2004年の11月中旬にサンバレー「ザ・キット屋」の店主日記でCEC社の「TL51X」のことが紹介された途端、キット屋ファンたちから大きな反響があり、急きょザ・キット屋さんでこのCDトランスポートを大特価で販売してくださることになりました。
Model 2 は近いうちに購入しようと思っていた私ですが、店主の試聴感にたいへん魅力を感じたため、急きょ資金調達の方策を講じて購入してしまいました(2004/11/17付けの雑記帳に書いたとおりです)。実際に音を聴いてみますと、期待した通りの素晴らしい音楽を再生してくれています。
このページでは、製作の概略と、試聴した感想をご紹介します。
このページの内容:
半完成品の形のキットですから、梱包されているパーツ数はさほど多くありません。小物部品は「A」と「B」という2つの袋に梱包されています。
瞬間接着剤が入っていて、最初は「おまけ」かな? と思いましたが、実は製作手順の中で使用します。
本体ケースの中には、主基板と表示基板の2つが入っています。
アルミホイルで包んであるのは、静電気によるIC類の破壊を防止するためだと思います。最近のパソコンパーツなどは帯電防止加工の施されたビニール袋やピンク色の帯電防止エアキャップで梱包されていることが多いですが、このような「小ロット」のキットではアルミホイルの方が経費の節約になるでしょうし、静電気による破壊を防止する観点からも十分に機能を果たします(そんな便利な袋が普及する前は、秋葉原でCMOSのデジタルICを購入すると、アルミホイルで包んでからビニール袋に入れてくれました)。
というわけですから、このアルミホイルは、基板をケースに固定するまでは剥がさない方が安全だと思います。
説明書に従って、フロントパネル、小物パーツ、表示基板を取り付けます。
ここで先ほどの瞬間接着剤が必要になります。RCAジャックを取り付けるとき、ナットが緩むのを防止するため、ねじ山との間に少量の接着剤を付けるように指示されています。
おっと、失敗!
RCAジャックは、大方ケースに取り付けて、アースラグの取り付け方向なども確認してから、ナットを少し緩めて接着剤をつけ、改めてナットを締めなおします。1つ目のジャックでは接着剤をつけた後に慎重に作業しすぎたため、ナットを十分に締め付ける前に接着剤が固まってしまったんです(笑)。あわててもう1つラジオペンチを取り出し、何とかナットを緩めて作業をやり直しました。「慎重に、しかし手早く」作業しないといけませんね。2つ目からはうまく取り付けられました。
それにしても、完成品として市販される製品は、私たちアマチュアが製作する場合とは違って、ナットが緩まないようにする対策を施すなど、いろいろと気配りされているんですね! (皆さまご存知のとおり、Model 2はソフトンという会社が完成品を販売しています。このキットのパネルには「SUNVALLEY」とプリントされていますから、ソフトン社からOEM提供を受けてサンバレーがキットとして販売しているのだと思います。)
次に、電源部の配線です。
指定の長さにケーブルを切断し、両端の被覆を剥き、ファストン端子(圧着端子)を取り付けます。私は圧着端子の使用経験があまりなく、圧着用のペンチも小型端子用のものしか持っていなかったため、この手順にいちばん手間取りました。「5.5」というサイズの圧着部で端子をリード線に締め付けるのですが、1サイズ小さい工具で作業したため、とうとう1箇所は圧着に失敗してしまい、仕方なくパーツに直接ハンダ付けすることで逃れました。
もっとも、ここで圧着端子を使用するというのは、完成品を工場で組み立てる際の手順をそのまま再現しているためではないかと思います。最初から全部ハンダ付けにしたほうが良かったかな? それとも製品の品質に影響が出てしまうのでしょうか?
最後は、主基板の配線です。トランスからのリード線をハンダ付けし、ケース背面のRCAジャックへもリード線をハンダ付けします。
また、表示基板から出ている20芯のフラットケーブルを主基板のコネクタに差し込みます。
この状態で動作テストを行い、問題がなければ上面カバーをネジ止めして完成です。
このとおり、組み立て手順は難しくなく、工数も少ないですから、半日あれば完成させられると思います。これだけのことで完成品より安く購入できるのですから、なんとも嬉しいですね。ザ・キット屋さんに感謝!
