたが、「ステレオ感が自然な形で拡大され、楽器(群)の定位が明瞭になる」、「コンサートホールで聴いているかのように残響や余韻がよく聴こえるようになる」といった効果のほうを強調していたかもしれません(参照: ナチュラル・サウンドの原理をひも解く)。
今までは上図のように「ステレオ感の拡大」に注目していましたが、今後は下図のように「立体音像がスピーカーの周囲に復元され、しっかりと固定される」という効果もアピールしていこうと思います。そのことを示す決定的な証拠は「スピーカーの外側にいてもその立体音像を聴き取れる」という事実です。
ファインメット®製コアのトランス類を有効に活用して管球アンプ・システムを構築すると、非常に解像度の高い音が再生されます。これは、スピーカーから聴こえてくる音の情報量が非常に多くなるということです。これを従来型のステレオ・システムで再生すると、ステレオ音場の再現が必ずしも十分ではないため、ファインメット®を導入する前には聴こえなかった「かすかな残響」などが「不適切な位置」から聴こえてしまい、音質や定位が悪くなったように感じたり、ひどい場合には「聴くに堪えない音」になったりします(10/11の雑記帳で紹介した村冶佳織のギター独奏「リュミエール」はその一例)。 しかし、NS回路を利用すると、ステレオ音場(立体音像)が音楽ソースが表現している通り忠実に再現され、スピーカーの周囲にしっかりと固定されるため、ファインメット®によって再生される膨大な量の音を、かすかな音量の残響や余韻に至るまで、しかるべき位置に正確に定位させることができます。だからこそ、ファインメット®製コアのトランス類を適材適所に3種類搭載した211無帰還シングル・アンプの実力を100%発揮させるには「NS装置が必要不可欠」なのです。 このような2つの点に気付かせていただいたという意味で、先日のエクス・フィールド主宰者氏の訪問は、私にとっても非常に得るところの多い意義ある1日だったと感謝しています。 [ * 「ファインメット®」は日立金属(株)の登録商標です] 2007/10/11 - ファインメット®製コアの真価を発揮させるにはNS装置が不可欠!前回の記事(2007/9/30)では、ファインメット®製コアの出力トランスを取り付けたら「コンサートホールが出現したように感じた」こと、そしてそれは「ファインメット®製コアとNS回路の相乗効果によって実現された」と思われることを書きました。確かに、N響定期公演や年末の「第9コンサート」を録画したDVDを視聴してみると、今までより「奥行き感」が増したように感じます。NS装置をお買い上げいただいたお客様からの感想でも、左右の広がりは増すが奥行きがあまり広がらない、といった声が時おり聞かれます。もちろんこれは音楽ソースの録音状態によっても大きく左右されるのですが、ライブ録音の場合には「音のエネルギー感が正確にスピーカーに伝達される」というファインメット®製コアの出力トランスの特長と、NS回路の相乗効果によって、奥行き感が増すものと考えられます。特に驚いたのはN響の「第9コンサート」で、フルオーケストラの背後に大合唱団が整列していますから、非常に奥行きが深いと感じました。しかも、合唱している一人ひとりの声が聴きわけられるような気がするほど解像度の高い再生音でした。 また、「ファインメット®を使うとどんな音になるの?」と尋ねられたとしたら、真っ先に出るのは「惚れ惚れするほど美しい音」という言葉になると思います。211無帰還シングルは元々甘美な音が持ち味ですが、それにいっそうの磨きが掛かった孤高の美音と言いたいですね! しかし、さらにいろいろな音楽ソースをファインメット®製コアのトランス類を3種類搭載した211無帰還シングルアンプで聴いていくうちに気付いた重要な事柄があります。それは、ファインメット®製コアの真の実力を正確に聴き取るには、NS装置が必要不可欠であるという事実です。これは、美しい音と響きに聴き惚れているときに「NSオフ」に切り換えてみるとすぐに分かります。ひどい場合には「聴くに堪えない音」に変わることさえあるのです。もしかしたら、このことが、多くの有名トランスメーカーがファインメット®製コアのトランスを開発する過程でぶつかった“大きな壁”で、ファインメット®をコア材に利用しても音質が向上しないと誤解してトランス開発を断念してしまった原因なのかもしれません。 