ライヴを観る


2001年10月のLive Information
このコーナーでは自分が観たいと思う毎月のライヴ情報をお届けしたいと思います。
実際に観たライヴについては、順次下記にレポートしていくつもりです。

10/3 Meeting at OFF SITE vol.15 /Seimour Wright(alto saxophone)、中村としまる(no-input mixing board)、秋山徹次(amplified acoustic guitar)

10/6 三宅榛名(piano)、Odd-Arne Jacobsen(guitar)ゲスト:Ernst Reijseger(cello)、豊住芳三郎(ds,perc)@山手ゲーテ座(横浜ジャズプロムナード)

10/8 Ernst Reijseger(cello)、豊住芳三郎(ds,perc)@駒沢アポロ
10/8 DAY & TAXY/Christoph Gallio(soprano & alto saxophone)、Daniel Studer(double bass)、Marco Kappeli(drums)@新宿Pit-Inn

10/13 October Bass Tri-Logue/斉藤徹、バール・フィリップス、井野信義@甘利紘陶房野外舞台/長野県小諸市平原1522 なんと!トフの実家は小諸市なのだ(^_^)。観に行けそうもないが(-_-)。詳細はこちら

10/14 Ryoji Ikeda Concert 2001@恵比寿ザ・ガーデン・ホール 詳細はこちら

10/15 Off Site Composed Music Series Vol.8 /SPOKEN WOR(L)DS テキストを使った作曲の試み? 語り手 秋山徹次 詳細はこちら

10/23 風巻隆ソロ・パカッション@キッド・アイラック・ホール 問い合わせ:tel 0422-42-1800 風巻

10/27 Diskaholics Anonymous Trio Japan Tour 公演は中止になりました。 詳細はこちら
Thurston Moore(guitar)、Jim O'Rourk(electronics)、Mats Gustafsson(reeds)@高円寺20000V Guest:不失者
10/28 Thurston Moore(guitar)、Jim O'Rourk(electronics)、Mats Gustafsson(reeds)@青山CAY Guest:JAZZKAMMER(from Norway)/thermo



10月6日(土)
横浜ジャズプロムナード
三宅榛名(p)+Odd-Arne Jacobsen(g)@山手ゲーテ座
ゲスト:Ernst Reijseger(cello)
豊住芳三郎(ds,perc)

インプロヴァイザーとしての三宅榛名さんは、自分の中では評価が高い。小杉さんと共演した"Angels Have Passed" は大好きな一枚だし、榛名さんの構築的なピアノは無駄な音を出していると感じられることがほとんどないからです。ノルウェーのオッド-アルネ・ヤコブセンはどういう方なのか?生え抜きのインプロヴァイザーという感じではないようでした。穏やかな感じの方で、後半の演奏で実際にやりましたが、フリー・インプロヴィゼーションの演奏中に澄んだ優しい音色でダニー・ボーイを引用してしまうような人でした。二人の共演は、ECMの一枚にでもありそうな、音のタペストリーを織り上げていくような演奏。即興的に音楽を演奏しているといったような感じになりました。
後半はお待ちかねのゲスト登場で、最初は豊住さんとエルンストさんのデュオ。これに榛名さん、ヤコブセンさんが順に加わりました。エルンストさんは長髪になっていて、今までに観た写真とは別人のよう。特に派手なパフォーマンスは見せないし小道具も使いませんでしたが、素晴らしく魅力的な人でした。肩の力が抜けていて自然体というか、一見するとボケッとしてやる気のないような感じなのですが、集中してチェロを弾く時には眉間にシワを寄せる真顔になります。でもそれは一時だけで、またボケっとしたり、興に応じて口笛を吹いたり隣のヤコブセンさんをジッと見つめて微笑んだり表情がとても豊かです。演奏の方も一本調子ではなくて、チェロという楽器の中に打楽器やギターやヴァイオリンやベースの要素を隠し持っていて、状況に応じて相手との関係性においてそういった要素を少しずつ垣間見せるといった感じでした。うまく言葉に言い表せないのですが、完全にそういった楽器に成り切ろうとするのではなくて、そういう要素もチェロの中にあるというのを演奏の流れの中でごく自然に少し見せるといった感じなのです。具体的にどういうことかというと、例えば、自分の演奏に一生懸命なヤコブセンさんの隣で彼を見つめて微笑んでいたかと思うと、彼に合わせてチェロをギターのように抱えて弾きだしたり、高い位置にチェロを掲げて榛名さんの方に歩いて行って、後ろでヴァイオリンのような感じでピアノに合わせるかのように弾き始めたりすることです。でも私がとても感心したのは、こうしたパフォーマンスにもかかわらず、チェロという楽器が持つ品格を少しも損なうことなく、とても美しい音色を聴かせてくれたことですが、後で資料(ヨーロッパのジャズ・ディスク1800)で調べたところ、エルンストさんはオーセンティックなチェロの演奏でもかなりハイレベルにある人だそうです。
相手に最大限の献身を払いながら自分の自由を表現する、今日のエルンストさんや榛名さんの演奏を見てそう思いました。自分は聴こえてくる音だけが好きなのではない。そんなフリー・インプロヴィゼーションの関係性/思想性に惚れ込んでいるんだという思いを新たにしました。最後は榛名さんの「サブちゃん、三人でやらせて」の一言で豊住さんが抜けました。後で周囲の反応を聞くと、ドラムスが抜けた方がすっきりすると感じたのは私だけではなかったようでした。

