ライヴを観る


2003年4月のLive Information

3/15〜4/15 ミッシェル・ドネダ 斉藤徹 デュオツアー/春の旅2003 詳細はこちら

4/1 飛頭@入谷なってるハウス
ミドリトモヒデ(sax)、菊地雅晃(bass,electronics)、塚本真一(piano)、イトケン(drums)

今月は早いなー、もう飛頭。

4/8 「東京〜NY即興フェステイヴァル2003」@新宿Pit-Inn
加藤英樹(bass,b-synth)、ジェイムズ・フェイ(sax,electronics)、デヴィッド・ノヴァク(basson,electronics)、大友良英(turntable,guitar)、石川高(笙)、巻上公一(voice)、吉田アミ(voice)、Sachiko M(sinewave)、田中倫明(percussion)、植村昌弘(drums)

4/10 加藤英樹(bass,b-synth)、ジェイムズ・フェイ(sax,electronics)、中村としまる @西麻布Super Deluxe

4/18 菊地雅晃presents「退廃と官能の夜・クラシックナイト〜後期ロマン派から前衛まで〜」@渋谷青い部屋
「耽美・退廃・官能・狂気の後期ロマン派以降のクラシックを讃えるイベント”クラシック・ナイト”! ベルクのピアノソナタや現代もののフルート独奏曲、菊地雅晃の自作曲(ビオラとコントラバスのデュオ)のライブの他、佐々木敦、菊地本人等によるコアなクラシック〜現代のDJアリ」。

LIVE:鶴来正基(piano)/木の脇道元(flute,b-fl)/菊地雅晃(contrabass)&トビウオリアキ(viola)

DJ:佐々木敦(headz/fader)/菊地雅晃

〈LIVE曲目〉
・Edger Varese:密度21.5
・川島素晴:Manic Psychosis
・中川統雄:Dark Matter
・甲斐説宗:フルート・ソロのための音楽/flute 木の脇道元

・Alban Berg:ピアノソナタ/piano 鶴来正基

・菊地雅晃:"遅れてきた7月の為の完全には届かない短3度と長2度の間の降り止まない
      驟雨に濡れそぼる紫陽花の花の上の曖昧によごれたねずみ色の午後2:40分の曇り
      空の下の東京駅北口より出発する乗客がいないディズニーランド行きの二階
      建てバスに乗った君と僕と1987年から引き延ばされた錯覚の白いキスとイワナ
      と飛び魚へのオマージュ"/viola トビウオリアキ,contrabass 菊地雅晃

飛頭のミュージシャンが他でどんな活動をしているのか、それを観るのはこの頃の興味のひとつ。トフは、クラシック方面はさほど明るくないので、雅晃さんがどんな切り口で見せてくれるのかとても楽しみです。




4月1日(月)
飛頭@入谷なってるハウス
ミドリトモヒデ(sax)、菊地雅晃(bass,electronics)、塚本真一(piano)、イトケン(drums)

トフは、今回ライヴを録音させていただいて、このところ毎日のように聴いていました。1年間このユニットを観続けてきましたが、一段と増している輝き。本当に素晴らしい!楽しい気分、充足した気持、そして生きる喜びがわき上がってきます。ミドリさんのサックス、深さと軽さの両方を兼ね備えたサックスの音を始めとして、とにかく音がいい。雅晃さんの曲がまた良くて、曲を解釈し展開していくメンバーの表現力。多分いろいろな音楽を吸収してきたであろう若い世代の並々ならぬセンスと感性がそこにはあるようです。こうして聴き直してみると、スローありアップテンポありと一曲一曲がまるで違うことに驚かされます。
最初がウェイン・ショーターの曲、次ぎが雅晃さんのベースから始まる新曲「ミッドナイト・オフィス」。ベースがいいです。オフィスで残業していて淋しいなという曲なんだそうですが、晴れやかな悲しみがあるようなとてもいい曲。澄んだ清らかな気持なのにどこかしら淋しさや孤独感が拭いきれないような…。「ビーコン」は、魅力的なイントロの後、本格的なジャズに突入。イトケンさんのドラムの見せ場がすごい。後半は「ハッピイエンド」から始まって「フリージャズ」。恐らくはこの4人にしか出せない微妙なニュアンス。雅晃さんが弓を使うと現代音楽っぽくなって、塚本さんのピアノもそれにつられるよう。「夜の東京放射16号」は、暗闇の中でイトケンさんのドラムと塚本さんのピアノがキラキラと瞬き煌めいているような。

4月10日(木)
加藤英樹(bass,b-synth)、ジェイムズ・フェイ(sax,electronics)、中村としまる(no-input mixing board) @西麻布Super Deluxe

