サンバレー「ザ・キット屋」から2005年に発売された新製品の1つ「SV-11 FM」キットを購入し、製作しましたので、製作過程の概要と、試聴記をご紹介します。
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キットの内容物を並べて写真にしてみました。右下にある袋にCRパーツ類とプリント基板が入っており、これを組み立てるのだな、と分かります。上段にある銀色の袋は、FMチューナー/それを制御するマイコン/ニキシー管などを取り付け済みの完成基板が入っている袋です。シャーシにはトランスが既にしっかりネジ止めされていました。
まずは、プリント基板へのパーツのハンダ付けです。説明書にも書かれていますが、背の低いものから順に取り付けてハンダ付けしていくと作業が楽になります。私の場合、NS工房の方でさんざんプリント基板へのパーツのハンダ付けをしていますので(2005/8/5の時点で70枚以上)、そのあたりの“勘”のようなものが自然に身についており、スムーズに作業できました。
あと、これは自分なりの工夫なのですが、発熱が予想されるパーツ(ダイオードや酸化金属皮膜抵抗)は、プリント基板に密着させて取り付けるのではなく、少し浮かせて取り付けました。その方が風通しがよくなって放熱に役立つだろうという考えからです。プリント基板に密着させると基板が放熱板の役割を果たすことになりますが、高温下で使用する寿命が短くなる電解コンデンサのことが心配なので、私はいつもそのように取り付けています。
説明書にあるとおり、ハトメもハンダ付けしておくことを忘れないようにします。
うっかり完成した基板の写真を撮り忘れてしまいました。残念!
次は、シャーシの前面パネル、背面パネル、上面への各種パーツの取り付けです。説明書によるとトランスをいったん取り外してから作業するようにと書かれています。ずぼらな私は、取り外さないでも作業できそうだと思ったので、トランスを付けたまま手順を進めてしまいました。トランスを外した方が軽くなりますし、電源スイッチが取り付けやすくなるという配慮だろうと思います。
50mmや43mmという長い金属スペーサがちょっと珍しいですね。これをシャーシ上面に取り付けるとき、皿ビスの頭が完全に沈み込むようにするため、ネジより一回り大きい4mmのスプリングワッシャを間に挟むというアイディアに感心しました。私も今後、まねする機会がありそうです。すべてのパーツを取り付け終わると、右の写真のような状態になります。
次に、デジタル基板とアナログ基板を先ほどの「長いスペーサ」にネジ止めします。真空管はこの時点で先に差し込んでおきます。
その後、電源コードの取り付けと配線、トランスから基板への配線、基板間の配線などを行います。交流電流の流れる線は、2本をより合わせて配線しました(説明書には書かれていませんが、AC100Vの電源線、トランスからプリント基板に配線する線などです)。その方がノイズの発散が軽減されるからです。結束するだけでも効果があると思いますが、より合わせるといっそう安心だと思います。
すべて終わると、下の写真のような状態になります。
ここまでで「電子工作」的な作業は終了ですので、とりあえず動作確認をしてみました(私、意外にせっかちなんです)。真空管ソケットや基板のいくつかの地点の電圧が説明書の値に近いことを確認し、FM放送を受信して音が出ることを確認できました。
このあとはサイドウッドの取り付けで、組立式の家具を作るのに似た作業です。L字アングル金具に「A」と「B」があることに注意しながら作業します。最後に底板にプラスチック足を取り付け、シャーシにネジ止めすれば完成です!