ファインメット®の奏でる本当の美音を聴くのにNS装置がぜひとも必要であることを確かめるのに好適なCDを2枚ご紹介しましょう。1枚は、村冶佳織のギター独奏を収録した「リュミエール」というアルバムです(→詳細・購入(Amazon))。 「たかがギター独奏」と侮るなかれ。イギリスのニンバス・ホールという、たいへん響きが良いことで有名なコンサート・ホールに聴衆を入れずに録音したというこのアルバムでは、「ギターそのものの音」や「弦を弾いたり押さえたりするときの微かなきしみ音といった付帯音」のほかに、「広いホールに静かに広がっていく残響音」がしっかり収録されています。その付帯音や残響音がいかに美しく聴こえるかによって、そのオーディオ・システムの優劣が判断できると言っても過言ではないでしょう。ちなみに、この雑記帳を書きながら当のCDを聴いているのですが、仕事部屋の「旧211無帰還シングル・アンプ+NS-3+小型2ウェイ」というシステムでは、ギターそのものの音や付帯するきしみ音は美しくリアルに聴こえますが、その聴こえ方は、ファインメット®を搭載したリビングのメインシステムに負けています。さらに残響音も聴こえてはいますが、ホール内に静かに響く残響音はメインシステムで聴いたときのほうが音にはるかにリアリティーがあり、ホール内の空気感が感じ取れるほどまで細かい音が耳に届きます。 このCDを聴きながら「NSオフ」に切り換えるとギョッとします。我が家のメインシステムや仕事部屋ではスピーカーの間隔が狭く、NS装置なしではステレオ音場の再生状態が非常に悪いことも手伝って、まさに「聴くに堪えない音」に豹変するからです。まずギターの音像が不自然に巨大化します。弦を弾いた瞬間の音に“とがった刺激音”が混じります。残響音も聴こえるのですが、ギターそのものと同じ位置(つまり左右スピーカーの中央付近)から聴こえてきますので、単にボワーンボワーンとハウリングしているような、敢えて言えば風呂場で聞いているような音です。でも「NSオン」に戻せば、元の美しい響きに戻ってくれるというわけです。NS装置の威力にあらためて感じ入りました。 さて、ご紹介するもう1枚のCDは、ゲルギエフ指揮のシェエラザード(R・コルサコフ作曲)です(→ 詳細・購入(Amazon))。このCDの試聴感は以前に雑記帳でご紹介しました(2005/11/19)。マリインスキー劇場というオペラハウスでの録音ですから、バイオリン独奏で美しいメロディを奏でる部分でも大量の残響音が沸きあがります。ファゴットが印象的なメロディを奏でる部分も同じです。ましてシンバルや打楽器の連打を伴いながらフルオーケストラが強奏部に入ると、元々の楽器の音だけでも音の嵐になるところに各楽器の残響音が混じりあって響き渡りますから、まさに「残響音の巨大台風が吹き荒れるかのような音の嵐」となります。 これをファインメット®搭載前の旧211無帰還シングル・アンプで聴いていたとき、バイオリンやファゴットの奏でる甘美な旋律と響き、さらには弱奏部でのオーケストラのハーモニーとその残響音の美しさには聞き惚れていました。それでも、さすがに強奏部の「巨大台風」は従来のトランスを搭載した211無帰還シングルでも甘美に奏でることはできず、「濃厚で荒々しい」「響き渡りすぎ」「うるさい」といった感想でした。 ところがファインメット®をフル搭載した今、このCDの強奏部でさえ「演奏会場に居合わせたとしたら、大量の美しい音(楽器の直接音+残響音)に全身を包み込まれるような至福のひと時であったに違いない」と思えるようになりました。ただうるさく響き渡る残響音ではなく、大量の美しい音の一粒一粒として感じ取れるようになったのです。 この記事でご紹介した2枚のCDを「ファインメット®をフル搭載した211無帰還シングル」と「NS装置(我が家ではNS-3)」を組み合わせたシステムで鳴らした場合、残響音の聴こえ方を例えて言うとしたら「温かい料理から立ち上るおいしそうな湯気と香り」という雰囲気です。楽器から出た音は前方へ、つまり聴衆である私たちのほうへ聞こえてくると同時に、残響音がその楽器の周囲を取り巻くように広がっていきます。その過程でゆらゆらと音程や音量などが微妙に変化しながら、最後にはふわ〜っと消えてゆきます。