ライヴを観る


7月5日(日)
長須与佳(薩摩琵琶、琴古流尺八)、横川理彦(violin,laptop)、大谷安宏(guitar,laptop)@新宿pit-inn(昼の部)

<東京の夏>音楽祭2009の関連公演で、resonant wave vol.2という催しに出かけました。琵琶と尺八という伝統楽器と電子音楽=ラップトップミュージックとの共演です。
最初に少し長めに大谷さんと横川さんがやりました。両者ともノートパソコンを使って、合間にちょこちょこっとヴァイオリンやギターを入れるような感じでした。あんまりブチブチっとしたノイズではなくて、どちらかというと反復的なところに変化が現われて位相が変わっていくような感じだったと思います。次は、ここに長須さんの尺八が加わりました。きちんとした尺八らしい演奏でしたので、他の音と合っているのかどうかわからなくて、演奏の間中合っているのかいないのか感じ取ろうとしながら聴いていました。こういう作業もまた楽しいものです。
後半は、長須さんの琵琶による「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり・・・」の一節から始まって、次ぎは大谷さん作曲の「琵琶とコンピューターのための」を長須さんと大谷さんで演奏。その際、大谷さんはi.Phone を使いました。最後は、三者による即興。長須さんは音数は少なめでしたが、琵琶と尺八を場に応じて自由に選択してやりました。
こういう経験は以前にもあって、どちらかというと群音的なインプロの場合に感じることかもしれませんが、最後の演奏のそれも半分以上過ぎたあたりから「おもしろくなってきた!」と感じました。こういう場合、扉が開いた、窓が開いた、大げさに言うなら新しい次元が開いたというような感覚に襲われるのですが、これについて考えてみると、聴いている間に自分が演奏に聴き慣れてくるために生じるものなのか、あるいは演奏者側の交感が深まっていって実際に演奏自体のテンションが上がっていっておもしろい局面に入っているためなのか、あるいはその両方なのか、なかなか把握しにくいおもしろい感覚だと思います。
横川さん、大谷さんのi.Phoneの音にびっくりしていました。横川さんによると、インプロの業界?には他の人がやっていることはやらない、という暗黙の了解があるそうで、何でもやったもん勝ち。なので、「i.Phoneは、大谷君だねー」と言っていました。ちなみに、横川さんのオリジナルは、ヴァイオリンをいじめることだそうです。


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フリー・インプロヴィゼーション、もうひとつの展望 vol.8@吉祥寺Sound Cafe dzumi
出演:秋山徹次(guitar)、マーク・サッドグローブ(手作り楽器)
ゲスト:ジャンニ・ジェビア(alto sax)

ピットインでの演奏が、5時頃終了したので、それから吉祥寺に行くにはちょうどいい時間でした。こちらは6時が開演予定でしたが、今日はジャンニ・ジェビアさんという思いがけないゲストがありました。アルト・サックスによるフリー・インプロヴィゼーションを聴く機会はほとんどないので、とても新鮮でうれしかったです。風のような音から始まって、大きな音まで多彩な音に焦点をあてたような感じでした。
その後は、マークさんの手作り楽器だったか、秋山さんのギター・ソロだったのか、記憶が定かではないのですが、その手作り楽器を説明するのはちょっと難しいかもしれません。先端に小石のようなものを付けた金属の紐状のものが4本ぶら下がっていて、手元で操作するとそれが下がって下の小石のようなものに接触すると音が出るというもので、この4本を1と2、2と4、3と1と2という具合に可能な組み合わせを呈示してその通りに操作していくというものでした。アンプリファイドされていたというのもあって、楽器というより音響装置のようなものだと思いました。
秋山さんのギターが始まったのは7時10分くらい。この季節ではちょうど昼と夜の境目のような美しい時間帯でした。演奏中に雲間から丸い月が姿を現わしました。世俗から離れた高みにて、月を眺めながら音に耳を傾けるという風雅な時間です。秋山さん、道具を使わないでやりましたが、型とかスタイルを感じさせるものがなくて、この人の場合いつも白紙から音が立ち上がってくる印象があります。このあたりは、なかなか自覚的でないと同じことの繰り返しになりやすいんだろうなと思います。
で、最後はマークさんのもうひとつの音響装置T-springと秋山さんのギターとの共演。T-springというのは、バネが4本ぶら下がっていて、その先に金属の駒状のものがついているもの。これは振動音を利用しているのか?見たところどうやって音を出しているのかよくわかりませんでした。秋山さんのギターは、上の方で2ケ所洗濯バサミのようなもので弦を挟んで、セラミックのような?筒状のものを弦に接触させているだけなのですが、割と澄んだ高い音が出たので、アコースティック・ギターからこういう音が出るのかと不思議に思いました。T-springの持続音に調和する持続音をギターから出して、共にひとつの音像を刻むコラボレーションだと思いました。これは、なかなか秀逸なサウンド・インスタレーション的パフォーマンスだと思いました。

