ライヴを観る


2002年2月のLive Information
2/2 公開レコーディング@Off Site
演奏 Cosmos/ Sachiko M+Ami Yosida
録音 秋山徹次

2/9 梅津和時・風巻隆アクースティック・デュオ@キッド・アイラック・アートホール
spontaneously improvising music with full of jazzy sounds and complex rhythm
梅津和時(sax, reeds)
風巻隆(percussion)

2/16 Meeting at Off Site Vol.19
恩田晃(cassette recorder)、中村としまる(no-input mixing board)、秋山徹次(guitar or turntable)

2/20 composed music night@現代ハイツ
"Kontakt" by Hannes Loschel
"All About Something" by Taku Sugimoto
演奏:
Hannes Loschel(electronics,etc)
杉本拓(acoustic guitar)
中村としまる(electric guitar)
秋山徹次(electronics,etc)
大蔵雅彦(alto sax,bass clarinet)
古池寿浩(trombone)

2/22 Odd Job Vol.2@吉祥寺Mandala-2
Gnu:大蔵雅彦(alto sax)、塚本真一(key)、種石幸也(b)、イトケン(ds)、熊田央(ds)
杉本拓(guitar)
Hannes Loschel(prepared piano)
ユタカワサキ(analogue synth)

2/23 冨樫雅彦&山木秀夫 Percussion Duo "Crossing In The Silence"@鎌倉芸術館

2/24 「イントナルモーリオーケストラ」演奏会@多摩美術大学美術館 詳細はこちら
未来派の騒音装置イントナルモーリを使い、現代の演奏家たちによるオーケストラを編成し、この演奏会のための委嘱作曲作品の演奏を行う(チラシより)。
出演:大友良英/杉本拓/Sachiko M/中村としまる/秋山徹次/伊東篤広
イントナルモーリ(1914年)はイタリア未来派のアーティスト、ルイジ・ルッソロによるものだそうです。

2/28 「ポステク・サミット2002」- ポスト・テクノ・ミュージック、その可能性の中心@六本木「New Tokyo Life Style Roppongi Think Zone」
トーク・セッション:佐々木敦、大友良英、クリストフ・シャルル、久保田晃弘
ライヴ:大友良英、クリストフ・シャルル、久保田晃弘 詳細はこちら
ビビッてしまうようなタイトルの催しですが、佐々木敦さんの本『テクノイズ・マテリアリズム』をちょうど読もうかなと思っていたところです。


2月1日(金)
Ned Rothenberg(sax,cl,bcl)+吉野弘志(b)@in"F"

今月は皮切りにオフサイトでさちこさんとアミさんのCosmos を観ようと思っていたのですが、そういえば佐藤さんのお店も随分とご無沙汰してしまっているので、久しぶりに行ってみることにしました。おでんがとても美味しくて、書斎のような落ち着いた雰囲気のある居心地の良いお店です。
ネッド・ローゼンバーグは、正確な年代は不明なのですが、80年代の半ば過ぎぐらいに観ているので、昔のチラシを引っぱり出してみると、ネッド・ローゼンバーグ(sax,cl)、高橋悠治(key)、天鼓(vo)、ハンス・ライヒェル(g)、ジョン・ゾーン(reeds)のメンバーで、当時池袋西武8Fにあったスタジオ200で観ていました。その時のプログラムを観ると、ほとんどがソロによる作曲作品で、ジョン・ゾーンとのデュオが1曲("掛け合い"というタイトル)、ジョン以外のメンバーとの即興が1曲だけでした。自分としては、ネッドさんの音はあまり記憶になくて、多分かなりフリーキーな音を出していたジョン・ゾーンに強い印象を受けたように記憶しています。この前日の演奏は、ネッドさん、高橋さんに尺八とドラム(豊住さん)が加わったもので、当時は「ジャンルを越えた」というような企画が多かったのかどうか・・・チラシに書かれた文章を読むと、ネッドさんはどうも当初から折中的なというかジャンル横断的な志向があった人のようです。
で、今日ここでの演奏も、これといった特徴を汲み取りにくい演奏であったように感じられました。前半はジャズっぽいフレーズが結構飛び出してきて、アンリ・テキシエのグループにあるような曲想も感じられました。フリー・インプロヴィゼーションをやっているのかと言われると、ジャズっぽいフレーズが気になってしまうし、フリー・ジャズなのかというと、大人しくてインパクトに欠けるところがある・・・そのどちらからも近いようで遠いようなどこか中途半端な感じがしました。敢えて表現するなら、やはりジャズのフィールドにある人で、フリーにジャズをやっているといった感じがするように思われました。ベースの吉野さんもオーソドックスな演奏をする人だと思いました。
今日の企画は副島輝人さんによるものなのか、副島さんがお見えになっていました。で、昔のチラシを出したら、やはり80年代の同時期に副島さん企画によるデヴィッド・モス(perc,vocal)とクリスチャン・マークレイ(turntable)の共演というのがあって、最先端のニューヨーク・ノイズ・ミュージックの旗手として紹介されていました。今チラシを見ると、何で行かなかったのかなあと思うのですが、きっと当時はノイズを受け入れる土壌が自分の中にあまり無かったんだろうと思います。

