ライヴを観る


2002年1月のLive Information
新年あけましておめでとうございます。

1/5 The Sixth Ear(永田一直+イトケン)、moai、K-122(KANKAWA.org,他)、Bondage Fruit(鬼怒無月.g, 勝井裕二.vl, 大坪寛彦.b, 高良久美子.perc, 岡部洋一.perc)、インプログレ( 吉田達也+ホッピー神山+ナスノミツル)、デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン( 菊池成孔.sax, 大友良英.g, 芳垣安洋.drs, 栗原正巳.b, 坪井昌恭.key, 高井康生.g, 津上研太.sax, 藤井信夫.drs, 吉見征樹.タブラ, 大儀見元.perc, 後関好.sax)@吉祥寺スターパインズカフェ
20:30スタートのオールナイト。知らないグループがほとんどですが、これは結構大音響の響宴になりそうなプログラムです。イトケンさんは話題のミュージシャンらしい。

1/8,9,10 真島恵理ダンスエマージ『みぎは Water's Edge3』@天王州スフィアメックス/真島恵理(ダンス)、日景晶子(琴)、Philip Gelb(尺八)、Tim Perkis(エレクトロニクス)、一楽儀光(パーカッション) 詳細はこちら
サンフランシスコ・ベイエリアで活動している即興音楽家たちのグループ『Trio Natto』と一楽さんらとの共演。

1/12 公開レコーディング@Off Site
演奏 Seymour Wright+Utah Kawasaki+吉田アミ ゲスト 土岐拓美+難波一海
録音 杉本拓
レコーディングの間中静かにしていられるかどうか心配。

1/13 高木元輝(ts)+豊住芳三郎(ds)@横浜桜木町ドルフィー
高木さんの久しぶりのライヴ。見に行かねばという気持ちになります。

1/17 冨樫雅彦&山木秀夫 Percussion Duo "Preview"@門仲天井ホール(アート・キッチン)
2/23 に鎌倉芸術館で行われるコンサートのプレ・イヴェントです。

1/19 Meeting at Off Site vol.18
Mark Wastel(cello)、中村としまる(no-input mixing board)、秋山徹次(guitar)
マーク・ウェイステルは英国出身。「彼と楽器との関係は主としてチェロと弓に対する触覚、物としての楽器それ自体、及びそれらの音響的可能性に集約される。周波数、音色、音程から極端な要素を引き出すことに焦点をあてた演奏をしている」(チラシより)そうです。



1月8日(火)
真島恵理ダンスエマージ『みぎは Water's Edge3』@天王州アイル・スフィアメックス
真島恵理(ダンス)
日景晶子(琴)
Philip Gelb(尺八)
Tim Perkis(エレクトロニクス)
一楽儀光(パーカッション)

