ライヴを観る


2003年7月のLive Information

今月も同じようなものばかりを観ることになってしまいそうですが、その時の興味の流れでこうなってしまうのは仕方ないかなと思います。

7/3 〜11 ブロークン・コンソート・ツアー・イン・ジャパン(ロードリ・デイヴィーズ、マーク・ウォステル、マット・デイヴィス)。詳細はこちら

7/6 菊地雅晃 変調コントラバス・ソロ・パフォーマンス@南青山VAL。 『指標ゼロ』より。

7/12 飛頭@入谷なってるハウス
ミドリトモヒデ(sax)、菊地雅晃(bass,electronics)、塚本真一(piano)、イトケン(drums)

7/18 ラファエル・トラル、アレハンドラ&アーロン、恩田晃、minamo@西麻布super deluxe 詳細はこちら

7/23 山内桂(sax)、広瀬淳二(sax)@大泉学園in"F"




7月3日(木)
大友良英プレゼンツ・キッドアイラック・ニューミュージック・コンファレンス vol.5@明大前キッド・アイラック・アートホール
Broken Consort : ロードリ・デイヴィーズ(harp)、マット・デイヴィス(trumpet, electronics)、マーク・ウォステル(amplified textures)
秋山徹次(resonator guitar) 宇波拓(banjo) duo
Tim Olive (table guitar) solo
大友良英(truntable) solo

ブロークン・コンソートの初日。私はなかなか面白くて、「うーむ、これが若い世代の即興か」と唸ってしまいました。自分なりの拙い感想しか書けないのですが、まず感じたのは、個々の楽器から固有の音が出てそれがぶつかり合うといった演奏を過去のものにしてしまっていること。何か全体が一つの動きのある音のように感じられて、それは奥行きのある深い音で、その中で個々の演奏者がやっていることは、ものすごーく密度が高いように思われました。あと、私が感じるイギリスの即興らしい品格もあったと思います。
今日は、全体的にいい構成だったのでとても楽しめました。最初が、宇波さんと秋山さんのデュオ。バンジョーとギターのカッコ良くてちょっと可愛い小品といった感じ。ティム・オリーブさんは、ギターを解体して組み立てる?といったパフォーマンスだったのか。後ろの方にいたのでよく見えなかったです。ここで一同ちょっと笑ってしまって、大友さんのターンテーブルへ。興味を一気に惹き付けるスリル満点の音。最後は左右から音が振り分けられてガツンときましたね。少し耳を休めてブロークン・コンソートへ。大人が楽しめる内容だと思うのですが、周りはいつもお見かけする人たちばかりで、ここ東京ではこの手のコンサートに足を運ぶ人は本当に限られているのだなと思います。

7月4日(金)
大友良英プレゼンツ・キッドアイラック・ニューミュージック・コンファレンス vol.6@明大前キッド・アイラック・アートホール
ロードリ・デイヴィーズ(harp)、マット・デイヴィス(trumpet, electronics)、マーク・ウォステル(amplified textures)
Sachiko M 杉本拓 大友良英 宇波拓

ブロークン・コンソートの二日目、といっても今日は3人での演奏は無くて、日本のミュージシャンとの共演。最初が全員での演奏、次ぎがさちこさん、宇波さん、マット・デイヴィスのトリオ、大友さんとマーク・ウォステル、杉本さんとロードリ・デイヴィーズと続きました。違和感無く共演できるタイプの人たち、レベルの人たちが集まっていると思いましたが、全員での演奏は、そつが無いというか平均化してしまって、当然のことかもしれませんが、3人で演奏した時のイギリスの即興らしさが失われる方向に行ってしまうと感じるのは、ネガティヴな視点になるでしょうか。
やっていることがよく見えると思ったのは、最後の杉本さんとロードリ。久しぶりに観る杉本さんが、むちゃくちゃ面白かったです。今日は珍しくエレキギターで、じっと構えているのですが、なかなか音が出てこない・・・。「いつ出るのかな、このまま出ないで終わっちゃうのかな、おっ出たのか?出ているのか?」みたいな感じで目が(耳が?)釘付けになってしまいました。「沈黙は金なり!」って言葉こういう場合にも使っていいのかしら。去年の erstwhile のお祭りの時に、香港から杉本さんを観に来た人が言っていましたね。「silence,like John Cage」と。ロードリの繊細なプリペアドにも驚かされました。"弦"に対するこういうアプローチは、西陽子さんにも通じるところがあるのではと思いました。あと、あれは何だろう小さな青い光を発する道具を使って持続音を出していました。静謐な音を録音するためには、エアコンを切るのは仕方がないのか。最後の方は熱気でボーッとしてきてしまいました。