さぁ、真空管バッファの効果はどれほどのものなんでしょう? 興味がそそられます。
ところが残念なことに、組み立て終わった直後に、現用のサンスイ製チューナー(1990年ごろに購入したごく普通のPLLシンセサイザー・チューナー)と切り換えながら聞いてみても、ほとんど違いが分かりません(SV-11FMの背面にあるレベル調節つまみで音量が同じになるようにして比較しました)。数日間 音を出して真空管をエージングしても、やはり音はほとんど(あるいは全く)同じに感じます。真空管プリを外してパワーアンプ直結で聴いてもまったく同じです。
DAコンバータのModel 2のように、デジタル→アナログ変換で残ってしまう波形のギザギザをナチュラルに平滑化するためには真空管バッファが奏効するものの、もともとアナログで流れてくるFM放送の場合には、真空管バッファの効果はあまり体感できないものなのでしょうか。ザ・キット屋さんの夏休み明けに大橋店主に尋ねてみようと思います。
このあと、2005/08/28に加筆
大橋店主に尋ねてみたところ「FM放送特有のコンプレスされた音感が少なくなり滑らかさが出る、言い換えれば球のバッファを通す事により、中域の倍音感が増し、所謂ドンシャリ的な粗さがなくなる」とのお返事でした。ケンウッド製のチューナーと比較した場合に、そのような違いをはっきり感じ取れたそうです。
「そういえば、うちのメインシステムにはケンウッドのチューナー(ヤフオクで中古を購入したKT-1010F)だったなぁ」と思い出し、さっそくSV-11FMと比較試聴してみました。そうすると、確かにケンウッドでは中音域の弦の響きの滑らかさや響きが物足りない印象を受けました。とはいえ、違いはごく僅かだと思いました。
こうなったら、SV-11FMの真空管バッファを徹底的にグレードアップしてみたいと思い立ち、まずはカソードのパスコンを手元にあったスプラグの電解コンデンサ(通販ショップのオマケでもらったもの)に交換してみました。すると、低域の力強さが増し、引き締まった感じになりました。
さらに、後日、出力部分のコンデンサ(これも、機能としてはカップリングコンデンサということになるのでしょうか)を東一電機のビタミンQ、抵抗類10本をXicon社のカーボン抵抗(1本50円で購入しましたが、アメリカでは品質と価格のバランスが取れているということで定評があるそうです)に総入れ替えしてみました。すると、ケンウッドのチューナーとの音質や表現力の違いがさらに明確にわかるようになりました。まず、中音域の響きが滑らかかつ豊かで厚みもあります。高音域が美音でよく伸びており、雰囲気感や空気感が増しました。低域もふっくらと豊かになったように感じます。この「パーツ総入れ替え」の費用は\2500ほどでしたから、コストパフォーマンスの面でもなかなか満足できる結果となりました。
さて、残っているのは、私が仕事中のBGM用にずっと愛用してきたサンスイのチューナー「TU-α307」との勝負です。プリアンプにSV-11FM、ケンウッド、サンスイを3台とも接続して切り換えながら比較試聴してみますと、ケンウッドの負けは明らかでした。ところが、サンスイは頑張っています。グレードアップ後のSV-11FMと遜色のない美音を響かせてくれるのです。試聴感の最初に「音がほとんど同じ」と書いたのは間違っていなかったことが再確認できました。
「優秀なFMチューナーといえばケンウッド」というのはオーディオ愛好家の間ではほとんど常識なのだと思いますが、音質的にやや難があったとは驚きです。ケンウッドの前の社名はトリオで、業務用の通信機や短波受信機など、無線分野に強いメーカーでしたから、FM受信回路の優劣がチューナー全体の性能を大きく左右していた時代にはトリオ/ケンウッドが頭1つ抜きん出ていたのでしょう。しかし、PLLシンセサイザ方式のデジタル受信回路が普及し、どの音響メーカーも性能的に大差のない受信回路を利用できるようになった1990年頃からは、受信回路(RF回路)の後の低周波(AF)増幅回路が音質に大きく影響するようになったのではないかと思います。サンスイは、真空管アンプの時代から数々の銘機を世に送り出してきた「アンプメーカー」の代表格ですから、AF増幅部の性能の面でその資産を上手に活かした、というのがこの比較試聴の結果に表われたのかもしれません。
そんなわけで、ケンウッドのチューナーは予備用に回ってもらい、メインシステムではサンスイ、仕事用のサブシステムではSV-11FMを利用することになりました。
2005/08/28の加筆ここまで
結局、サンスイ製のチューナーと比較した場合には真空管バッファの効果を大きく実感することができませんでしたが、逆に手作りのチューナーがメーカー製のチューナーと音質面で肩を並べているというのはすごいことですよね。しかも、感度の点では勝っています。
それと、ニキシー管の周波数表示。わざわざ専用の高電圧を発生させて点灯させるわけですから、設計するのはさぞ大変だっただろうと思います。でも、この古めかしい表示器と、最新式のFM受信部(マイコン制御)を組み合わせているというところが、なんとも面白いアンバランスで、自分で作り上げたという満足感も手伝って、非常に愛着の沸くチューナーが出来上がりました。とても満足しています。
(公開: 2005/8/14)