ライヴを観る


2003年8月のLive Information

8/1(金) 風巻隆 ソロ・パカッション「SKETCH」@渋谷アピア
10:00PM〜11:00PM  料金2000円(前売り・当日共通)

いつものシンプルなドラムセットから離れて、木琴のコギリや親指ピアノ・ムビラなど、アフリカにルーツを持つ民族楽器をカザマキ風にアレンジしながら、語りかけるようなタイコと、複雑なリズムで、「いまここ」の世界からすり抜けていく、即興のファンタジックな世界。アコースティック系のライヴハウス、渋谷「アピア」のLIVE22という夜10時からという「大人の時間」に行われる、風巻のソロ・パカッションの新しいシリーズ「SKETCH」は、ちょっぴり癒し系の音楽を装いながら、むしろ、二つのリズムがズレやきしみをともないながら同時進行していくような「複雑系」の音楽を形作っていく。ちょっとアジア的なバー空間から、防音ドア一枚隔てたところに小さなライヴ空間があって、遠藤ミチロウや、友川かずき、三上寛らも出演している、老舗のライヴハウス「アピア」。音の語りかけるものに、耳を澄ましながら、そこに現れるさまざまな情感や、いいようのない「懐かしさ」といったものを、音楽として感じ取ってみてください。

8/6(水) Alessandro Bosetti(soprano sax)@池ノ上現代ハイツ
大蔵雅彦(alto sax,bass tube)、宇波拓(laptop,banjo)

8/16(土) 8月の夕暮れ、一角獣よ@法政大学学館大ホール
吉増剛造(poetry reading,etc)、マリリア(vocal)、灰野敬二(percussion,etc)、ジャン=フランソワ・ポーヴロス(guitar)

8/22(金) Bar さちこ 〜90minutes〜 @代々木off site

8/30(土) Jean-Pierre@渋谷青い部屋
Dragibus(from Paris)



8月6日(水)
Alessandro Bosetti(soprano sax)@池ノ上現代ハイツ
大蔵雅彦(alto sax,bass tube)、宇波拓(laptop)

ドネダとの共演アルバム"places dans l'air"で初めて聴いたアレッサンドロ・ボセッティ。現在はベルリン在住で、アネッタ・クレプスとの共演アルバムもあるようです。'73年生まれという若さなのですが、私はいいものをもっている注目株だと思いました。この若さなのに、演奏がとてもこなれていて聴いているとしっくりくるものがある・・・何でも初期はスティーヴ・レイシーの影響下にあったそうで、そんなこともあってか、時折見せるタイム/空間感覚もとても良かったと思います。音の方は、先端に詰め物をしたりしてかなりコントロールされている微少なもの。私が知る限りでは、"sopranino/radio"のミッシェル・ドネダを彷彿させました。前半はソロ、後半はトリオでの演奏で時間は短かめでした。ここ現代ハイツは、半地下なのですが、今日のような静かな演奏を聴くには音がちょっとうるさいかなという感じ。エアコンや換気扇や冷蔵庫の音、水の流れる音などで一杯。後半は、これらの音がちょっと気になりました。宇波さんがラップトップの脇でやるの、あれは自動演奏装置というか、そこまでいかない自動音出し装置みたいなもの、あれは面白いと思いました。
時間があったので、現代ハイツへ行く前に下北沢で降りて少しぶらぶらしました。通りを歩いていたら、先月軽井沢のニューヨーカーで買った洋服のお店があってびっくり。「Sally Scott. 10632 OHIO:4741-9842. No Dogs.Two Cats.」というブランド名。中に入って店員さんと話したらジャクリーン・ケネディのファッションをお手本にしたものだとか。ちょっとレトロで媚びない品のあるセンスは、目下トフのお気に入りです。紺地に白の和布で作ったトフ手製のバッグを店員さんにほめられてしまった。

追記
アレッサンドロ・ボセッティ、もう一回観ておきたい、観ておくべきだというのがあって、今日9日円盤へ行くつもりでいました。夕方ぎりぎりまで待っていたのですが、なかなか風雨が収まらなくて出かける気になれなくなってしまいました。CDも買うつもりだったのですが。

8月16日(土)
8月の夕暮れ、一角獣よ@法政大学学館大ホール
吉増剛造(poetry reading,etc)、マリリア(vocal)、灰野敬二(percussion,etc)、ジャン=フランソワ・ポーヴロス(guitar)