この残響音は時々刻々と聴こえる位置が変化しますので、従来のステレオ・システムでは、スピーカーの設置方向などをよほど厳密に設定してステレオ音場が正確に復元して再生されるように調整しない限り、この「料理から湯気と香りが立ち上るような雰囲気」を堪能するのは難しいのではないかと思います。 ところが、NS装置を使うと、1.5m程度の狭い間隔で真正面を向けて設置したスピーカーでさえ、非常に精密なステレオ音場を復元して再生できるのです。単に左右のスピーカーから出た音が両耳に届くまでの間に発生するクロストークを解消するだけでの装置なのですが、それほど大きな仕事をやってのけるのですから驚きますね。別の見方をすれば「そのクロストーク」がステレオ音場の復元をいかに大きく邪魔しているかがよく分かります。 ちょっと長くなってしまいましたが、最後に、我が家の以前のメイン・システム(旧211無帰還シングル・パワーアンプ)にNS回路によるクロストーク解消装置を組み込み(最初は雑記帳 2004/12/26で紹介したプリアンプにNS回路の試作基板を増設した形でした)、さらにはファインメット®製コアのトランス類をフル搭載したパワーアンプに改造を完了する(雑記帳 2007/9/30)までの過程で、どのような変化が起きたのかをまとめてみようと思います。 [1] 211無帰還シングル(モノラル構成) 211無帰還シングル独特の甘美で美しい音を堪能していました。単に甘美なだけでなくパワフルでもあり、どんな楽器でも“本物以上にホンモノらしく”奏でてくれる最高のアンプだと感じていました。 また、独奏楽器や男性/女性ボーカルからフルオーケストラまで、どんな規模の音楽でも見事な音場感で鳴りました。いま思い起こしてみると、それだけ「解像度の高い」アンプだったのだろうと思います。 [2] NS回路を追加 ◇ スピーカーから出た音が両耳に届くまでに発生するクロストークが解消される。 このことの効果は、見事なステレオ感の復元という形で聴き取ることができました。各楽器(群)がしっかり定位し、ホールの残響音などもよく聴き取れるようになり、コンサートホールの雰囲気を彷彿とさせる再生音に満足していました。 ◇ NS回路によっヤングの干渉も解消される(雑記帳 2006/7/2)。 音響学では「事実上これは不可避」と考えられていた「ヤングの干渉をオーディオ周波数帯域で解消する」という潜在能力をNS回路が秘めていたことを、NS(ナチュラル・サウンド)復元法の原理を私にご教示くださったアラバマ大学の高橋教授から知らされ、とても驚きました。ちなみに、副スピーカー法によるNS復元法ではヤングの干渉は解消できません。 このことは、特に左右スピーカーの中央付近に定位する楽器やヴォーカルの音が正確に復元され、再生されるという結果として聴き取ることができます。実際、この記事で紹介した村冶佳織のギター独奏で「NSオフ」にしたとき刺激的な音になったと感じたのは、音楽ソースに元々は含まれていない無用な刺激音がヤングの干渉によって発生したことが原因だったのです。また、ヴォーカルの再生が「唇の動きが見えるようだ」と形容されるほどリアルになるのも、ヤングの干渉が解消された結果と考えられます。 [3] ファインメット®製コアのチョークコイルとノイズフィルターで211無帰還シングル・アンプのB電源の品質を大幅に改善 この2種類のファインメット®応用製品により、アンプ回路でオーディオ帯域のどんな周波数の電流スイングが発生してもB電源回路から必要な電力が過不足なく供給されるようになり、アンプの整流回路で整流ダイオードのスイッチング動作に伴って発生する微小なノイズや、家庭のコンセントから取った商用電源に混じっている低周波から高周波までの様々なノイズがB電源から除去されました。 このことは、再生される音が非常に滑らかになり、今までは聴こえなかったような小さい音や微妙な音の変化が聴こえるようになるという結果につながりました(雑記帳 2007/8/17、2007/8/27)。しかも、その小さい音や、微妙な音の変化には、211を無帰還で動作させたときの絶妙な2次歪によって“美音化”されています。これが「滑らかで無駄な刺激感のない美しい音」という試聴感につながりました。 従来のB電源の整流・平滑回路ではここまで高品位な高電圧のDC電源を実現できませんでした。それが原因で無帰還動作の211の潜在能力を一部しか聴き取ることができなかったのは非常に残念なことです。