ライヴを観る


2001年11月のLive Information
今月は観たいものがたくさんあって困ります。

11/1「TAGOMAGO/ASAP 発売記念ライヴ」/ TAGOMAGO、永田一直&大友良英DUO 、中村としまる@Star Pine's Cafe
TAGOMAGOとは何ぞや?!観るしかないか。

11/2 秋田昌美ナイト@MILK 詳細はこちら
ノイズが観たい!がしかし、クラブでオールナイトとなるとビビッてしまう。行ったあかつきにはクラブ初潜入記を書くぞ(^_^)。

11/5 Deluxe Improvisation Series Vol.19 / Thomas Ankersmit(sax)、今井和雄(guitar)、宮本尚晃(guitar)、Sachiko M(sine wave)@Deluxe
昨年観た時は???のトーマス・アンカーシュミット。今年は何かつかめるだろうか?共演メンバーが新鮮だ。

11/17 Batofar Tokyo @CAY/ Erik M & Sachiko M 他出演 詳細はこちら
やはり夜9時スタートのオールナイトらしい。ほとんど無理かも。

11/18 Maya Homburger(baroque violin) & Barry Guy(double bass) @Egg Farm
11/21 Maya Homburger(baroque violin) & Barry Guy(double bass) @原美術館
エッグ・ファームに行こうか、原美術館に行こうか難しいところだ。

10/22 Off Site Composed Music Series Vol.9 大友良英ギター・ソロ 詳細はこちら
さっちゃんやたくちゃんが曲を提供している。

10/23 in Concert/ Bernhard Guenter & Steve Roden/ Anode:大友良英、杉本拓、Sachiko M、秋山徹次、芳垣安洋、植村昌弘、イトケン、高良久美子 DJ:佐々木敦@Deluxe 詳細はこちら
大友さんの新作「アノード」は楽しみだ。打楽器が3人も入っている。デラックスの広さで客の収容は大丈夫だろうか。

11/24 All John Cage Program/ 高橋悠治&高橋アキ ピアノ・デュオ@彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
晩秋にじっくりジョン・ケージも悪くない。



11月1日(木)
TAGOMAGO、大友良英&永田一直DUO、中村としまる@Star Pine's Cafe
Video:生西泰典

自分は何でもライヴで観なければと思っているわけではありませんが、何年か前にマース・カニングハム舞踊団の公演でデイヴィッド・チュードアを初めて聴いた時、一挙に電子音楽のすごさに開眼した覚えがあって、それ以来エレクトロニカ関連はなるべくライヴで観るようにしています。パワーが最大限に発揮されるライヴだと、ダイレクトに体感ができる良さがあると思います。
今日のライヴは、そんな私の期待に違わぬ大音響でしたが聴いた後が大変でした。家に帰ってからも耳鳴りとも頭痛ともつかない残響が続いていて、ヘトヘトになってしまって、翌日はこんこんと普段の二倍は眠ってしまいました。平日の夜に一日の仕事や活動を終えて観るにはちょっとヘヴィーな内容で、ライヴの前後に余裕がないとなかなか出かけるのも厳しいかなと思います。
今日の演奏ではすべてバックにヴィデオ映像が流されていて、これも刺激を倍加する要因になっていました。 最初は中村としまるさんのソロ。ノー・インプット・ミキシングボードは、急にびっくりするような爆音が 飛び出すのが魅力なのか欠点なのかよくわかりませんが、音の微調整が効いて「ああインプロをやっているんだなあ」という感じがよく伝わってくるのがとても面白いです。
大友さんと永田一直さんのデュオは、「こりゃ難聴になっちまうぜ」みたいな始まり方で、思わず耳を押さえてしまいました。周波数だか何だかがちょうど耳に一番刺激的なところに留まっているような感じ。面白いと思ったのは、刺激が耳を中心にした首から上に留まっている感じで、先日の池田亮司のコンサートの時のようにお腹に響く重低音がなくて、重低音があるものをテクノと呼ぶのかなあなどと思ってしまいました。全然間違っているかもしれませんが。(^_^;) 途中で両者が機材の縁を持ち上げてテーブルに軽く打ち付けてズシ〜ンという震動を加えましたが、そこまでやるのかってな感じで、恐竜がノッシノッシと接近中(^_^)みたいな感じになって楽しくて興奮しました。
最後は今日のメインのTAGOMAGO/仲丸毅さんという方の個人ユニットです。割と均質的なリズムの反復で、私は6月に観たカール・ストーンを思い出しました。仲丸さんはコンピュータではありませんが。この時はヴィデオがそれまでのものとはがらりと変わって、ダンスの実写を自由に構成したものとか、抽象や具象のドローイングをアニメ化したものなどで、なかなか凝ったアーティスティックな感じがして面白かったです。音に耳を傾けながら一生懸命ヴィデオの画面を目で追うとクタクタになってしまいますが。
永田一直さんとTAGOMAGOさんは、12月にパリで開催されるBATOFAR SEEKING TOKYO/Invitation of japanese electronic scene に出演されるそうです。池田亮司のコンサートも本当に若い人たちばかりで驚きましたが、新しい世代の人たちが、こうしたエレクトリック・カルチャーの担い手になっていくんだろうなあと思いました。