間抜けな話ですが、今日10日のライヴを11日と記載してしまって、ピットインでの「東京〜NY即興フェステイヴァル2003」は、その2日前と記憶していたため9日と勘違い。8日の夜それに気付いたので行かず終いになってしまいました。残念なことでした。
さて今日は、中村さんの久しぶりの日本での演奏。思ったより人はいなかったですが、私は楽しみにしていました。最初が台北市生まれニューヨーク在住のジェイムズ・フェイさんのサックスのソロ。いろいろな意味で若さを感じる演奏でした。思い出したのは、この間京都に行った時に鴨川べりから聴こえてきたサックスの音。無造作に練習をし始めたような感じかな。ただここは日本ではなくて、ニューヨークの街角のような…。休憩を挟んで後半はトリオによる演奏。フェイさんは、エレクトロニクスを使用。全体的にはドローンな感じと言っていいのか。そんな中で、中村さんと加藤さんの微妙に変化する音が印象的で、加藤さんが後半の最後の方に少しだけ挿入するベース音も効果的だったと思います。急にワッと音がでかくなったりすることもなくて、絶妙なさじ加減の聴いていてとても心地良いエレクトロニクス音だと思いました。前にも書きましたが、中村さんは、今良い演奏をする優れた地点にいると思います。キース・ロウとのコンビも素晴らしいし…。
余談ですが、ここスーパーデラックスを訪れたら、お酒の飲めない方は、コーヒーを注文することをお勧めします。多少待たされますが、どでかいカップにたっぷり。しかも(多分)入れたての新鮮な味。いまどき珍しいです。

4月13日(日)
ミッシェル・ドネダ(soprano sax) & 斉藤徹(bass)@小金井アートランド
共演:栗林秀明(十七絃) 田辺頌山(尺八)

初日と奈良はどこか物足りない感じがしましたが、今日は熱いインプロをたっぷり観たという感じです。前半、後半共に50分くらいの全員での演奏。ミッシェルさんのサックスに圧倒されました。混沌とした強靱な音。生命の鼓動を感じます。今度は是非ソロ演奏を聴いてみたいと思いました。徹さんもおもしろい場面がありました。左手でベースをガンガン弾きながら、右手で脇に置いてある吊しものを2つ3つ、更にバッグから2つばかしとありったけ手に持って揺すってみせる…。それから、あれは何なのか、小さな小さな鈴の付いた指輪のようなものを取り出して鳴らす場面もあって、その可愛い響きも忘れがたいです。それから箏、箏っていうのも奏者によってそれぞれ表現が違うものだなと思いました。栗林さんは、何かアフリカ系のような感じがしました。カリンバのような感じを出す弾き方をしたり、端の方をマレット状のもので軽くボンボンやったり、ダイナミックに擦ったり…、箏がまるで長い木の上に絃が張ってあって、途中につっかえ棒がしてあるだけのプリミティヴな楽器のように思えてきてしまうところがおもしろかったです。トフは、今日はかぶりつきで丸い小さな座ぶとんに座って鑑賞。目の前にミュージシャンが迫っているの。もう少し観やすいホールでの演奏だったらいいのにと思いました。

4月18日(金)
退廃と官能の夜・クラシックナイト@渋谷青い部屋
LIVE:鶴来正基(piano)/木の脇道元(flute,b-fl)/菊地雅晃(contrabass)&トビウオリアキ(viola)
DJ:佐々木敦(headz/fader)/菊地雅晃

ここ青い部屋を訪れるのは初めて。意外にもたまに行くポンテベッキオというイタリアンレストランの近くにありました。階段を降りて行くのにちょっと勇気が要る感じ。昔のジャズ喫茶を思わせる薄暗いラウンジみたい。中にもうひとつガラス張りの部屋があるのがすごーく変でした。DJは、レコードをかけるジャズ喫茶のマスターねというのが自分の解釈。知っているのはマーラーの曲ぐらいでしたが、同じリフレインが延々と続くものとか、間(ま)のあるものとか曲の構成に割と注意が向きました。で、DJの流す音楽を聴いてその間に短かめのライヴがあるという構成で、最初がフルート。現代ものの曲は、超絶技巧で指をやたら動かすもの。ちょっとした曲の解説が勉強になりました。ベルクのピアノソナタは、ピアニストらしからぬと言っては失礼ですが、カジュアルな服装の男の子の演奏でびっくりしました。
最後は、雅晃さんとリアキさんというお嬢さんのデュオ。雅晃さん今日はお着物姿で、下駄を履いて弓を持って歩く姿は一風変わった光景。で、詩的な長い題名の曲(上記Live Informationを参照)は、曲名の長さに反して、余計なものを極力削ぎ落としたような鋭さがありました。メリハリというか、巧みに少し変化をつけて構成しただけのような感じで、聴いていると音にすごく注意が向くし、少し間(ま)があったのも良かったと思います。似ているというのでは全然ありませんが、同じ"現代"という切り口のある部分で、どこか一本微かに杉本拓さんなんかのインプロと繋がっているような…(馬鹿なことを言っていると思われるかもしれないなー)。雅晃さんが真剣な表情で弓を弾き始めると、まるで吸い込まれていってしまうような震えを感じました。こういう濃密なコミュニケーションもまたライヴの醍醐味だと思います。

4月20日(日)
千野秀一+友貞京子@入谷なってるハウス
千野秀一(synthesizer,computer,piano)、友貞京子(朗読)

