トフはジョン・ブッチャー公演に備えて目下英気を養っています。
ウィレム・ブロイカー・コレクティフは前回観なかったので、今回行けば初めて。
'84年スタジオ200で観たハン・ベニンク&ウィレム・ブロイカーのデュオは、ヨーロッパのフリー・インプロヴィゼーションに初めて生で触れた衝撃をもたらしてくれました。豆絞りの柄の日本手ぬぐいを頭に巻いて竹帚を持ったハン・ベニンクの姿は今も目に焼き付いています。ところで、その来日時の録音"the new acoustic swing duo in japan"を久しぶりに聴いてみたら、当時の衝撃はどこへやら、余りにも当たり前のアコースティック・デュオに感じられてしまったのでちょっとがっかりしました。
余裕があったら、ここに載せない他のライヴにも予告なしで出かけたいと思います。
11/15→11/26 John Butcher Japan Tour 詳細はこちら
11/18→11/22 Willem Breuker Kollektief Live in Japan 詳細はこちら
11月最初のライヴは、トフのHPではお馴染みの飛頭。このところ毎月行っているので疎まれやしないかとちょっと心配。「私ストーカーになっていませんか?」と思わずミドリさんにお尋ねした私でした。
さて、「演奏は瞬間毎に違う」というミドリさんのお言葉の通り、同じ曲でもその日によって随分と違った印象になるもので、私がここに書いていることは、そんな可変的な印象の一回を私というフィルターを通した目で観て記したものであることをご了承いただきたいと思います。何しろ世界というのは主観の反映であるそうなんですから。
今日は今までとはちょっと違った印象がありました。前半は、全体的に骨太で力強い感じがしました。ベースはボンボン鳴らして、サックスはビンビン飛ばして…。今までテクニカル的なことはあまり書いてこなかったかも知れませんが、その方面でも申し分ないものを持っていることを見せつけられるようでした。菊地さんの曲「ビーカン」は迫力がありました。
ここでちょっとトフのジャズ観について書いてみると、そもそも私にとってジャズとは、良い音を、心に響き身体に深く浸透してくる良い音を聴くことではなかったかと思います。…ビル・エバンス、コルトレーン、ドルフィー、アイラー、スティーヴ・レイシーなどなど、とりあえず思い浮かぶミュージシャンの名前を挙げてみても話はそこに落ち着くと思います。で、ある時からそんな風に感じられる音に出合えなくなってしまったのが自分をジャズから遠ざける原因のひとつになったような気がしています。
話しは戻って演奏の後半へ。「snow piece」、「8分の13」、「夜の東京放射16号」(という名称の場所は実在しないそうですが)などが曲目でした。snow piece は、ミドリさんのサックスの出だしが魅力的。「夜の東京放射16号」にはイントロがつきました。ベースを弓で弾く音がアナログ・シンセを通って拡散する響きにうっとり。もともとこの曲には反復的な心地よさがありますが、後半は知らず知らずのうちに徐々に演奏に酔っていったような感じ。この感覚は私(わたし)的にはいわゆる"ノリ"とは違う感覚だと思います。このユニットは私を"ノせる"のではなくて、私の中に深く浸透してきて私を酔わせる良い音を持っている…今日はそんなことをまた強く実感させられました。ミュージシャンの皆さまと交わす僅かながらの会話も楽しくて素敵な夕べでした。
さて「飛頭」は来月のインディペンダント・アンダーグラウンド・ミュージック・フェスティヴァル@入谷なってるハウスに出演することになりました。副島輝人さんプロデュース、大谷能生さんアシスタントプロデュースの夕べです。今回は色々な人たちをまとめて観るチャンスだと思います。万障を繰り合わせて出かけましょう。