11月5日(月)
Deluxe Improvisation Series Vol.19 @Deluxe
Thomas Ankersmit(sax)
今井和雄(guitar,etc)
宮本尚晃(guitar)
Sachiko M(sampler with sine wave)
中村としまる(no-input mixing board)

昨年のOff Site では物足りなく感じたトーマス・アンカーシュミットですが、今年はいろいろと見えてくるもの、聴こえてくるものがあって、一年近く経って自分も少しは成長できたのかなとうれしくなります。今日は共演者が一人ずつトーマスさんとデュオをするという形式。最初の中村さん、次ぎのSachikoさんとのデュオは、ごく微少/微細な音の共演になりました。トーマスさんは、基本的にとてもミニマルな人で、演奏らしい演奏をしないスタイル。時折マウスピースをはずしたりしながら、スースーといった感じの音、サックスに息を吹き込む音、あるいは吹き込んだ息がサックスを通して洩れる音?を聴かせるだけといった感じでした。no-input mixing boardとsampler with sine wave については、今日は新たに思うことがありました。私は何回かライヴを観ているうちに、これらは微調整が効いて小さな音から大きな音まで、かなり自由に自分が出したい音を操作することができる、音をどう操るかという自分の意志をよく伝えることができる機材であると感じるようになりました。知っている人には自明のことかもしれませんが。
今井さんは視覚的にも楽しませてくれました。金属の料理用ボールをドラムのスティックで叩いたり、50cmくらいの木の柱を三本並べて一本ずつ倒してカラーンという音を立てたり、口琴やカリンバを演奏したり、鎖をエレキギターに打ちつけたり擦ったりといった感じです。トーマスさんは、少しうねりを入れたような低音を出して、ミニマル・ドローンという言葉がぴったりでした。ずっと聴いていると存在感が強く感じられます。
このころからか、折しも雨が降り出してきて、ロフトのようなデラックスの屋根にザーッと打ちつける激しい雨音が聴こえてきました。私も含めて思わず天井を見上げる人がいましたが、自分にはこの雨音が今日のこの現場の絶妙な背景音のように聴こえてきて、ライヴの音と雨音を音楽と非音楽という区別をすることなくごく自然に同じ姿勢で耳を傾けている自分に気づかされました。
最終バッターの宮本さんは初めて聴く方。ほとんど演奏をしないで音を出しているだけといった感じのギターでした。光を音響化したらきっとこんな音になるのではないかしらと思われるような音でした。
自分にとっては何かしらとても新鮮に感じられる体験が、今日のライヴにはあるように思われました。自分が今生きてここに在ることを強く感じさせられるような気がしました。誰とのデュオが一番よかったとか、そういった批評的なことを一切言いたくなくなるような・・・もっともっと謙虚に、ただ一心に音に耳を傾けるべきではないのか・・・そんな思いに駆られました。

11月18日(日)
Maya Homburger & Barry Guy @Egg Farm
Maya Homburger(baroque violin)
Barry Guy(double base)