2月20日(水)
composed music night@現代ハイツ
Program
KONTAKT(Hannes Loschel)
Etherphonics/for a various number of radio-players using analog radios(Hannes Loschel)
All About Something(Taku Sugimoto)

Hannes Loschel(cassette recorder,radio)
Taku Sugimoto(acoustic guitar,radio,conduct)
Tetuzi Akiyama(theremin,radio)
Masahiko Okura(alto sax,radio)
Tosihiro Koike(trombone,radio)
Toshimaru Nakamura(electric and acoustic guitars,radio)

ハンネス・レッシェルは'63年ウィーン生まれ。昨年聴いた実験音楽グループ「ポルヴェクセル」のウェルナー・ダーフェルデッカーやブルクハルト・シュタングルなどのオーストリアのミュージシャンは、自分にとっては刺激的なところにいる人たち。彼らの音楽から受ける体験を言葉に表すのはまだまだ難しくて不十分ですが、こうしてライヴで、今の新しい音楽を全身で肌で感じるのはとても大切なことだと思います。久しぶりのライヴは、新鮮な気持で音楽に向き合わせてくれるのと同時に、もっともっとライヴを観なければという気持にもさせてくれます。
さて、最初の演奏は"KONTAKT"。例によってコンダクトによる音楽を観る機会がほとんどないので、最初はどうしても物珍しくて可笑しくて困りました。作曲の方は、音の整理の仕方に他のオーストリアのミュージシャンと通底する基調があるように感じられました。「あーこれこれ、これが今の音」と感じるような基調です。具体的には、秋山さんがテルミンをやって、それは実験的な秋山さんにとても似合っていたのですが、その持続的なエレクトロニクス・ノイズ音に杉本さん、中村さんが同じギターの音、ふわーっとしていて宙吊りになったようなウェルナー・ダーフェルデッカー、ブルクハルト・シュタングル的な音を乗せるところなどです。あと、ジョン・ブッチャーなどもどこかでやっていたと思いますが、サックスのミニマルな表現も今っぽいと思いました。
"Etherphonics"は、全員がアナログのラジオを使ったもの。ちょっぴり懐かしくて遠くにあるような、時間と空間がほんの少し入っているようなラジオの音は、こうして聴いてみると自分は結構好きなんだというのに気づかされます。レーベルMetamkineにでもありそうなミュージック・コンクレート的作品。
最後の"All About Something"は、沈黙と音を組み合わせたいかにも杉本さんらしい作品。誰が何をやっていたかという記憶がすっぽりと抜けていて、「音があった」という記憶しか残っていないのが不思議な感じです。それから、こうしてひたすら音を待つ/音を追うというスタンスで耳を傾けていると、演奏以外の音、配水管を流れる水の音などにも妙に敏感になって気をとられてしまうところがあると思いました。杉本さんは、演奏前にエアコンなどの余計な音を消すよう気を配っていましたが…。
帰りは、jazz & NOWの寺内さんと偶然にも帰る方向が同じだったので、ご一緒していろいろとお話を聞かせていただきました。

追記
今日(22日)、頑張って吉祥寺まで行ってハンネスさんと杉本さんのデュオを観てきました。息を飲むような美しさと優しさに満ちていました。とても幸せな気持になりました。

2月22日(金)
Odd Job Vol.2@吉祥寺Mandala-2
ユタカワサキ(analogue synth)
Gnu:大蔵雅彦(alto sax)、塚本真一(key)、種石幸也(b)、イトケン(ds)、熊田央(ds)
杉本拓(guitar)+Hannes Loschel(prepared piano)