今日は何をどう書いたらいいのか困ったなという感じです。詩は好きな方ですが(モノによりますが)、そもそもポエトリー・リーディングというのは苦手で、特に日本語によるものだと情念的なあるいは演劇的な印象が避けられなくなるようなところがあって、それが自分には合わないのかなと思ったりします。しかし、詩人が自作を朗読するのではなくて、例えば千野さんなんかが音楽を演奏しながら詩を朗読したりして音と言葉の関係を探るようなパフォーマンスはとても面白いと感じるので、これはどうしてなのかなと思います。
さて、前半は開始前から吉増さんがステージに座り込んで、金づちの音をコーンと響かせて銅板に文字を打ち付けるというパフォーマンスをしていました。舞台がスタートすると詩の朗読が始まって、少し遅れてマリリアさんがそれを仏訳したものを朗読したりしていたと思います。灰野さんは、ギター、パーカッションの他にフルートの演奏があって、これがメリハリのあるなかなかいい音でびっくり。後は、舞台から降りてきて金属のオブジェを叩いたり擦ったり、細長い金属片をしならせてシュルシュルと震わせたりして灰野さんらしい音の出し方、表現がふんだんにありました。
後半は、灰野さんとポーヴロスさんのエレキギターから始まって、これがしばらくの間ズズズーンときてその間舞台から煙りが上がりました。ポーヴロスさんは、実は今日来たのは半分はポーヴロスさんが観たかったからなのですが、魅力的な独得の個性がある人だと思うので、あのギター表現と一緒に低音の素敵なお声で歌なども是非聴きたかったなと思いました。今日はこれといった打ち合わせなしで行われたそうで、未完成で成り行き任せの印象も免れなかったと思いますが、それでもこういったものに足を運びたいと思うのは、たとえすべてではないにしても、インプロには未知のいい瞬間というものが生まれ得る可能性が必ずあるはずだと思うからだと思います。

8月22日(金)
Bar さちこ "夏祭" 〜90minutes @代々木off site
Sachiko M(sine waves)

Bar さちこは、このところほとんど観ていますが、毎回違った趣向で楽しませていただいている素敵なシリーズ。今日は夏祭ということで、さっちゃん何と浴衣姿。薄いブルーの地に濃紺の柄の浴衣、赤い帯に赤い鼻緒の下駄。いいですねー。かっこいいですねー。私もこういった浴衣や手拭いの柄はとても好きですが、観ているとなんとも言えない涼感があって、日本文化の伝統の良さを再認識してしまいます。それから今日は、「Bar Sachiko 2003 8 22 夏」というサイン入りの、それもちゃんとした竹の柄(え)のうちわまでいただいてしまって、エアコンを消している演奏中にお客さんたちはこれで扇いで暑さをしのぐことになりました。今日は、やっとというか久しぶりに夏の暑さが戻ってきたので、やっているご本人は、90分間大変だったのではないでしょうか。そんなことも考慮に入れてか、近くのテーブルの上に桶を置いて、その中には大きな氷が2つばかし。風鈴も吊される演出がありました。
演奏の方は、前回のBar さちこ60分は、かなり指を動かす実験的なものでしたが、今回はほとんど変化のない、途中わずかに微かに変化の感じられる持続音。この持続音は、小さくも大きくもない微妙なヴォリュームで、この微妙な音は、身体のどこかを常にずっと刺激し続けるような感覚があって、これがずっと続くのはとても心地よいと思いました。