マヤ&バリーさん来日公演初日のエッグファーム。自分たちの持てるものを余すことなく伝えるような見事なプログラムの構成で、あっという間に2時間が過ぎてしまいました。前半に3曲、休憩を入れて3曲、アンコールが1曲でした。ソロありデュオありで、デュオの中味も1曲ごとに異なる感じで、バッハを取り入れたものなどもありました。大きな譜面が目の前に置かれていて、ほとんどが作曲作品のようで、その中にインプロヴァイズな部分が組み込まれているようなのですが、以前ロンドン・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラの何かのアルバムを聴いた時の印象とは違って、どこが作曲でどこがインプロなのかが全くと言っていいくらい聴き分けられなくて、即興と作曲の関係が非常に成熟した、複雑で高度なそれでいてとても耳に心地良い音楽を聴くことができたように思われました。こうして実際にライヴを観てみると、バリーさんはインプロヴァイザーであると同等に作曲家として語られねばならない人だと思いました。
とはいえ、後半にはバリーさんのソロが一曲入っていて、このpieceは「five improvisations」というもので、短い5つのフリー・インプロヴィゼーションから成り立っていたのですが、自分はインプロとなるととたんに目が輝いてきて?身を乗り出してしまうようなところがあって、やっぱりインプロ馬鹿なんだろうなあと思いました。(^_^;)しかし、このpieceは素晴らしかった!今までの経験が培ってきたインプロのエッセンスが凝縮されたような説得力のある凄さがありました。それから、前半のマヤさんのソロも印象的でした。スピーカーから予め録音しておいたマヤさんのヴァイオリンが流れてきて、その音源とデュオをするというものでした。ヴァイオリンを弾きながらゆっくりと客席を回った時には、姿が見えない音の後について行くような、劇場的空間のようなものが生じてくるようでとても面白かったです。
ところで、バリーさんのベースの弾き方はとてもカッコイイのだけれど、観ているとルイ・スクラヴィスのグループで来日したブルーノ・シュヴィオンのベースがフラッシュバックしてきて、そういえばバリーさんはブルーノさんの師匠の一人だという話を思い出して、ご一緒していたLe site de Louis Sclavis のMikikoさんと納得してしまいました。
演奏が終わった後、マヤさんとバリーさんは軽くキスを交わしました。すべてが終わって皆が席を立ち始めた頃、楽器の近くまで行ってステージを観察しました。スコアはきちんと音符が書かれた美しいものでした。バリーさんのベースの側のテーブルには、ドラムを叩く"ばち"の一種であるビーター(の形状のもの)が大小合わせて何本も置いてありました。全部は使用しませんでしたが。そんなこんなしていると、おじさんが「ホンバーガーって(チラシには)書いてあるけど、ハンバーガーって聞こえるねー」などと話かけてきて、そうしたらマヤさんバリーさんが出てきて「ホンバーガー?」「ハンバーガー?」とか確認しあう訳のわからない笑顔の応酬になっておかしかったです。(^_^)マヤ&バリーさんのツーショットをカメラに収める人もいました。明日21日は原美術館へ観に行きます。

11月21日(水)
Maya Homburger & Barry Guy @原美術館
Maya Homburger(baroque violin)
Barry Guy(double base)

原美術館の一室は、白い壁の冷たい無機質な感じのする所なので、木をふんだんに使った暖かみのあるエッグファームに行ってみて良かったと思いました。エッグファームは音響効果もとても良いです。
今日は多少違ったプログラムのようで、マヤさんとバリーさんのソロがそれぞれ二つになっていました。マヤさんのソロは、テープ音源とのデュオ以外に"Fantasy No.12"というテレマンの曲。バリーさんは、5つの短いフリー・インプロヴィゼーションを一つのセットにしたものと、それに先立ってもう一つ長いソロをやりました。5つのインプロのセットはエッグファームでもやりましたが、正確には「"Fizzle" 5 pieces for solo bass」という演目のようでした。これは毎回違った内容で5つのインプロヴィゼーションが披露できるという、演奏する側にとっても観る側にとっても緊張感と期待が同居するようなとても面白い演目だと思いました。で、この日は白い筆の毛先で弦を弾いたり(撫でたり?)、ドラムのブラシを使ったりしてエッグファームとはまた違ったものを見せてくれました。バリーさんのもう一つのソロは「"Still" bass improvisation」というもの。ボディを手で叩いたり弦を上から下まで使って縦横無尽に弾きまくるというものでした。後半に長い木のスティックを一本使っただけの演奏性の高いフリー・インプロヴィゼーションでした。やはり音が表面的ではなくて根っこから変化しているなあと思いました。
マヤさんとバリーさんは、お互いのソロを讃え合ったり演奏中に目線を送ったりする様子からするととてもいいご関係にあるのが観てとれるようでした。自分もパートナーを大切にしていきたい、いつまでもいい関係を保っていきたいと思いました。

訂正:エッグファームのところで、"ばち"の一種/ビーターと書いたのは、スティックの先に白い球が付いたもののことで、マレットの形状をしています。マレットをそのまま使用していたのか、形状を似せた手作りのものかは未確認でした。

11月23日(金)
Bernhard Gunter & Steve Roden / Anode@Deluxe
Anode : 大友良英、杉本拓、Sachiko M、秋山徹二、芳垣安洋、植村昌弘、イトケン、高良久美子、古田マリ
佐々木敦(HEADZ/FADER)

