10/6(木) 菊地成孔project@六本木スウィートベイジル139
菊地成孔(sax)、坪口昌恭(piano)、菊地雅晃(bass)、芳垣安洋(drums)、ZAK(live dub)
11/11(火) マルタン・テトロー、ディアン・ラブロッス、フィラメント(大友良英、Sachiko M)@西麻布super deluxe
11/15(土) イトケンシリーズvol.3@高円寺円盤
zuppa di pesce piccolo vs Harpy acoustico
11/20(木) Gene Coleman concert@西麻布super deluxe
杉本拓(guitar)、中村としまる(no-imput mixing board)、田中悠美子(義太夫三味線)、西陽子(箏)、石川高(笙)、本橋文(篳篥)、 笹本武志(龍笛)、Gene Coleman(bass clarinet)
11/28(金) 飛頭@入谷なってるハウス
菊地成孔さんのニュープロジェクト。飛頭の菊地雅晃さんも参加ということで出かけてみました。ここは六本木の洒落たライヴスペーススウィートベイジル139。結構大人数が入れるスペースにもかかわらずほぼ満席という盛況ぶり。集まるところには人は集まるものですねー。
のっけからの全く予想していなかったような展開に意識が集中しました。最初が何とsomeday over the rainbow......で始まるあの曲。スローに引き伸ばしたような感じの演奏で、しばらくしてからああこの曲なのかと気が付くような演奏でした。その後はオリジナル曲なのか?ライヴ・ダブということで、その場でエフェクト処理することを考慮に入れてか、やはりスローでくどくどとしていない感じのものが続いたのですが、反面凝って組み立ててあるといった感じもしたりしてなかなか面白い曲想だと思いました。何かクールというかドライで干涸びた感じもしなくもないと思いました。サックスとピアノはとても上手いなと思いました。演奏の途中に少し間(ま)もあったりして、菊地成孔さんが指揮者のように後ろを向いてピアノやベースやドラムに色々と指示を出す場面もありました。最後の曲は、確か芳垣さんの長いドラムソロから始まって、他のミュージシャンがステージを退場した後も続く長いドラムソロの演奏で終わるというものだったと思います。アンコールは何と「チェルシー・ブリッジ」。この曲は、飛頭のレパートリーでもあるのでつい聴き比べてしまいました。普通バラードをやると、やはり多くはこういう風にリード楽器がメロディーラインをなぞるだけといった印象になってしまうのだなと思いました。やっぱり飛頭はひと味もふた味も違う!今日のような上手い人たちを観てしまうと、技術的には完璧とかトップクラスとかではないかもしれませんが、飛頭はこういうバラードもお手のもので、ユニット独得の魅力的な真骨頂を発揮しているということが改めて分かるような気がします。ここで他のミュージシャンのことを書くのもどうかと思いますが、別のものを聴いてこそあるものがどんなだか見えてくるということもあると思うので敢えて書きますが、ミドリさんのバラードは、ニュアンスのある温かい演奏、本当に心を打たれる優しい演奏です。
私たちは、今日は2階のテーブル席で鑑賞しました。この店は、ハーブを使った料理が売り物のようですが、サラダとかサンドイッチとかピッツアなどのお味も量もまずまずで美味しくいただけました。演奏が始まるとキャンドルがテーブルに配られて客席の灯りが消えます。
ここスーパー・デラックスは、毎回会場のセッティングが違っていて、特にheadzの企画は座れる席を確保するのがなかなか大変で、多分こういう催しに訪れる最年長である私はその都度難儀することになります。今日は演奏機材の置かれた長いテーブルが中央の空間/距離を隔てて向き合って二つ置かれてありました。で、そのテーブルは二人で座るテーブルなのですが、演奏の方も二人ずつの色々な組み合わせて、ミュージシャンは一つのテーブルに二人で横に並んであるいは一つのテーブルに一人ずつ座って向き合って演奏することになりました。で、最初が竹村さんとテトローさんが横に並んで。次ぎがディアンさんとさちこさんが向き合って。次が、竹村さんと大友さんが向き合って。この辺になってくると順番の記憶がちょっとあやふやになってきますが、さちこさんと大友さんが横に並んで、テトローさんとディアンさんも横に並んで、テトローさんと大友さんが向き合って、そして最後は全員でという順序だったと思います。竹村さんのラップトップは、古典的な感じ?がしましたが、最初のテトローさんとの共演は、まだこういう音を聴く体勢が自分の中にできていなかったのか、それほど印象的という感じではありませんでした。次ぎのディアンさんとさちこさんからは、二人ずつの組み合わせが、こう言うと変ですが横にあるいは縦に並べた乾電池のように見えてきて面白かったです。ディアンさんとさちこさんは、プラスとマイナス。竹村さんと大友さんもプラスとマイナス。さちこさんと大友さん、これはもうマイナスとマイナス。さちこさんの演奏は、「barさちこ」でも見せる小さくも大きくもないけれど気になる微妙な持続音が続く私がとても好きなもの。大友さんの繊細なターンテーブルもこれに合わせている感じでした。しかし、ターンテーブルというのはなかなか楽しい楽器で、おもちゃのような感じもしたりして色々なことができる自由度の高いモノに見えますが、今日のようにこれを使って音を自由に創っていくには相当経験と集中力がいるのではないかなと思いました。テトローさんとディアンさんはデュオとしても活動していてアルバムもリリースしているそうです。この組み合わせはもうダントツにプラスとプラスで、今日の中では一番見えない火花が散っていたと思います。