Model 2の説明書にも書かれているとおり、真空管を使用していますので「慣らし運転」が必要のようです。完成後すぐに軽く試聴したところ、確かにちょっと高音域が硬いという印象を受けましたので、次の日まで電源を入れたままにしてエージングしました。
試聴の手始めに、これまでのCDプレーヤー(サンスイ CD-α717D EXTRA、1989年頃の製品)の光デジタル出力をつないでみたところ、ふっくらとした柔らかい音でありながら低域の力強さもある、非常に好ましい印象でした。発売当時の雑誌等でこのCDプレーヤーの評価は上々でしたが、奥行き感がやや乏しいと言われてたんです。でも、Model 2につなぎますと、奥行きが十分に感じられるようになりました。また、何枚かCDを再生してみましたが、Model 2でエラーがカウントされることはなく、このプレーヤーがまだまだ元気に動いていることも確認できました。
次に「TL-51X + Model 2」で聴いてみますと、期待通りの素晴らしい音ですね! 柔らかくて温か味のある音質なのに、解像度もしっかりしています。左右の広がりはもちろん、前後の奥行き感も十分です。弦楽器は前の方、シンバルは一番後ろ、といったステージの奥行きをしっかり感じとることができます。
それよりも何よりも、このふっくらとした、刺激感のない、でも力強い響き、聴いていて思わず顔がほころんできます。言ってみれば「癒し系」の音といったところでしょうか。
後日、ある方からメールをいただきました(私に211の素晴らしさを教えてくださった“恩師”です)。Model 2の真空管を Amperex か Philips に換えた方が繊細さも剛胆さもずっとよくなるとのアドバイスです。
ちょうど真空管式プリアンプのパーツを購入する予定でしたので、そのショップで Amperex の「Made in Holland」の製品で“Bugle Boy”(ビューグル・ボーイ; ラッパ手を務める少年)という愛称で親しまれている 6DJ8 を購入しました(2004/12/9付けの雑記帳に書いたとおりです)。
1本\3,800という少し高価な買い物でしたが、交換してみて納得。その出費に見合うだけの十分な音質向上を経験できたのです。雑記帳に書いたとおり、低域の迫力が増し、オーケストラ全体の響きや余韻のようなものがいっそうナチュラルになり、個々の楽器の鳴り方のリアルさも向上したと感じました。
ベルトドライブのCDトランスポートのデジタル出力がなぜこんなに優秀なのか、D/Aコンバータのバッファアンプに真空管を使うとなぜ音楽の表現力が増すのか、その理由を科学的・技術的に考察し、測定データで示し、説明を加えようとしたら、相当難しいことになるだろうなと想像します。
それでも敢えて素人なりに考えてみますと、古典的な電気技術と最新のデジタル技術の見事な協同作業により、互いに補完しあっているような気がします。
一般のCDプレーヤーでは最新技術を駆使してモーターの滑らかな回転を実現しているわけですが、どうしても回転がギクシャクしてしまうのでしょう。それに対して、ベルトドライブという古典的な方法を使うと、かえって滑らかな回転を得られるのですから不思議です。(慣性の法則という自然の摂理を利用しているからなんでしょうか?)
デジタル信号をアナログ化した直後のぎざぎざな波形を滑らかに補正するため、高級CDプレーヤーではさまざまな電子技術を駆使しています。でも、真空管というごく単純なデバイスを通すだけで、不思議なことに人間の耳に心地よい滑らかな波形になってくれます。(これも自然の法則の作用なんでしょうか?)
理屈はともかく、素晴らしいCD再生システムを入手できましたので、自宅に居ながらにして臨場感豊かな音楽を楽しめています。もちろん、生の音にはかないませんので、折を見つけてはコンサートに出かけたいとも思っています。
(公開: 2005/1/9)