トフは、今日も録音すべくMDを持って駆けつけました。(何かやみつきになりそうだな、これって)。千野さんのソロだけかと思ったら意外にも朗読劇。テキストは、内田百聞の「件(くだん)」。面白かったです。最初に千野さんのトークが少しあって、2ヶ月前にこれを思い付いたこと、その間にイラク戦争があって、そんな状況にあるとこの1920年代初頭のテキストが色んな風に見えてきたとのこと。で、リハーサルには無かった音、今日作ったばかりの音を流すことにしたそうで、それは最初の3分間くらい、フセイン大統領の声?やNHKのニュース9などのイラク戦争関連報道を音源にしたものでした。「♪ 髪の長い女だった …」というせりふの出てきそうなリズム+グラウンド・ゼロ風にまとめた音源のピックアップ。だったかな?友貞さんの朗読は、聴き易かったですが、音と言葉を一緒に聴くせいもあってか、物語りをその場で完全には理解できなかったです。ただ、聴くというのはものすごーく想像力をかき立てるところがあって、そういう分からない部分も含めてじっと耳を傾けるのは楽しい時間でした。最後は完全にちょっとノスタルジックなラジオドラマの世界。「出演友貞京子、音楽千野秀一でお送りしました。では来週、この時間にお会いしましょう。ごきげんよう。」という千野さんのお言葉。これ本当に、なってるハウスでシリーズ化して欲しいなー。
前半は、千野さんピアノは使いませんでしたが、後半はピアノソロ。「何か新しいことをやらなければと思いますが、気が付くといつものようにピアノの前に座っている」のだそうです。発砲スチロールの一片をピアノの絃にポンと投げて演奏が始まりました。演奏しながら部分的に詩の朗読があって、取り上げられたテキストは、小野十三郎と西脇順三郎。これもまた、その場では完全に理解できなかったですが、聴きごたえのある良いテキスト。西脇さんの詩は、私も好きですが、独特のぬめりというか艶があってそれとわかるような気がしました。千野さんのお声にまた品があって、朗読の仕方にもインテリジェンスを感じました。

追記
後半のピアノソロを録音したMDを聴いてみますと、千野さん最初に続けて面白いことを言っています。「音で嘘がつけるのか。この音嘘でしょとは言われたくないですが…。まあ、やってみれば分かるかもしれない」と。トフには俄には分かりかねるお言葉ですが、ひょっとして存在したという痕跡を全く残さない音みたいなことを言っているのかしらと思いました。うーん、自分でこう書いてみてもよく分からないなー。千野さんの意図は別のところにあるのかも知れませんが。

4月26日(土)
ぺーター・ブロッツマン(sax)+羽野昌二(drums)@法政大学学館大ホール
ゲスト:一噌幸弘(能管)、八木美知依(20絃)

自分の気持を正直に見つめてみると、実は前半が終わった時点で帰ろうかと思ってしまった。この感覚は、12月に新潟で近藤等則さんと土取利行さんと豊住芳三郎さんの演奏を聴いた時に似ている。この時はさすがに途中で帰ろうとは思わなかったが。演奏は決して悪くないし、こうした水準の高いフリー・ミュージックがやれる人は、むしろ少ないと言っていいのかも知れない。なのに自分の中では、今日のような演奏を面白いと感じるピークが、いつのまにか過ぎてしまったということを確認する羽目になったしまった。
1回の演奏時間は割と短かめ。前半は50分くらい。デュオと全員で4曲ほど。後半はソロと全員でやはり50分くらい。長めのインプロだと、面白い所とそうでない所、盛り上がる所とそうでない所が出てき易くなってしまうと思う。そのことに自覚的なミュージシャンは、いい所だけを取り出して短かめに編集してCD化するという現象もこの頃は起きているようだ。
さて一方で、こうしたフリー・ミュージックの地平を切り開いたミュージシャン、とりわけ今日のようなパワープレイを見せるミュージシャンに対しては、根強く信奉する人がいることも確かだ。「いよーっ」という掛け声とアンコールの拍手。しかし、フリーと言っても、やっているのは同じことの繰り返し。彼らは、お馴染みのミュージシャンが、いつもと同じひとつのことをやるのが実は観たいのではないかと思う。このことを否定はしないし、むしろそれはノーマルな感覚だと思う。そして、これは多分他のジャンルの音楽の世界でも同じこと。しかしもう一方で、新しい何かが常に起きていること、何か新しさを求める試みが、日夜どこかで行われつつあるのも忘れてはいけない現実だと思う。
思ったより早く終わったので、吉祥寺に出向いてスタパでジューシー・パニックの前売券を買った。楽しみだなあと思う気持。わくわくする気持。

追記
一噌幸弘さんの能管の達者なインプロ。フルートに似ている音だと思いますけれど、18日に観た木の脇道元さんのフルート、やたらと指を動かしてブカブカと息を吹き込む超絶技巧のフルート。こちらは現代ものの作曲によるもので譜面を見ながらの演奏でしたが、現前する音=演奏は全く同じという感じ。こういう体験をした時に、作曲もインプロも同じだと感じます。

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