このライヴ情報は、とりあえず目についたものを取り上げています。実際に行ったライヴについては、下記にレポートしていきます。
1/8 飛頭@入谷なってるハウス
ミドリトモヒデ(sax)、菊地雅晃(bass,electronics)、塚本真一(piano)、イトケン(drums)
なってるハウスでは、1/24 「ふいご」や1/30「沖至tpセッション(内橋和久さん参加)」などもあります。
1/11 Meeting at Off Site vol.28
Evan Gallagher(casio tone)
Meeting シリーズは、2003年からゲストミュージシャンのソロ演奏になります。
トフは10、11日と京都へ。
1/20 大友良英プレゼンツ・キッドアイラック・ニューミュージック・コンファレンス vol.3
大友良英(turntable)+中尾勘二(楽器未定)/杉本拓(guitar)+江崎将史(trumpet)+宇波拓(electronics)/Sachiko M(contact microphone)/大友良英(percussion)
1/30 totトリオ@西麻布super deluxe
totトリオ:ティム・バーンズ(drums,percussion)、オッキュン・リー(cello)、トシオ・カジワラ(turntable)&Thermo
オッキュン・リーさんの出演がキャンセルになって、コントラバスの菊地雅晃さんが出演することになりました。
1/31 weed beats@新宿Pit-Inn(昼の部)
ミドリトモヒデ(sax)、斉藤良一(guitar)、塚本真一(piano)、角田亜人(turntable)、清水良憲(bass)、河本隆弘(drums)
演奏が終わった後、ピアノとエフェクターの関係を入念にチェックする?菊地さんを尻目に、残り3名のミュージシャンと私は、「この4人にしか出せないものがある」というミドリさんのお言葉に円陣を組んで「そうだ、そうだ」と(心の中で)確認し合いました。…というほどの大げさな場面でもなかったのですが、このユニットの内部で繰り広げられる楽器と音の複雑で微妙な関係性には毎回違ったテイストがあって、そこには音楽グルメな私を魅了して止まない実に深い味わいがあります。
今日はまたやってくれました。前半の最初の曲、ミドリさんのバラード風の「夏の医者」の中で、部分的にエフェクターにかけられて変調されたピアノは、また別の初めて味わう感覚を呼び覚ましてくれました。それはまるでひとつの情景に奥行きを与えてくれるようでした。例えば、マネの絵「草上の昼食」を眺めるだけではなくて、まるでその絵の中に実際に入って行くような感覚とでも言えばいいのでしょうか。菊地さんのアイデアと塚本さんのピアノのテクニックが見事にかみ合って、このピアノのまた違った魅力を引き出していたと思います。
前半最後の「ソバオロジー」はジャムセッションで、なってるハウスの広沢さんがテナーで参加しました。ベースを始めとして、皆の確かな腕がここでも確認できました。
後半は、菊地さんのスピードに乗って行くような「ビーコン」など。出色だったのは、ロックの曲だそうですがバラード風の「ダークスター」。エフェクターにかけたピアノをふんだんに使いました。途中から、ヨーロピアン・フリー・インプロヴィゼーションに現代音楽のエッセンスがちりばめられたような雰囲気の展開になってきて、とても素敵な気持になりました。特に菊地さんのベースと塚本さんのピアノが、この美しいピアノは、時としてどうも私にはクールに現代音楽っぽく聴こえることがあるのですが、そう感じられる方向に引っ張って行くような感じがして、そうなってくるとミドリさんのサックスが「ジャズなんだよ」と顔を出してくるような…そんな感じもしました。演奏が終わると「(ダークスターが)飛んで行ったね」とミドリさんがおっしゃいました。確かに「ダークスター」は飛んで行ったようでした。東の空から西の空へと。
今日の演奏はとても楽しめるものだったのですが、そのことをどう書いていいのかしばらくの間ためらいがありました。というのは、今日のような特に変わったことはしないオーソドックスな(と言っていいのか?)フリー・インプロヴィゼーションについては、既に言いつくされた言葉でしか語ることができないのではないかという思いがそのようなためらいを呼び起こしたからなのかも知れません。
風巻さんのドラムの変則的なリズムは、相手の演奏を鼓舞して良いものを引き出すようなところがあると思うし、梅津さんのサックスも経験の豊かさを感じさせて飽きさせないところがあります。今こういうデュオを聴いていると、特にこれがフリー・インプロヴィゼーションだとかアヴァンギャルドだとかいう感覚はあまりなくて、ただ良い演奏を聴いているだけという気持になってきます。