8月30日(土)
sounding spaces/9 sound installations @NTTインターコミュニケーション・センター

8月の最終土曜日の午後。サウンディング・スペース/9つの音響空間の会場を訪れました。サウンド・アートや音をテーマにした展覧会は、近年各地で開催されているそうで、こういった催しに対する社会的関心が高まっているのかどうか、そういった事情には精通していない私ですが、少なくとも私自身の中では、音を聴くということが徐々に大きな位置を占めているのは事実だと思います。最近は、眼が疲れるということもあってか、絵画や現代アートの展覧会、映像/映画といった"観る"ことに対する興味がぐっと薄れてきてしまって、その分"聴く"ということに対する興味が増しているのかどうか、聴くことに意識が集中するのは確かで、これはどういうところからきているのかと思います。こんな今の自分を敢えて位置付けようとするなら、音楽愛好家や特定の音楽ファンやマニアという言葉では少し狭い感じがして、もう少し広範囲の中川真さんが言うところの「ホモ・オーディエンス(聴く人)」という言葉が一番適格なのではないかと思ったりします。
そんなわけで、今日ここのスペースは、自分にとってはとても居心地が良い場所でした。スーパーシートという個室の順番を2時間待つという事情もあったのですが、3時間近くをこの場所で過ごすことに何のためらいも無かったというか、気が付くとそのくらいの時間をここで過ごすことになっていました。広いスペースに人が少ないのも良かったのだと思います。
インスタレーションについて書けることだけをを書いてみますと、まずは体験的なもの。ケーブルの林の中をヘッドフォンを付けて歩き回るもの(クリスティーナ・クービッシュ《イースト・オブ・オアシスー音への12の入り口》)とか、真っ暗な空間にマイクが一つ置いてあるだけで、自分の声を入れるとリアルタイムで加工され変調され、デジタル・ディレイを通過して数秒後にスピーカーから加工されたサウンドが流れるもの(ラファエル・トラル《エコー・ルーム》)。これは、自分は音楽をやらない人間なのでとても新鮮で面白かったです。アルヴィン・ルシエの《エンプティ・ヴェッセルズ》やリチャード・シャルティエ&テイラー・デュプリーの《スペシフィケーション・トゥエルブ》などスピーカーを多用することは、やはりインスタレーションという空間には必要なことなのでしょうか?極めつけは、4×8のグリッド状に配置された壁状の40個のスピーカーによるインスタレーション。想像力を駆り立てるインダストリアルな音という感じでした。40個のスピーカーと同様に配置されたマイクで、ロッテルダム各地の野外で録音された実際の音が使用されているとか。"耳のための映画"というコンセプトも気に入りました。階段が展示場になっていて、上っていくにつれてドキッとするような音に出合うデイヴィッド・カニングハムの《ザ・リスニング・ルーム》も刺激的でした。
さて、今回の展示のチラシには「その作品(サウンド・アート)は非常に抑制された表現ながら、わたしたちの感覚や想像力を存分に喚起させる強度をもつ」という一文があって、私はここに冒頭に書いた"聴く"ことに対する興味の答の一つがあると思いました。なるほど、サウンド・アートやサウンド・アート的なものの喜びは、そうした音体験によって自分が自分に出合うこと、それも自分でも思い掛けない自分に出合ったりすることだと思うからです。実にこうした音は、自分を映す鏡でもあると思うからです。しかし、もう少しこのことについて考えてみますと、確かにここは居心地の良い場所でしたが、こうしたインスタレーションという形態ではダイレクトな体験性は今一つという感じもしなくもないです。というのは、自分の体験に照らし合わせてみると、すべてがすべてでは勿論ないですが、"演奏者"を介した音体験の方が、感覚を刺激し想像力を喚起する度合いが大きいと感じるからです。これはやはり一つの場において演奏者と聴き手という緊張関係が生まれて、つまりコミュニケーションの回路のようなものが生成されて、聴き手の聴き取ろうとする注意がより密に演奏者に向けられるというのがあるからなのかもしれないと思います。

8月30日(土)
Dragibus:Lore(vocal),Leo(keyboad),Franq(drums,sampling,etc)
Jean-Pierre:イトピエール(ピアニカ、ラップトップ)、ユユピエール(テルミン)、サチピエール(パヤパヤ)、エリピエール(グロッケン)、チエピエール(パヤパヤ)、トイピエール(クラリネット、パヤ)
ammakasie noka
岸野雄一(DJ)@渋谷青い部屋

イトケンさんは、私にとっては不思議な人。一昨年のanode初演時には、全然姿が見えなくて何の楽器をやっている人なのかも分からなかったというくらい。しかし、昨年印象的だったライヴを列挙してみたら、何と3つと最多登場したのはイトケンさんだったのでした。とにかく、やっていることが一つではない。そのドラムの魅力を知ったのも、実は「飛頭」を録音するようになってからでした。そして、新ユニット「ジャン・ピエール」。初ライヴの映像を観た時にも「こういう音楽は我輩の辞書にはないぞ」みたいなちょっとした衝撃を感じてしまいました。不思議な楽器編成の映像は、ペンギンやアザラシを音像化しているような感じ?しかし、実際に聴いてみると、もっとハッとするような鮮やかなキラメキのある音。ユニークなリズム感覚にも引き込まれます。私は特に最後の曲が良くて、この編成にもかかわらずノリを感じてしまって、「これは魅力的なプログレ・ロックだな」と思いました。特にグロッケン=鉄琴の響き、あれがとても効果的でたまたま最近聴いたものからの引用ですが、マイク・ウェストブルック・オーケストラでチューブラー・ベルズを使う、あんな感じかなと思いました。
ドラジビュスは、とにかく衣装がかわいい!ローさんとフランクさんお着物姿で、ローさんは後で着替えましたが、ちょっとレトロな柄のあれは浴衣だったのかな?髪に電気が点滅する髪飾りを付けて、イヤリングも光が点滅して、その姿はカラフルなラッピングをしたボンボンみたい。さっちゃんの涼し気なジャパネスクの浴衣姿は、葛きりか葛餅だったんだなーという感じ。次ぎはイタリアの何とかポルトガルの何とかといった曲の紹介は何なのかと思ったら、ヨーロッパ各地の古い童謡をモチーフにしているらしいです。しゃれた感じだなと思いましたが、この時間帯になると眠気が・・・。お客さんが溢れるほど集まって、こういう感じもいいもんだなと思いました。昼はNTTインターコミュニケーション・センター、夜はここ青い部屋と別モードの一日を過ごしたトフなのでした。


ページのトップへ
表紙に戻る