天王州アイルは浜松町からモノレールに乗ってひとつ目の駅。スフィアメックスにたどり着くまでの間に飾りを取り外した巨大なクリスマスツリーが右手に見えました。正月明けの街にはまだ華やかだったクリスマスの名残りがあるようでした。
今日は真島恵理さんのダンスとフリー・インプロヴィゼーションによる音楽の共演。真島さんは名前を知るのもダンスを観るのも初めての方でしたが、私はとても良い印象を受けました。ダンスの中に道具を持ち込むところ、写真機を持ち出してセルフポートレートを写したりひもを使ったりするところは人によって賛否が出そうですが、基本的に動きがとてもしなやかで柔らかくて型にはまっていなくて可変的です。次にどんな動きをするのか予測がつかないようなところがあります。即興のダンスとしてはかなり良いものを持っていると思いました。ダンスだというので私はいわゆる跳躍的なものが入ったモダンダンスを予想していたのですが、そういったものはほとんどなくて、観終わった後には舞踏的な要素が入っているように感じられました。後でプロフィールを読んでみると、真島さんは結構キャリアを積んだ方のようですが、長年、自分独自のダンス表現を見つけるために、クラシックバレエ、モダンダンス、舞踏、太極拳、ボクシング、ヨガ、音楽などさまざまなことをやってきて、その多くの体験から即興のダンスにたどり着いたのだそうです。私はこれを読んだ時に、10年以上にもわたってスタジオ・ミュージシャンとしてロックやラテンなどのあらゆる音楽を経験した末に「即興」にたどり着いたというデレク・ベイリーのことを思い出しました。
プログラムの進行の仕方にも独自のものがありました。最初皆がステージに一直線に並んでいて、何度か位置を入れ替えた後それぞれが自分の位置に散って行きます。4人のミュージシャンはステージの四隅に座りました。で、まずは真島さんのダンスのみ、次ぎはミュージシャンだけの演奏、それから共演になりました。全員での共演は、異質な楽器が即興の現場でどうからみ合っていくのかということにかなりの気をとられてしまいました。正直に言うとインプロとしての尺八の演奏などは、普通の演奏とどう違うのか自分にはよく分からないです。一番印象に残ったのは、一楽さんとの共演です。この時コンピュータのティムさんの音も少し入っていたのかどうか・・・一楽さんは I.S.O の時のようなセットを使いました。とてもセンスが良くて夾雑物をそぎ落としたような今を感じさせるいい音を出していると思いました。後で真島さんと少しお話しした時に「一楽さんの音が好きで、聴きながらだと気持ちよく踊れる」とおっしゃっていました。観る方の自分もいい時間が共有できたように感じられました。
日景さんの琴のソロパートもなかなか良かったです。やはり構築的とでも言えばよいのか。こう何か恣意的にやりたいことを自由にやっている感じではなくて、自分の音や演奏の基盤がしっかりとあって、それを意識的に組み立てていく作業のような感じがしました。私は風巻さんのソロを観た時のような印象を受けました。真島さんも日景さんとの場面は「動きを溜め込んでから出していく」というようなことをおっしゃっていました。
すべてが終わった後、ダンスフロアに飲み物やお菓子が持ち込まれてささやかなレセプションがありました。

1月17日(木)
冨樫雅彦&山木秀夫 Percussion Duo "Preview"@門仲天井ホール(アート・キッチン)

聞くところによると、冨樫さんが公式の場で他のパーカッションとデュオをやるのは初めてなのだそうです。打楽器をやっていて、わざわざ関西から観に来た人がそんな話をしていました。今日の"Preview"は、2/23 に鎌倉芸術館で行われるPercussion Duo "Crossing In The Silence" のリハーサルを兼ねているそうです。アート・キッチンは、50席ほどの小さなホールですが、客席と舞台が一続きのフロアになっているので、目の前で演奏が体験できる良さがあります。ずらりと並べられた両者のドラムセットの中味はかなりの数になるようでした。アフリカの木製マリンバなども手前に置かれてありました。
演奏はやはりちょっとリハーサルらしいところがあって、譜面も置かれたりして、決められた大まかな進行を確かめていくような感じもありました。冨樫さんの演奏が主導で始まったようで、最初の何曲かは冨樫さんの演奏の様子を観ながら山木さんが少しずつ音を出していくような感じがありました。後の方になってくると、ドドドジャジャーンと巧みに弾きこなすドラムセットの音を短時間ですがいきなり挿入してくる場面も何度かあったりして、山木さんの演奏は音を出さない部分、沈黙の部分が結構多くて、それと演奏の部分、音を出す部分とのメリハリがはっきりしていると思いました。吊るしてある幾つか金属オブジェ/楽器や「お鳴り」という名称でよかったのか?お坊さんがチ〜ンと鳴らす道具も使いました。これは大友さんや大友さんの「Anode」でも打楽器奏者によって使われたもので、期せずして同じような道具/楽器があちこちで使われるところからもその時代の音が聴こえてくるのかもしれないと思いました。
冨樫さんは山木さんとは正反対で、音が途切れると感じられるところがありません。余韻があって、遠ざかったり近づいたりしながら音がいつも側に漂っているというか、いつも音に包まれている感じです。「どうしてこんなにいい音が出るのか、力の入れ具合が違うのか」などと考えてみたりします。特に金属音の打ち震えるような美しさは比類のないものだと思います。それから、今日気づいたのですが、ドラムを3つくらい使って「タトタトットット・タトタ」みたいなリズムで、あまり力を入れない音で反復しながら結構長く叩き続ける・・・これが聴いていて実に心地よかったです。
今日は冨樫さんと山木さんの演奏の違いを楽しむ、そういった聴き方ができたかもしれません。しかし私は、山木さんの音は冨樫さんの音の独自性を一層際だてているように感じられました。2つのパーカッションが共演することによって、未知の新しい何かが生じてくるといった感じにはならなかったように思われたのでした。
アンコールが終わった最後の最後、冨樫さん何を思ったのか、ひとつに繋げて吊るしてある5つくらいの鈴状の金属楽器を2つばかり左手に持って右手のスティックで音を確かめるかのように軽く叩き始めました。独自の表現を持つ人の真似のできない興にまかせてのお遊びの境地みたいでした。