今日はOdd Job Vol.2。12月に観たのはBroyeuse de Chocolat Vol.0。おもしろいプロジェクトがここ東京では進行しているらしい。マンダラ2のような照明や音がきちんとしているライヴハウスは、やはり聴き易いなと思いました。
ユタさんのアナログシンセが始まったら、先ごろ訪れた龍安寺を写してみたくなりました。頭の中にカメラをセットして庭に向けて左から右にゆっくりと移動させる・・・ユタさんの音はこのロックガーデンに結構しっくりくるなと思いました。ちなみに家で聴いたThomas Lehn はちょっと違うかなと思いました。
大蔵さんのGnuは素敵なバンド。サックスは澄んだ音で演奏もとても良いし、キーボードの塚本さんはパルマの中田選手によく似ている。でもって、右にイトケンさん左に熊田さんのツインドラムは、とても元気がよくて楽しくなりました。熊田さんのドラムには、お坊さんが両手に持ってジャーンと鳴らすやつ、赤い飾り紐のついたシンバルのようなものがセットしてあって、何曲目かの終盤にジャジャン、ジャジャジャジャーンとおもいっきり鳴らしました。とてもかわいらしいなあと思いました。
最後はお待ちかねのプログラム。ハンネスさんのプリペアド・ピアノは、音数が少なくて、ピアノの鍵盤の右端と左端を極端に使って変化をつける(中央からも音を出しましたが)。ピアノの弦を弾く時も割と極端な場所から音を出しているようでした。あと、紐状のものを弦にくぐらせて左右に引っ張って微妙な音を出したりもしました。例外もあるかと思いますが「間」と「変化」というのは、やはり魅力的なフリー・インプロヴィゼーションを生成する重要な要素であるように思われました。それから、今日の二人の演奏はコラボレーションであるということ・・・お互いの相手に対する献身がとても強く感じられました。
杉本さんの音は、私のイマジネーションが映像的なものに飛翔するきっかけを与えてくれる。
「ギーッ」と重い扉が開く音。ここは私が訪れたコルマールの僧院の夏草が生い茂る中庭。グリューネヴァルトのイーゼンハイム祭壇画のある僧院だ。

夜明け

ぼくは夏の夜明けを抱いた。
宮殿の正面ではまだ動くものはなかった。水は死んでいた。野営した影たちは林の街道を離れはしなかった。生き生きとして温かい息吹を目覚めさせながら、ぼくは歩いた。すると宝石たちが目を凝らし、翼が音もなく舞い上がった。
最初の企ては、早くも冷たく青白いきらめきに満ちている小道で、ぼくに名を告げた一輪の花だった。 ブロンドの滝に笑いかけると、滝は樅の木立の向こうで髪を振り乱した。銀色の梢にぼくは女神をみとめた。 それからヴェールを一枚一枚剥いでいった。並木道では腕を振りながら。草原を横切っては雄鶏に彼女のことを告げながら。大きな町に入ると、彼女は鐘楼やドームの間に逃げ込んだ。それで乞食みたいに大理石の河岸を駆けながら、ぼくは彼女を追っていった。
道を登りつめたところの、月桂樹の林の近くで、取り集めたヴェールを彼女に巻きつけてやった。そのときぼくは彼女の巨大な肉体をかすかに感じた。夜明けと子供は林のふもとに倒れた。
目覚めると正午だった。

アルチュール・ランボー

2月23日(土)
絶対アンテナ Vol.18@Off Site
Tim Olive(guitar)+Jeffrey Allport(percussion)
杉本拓(guitar)+Hannes Loschel(electronics,etc)
イクエモリ(percussion,etc)

オフサイトのライヴは、土曜日に移行してから人がぐっと増えたようです。7:30の開場直後でもほとんど席が無い状態。やっとこさ座れても、前がほとんど見えなくて身動きできないです。実は今日は森イクエさんが出るという情報だけで観に行ったので、またハンネスさんが観られるのかとうれしくなりました。
後の出演者から類推すると、最初にやったのは多分ティム・オリーヴとジェフリー・オールポート(不正確ですみません)。ギターとパーカッションをやっているとは思えないエレクトロニクス音が聴こえてきました。
杉本さんとハンネスさんは、前日のマンダラ2とはがらりと違う演奏。ハンネスさんはエレクトロニクスをやりました。他にも何か使ったのかな?2曲やったのですが、それぞれがまた違うのでとても興味深かったです。チーン、チーンという金属音の出だしから始まって、それからしばらくはサンプリング音の鳥の鳴き声が聴こえてきました。これもまたすぐに映像的なものが浮かんできて、アンリ・ルソーの『蛇使いの女』というタイトルだったかな?密林の中で髪の長い女の人が笛を吹いていて周りに蛇が集まってきているやつ、あの絵画の世界だなと思いました。でもしばらくすると、その映像は音の彼方に消えていくようでした。次ぎは全く違う演奏。乾いた即物的な音とでもいえばよいのか、ケヴィン・ドラム的な音世界が聴こえてくるようでした。
最後は森イクエさん。やったのはドラム・マシーンという理解でよいのか。今思いましたが、エレクトロニクス関連は、何をやっているのか予め少し説明してもらえると有り難いと思いました。
さて、ハンネス・レッシェルについて、今回3度の演奏を聴いてみて、いろいろなことが、いろいろな表現ができる人だと思いました。フリー/アヴァンギャルド・ミュージックの世界で、私が知る限りではピアノをやる人は少ないと思いますが、さらにエレクトロニクスやサンプリングも手掛ける人はあまり見当たらないのではないでしょうか。今回はCD もいろいろなものを持ってきていたようで、どれを買おうか迷いましたが、私が買ったのは"antasten-excentriques"。これがまたおもしろくて、どうしてこういうピアノが今までになかったのか、これ以上どう崩しようもないようなピアノが、新たなアプローチでアナログシンセ、エレクトロニクスとブレンドされて共存するというとても刺激的で創造的なものでした。