ジョン・ブッチャー来日公演の初日。planB はほぼ満員。思ったより多くの人が集まって良かったと思います。ライトも暗めで落ち着いた感じ。聴き易かったです。最初がCosmos。先月スタパで観た時よりも印象がはっきりしていたと思います。こうして聴くとサイン波って良い音だなあと思いました。微かな音は、遠くから聴こえて来る虫の鳴き声のよう…、そこにアミさんの声が小さなシャワーのように注がれてくるとまるで一幅の掛け軸の絵を観ているか、前衛的な俳句を音響化したらこんなんなるんじゃないかなという感じ。そう今日のイメージは散文でも詩でもなくて、言葉=音を絞り込んだ俳句の世界のようでした。
下記の共演の前にジョンさんのソロ。それがとても良くてまた聴きたいと思いました。杉本さんとの共演はソプラノ・サックスを使ってあまり音をはっきりと出さないもの。演奏全体の感じはいつものクールな杉本さん寄りだったかもしれません。ターンテーブルを2台使った大友さんには、音楽的才気/センスを感じました。何か今日はとてもかわいらしく見えてしまって「どうしちゃったの、大友くん」と声を掛けたくなるようでした。ジョン・ブッチャーさんの音楽的特性をよく捉えていて、それに合わせる演奏だったと思います。で、肝心のジョンさんのサックスについて、どういうサックス・演奏なのかというのが今のところはっきりと言葉にできないでいます。これからライヴ体験を重ねていくうちに自分なりの何かが見えてくるといいと思います。
ジョン・ブッチャー来日公演3日目は、宇都宮の大谷石地下採掘場跡。ここは、ぽっかりと穴が空いてがらんどうになっただだっ広い空間を地下へ地下へと降りて行きます。ステージがあるのはかなり深い所。デコボコで薄緑がかった色合いの大谷石でできたステージ。あたりはかなり冷んやりとした感じです。
秋山さんのオープニング・アクトの後、最初はテナー・サックスによるソロ演奏。演奏が始まって間もなくすると、私は何だか涙が出てきそうになりました。「これって天上の音楽じゃない?」という言葉が自分の中に自然に浮かんできました。多分それは、どこにもないもの、どこかからやってくるものといったような感覚ではなかったかと思います。まずは音の美しさ、音が非常に美しい反響になって返ってくるこの場所は、まさにジョン・ブッチャーさんの演奏のためにあると思えるほどでした。それから音の流れに無理がなくてとても自然な感じがしました。この人の中にはとても豊かな音の水脈が流れているような感じがしました。それがごく自然に流れ溢れ出てくるような、しかも私たちは2度と同じ水脈には入れないような感じがしました。どこをとっても今までに聴いたことがない、同じようなパターンが全くない演奏のように思われたのでした。
この日はあいにく1ヶ月後くらいの寒い気候になってしまって、ここの気温は多分10℃以下になっていたのではないでしょうか。演奏が終わる頃にはジョン・ブッチャーさんの鼻先はピンク色に染まっていました。
ウィレム・ブロイカー・コレクティフ!ジョン・ブッチャー公演がまだ終わっていない今、こういうノリノリの大人数のバンド(10人編成)を観たいという気分でもなかったのですが、ライヴで一度は目を向けておいてもいいかなという気持があったので出かけてみました。これから書こうとすることはそんな私の気分を反映したものになりそうです。が、しかし、ウィレム・ブロイカー・コレクティフには何の罪もなくて、このグループの楽しみ方は人それぞれあると思います。
全体的な印象を書いてみますと 、楽曲をしっかり演奏しているので、フリー・ミュージックだという感じはあまりしませんでした。ユーモラスでエンターテイメントな所もあるので、アヴァンギャルドだという感じはなかったと思います。ただ、曲の展開に仕方にすんなりとは進まないような、パフォーマンスも含めて変則的なハズスようなところがあったのが面白かったです。その中には、ウィレム・ブロイカーさんのソロ・パートもあって、それは'84年の来日時にハン・ベニンクとのデュオで観た時の印象そのまんまだと思いました。