1月19日(土)
Meeting at Off Site vol.18
Mark Wastel(cello)
中村としまる(no-input mixing board)
秋山徹次(turntable,trumpet)
杉本拓(guitar)

Meeting at Off Site vol.18 は、ショーン・ミーハンが参加したvol.17(12/5/2001)の時に漠然と感じていたことが、より一層はっきりとした形で自分の中で自覚されたような体験になりました。それは何かと言いますと、極端に実験的な方法で音を生成するプロセスを観るのは面白いと感じる反面、音に対する印象がどうもそれほど強く残らないのではないかということです。
演奏は例によって静かに慎重に音を出し合うように始まりました。ここに出演するミュージシャンはまず普通に楽器を演奏することはない?と言っていいくらい変わった方法で音を出すのですが、マークさんもその例に洩れずいきなりチェロの背面を使いました。20B平方くらいの段ボール紙を左手でチェロの背面に当てて、右手に持った円錐形の発泡スチロールで上を擦ります。こんな風にチェロの使われることのない個所を主に使ってのパフォーマンスが行われていきます。秋山さんは今日はターンテーブルとトランペットを使いました。回さないターンテーブル、吹かないトランペットという使い方です。パフォーマンスの詳細を逐一述べるのは難しいのですが、あとスプレー缶なども使って秋山さんらしいかなり実験的なことをやりました。 自分はもとよりこうした既成の概念を覆すようなパフォーマンスが大好きで、視覚的な面白さとダダイズムに通じるようなその精神性/思想には大いに惹かれるところがあります。しかし、聴き手の立場に立ってみると、これはわがままなのかぜいたくなのかわかりませんが、今日は音に対する印象がどうも希薄である、音が具体的に響いてこないという不満が頭をもたげてくるように感じられました。
そこへいくと、杉本さんの音は実に鮮やかに響いてきます。前半は絶頂期のデレク・ベイリーみたいだし(いつ?そんなのあり?と聞かれると困る ^_^; ほとんどレトリックとして使っている)、後半は更に強い音が時おり琴の音のように聴こえてきて、バーナード・ギュンターの"JAPAN"" の中で琴の音に聴こえたのはギターの間違いではなかったか、などと思い直してみる・・・。先端が螺旋状になった長い金属棒をプリペアドして、その棒を弓で擦る音を聴いた時には、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の中の話、マドレーヌ菓子を紅茶に浸して食べた瞬間に、幼い頃のコンブレーでのおやつとその頃の幸福感がよみがえるという有名な行(くだり)、あの「無意志的想起」ってやつはこれなのか・・・!自分もまた、こんな音は思い出そうと思っても思い出せるもんじゃない、何十年も昔の子供の頃にギーコギーコ揺らして乗ったブランコの音が今鮮やかによみがえってくるように感じられたのでした。

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