7月6日(日)
『指標ゼロ』@南青山VAL
菊地雅晃/水谷聖/SKE
曽田陽/関根正幸/MORIO

今日は"独奏"をテーマにした『指標ゼロ』というイベント。南青山にあるVALというちょっと変わった場所。地下の穴蔵のような感じなんですが、ロフトのような雰囲気も。アンダーグラウンドな世界に足を踏み入れたという感じでした。後でこの人だと分かったのですが、主催のお兄さんがなかなか感じのいい人で、「オレ、水谷さんが観たかったんだよ」と嬉しそうな顔。自分が観たくてイベントを主催しているのがみえみえでした。トフはトイレに案内してもらって、電気のつけ方を教えてもらったり、青い垂れ幕を外してしまったり、出演者の名前を尋ねたり、飲み終えたコップの後片付けをしてもらったり、随分とお世話をかけてしまいました。
夜が更けていくにつれて、どこからともなく次々に人が集まってきて、それは私がよく行くインプロ系のライヴでは見かけることのない、私の目から見るとごく若い少年少女のような人たちで、こういう風に何かを求めて若い人が集まってくる場所があるのだなと思いました。
演奏の方は、適当な場所を選んでという感じで、天井に近い所だったり、すぐ横だったり目の前だったり。灯りを落とした暗い中での演奏だったので、菊地さんちょっとやり難かったのではなかったでしょうか。最初アナログ・シンセからドカーンと結構大きな音が飛び出してきたので驚いてしまいました。アナログ・シンセを入れた演奏は、ノイジーと言えばノイジーなのですが、基本的にこの人が演奏に向かう姿勢はとても端正。楽器に無理をさせるようなことは決してしませんね。水谷さんは、アート感覚が強いなと思いました。エレクトロニクス音を出す一方で、現実音をフィードバックさせるといった手法のようでした。上の方からマイクを吊して、下の床にはワインの瓶などが2本と金属の皿が一枚、幾つかのコンクリート片や木のスティックが何本も置いてあって、瓶を床に擦りつけたり、スティックをバラバラとやったりしているのですが、その音がマイクを通して聴こえてくるとは全然思えなくて、「ひょっとして、このマイクはダミーじゃないのか?その方が面白かったりして。」などと思ってしまいました。最後のSKEは、時間を考えて観ずに帰宅しました。

7月11日(金)
ブロークン・コンソート@代々木offsite
マーク・ウォステル(amplified textures)+宇波拓(laptop)
ロードリ・デイヴィーズ(harp)+中村としまる(no-input mixing board)
マット・デイヴィス(trumpet, electronics)+大蔵雅彦(sax,bass tube)

ブロークン・コンソートの最終日はデュオの組み合わせ。トフは、今日はほとんど目の前といった距離だったので、メンバーの一人一人が、日本人ミュージシャンとの共演の中でどうやって音を出すのか、どういう音を出すのかがよく見えました。いやー、素晴らしかったです。例えば、マークは弓を擦る微かな音をアンプリファイドさせる、マットのトランペットの微妙な表現、ロードリのプリペアド、ハープのプリペアドに使っている木の小道具を更に長い竹串のようなものでカタカタと叩いてみせる・・・こういった微少で微細な音を創出する繊細な作業という感じでした。その作業を通して出てくる音がまた実にいい深みのある音で、それはこうしてじっと耳をそばだてて聴くに足る音だと私は感じました。こう言うと何ですが、オフサイトで今まで行われてきたようなことが、実はこんな所で結実している、あるいはしていたのではないかという印象すら受けました。やっぱりイギリスの即興はいいなー、すごいなーと思いました。
休憩時間に宇波さんに声を掛けました。「小倉で観た人からすごくよかったってメールもらったよ」と言ったら、小倉での演奏は格別によかったとのこと。そういう時に限って録音していなかったそうで、聴きたかったなー、残念だったなーと思いました。一楽さんもすごかったそうです。一つの旅を終えて、一つのことを成し遂げた宇波さんは、心なしか逞しくなったように見受けられました。