根っこの所でやはりフリー・インプロヴィゼーションに出自を持つ洗練されていないエネルギー、破壊的とかパワフルとか、ここに初期のヨーロピアン・フリー・インプロヴィゼーションを形容するありったけの言葉を列ねたいのですが(なかなか思い浮かばない!)、依然としてそんなエネルギーを保持し続けている所が良かったと思います。今日の私は"ノリたい"気分ではなかったのですが、後半になって"I'll remember april"が始まると楽しい気分になってきました。この曲はクリフォード・ブラウン&マックス・ローチの演奏でその昔私が大好きだった曲だからです。コレクティフでの演奏は編曲が凝っていて、ちょっと引っかかりながら進むような感じがユニークでした。
ところで、ブロイカーさんのインタヴュー記事によると、'66年〜'70年中頃までにフリー・ミュージックはやりつくしてしまった感があって、同じことを繰り返すのが嫌で自己のレーベルBVHAASTを設立したというのがいきさつのようです。
ジョン・ブッチャー公演の最終日はSuper Deluxe。旧デラックスが、より六本木に近い地下の広い場所に移転しました。
最初が中村さんとの共演。その後ソロがあって、島田さんとの共演。優れた演奏家のフリー・インプロヴィゼーションに耳を傾けるのは何とも心地よくて時間が経つのを忘れました。初日寺内さんからもお話があって、特にデュオだとそれが強く感じられるのですが、共演相手によってジョン・ブッチャーさんの演奏は様々に変わるようです。自分でCDを聴いてもそう思うのですが、相手の演奏を聴きながら一緒に音楽を造り上げていくような感じがします。私はそこには音を聴く耳=知性が深く介在しているように思います。中村さんとの演奏は金属的に感じられる音が耳に残ったような気がしました。多分これがそうだと思ったのですが、アンプリファイド/フィードバックによる演奏もありました(間違っていたらすみません)。マイクにテナー・サックスを近づけて、吹かないで指を動かすだけで音を出しました。
島田さんは初めて観る方で、エレクトロニクスに繋いであるヴァイオリンを演奏しました。あんまりニュアンスがあるという感じではなくて、割とギーコギーコとノイジーにやっているという感じだったでしょうか。ジョン・ブッチャーさんは最初にテナーをやって、少し間をおいてソプラノをやりました。こう言ってはなんですが、演奏時間が長くなってくると単調に聴こえがちなヴァイオリンを補うかのように懸命に演奏していた(という訳でもないかもしれませんが)変化を意識的につけているようにも見受けられました。それにしても、今思い返すと大谷石地下採掘場跡は、通常のライヴ・スペースでは得難い音の響きがあって、もちろんジョン・ブッチャーさんの演奏も良かったと思うのですが、行ってみて本当に良かったと思いました。
今日のライヴは、身を乗り出して目を見張るといった感じではなかったですが、聴いているうちにとても気持良くなってきてしまって、後半はほとんどこっくりこっくりしながら心地よい境地を漂っていました。
前半が、姜+中村、中村+Yas-Kaz、Yas-Kaz+姜のデュオで、後半が3人での演奏でした。中村さんは、ジーン・コールマンとのライヴ(6/5)で尺八表現の豊かさを思い知らされた人。また観たいと思っていました。尺八を5〜6本用意してあって、中には通常の1.5〜2倍くらいの長さのものもありました。Yas-Kazさんとのデュオは、もろECMサウンドのように聴こえたので、共演する人/楽器によって印象が違うものだなと思いました。Yas-Kazさんのパーカッションは、ドラムセットの他にスティール・ドラムやアフリカ/民俗音楽系のパーカッションを幾つか使うもの。ジョン・ブッチャーさんを観た後だと余計そう感じるのか、姜さんのサックスは、姜さん独自のスタイルを持っている表現だと思いました。
後半3人での演奏は、心地よくアムール河の流れをたゆたっているような感じ。今日の演奏は、ハバロフスク録音の極東版ECMで決まり!