今日は機材や楽器の数が多くて、その分客席が増やせなかったようでした。客席の正面にエレクトロニクスのテーブルが場所をとっていて、その手前や左右後方に客席をぐるりと囲むような感じでアノードのメンバーが使う楽器が置かれていました。私は後方の芳垣さんのすぐ前の床に座ることになりました。大友さんの説明だと、聴く場所によっていろいろに聴こえるとのことでした。打楽器/パーカッションが4人で、杉本さんのギター、Sachiko さんのサインウェーヴ、秋山さんのターンテーブル、イトケンさんと大友さんは何をやっているのかちょっとわかりませんでした。で、「Anode」は「高柳昌行、副島輝人、清水俊彦の僕が影響を受けた人たちに捧げられています」という大友さんのお言葉がありました。いつもラフな感じの大友さんからこういうかしこまった言葉が出るのは意外な感じもしましたが、クリスチャン・マークレイの"More Encores"のとても感動的なライナー・ノーツを思い出すと大友さんはこういう人なんだろうなと思いました。それから「大友は外国へ行くと手紙をくれる」と言っていた清水俊彦さんの話を夫から聞いていたので、なるほどそうなのかと思いました。演奏の方は、それぞれが順番に交互に短かめの音を出していくような形式で、音の重なりを避ける構成のようでした。私は真後ろの芳垣さんの音の直撃をもろに受けるといった感じでした。近いうちにCDがTZADIKからリリースされるそうです。大友さんがお招きしたらしくて会場には清水さんがお見えになっていました。清水さんとはちょっとした繋がりがあるので言葉を交わしたら、都合の良い日に3人で食事をしようという話が出てうれしくなりました。
続いてはスティーヴ・ロデン、バーナード・ギュンターのそれぞれの演奏。今日のエレクトロニクス音は、静かめからほどよいボリュームといった感じで耳にはやさしいものでした。スティーヴさんの演奏は、持続的な音に平行してツツツーという断続的な音が入っていた部分を覚えていますが、後半には自分のヴォイスと思われるものがライヴで組み込まれていたようでした。私はそれほど強い印象を受けないで通り過ぎてしまうという感じがしました。
バーナードさんの方はとても印象的でした。演奏は割と長い時間に感じられましたが、存在感と奥行きがあるようでした。こういうエレクトロニクス音を聴いていると、ひとつのサウンドが喚起するイメージ/風景のようなものが浮かんでくるようでした。・・・突飛だと思われるかもしれませんが、私はロマン派の絵画、昔展覧会で観たフリードリッヒの風景画の中に入って行くような感覚を覚えました。バーナードさんは、演奏が終わるとしばし合掌しました。
演奏中の会場は暗くて狭くて、観客は空いている床一杯に座る状態でした。携帯電話の電源も切って欲しいというお話から始まった演奏なのに、スティーヴさんの演奏中に、入り口の方でドタバタする大きな音とそれに続く若い女性のこう笑が聴こえてきたのはとても残念でした。会場で先行発売された新作CD"JAPAN"を買い求めました。

11月24日(金)
オール・ジョン・ケージ・プログラム@彩の国埼玉芸術劇場音楽ホール
高橋悠治&高橋アキ ピアノ・ドゥオ

ジョン・ケージの曲のピアノ・ドゥオとはどういうことなのか?プログラムの構成がややこしくて少々分かり難いところがありました。後で悠治さんのProgram Notes を読んでみると、Winter Music ─ 孤立した音色と沈黙に向かう作品群を代表する曲─を通奏低音のように全体を通して1台のピアノで演奏し、それと同時に多彩な作品群をもう1台のピアノで次々に演奏するというMusicircus(音楽サーカス)を構成しているとのことでした。Winter Music も含めて全部で8曲ほど演奏しましたが、自分が印象に残っていることだけを書いてみたいと思います。
悠治さんが演奏したWinter Music は出だしから沈黙の部分が多くて、うっかりすると眠気に誘われてしまうようなところがありました。作曲手法はチャンス・オペレーションとこの音楽を書いた紙のきめのむらの透視の両方だそうです。チャンス・オペレーションを作曲手法の中心に据えたピアノ曲はこれ以外にもありましたが、やはり何かしら冷たい感じがしました。ピアノ演奏を聴いていると、未知の音が聴こえてくる体験をしているというよりも複雑な構成の難曲を聴いているといった感じがして、そのような難曲を弾きこなすピアニストの技量に注意を奪われてしまうようなところがあると思いました。「ジョン・ケージにとって、作曲とは未知の音の発見とそのための方法的実験だった」と悠治さんは書いているのですが・・・。
あとは、トイピアノを演奏したり、ラジオを流したり、プリペアド・ピアノなど今ではお馴染みになっている実験的手法が、既にケージによって発案されていたことがよくわかる内容になっていました。
今日の演奏会は、悠治さんとアキさんという優れたパフォーマーによる洗練されたケージの世界の再現という感じがしました。
Musicircus に関連した話ですが、12月23日には広島の方で可部線ミュージサーカスというジョン・ケージ・コンサートがあるそうです。列車の車両を借り切って車内で同時多発的な音楽や出来事が出現するのだそうです。

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