イトケンシリーズ第3戦は、イトケンさんの2つのリーダーバンドが出演。ここ円盤は超狭なので、最前列だとミュージシャンが至近距離。でも今日のようにあんまりシリアスでないものはこの位の距離でもOK。緊張感なく楽しめるのもいいなーと思いました。しかし、この気分を何と説明したらいいものか......。ここに来たのは、一つにはイトケンさんの音楽について知っておきたいという思惑もあって、それというのも自分が出すCD(飛頭)では、やはりきちんと解説を書いてミュージシャンや音楽を紹介すべきではないかと思うからなのですが、実際にこうして観てしまうと何をどう書いたらいいものか、困ったなーという感じもしてきます。何かとても感覚的な音楽、いい気分、ちょっとへんちくりんでつかみどころのないほろ酔い気分になってくるのですが、それが何なのかどうしてなのか......がよく分からないっ。話は逸れますが、養老孟司さんも言っているように「分からない」ということは、本当に面白いことですね!自分がこういう音楽を聴いて感想を書いたりするのも、一つには「分からないもの」が大好きで、その「分からないもの」を自分が持てる凡てを総動員して分かろうとする精神活動に面白みを感じているところがあるからだと思います。
さて演奏の方は、今日はカヴァー集だったみたいで随所に色々な曲が入っていたようです。zuppa は、全員がアナログシンセのユニット。トロンボーンの古池さんが日本にいないので、普段はドラムのイトケンさんとサックスのマヒマヒさんもアナログシンセに転向。すったもんだもありましたが、西村さんの曲や西村さんが編曲したピエロなんとかという人の曲も綺麗でした。Harpy はもっと不思議な世界で、これはもう体験するしかない世界だなと思いました。イトケンさん、小さなマラカスで小さなドラム一個叩くにもちゃんとノリがあってドラマーの面目躍如だなと思いました。
追記:22日のGNUも行きたい気はありますが、スタンディングのnestでGNUを観てfeepで踊るのはちょっとしんどいかなという感じです。
ジーン・コールマン・コンサートは、昨年は六本木のdeluxeでも鑑賞しました。今年はSachiko Mさんは不参加ということで、今日はまたどのように聴きとれるのか、多分昨年とは違ったところに注意が向くだろうということも自分にとっては楽しみの一つです。第一部は「邦楽器と、電子音、ギターとバス・クラリネットによる作曲作品」。多分異種楽器の融合というようなことが、コンセプトとしてはあるのではないかと思われます。演奏したのは3曲で、チラシの順番通りだと最初が"Cloud Cut"。これは全員での演奏でした。印象的だったのは、バスクラや笙などが楽器から口を少し離してフーと息を吹き込むだけのような奏法をすることで、こうすることによって吹く楽器(笙、篳篥、龍笛、バスクラ)と弦楽器(ギター、義太夫三味線、箏)の対比という構成が生じることでした。そこに中村さんの音が、出ているのかどうかもよく分からないような微かで特異な音が確か入ってきていたと思います。中村さんは、今凄いなと思います。これは今日の演奏全体を通じて感じたことですが、中村さんが出す音は、実にユニークで気になる微妙な音だと思いました。まがりなりにも断片的にではありますが、ここ数年中村さんを観てきましたが、今はガーガーやるところが少しもなくて、機械音=騒音(ノイズ)というイメージを打ち破っているところがあると思います。こういう例えが妥当なのか分かりませんが、水がにじみ出てくるような自然な音を出せる人、というか、機械そのものの自然な音を自然に機械から引き出せる人だと思います。上手く言えなくて、おかしな言い方になってしまいますが。2曲目は"YAGO 2"。これはバスクラと笙のハーモニーのある美しいデュオ。久しぶりに笙のいい音に耳を傾けて、古さと新しさの両方を兼ね備えた響きに魅了されました。最後は"imp_comp_imp"。これは、杉本さんが演奏パートのメインになって出てくるようなところが少しあってそれが印象的でした。
第二部は即興演奏で、ジーンさん+田中さん+西さんのセットとジーンさん+杉本さん+中村さんのセットをやりました。田中さんや西さんの即興が達者なのは言うまでもありませんが、それだけだとどうも私は見慣れたというか熟知しすぎているという感じもありました。杉本さんは、やはりなかなか最初の音が出てこなかったです。ジーンさん+田中さん+西さん+杉本さん+中村さんに石川さんの笙が加わった最後のセットが、色々な音が聴こえてきて組み合わせの妙味があって面白かったと思います。ジーン・コールマンのバスクラは大人しいというか、あまりジャズっぽい感じはしないと思います。