10月6日(土)
横浜ジャズプロムナード
巻上公一(声、歌)@山手ゲーテ座
秋元カオル(vo,g)
佐藤正治(vo,ds)

ゲーテ座の三宅榛名さんたちに次ぐプログラムが巻上さんだったので、居残って観ることにしました。ゲーテ座は山手の高台の外人墓地と港の見える丘公園の間にあります。セッティングが終わる30分くらいの間、信号を渡ったすぐ先の公園でノラ猫をかまったり、ベイブリッジが臨める港を眺めて時間を過ごしました。
巻上さんはドシュプルール(doshpulur)というトゥヴァの三弦楽器を持って登場。りんごを輪切りにしたような形のボディに美しい彩色が施された民族楽器です。で、ジャラジャラ鳴らしながらのヴォイス・パフォーマンスが始まりました。お馴染みのビンビン鳴らす口琴や消火器みたいに真っ赤でほら貝のような?拡声器のような?形のものなども出てきました。こんなところで観られるとは思いませんでしたが、話題のテルミンが登場して、巻上さん武術のポーズみたいな手つきをして操っていました。何時の頃からか、ドラムスとギターが順に加わっていました。ドラムスはアフリカ系のドラムからUFOのような形のエレクトリック・ドラム?などを設えたかなり変則的でユニークなセット。ギターもエレクトロニクスに繋げてあるようなもので、テーブルの上に置いてネックのところにブリペアドしてホワワ〜ンとしたノイズを出したりもしました。二人ともヴォイス・パフォーマンスをやりましたが、何か中途半端な感じ。巻上さんは堂々としていて説得力があります。三波春夫のような感じで架空のアジア語のような歌を歌いましたが、本当にそういう言葉を話す国があって「みなさま、ようこそいらっしゃいました。本日は良いお天気で・・・」とか何とか言っているような錯覚に陥りました。本当に可笑しくてただただ笑ってしまうばかりなのですが、こんな時に巻上さんを観ると何だか平和の使者みたいでのどかな気持ちになります。
先ほどの信号からフランス橋に至る谷戸坂は急な下り坂です。夕方の薄青い空に灯りのともったマリンタワーや観覧車が見えて、ここもまた横浜らしい風景です。夕御飯はどこで食べようかなあと思いました。

10月8日(月)
DAY & TAXY@新宿Pit-Inn
Christoph Gallio(soprano & alto sax)
Daniel Studer(double bass)
Marco Kappeli(drums)

クリストフ・ガリオはとてもいいサックス・プレイヤーだと思う。表面的な軽い音ではなくて一音一音が根底から変化するような音。肩を左右に揺すぶらせて身をくねらせて、軽くステップを踏むみたいに足を上下して、全身から音を繰り出しているような感じでした。ソプラノ・サックスの音はレイシーに酷似していました。音楽的にもほとんどレイシーの方法論を踏襲しているといっていいのか、曲想がレイシーに似ていてレイシーが作りそうな曲ばかりをやりました。今日は前半と後半を通して20曲くらいかそれ以上演奏したのではないでしょうか。そのいずれもが、あるいはほとんどが誰かに捧げられており、最初はクリスチャン・ディオールと聴こえましたが、自分の知らない亡くなったピアニストの名前なども挙げられていました。終盤の方になると曲の紹介時に「difficult piece」という言葉も飛び出して、演奏の場が「サックス表現における作曲とその可能性」(^_^)みたいな感じになってきて、研究者のような真面目な雰囲気のクリストフさんの、作曲とリンクしたサックス表現の探究と日頃の精進が窺えるようでした。どちらかというと短かめの曲が多くて、即興と作曲ということで見ますと、作曲に比重がかかっているように感じられました。
会場では、クリストフさん率いるDAY & TAXYのCDが三枚売られていました。いずれもクリストフさん以外は別のメンバーで、今日のメンバーの録音はまだないそうです。'97年録音の"Less And More"を買ってみましたが、ベースとドラムスは現メンバーに比べると弱いというか単調な感じがします。今日のグループの方が、より複雑な迷路的な構成に足を踏み入れているように感じられました。小耳に挟んだ話では、昨日(7日)の横浜ジャズプロムナードの演奏ともまた違うそうです。ちょっと面白いというかアレッと思ったことですが、しばらく前に聴いたフリー・インプロヴィゼーションのアルバム"Links"ではレイシーっぽさが感じられないので、DAY & TAXYではかなり意識的にレイシー的なアプローチを試みているのかなと思いました。