演奏の案内状に添えられたニュースレターには、風巻さんがダニー・デイヴィスさんや昨秋に亡くなったぺーター・コヴァルトさんに音楽のすばらしさを教えられたこと、彼らの演奏が始まると磁場のようなものができたことが書かれてありました。ちょうど'80年代の中頃でしたでしょうか、間章の著作集などを読み始めた私も彼らの音楽に全く同じ体験をしているのでそのことを書き添えておきたいと思います。そして'86年に出たあのアルバム"global village suite - improvised"(SAJ-60)。ダニー・デイヴィス(sax)、小杉武久(violin)、ぺーター・コヴァルト(bass)のトリオによるこのレコードは、当時私が最高に愛した一枚でした。これはいっこうにCD化する気配がないですが、今聴いても本当にすばらしい!こういうフリー・インプロヴィゼーションの良さがジョン・ブッチャーさんあたりに繋がっていると勝手に思ったりします。
最初は大友さんのパーカッションから。パーカッションというとやはり叩くことしか頭に浮かばない私でしたが、大きなシンバルを吊るして短かめの弓で縁をゆっくりと弾きました。単一均一ではない音が出るものだなあと思いました。
順番の記憶にちょっと不安がありますが、次ぎはSachiko Mさん(だったと思います)。ツーという低い持続音と同時に高いところにある左右のスピーカーからノイズが断続的に飛び出してきました。その音にはまるで生き物か何かのような、例えば狭い箱に押し込められた蛇がのたうちまわっているかようなランダム感があってとても面白かったです。この人のエレクトロニクスには、良い意味で洗練された完成度を感じます。今日のハイライトだと思いました。
"trio at offsite"の3人は、今まで生で聴く機会を逃してきたので、あの演奏が聴けるのを楽しみにしていたのですが、CDとは全く別の音数の少ないものになっていました。正確に数えたわけではありませんが、杉本さんのギターは間(ま)を入れてボヨーンと10回ほどかき鳴らすだけ、そのうちの何回かは途中で押さえて残響を短くしていたでしょうか。江崎さんにいたっては、座って演奏していたのでしょうか姿さえも見えなかったです。新しく移転したこのホールは、客席がステージと同位置に低くなったので、後方だと演奏者がよく見えなくなりました。
最後は大友さんのターンテーブルに中尾さんがトロンボーン、アルトサックス、クラリネットと出してきました。私はターンテーブル時代の大友さんをあまり観ていなくて、そもそもターンテーブルというものをそう何度もじかに観ていないのでまだ物珍しさがあります。面白いものだなあと思いました。中尾さんはちょっと大友さんに押され気味だったでしょうか。
5月か6月か、正確な時期は聞き忘れてしまったのですが、ハープのロードリー・デイヴィースが来日してここで演奏するそうです。帰りは予想しなかった雨。明大前の駅まで小走りしました。
追加訂正
ロードリー・デイヴィースの来日は7月上旬だそうです。
今月は知らないグループを観る機会があります。古池さんのユニットふいごもそのひとつ。楽器編成からしてちょっと変わっていて、なかなかユニークなところがありました。短かめな曲を次々に演奏して行くのですが、その古池さんの作曲に面白みがあると思いました。前半はトロンボーン、サックス、チューバに抑制を与えて、その間ピアノを疾走させるコントラストのある曲、具体的には、トロンボーンやサックスにブーッというような持続音を出させて、その間宇波さんのピアノがフリーっぽく聴こえるように弾きまくる曲が印象的でした。後半になってくるとメロディーのあるものが多く出てきましたが、曲想が洗練されているようでいないような、哀愁があるようで無いような…おかしな感じがしました。
「独自のヴォキャブラリーで編みこんだ作曲作品というサーキットの上で、激しく衝突を繰り返しながら疾走するエキサイティングなライヴ・アクト」ー チラシにあるtotトリオの紹介文は、今日の演奏の特徴を適格にとらえた言葉だと思いました。オッキュン・リーさんが菊地雅晃さんに代わったとはいえ…。そこには大きな波が打ち寄せてくるようなダイナミズムがあったように思います。素晴らしかったです。
weed beats はミドリさんのもうひとつのユニット。思った通り上質な音楽をやっていると思いました。飛頭との大きな違いは、ドラムとベースが定位置にいること。ステージ上の場所としても音としてもしかるべき位置に留まっているということでした。