しかし、ファインメット®という最新テクノロジーが非常に古い真空管211(VT4C)と共同作業して、このような精細で美しい音を生み出すのを聴けるようになったとは実に素晴らしいことだと皆さんもお感じになるのではないでしょうか? [4] ファインメット®製コアの出力トランスを導入 これまでのステップアップにより、出力管211のプレート電流の変化のところまで「精細かつ美しい音楽の波形」が伝達されるようになりました。しかし、従来のコアを利用した出力トランスでは、その波形を出力トランスの2次側(つまりはスピーカー)に正確に伝達できず、我が家のオーディオシステムで言えば2007年8月27日の時点での音質や表現力にとどまっていました。まだ何が足りなかったのでしょうか? そのことは、出力トランスをファインメット®に換えた時に明らかになりました(雑記帳 2007/9/30)。まず、(1) 再生音にざらついたところが全くなくなり、シルクのようにスムースな音触になりました。そして、(2) 小さい音が十分なエネルギー感を保持してスピーカーから放出されるようになりました。 このことから逆に考えて推測できるのは、従来の出力トランスでは1次側の電流変化が2次側に伝達される際に (1) 波形の面で、そして (2) エネルギー量の面で、歪があったということではないかと思います。ファインメット®製コアの出力トランスでは、無帰還動作の211が生み出す高い解像度をもった、元の音楽ソースを忠実に再現した、さらには絶妙な“美音化”を施した音の波形が、そのままの形で正確に2次側に伝達されます。また、従来のトランスでは「小さい音は二次側で減衰しすぎる」「大きい音は二次側で誇張されすぎる」という傾向があったようですが、ファインメット®製コアの出力トランスでは音の大小がそれ相応の適切なエネルギー感を保持した状態で二次側に伝達され、スピーカーから音として放出されると考えられます。 ここまでくれば「これで美しい音が耳に届くはずだ」と期待して当然でしょう。しかし、悲しいかな、これは2チャンネル・ステレオの本来的な問題点と言ってよいと思いますが、スピーカーから出た音が右スピーカーからの音は右耳だけ、左スピーカーからの音は左耳だけに届くようにするのが非常に困難であるという事実が、その当然の期待を裏切ります。 ここで実力を発揮するのがNS装置です。スピーカーを厳密に調整してもどうしても残ってしまう「クロストーク」をNS回路の発生する逆位相の信号により消し去ると、左右スピーカーから放出された2チャンネルの音波形が表現しているステレオ音場が正確に復元されて、私たちの耳に聴こえるようになります。その結果、コンサートホールに居ながらにして聴いているかのような素晴らしい音楽を堪能できるようになります。 特に、残響音は時々刻々と位置や音量や音程が変化します。またホール内の空気感といった微妙な“音”は、従来の出力トランスでは一時側から二次側に伝達された時点で減衰してしまってスピーカーからは放出されない可能性がありますし、放出されたとしても、やはり位置や音量や音程が時々刻々と変化すると思われます。これを正確に再現するのにNS装置が必要不可欠というのが、私の達した結論です。 NS装置をお持ちの皆さんは、「NSオフ」の状態で音楽を聴きながら頭を左右にゆっくりと回してみてください。いかがでしょうか? 聴こえてくる音場が頭の向き(つまりは両耳の向いている方向)に応じて変化することがわかると思います。次に「NSオン」の状態で同じことをしてみてください。今度はスピーカー周辺に再現されているステレオ音場がピタリと固定されていて、耳がどちらの方向を向いていても音場はいつも一定であることをお分かりいただけると思います。NS装置によって再現されるステレオ音場は、そこまでピタリと定位し、不動のものなのです。だからこそ、時々刻々と移動し、しかも音量の小さい残響音や空気感さえも、正確にそのステレオ音場の中に復元して再生してくれるというわけです。実に見事なものだと、私自身、あらためて感心させられました。 以上、たいへんな長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。ファインメット®搭載211無帰還シングルアンプの製品版最終試作機は、今月(10月)の下旬には皆さんにご披露できると思いますので、楽しみにお待ちくださいませ。 [ * 「ファインメット®」「ファインメット(R)」は日立金属(株)の登録商標です] |