10月14日(日)
池田亮司コンサート2001@恵比寿ザ・ガーデン・ホール
music,total direction: Ryoji Ikeda
video,images: Shiro Takayuki,Hiromasa Tomari
lighing design,stage manager: Takayuki Fujimoto

池田亮司の日本初の本格的なソロ・コンサート。入り口の扉に「心臓の弱い方はご遠慮下さい」というようなはり紙がしてありました。演奏が始まると会場はまるで音の戦場のよう。かなり身体にこたえるコンサートになりました。無彩色に近いヴィデオの画面、レーダーを覗いているような画面が映って、何秒かおきにまぶしくて正視できないような閃光が上がります。大量の数字で埋め尽くされた画面が現われて、猛烈なスピードで数字が変化します。数字の組み合わせで開くキーの数字部分をどんどん早送りして動かしているような感じです。これもまた、もの凄いスピードで変化する風景のコラージュが映ります。映像のすべてを言葉で描写することはできませんが、画面はとても無機質な感じです。音の方は何と名付けたらいいのか、ミニマル・テクノ・ノイズとでも言えばよいのか、重低音は耳に対する刺激を通り越して内臓全体を揺すぶられるような感じです。チラシによると、音響、映像、照明がともにデジタル制御されているそうです。これらの要素が一体になって刺激効果を倍増するような感じ。40分くらいの気を緩めることができない演奏でした。「・・・the most ugly music in the world」というせりふが途中画面に挿入されていましたが、これが作者のメッセージ/思想なのだろうかと思いました。
池田亮司の音楽は、好むと好まざるとにかかわらず、ある意味で恐ろしいくらい今の時代を映す鏡であるように思われました。こんなことは言いたくありませんが、虚飾にすがりつき幻想に浸ろうとする現代の人間たちに匕首(あいくち)を突きつけているようでもあると思われました。
今日は2回目の追加公演があるそうで、開場前からたくさんの人たちが集まっていました。若い世代の人たちが圧倒的に多くて人気のほどが窺えます。整理番号順の入場だったのですが、300人以上の人が並ぶのはやっかいなことでした。ホールのある恵比寿ガーデンプレイスは、中央に広場があって周囲に三つ星のフレンチ・レストランやデパートやホテルが立ち並ぶおしゃれなところ。カフェやワインショップやベーカリーなどもありますが、自分はあまり居場所がないような感じがします。以前ここは恵比寿のビアガーデンで、レンガ造りの建物や列車の車両をそのまま利用した飲食スペースがありました。レトロな雰囲気のあった以前の方が私は好きです。

10月20日(土)
現代美術の国際展
横浜トリエンナーレ2001
「メガ・ウェイブー新たな総合に向けて」
会期9月2日(日)〜11月11日(日)