7月8日(水)
ジム・オルーク(guitar,etc)、齋藤徹(double bass,etc)、向井千惠(erhu,etc,)@六本木superdeluxe

最初に書いてしまいますが、インプロヴァイザーとして共演したことのない者同士を出会わせるのはやはり難しいと感じたコンサートでした。
出だしからちょっと大人しい感じがしていたのですが、徹さんのベースが主導でどんどん先に進んでいくような感じでした。後で考えてみたのですが、インプロヴァイザーとしての持ち味がそれぞれかなり違うのだと思いました。強いて名付けるのなら、ジム・オルークさんは音響の人、徹さんは演奏の人、向井さんは即興的動作の人とでもいいましょうか。持ち味が違うのは、それはそれでいいと思うのですが、音だけを取り出した場合、徹さんの音が強く全面に出てきてしまって、残り2人の音がしっかりと立ち上がってこないような感じがしました。もちろん、ちょっとおもしろいなと感じる瞬間はなきにしもあらずでしたが。
徹さんのベースは打の要素もあるのでとても強い音。向井さんは胡弓の他、モノを倒したり引きずって会場内を移動したりポーズをとったり・・・。ジム・オルークさんは、実はこの手のインプロを観るのは初めてで、てっきりデレク・ベイリーのようにギターを弾くのかと思ったらそうではなくて、ちょこちょこっと柔らかくギターを弾いて、後は、シンバル1個や太鼓1個や何か弦楽器を膝の上に置いて、擦ったり叩いたり押さえたり・・・とても繊細な音を出していると思いました。
それでも結構長くやりましたよ。休憩を挟んで、8時過ぎから10時過ぎまでやりましたから。で、演奏が長いとやはり絶えず演奏を続ける徹さんが一番大変だったみたいで、演奏の苛酷さというものも垣間見ることができたように思いました。
初めて共演するということで、出会うことのみによる飛躍を期待するのは難しいということかもしれませんが、私は単純なせいか、誰と誰がやると聞くとそれだけでうれしくて、たいがい出かけてしまいますね。

7月18日(土)
スガダイロー(piano)@入谷なってるハウス

ジャズを素材にして自分の表現を追求するということ・・・おもしろい人がいるなーと思いました。やっぱり積極的にライブハウスに出向かなければと自分に言い聞かせたくなります。
ピアノソロでしたが、何だかとっても難しいことをやっているように感じました。山下洋輔さんに師事したという予備知識はあったのですが、始まりの感じはキース・ジャレットのようで、それから次々にスタンダード・ナンバーをやりました。ちょっと驚いたのが「パリジャン・ソロファー」。バド・パウエルとクリフォード・ブラウンの演奏で有名なあの曲。確か「パリ」がついたと思うが何と言う曲名だったかしらと、実は数日かかってこの曲名を思い出しましたが。難しい曲なのか、私はあまりやっているのを知りません。後半には「スピーク・ロウ」が入っていたと思います。強いタッチで、山下洋輔さんみたいにジャンプして、ピアノの弦が1本飛んでしまう場面もありました。'74年生まれという若さの持つパワーも感じました。
オリジナルも2曲やりました。「上州無宿」と「国破れて山河あり」。なかなか良い曲でこれまた才気を感じました。

7月31日(金)
bis eclipse vol.5@浅草橋パラボリカ・ビス
出演:aen,cal lyall,itoken

久しぶりにイトケンさん出演のイベントを見つけたので出かけてみました。台東区の柳橋というところ。雑誌『夜想』が運営するスペースで、京成線に乗ったら意外に早く着きました。ちょっとレトロな感じのする2階立ての建物で、1階にギャラリーがひとつ、2階はギャラリーがひとつとショップとカフェを兼ねたスペースがあって、かなり広い感じがしました。大きな丸窓が路地に面していて、向かいは病院だそうです。防音が施されていないそうで、大きな音は出せないそうですが。
で、丸窓の脇に大きなテーブルを置いて、その上にはミュージシャンが使うモノがいっぱい。自分としては、エレクトロニクス表現の現在(いま)が体感できる貴重な時間になりました。かなり自由に自分の個性を発揮できて、しかもライヴで完成度が高いものを披露できるようになっている、というのが私の印象です。聴き手である私には、技術的なことはすべて説明できないかもしれませんが、音を出してそれを取り込んで反復させて重ねていく、というのが基本のように見受けられました。これを3人がソロで表現したのですが、それぞれが全く違う個性であったことが、聴く楽しみを奮い立たせてくれました。
書けることだけを書いてみますと、最初のaenさんは、レコード盤やCDを使いました。プレイヤーの針がレコード盤の上に降りる瞬間のノイズを上手く利用したりして、こういうパフォーマンスは私のようなレコードの世代には思いもよらぬものです。イトケンさんは、ドラマーらしく小物を使って「打」から生じる響きの要素を上手く取り込んで構成していました。最後のキャル・ライアルさんは、エレキギターをテーブルの上に平らに置いて、指で弾いたり弓を使ったり・・・ドローンのようなアンビエントのような・・・しかし、徐々に違ったものも現われてきたりして・・・エレクトロニクスの強みというか特性とでもいいましょうか、演奏が進んでいくにつれて、境界突破的など迫力が出てくるのが意表をついていると思いました。
最後は3人による演奏。3人が座ってコラボレーションできる大きなテーブルはいいかもしれませんね。途中、英語のナレーションが出てきた時、昔聴いた何かを思い出したのですが、あれは何だったかなー。
最後にもうひとつ。こういう場所を運営していくご苦労は承知の上で申しますが、もう少し灯りを落として暗めの環境で聴けたらなと思いました。


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