この日は、なってるハウスを紹介する雑誌か何かの取材が来ていて、たまたま出演していたこのグループの写真を撮っていきました。取材クルーが立ち去った後、メンバーは広沢さんを通してどんなグループかを紹介するコメントを求められていたようですが、その時にドッと笑いが起こって、きっとご本人たちも何とコメントしていいのか分からない笑いだったんじゃないかと思います。私もこのグループを音楽のどのジャンルに入れていいのかさっぱり分からない。若い人たちの間では、と言ってもごく一部なのかもしれませんが、音楽のジャンル分けというものがとっくに崩壊している。そんな現場に居合わせたという感じでした。
1月30日(木)
ティム・バーンズ(drums,percussion)+菊地雅晃(bass,electronics)+トシオ・カジワラ(turntable)@西麻布super deluxe
Thermo:須藤俊明(ライヴ・ドラミング)+君島結( ライヴ・ミキシング)
ティムさんを観るのは昨年に続いて2度目ですが、自分にとっては徐々にそのすごさを現わしてきたという感じ。何よりも独創性を感じます。オリジナルのパーカッション・セットは、太鼓の数がやたら多くてそれに比べるとシンバルがやたら小さい。そのひとつは据え付けられてあって、あとの幾つかは無造作に太鼓の上に置いてあります。で、それらを流れるような手さばきで色々に操って、時には小道具を使って音を出します。今日はその他に大きめの鈴を両手に持ってマイクに近づけて鳴らしたり、小銭のようなものを客席に向かって投げるのが印象的でした。演奏には自発性があって、次々に繰り出すヴォキャブラリーは豊かで飽きさせません。くねらせるように身体を使うパフォーマンスは、表面的ではなくて音を根底から変化させる感じがありました。ターンテーブルのトシオ・カジワラさん、ターンテーブルというのは、それを操る人のセンスをダイレクトに反映してしまうとモノだと思いますが、この人にはセンスの良さを感じました。オーバーなアクションではなかったですが、やはり身体を使って上手に変化をつけていました。キーボードのないアナログシンセか?エレクトロニクスも使っていたようでした。菊地さんの主に弓を使った演奏は、"…15分なら過去にも未来にも行けるよ…"をほうふつさせました。しっかりした音、重みのある音、端正な音、しかし途中でエレクトロニクスのスイッチをオンさせた時に惹起される感覚、別のどこかにスリップしていくような感覚はたまらんと思いました。
で、最初の演奏はティムさんとトシオさん。次ぎは雅晃さんが加わって3人の演奏になりました。ちまちまとした音の掛け合いぶつかり合いのようなものが感じられなかったのが良かったと思います。さまざまなヴォキャブラリーを内包した音群が、大波か高波のようになって相手の方にどっと打ち寄せていくかと思うと今度は相手の方から波が打ち寄せてくる…そんなダイナミックな感じがあったと思います。そう感じさせるところに作曲の作用が何か働いているのかなと思いました。
これに先立つThermo の演奏は、ドラムの演奏をリアルタイムでミキシングしていたのかな。小気味良いリズムが時に耳を突くようなエレクトロニクス音と一緒になって元気の出るようなフレッシュな若々しさがありました。
1月31日(金)
weed beats@新宿Pit-Inn(昼の部)
ミドリトモヒデ(sax)、斉藤良一(guitar)、塚本真一(piano)、角田亜人(turntable)、清水良憲(bass)、河本隆弘(drums)
演奏した曲名がいつも覚えられなくて何ですが、最初がオーネット・コールマン、あとはソニー・ロリンズなどの本格ジャズの割と難しい曲をやりました。ミドリさんの曲?「ソバオロジー」なども。キュッとタイトに締まった感じの演奏で、いつものミドリさんと塚本さんのいい音に、ターンテーブルとギターがノイズっぽく入ってきているといった感じでした。といってもそれほど強烈にではなくて、特に角田さんのターンテーブルは全体を通して静かにそーっと入ってくるような感じでした。飛頭でも演奏している「クランブリング…(何とか)」というバラードには、サーという静かな波のようなターンテーブルの音が加わりました。アップテンポでも勿論いい演奏をしますが、バラードになるとミドリさんと塚本さんは一層魅力を発揮すると思います。何でもないようなジャズのバラードは、むしろごまかしが利かないので実はとても難しいのではないかと思ったりします。
聞くところによると、ミドリさんも大蔵雅彦さんと同じようにアート系出身の方なんだそうです。新しいものに目を向けるアンテナ、そしてサウンドに対するこだわりとセンスをお持ちの方だと思いました。