横浜トリエンナーレはさほど観たいと思ったわけではありませんが、新聞屋さんから招待券をもらったし、連れ合いも「行ってもいいよ」と言うので出かけてみることにしました。メインとなったパシフィコ横浜展示ホールC・D と赤レンガ1号倉庫には100人近い作家の作品が展示されていて、ざっと観て歩くだけでも結構時間がかかりました。盛り沢山な内容で、ありとあらゆるものが詰め込まれているといった感じですが、正直言って自分にとって特に観る必要があったと思われるような作品は見当たりませんでした。先に行われた横浜ジャズプロムナードもそうですが、街を挙げての巨大イベントと化して集客第一になってしまうと、大量の出演/出品と引き換えに内容の焦点がぼやけてしまって、結果として自分が観たいものはごくわずかかほとんど無いようになってきてしまうように思われます。ジャズプロムナードでは、参加ミュージシャンをプロとアマに分けて名前を列挙するだけの乱暴さにも驚かされました。これは自分にも言い聞かせたいですが、ひとつひとつの音楽に丁寧に向き合いたいものです。また、向き合えるような音楽に出合いたいものです。
とはいえ、パシフィコ展示ホールには音楽に関わる幾つかの展示があって自分の興味を引きました。一柳慧さんのブースはいかにも現代音楽といった感じ。視力検査の時の記号のようなものが並んだ映像にピアノ曲が付けられたヴィデオ作品とか、グラフィック・スコアのようなもの、すなわちリトグラフか何かのようなテクスチャーの上にスコアが書かれたものなどがありました。スコアといっても音符がぎっしりと並んでいるものではなくて、直線が渦巻きに変わって下に「鼓動が高鳴る」というような大まかな指示を書き記してあるものでした。それから、「あら、こんなところに・・・」と思ったのですが、秋田昌美(メルツバウ)さんのブースがありました。床に据え付けられた大きな電光掲示板?に沼地が表現されていて巨大なカエルが行き交うといったインスタレーションでした。カエルに対するある種の偏愛があるのか、色鮮やかな何種類ものカエルが描かれたレコード・ジャケットなども展示されていました。何とも言えないような耽美的な気配が感じ取れるようで面白かったです。
赤レンガ倉庫では「音声ガイド」を耳に着けて会場を回ることにしました。これは通常のミュージアムの音声ガイドと全く同じ仕組みですが、コンセプトが実に面白い(^_^)!!! この「音声ガイド」の中には刀根康尚さんのサウンド・インスタレーション「Parasite/Noise」が入っていて、各作品の展示ブースに入ると天井にある赤外線センサーにプレーヤーが反応して音声が出てくるというものです。内容は文学/哲学作品や箴言のようなものなどからの抜粋によるテキストの短い朗読の後に、エレクトロニクス音のやはり短いノイズがババーッと2、3回入るという刀根さんらしい作品。この「音声ガイド」を着けてブースを回ると、展示作品に寄生する(刀根さんの)作品が聴けるというわけです。
実は今日20日は、ここ赤レンガ倉庫で大友さんや杉本さんたちの演奏が予定されていたので、楽しみな気持ちもあったのですが、実際ここに来てみると彼らの演奏を聴くのにそぐわない雰囲気があって、キャンセルになってかえって良かったかなあと思いました。特に音楽を聴きに来るのが目的でもない不特定多数の前で演奏するのはもったいないような気がしますから。

10月23日(土)
風巻隆ソロ・パカション「PERCUSSIO」@キッド・アイラック・ホール
風巻隆(drums,percussion)

風巻さんの今日のソロ・コンサートは、レコーディングも兼ねているそうで、パーカッションの周りには4〜5本のマイクが据え付けられていました。演奏を始める前に、途中休憩を入れて30分の演奏を三つやるという説明がありました。ドラムセットは、足で叩く大きな太鼓一つとスネアドラムとシンバルがそれぞれ三つという編成。風巻さんはブラシは使わないのだけれど、幾つかの民族的小楽器を使います。マラカスをスティックと一緒に持って振ったり、タンバリンやカリンバを持ち出してきたり、あともうひとつ何というものだろうか?くすんだ銅色のいびつなマグカップのようなものをスティックと一緒に持って叩いたりしました。一回30分の演奏でもずっと叩きっ放しというのではなくて、割と短い演奏を幾つもやるという感じです。
風巻さんのスタイルは、ノイズを多用したりパフォーマンスを取り入れて太鼓の領域を拡大して行くのでもなければ、ジャズやロックのいわゆる上手いと言われるようなグルーヴのあるドラムらしいドラムでもないと思うのですが、聴いているととても心地よくて最後まで飽きることがありません。思うにそれは楽器から出す音の先まで神経が行き届いているような風巻さんらしい良い音と複雑なリズムにあるのだと思います。観ているとむしろとてもシンプルな、解体的であると同時に構築的な作業の現場に立ち会っているような感じがします。不用意な無駄な音をできるだけ排除しようとしながら音とリズムを自由に組み立てていくような作業です。途中スティックと一緒に持って振っていたマラカスのひとつが、パカッと割れて煙りが上がるアクシデントがあってちょっとビックリしましたが、風巻さんは上手く切り抜けていました。
演奏を観終わると、私は何だかとても充足した気分になりました。それは良い音の太鼓を聴いた後の生命力を鼓舞されるような感覚だけではないような感じがしました。ひとりの演奏者が何の後ろ楯もないソロの現場で、デレク・ベイリーが言うように、「その人の全存在を巻き込んで」演奏に向かう姿はとても感動的でした。フリー・インプロヴィゼーションの醍醐味がここにもあると思われました。

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