きっかけは10/24の飛頭で演奏した「Time Remembered」。とても印象的な演奏だったので、私は何度も家で聴き返しました。で、この曲はこちらの坪口さんのユニットのレパートリーでもあるようなので、どうしても聴いてみたくなりました。これから書くことは、印象の違いであって優劣というのではありません。一番感じたのは、やはりドラムの違いでした。藤井さんのようにブラシでシャカシャカやるのが、ジャズの常套的なドラムだと思いますが、こうするとやはり大人っぽくてしっとりとした洗練された感じになる。一方、イトケンさんのドラムは、ジャズ=洗練という壁をぶち破っているというと大げさな言い方になりますが、元々ジャズドラマーではないので、ジャズを洗練された方向に持っていくという感じにはならないなと思いました。その代わり(と言っていいのか)実にいいノリを出していて、菊地さんのベースからとてもいいものを引き出していると思いました。
さて、この坪口トリオですが、演奏する曲がいい曲ばかりで、勿論、どう演奏するかにも左右されますが、やはりジャズのスタンダードといわれるような曲には抗し難い魅力があると思いました。マイルスやビル・エヴァンスの曲を聴いていると、こういう曲を心から愛してきた自分のジャズに対する思いがこみ上げてくるような気がしました。現代(いま)らしいアプローチ、ピアノとベースが部分的にエフェクト処理をして音響的な効果を出しているのもアクセントになっていていい感じだなと思います。どの曲だったか忘れてしまいましたが、ピアノとベースとドラムがそれぞれ別の違ったリズムで演奏するといった実験的なものもありました。ちょっとごちゃごちゃした感じになっていましたが。坪口さんのピアノは、例えばビル・エヴァンスの曲などを情感のある感じで演奏するのですが、ピアノから必要以上に甘さや華麗さを引き出さないというか......。何よりもジャズピアノにはありがちなテクニック先行というかテクニックひけらかしになっていないところがむしろいいと思いました。今後の期待大のトリオだと思います。
坪口さんのHPから演奏曲目を転用させていただきます。
1Stage 1.Improvisation 2.Framenco Sketches 3.Speak Like a Child 4.Very Early 5.Oleo
2Stage 6.I Should Care 7.Mademoiselle Mabry 8.Time Remembered 9.Snow Angles 10.Poinciana 11.Time Waits
さて、飛頭は今日は原点に戻るというミドリさんのお話。全体的にスローで抑制された演奏でした。元々静かなバラード風の曲もありますが、そうでない曲も今日は静かで控え目な感じでした。私は敢えて演奏者の方を見ないで音に耳を傾けていたのですが、そんな風にしているとまるで夢の中にいるような感じがしました。特にいいと思ったのは、「クランブリング・ステープル」。ピアノとベースの魅惑的な始まり。イトケンさんのノリのある霧のようなドラム。サックスの絶妙な終わり方。......夢幻的な感じがしました。面白かったのは、「アブストラクト・フラワー」。テーマの後のインプロ部分は、まるで別世界をさまよっているようでした。「チェルシー・ブリッジ」は、元々この曲がそういう要素を秘めているのか、あるいは飛頭の解釈の賜物なのかどうか、神秘的というか不思議な感じのするところがありますね。この曲が誕生した経緯(いきさつ)というか秘話みたいなものがあったら、ちょっと知りたいなーと思ったりします。
しかし、今日のような演奏だとやはりピアノが光ると思います。今私は、ジャズピアノで誰に魅力を感じるかと問われたら、すかさず塚本さんとスタンダードを演奏する坪口さんと答えるだろうと思います。この人たちには、今までのジャズピアノにはない何かがあるような気がします。それが何なのかは今は言葉にすることは難しいですが、もしかしたら二人とも専らジャズだけを演奏するいわゆるジャズミュージシャンではないということに関係しているかもしれないと思ったりします。もっと間口を広げるなら、二人とも音大で専ら音楽を勉強した人ではないからなのかしらと思ったりもします。
自分が若い頃は、レコード芸術としてジャズを聴いていたようなところがあって、聴くものも専ら古いものばかりでした。当然のことながら、名盤とかも気になってそんなものを集めたりもしました。しかし、今は違います。例えば話題性や人気やメディアの喧伝などとは関係なく、自分の耳で自分が共振できるジャズを見つけることができるようになったと思います。ライヴという現場で今生まれつつあるジャズ、録音物にも未だならないジャズ、そういう同時代のジャズに出会える喜びが今はあります。
1部 1.チェルシー・ブリッジ 2.アブストラクト・フラワー 3.ハッピーエンド
2部 4.タイム・リメンバード 5.クランブリング・ステープル 6.ソウル・カウボーイ 7.フォール(?) 8.夜の東京放射16号