追記
28日のポステク・サミット2002での話ですが、「作曲と即興が定義されていない。即興かもしれないし、作曲かもしれない。それが今の現実である。リアリティである」という大友さんのお話がありました。聴き手にはなかなか掴みにくい作り手からの話だと思いました。ハンネスさんにも関係していることかなと思うので、書きとめておきます。

2月28日木)
「ポステク・サミット2002」- ポスト・テクノ・ミュージック、その可能性の中心 - @六本木「New Tokyo Life Style Roppongi Think Zone」
トーク・セッション:
佐々木敦(音楽/音響批評、HEADZ主宰)
大友良英(ミュージシャン)
クリストフ・シャルル(ミュージシャン・武蔵野美術大学映像学科助教授)
久保田晃弘(多摩美術大学情報デザイン学科助教授)
ライヴ:大友良英、クリストフ・シャルル、久保田晃弘

 
「ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック」(大村書店)、「テクノイズ・マテリアリズム」(青土社)刊行記念シンポジウム&ライヴということで、今日は若い人を中心にかなり大勢の人が集まりました。場所がまた新感覚のカフェでもありイベント広場でもあるような、通りに面しただだっ広い薄暗い空間で、上を見上げるとかなりの高さがありました。
最初は久保田さんのコンピュータ。演奏が始まると床の一部に正方形(2〜3メートル四方)のライトが当てられて、その中でさまざまな色の幾何学模様が現われては消えていきました。音の流れの中に、雷がドーンと落ちたあと打ち上げ花火がバババッと3〜4発上がるような音が間欠的に繰り返し入っているので目が覚めるような感じでした。演奏が終わった後はトーク。ま、本の宣伝が主な目的か、自分は未読ですが、本の内容の紹介以上に特筆するものはあまりなかったように思われました。それでも、新しい音楽の指針を求めて来たのか、「ハウスがテクノが・・・、精神性が肉体性が・・・」などと語る若者の真剣な議論が耳に入ってきました。
私はというと、トークの間、このところまた聴いている小杉さんの"Catch-Wave"のことを考えていました(実際、クリストフ・シャルル氏から小杉さんの名前が出ましたが)。今このアルバムを聴くと、間章がどうしてあれほど小杉さんを愛したのか胸が痛くなるくらい分かるような気がする。がしかし、即興演奏家としての小杉さんを絶賛する間章が、"Catch-Wave"の音の仕掛けについて、演奏のシステムについて言及している文章があったかというと、そういう覚えがなくて、やはりそういうところに意識が向かわなかった時代だったのかなと思ったりする(ほとんど憶測です)。で、今現在のエレクトロニクスを聴き慣れた自分の耳からすると、"Catch-Wave"の仕掛けの部分、今日的な言葉で言うなら音響的な仕掛けの部分がとても興味深く思えてくる。高周波発信機とラジオ受信機を使って、即興的に演奏されたヴァイオリンや声の音を組み入れていく・・・当時は音響という言葉は使われていないようだが、「ひとりで仕掛けひとりで演奏しているような音楽」の独自性を小杉さんは解説の中で詳しく語っている。「花や鳥や風や月が「石」を通過するそのような意識のメタ化」小杉さんのこんな言葉にもワクワク、ドキドキしてしまう。ついでに書くと、自分には先の音楽の展望は見えないが、過去に遡って例えば「デイヴィッド・チュードアをノイズ・ミュージックの起源として位置づけることが大切だ」といった小杉さんの言葉にも、ワクワクとした胸のときめきを感じてしまう。そんなことを思っていたら、いつのまにかトークは終わりに近づいていました。
トークの後はクリストフ氏、次いで大友さんの演奏。モヤモヤッとした話をする人は、音もモヤモヤッとしていて、ひとつ突き抜けたことを言う人は、やっぱ音も突き抜けていると思いました。突き抜けているのはもちろん「ジャズの叩上げ」発言のあった大友さん。これ以上だと耳障りだと感じるギリギリの音から始まって「五臓六腑に染み渡るぜ」みたいなどこにもないような満足の音でした。ところで、自分は意識のレベルでは、大音響のエレクトロニクス音が大好きだと思っているが、クタクタになった身体は「いいかげんにしてくれよな」と悲鳴を上げているようなところもある。

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