7月18日(金)
ラファエル・トラル、アレハンドラ&アーロン、恩田晃、minamo@西麻布super deluxe

9月28日までNTTインターコミュニケーション・センターで開催されている「サウンディング・スペース」への参加のために来日したサウンド・アーティスト、ラファエル・トラルとアレハンドラ&アーロンのライヴ・パフォーマンス・イベント。いつもながら、HEADSのやることは集客力があるなと感心します。
演奏は、ゲストのminamo、恩田晃さん、アレハンドラ&アーロン、ラファエル・トラルの順番。最初のminamoは、多分こんなだろうなという予想通りの音だったということもあって、自分にとっては、さほど印象的ではなかったというと何ですが、そんな今時の脆弱な音の一つという感じでした。恩田さんのパフォーマンスを観るには実は初めてで、昨年のスライド&杉本拓さんの演奏以来。カセットテープを何本か流しながら、体を軽く動かしながら手元で早送りしたりしているのか?操作する度にキュルルっとノイズが入ります。こうしたテープの操作は、きっとこの人にとっては、写真のシャッターを切るのと同じ感覚なんだろうなと思いました。恩田さんの表現には、今をこの瞬間を生きる生々しい感覚のようなものがあって、一回の体験で理解と共感ができる人だと思いました。
トフは、今回の「サウンディング・スペース」もいつか訪れてみたいと思っていますが、一口にサウンド・アートといっても、内容は実に様々なのではないかと思います。アレハンドラ&アーロンは、バルセロナを拠点にする男女のラップトップ・ユニット。「さよならのための・・・(何とか)」という今回の作品は、男女の台詞が入っていたりして、生でも2人で見つめ合って台詞を言ったりするものでしたが、リリカルというか綺麗すぎてトフはちょっと物足りなかったかなと思いました。でも、隣の男の子は、読書しながら聴いていたりして、必ずしも真剣に聴くばっかりが能ではない、こういう聴き方もあるのだなと思いました。最後のラファエル・トラルは、ちょっと身体にきました。これを聴いている時に惹起してくる感覚、それがまるでラモンテ・ヤングのCDを聴いている時と全く同じような感覚だなと思いました。その名も"the second dream of the high-tension line stepdown transformer from the four dreams of china "というトランペットだけの長たらしいやつ。ちょうどあれを聴いた時に感じる何かと共通するものがあるなと思いました。ラファエル・トラルのは、エレクトロニクス音だけで、後ろに雲がゆっくりと流れて行くモノクロの映像を映しながらの演奏で、機材の上にも雲に見立てた白い毛足の長いぬいぐるみのようなものがひょいと置かれてあって、その脇からアンテナのような物が2本角のように出ていて、それにそって手を動かすとテルミンのように音に歪みが生じる仕掛けになっていました。トフはこのところちょっと体調が思わしくなくて、今日は目が疲れて開けていられないような感じがあったのですが、このミニマルなうねりのある音楽を延々と聴いていると、空が映っているのに、逆にどんどんと閉所に押し込まれて行くような息苦しい感じがしてきてちょっと辛かったです。面白くなかったというのでは全然ありませんが。

7月27日(日)
好きよ、キャプテン/the captain akiyama festival@西麻布super deluxe
set1: 秋山徹次(boogie guitar)
set2: 秋山徹次(turntable w/o records)
set3: Satanic Abandoned Rock'nRoll Society
秋山徹次(resonator guitar)+宮本尚晃(guitar)+伊東篤宏(optron)+ユタカワサキ(analogue synth)

最初に、23日の山内さんと広瀬さんのライヴ、翌朝の遠出の準備をしていて行かなくてすみません。
さて、今日はいつもここで他のミュージシャンのお世話をしている秋山さんの特集日。キャプテンという名前は、どういうところに由来しているのか、門外漢の私は知る由もありませんが、今までじっくりと観る機会がなかったのでいい企画だと思います。
最初が、ブギ・ギターのソロ。発売間近のソロ・アルバムをセレブレートしたものだそうですが、こういう演奏を聴くのは初めてでした。次ぎが、ターンテーブルのソロ。これはもうぶっ飛んでいましたね。ターンテーブルを観る時は、必ずといっていいくらいセンスがどうのとかいうことを言ってみたくなるのですが、そういった言説を吹き飛ばしてしまうようなところがあります。秋山さんのギター・ソロについて以前「固定観念がない」と書いた覚えがありますが、今日もそんなことを強く実感させられました。何かロウソク?もたらしたりしていたみたいでした。このぶっ飛びぶりが12月のANODE公演でも観られるのを楽しみにしたいと思います。
最後のユニットは、実はトフがすごーく好きなもの。「Satanic Abandoned Rock'nRoll Society」というかっこいいユニット名がついて増々気に入ってしまいました。聴いていると、とても気持がいい。何でこんなに好きなのかなと考えながら聴いてしまいました。まず第一に、宮本さんのギターが好きなのかなと思ったりしますが、とにかくアンサンブルから出る音が一つではない。ちょっと話は逸れますが、例えばチュードアなんかは、エレクトロニクスでアザラシの鳴き声みたいなものを出したりするわけで、ユタさんのアナログシンセにもそんな獣的な音を感じたりします。で、宮本さんのギターに何か光的なものを感じたりして、こうした天使と悪魔みたいな全く異質だと感じる音が共存しているところが魅力なのかなと思ったりします。同じこと何度も言いますが、聴いていてすごーく気持よくてまた是非観たいと思うユニットです。


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