暑中お見舞い申し上げます。
今月は、Hacoさんと大友さんの新作をピックアップしてみました。8月4〜7日までは、相続のことで信州の実家へ。気が重い・・・。夫が大好きな坪口昌恭トリオもギュンター・シュナイダー&バーバラ・ロメンもあいにく4日でした。
8/19(木)ash in the rainbow@入谷なってるハウス
ash in the rainbow:Haco(vocal)+坂本弘道(cello)、サム・ベネット(electronics)
8/21(土)another circuit(アナザー・サーキット)@代々木offsite
Haco(エンピツ・オルガン)+ astro twin:吉田アミ(vocal)+ユタカワサキ(analog-syn)
8/29(日)大友良英ワークショップのライヴ@めぐろパ−シモンホ−ル 小ホ−ル
第一部:大友良英「コールレシオ」(日本初演) 大友良英(g,etc)、高良久美子(vib,perc)、石川高(笙)、西陽子(筝)、大蔵雅彦(sax,reeds)、イトケン(toys,perc)、Sachiko M(sinewave)
第二部:「GRID」(初演)ポータブル・オーケストラ(第一部出演ミュージシャンおよびワークショップ参加メンバー)
4日から7日まで、小諸〜軽井沢と信州で過ごしてきました。今年はどこも暑かったですが、朝晩が涼しいので過ごしやすくて有り難かったです。で、翌8日は久しぶりのライヴ。観てみなければわからないものが世の中にはたくさんあるなーという感じでした。
で、その「観てみなければわからない」エミさんが最初で、即興によるパフォーマンス。朗読しながらピアノを弾いたりおもちゃやディレイを使ったりでしたが、ジャンルを感じさせないので楽しめました。「恐竜百万年」か「ギャートルズ」のような出で立ちのお姉さんで、ちょっと濃いめというかアングラっぽい感じでした。
次ぎのジャン・ピエールは、今回初めて全員がそろったそうで、ボーカル×2、グロッケン、ピアニカ、クラリネット、テルミン×2という編成。音的にすごーく鮮やかで完成されているという感じでした。曲全体の印象がそう感じさせるのかどうか・・・テルミンの音に南の島にいるようなリゾート感覚を感じてしまったりして、これは自分にとっておもしろい体験でした。夏ということで、今日は皆が浴衣姿。大してお化粧もしていない彼女たちの浴衣姿を観ていると、現代っ子というよりも昔の女性のような雰囲気があって、つまりかなりジャパニーズな感じが視覚的にはして、そんな感じでテルミンを操る姿はヘンといえばヘンですが、観ていると清々しかったりする感じもあったりするのでますますヘンだと思いました。
最後の川口さんと近藤さんのデュオは、はっきりとしていて把握し易かったです。川口さんが、リコーダーやサックスなど、珍しいものも含めてその種の楽器を吹いて、近藤さんがギターを演奏。きれいな音でトラッドを演奏するというような感じ。こちらもリゾート感覚がありましたが、爽やかな高原の方かな、こちらは?
japanoise net 主催の"august dissonance"(8月の不協和音)という企画に出かけてみました。ここ数日間このことについて何か書かなくてはと思っていたのですが、「8月の不協和音」という題名通りの内容で、それ以上何かを書く気になれなくて困ったなーという感じもしなくもないです。トフは、ライヴでこういうの観るのは嫌いではないですが。
最初が水谷さんのソロ。エレクトロニクス+実演みたいな感じで、エレクトロニクス音を出す一方で、上から吊したマイクの下で、ドラムのスティックを何本も転がしたりしました。次の伊藤さん+澤田さん+八木橋さんのトリオは、ノイズとストロングタイプのフリーのアルトサックスの共演といった感じで、エレクトロニクスとインプロのサックスがこんな風にドッキングすることによって刺激が倍加されるような感じのものでした。澤田さんは、チェロではなくてギターでしたね。最後の秋山さん+村山さん+宮本さんのトリオは、秋山さんのエレキギターのせいか、ちょっとロックっぽいノイズ・インプロみたいな感じで、村山さんは、ドラムの他に大蔵雅彦さんみたいなバスチューブ(アルトチューブ?)も使ったりしました。宮本さんのギター表現は結構好きで、聴く度にいい音だなーと思って耳を傾けてしまいます。
Hacoさんと坂本さんのash in the rainbow。去年は観ることができなかったので、今年は是非と思って楽しみにしていました。期待に違わぬすばらしいユニットで、心打たれるものがあると思いました。
演奏の方は、割と短めの曲の連続でしたが、ライヴでのエレクトロニクスやエフェクトの使い方がとても上手で、そういうところでやはり研鑽を積んできた人たちらしい演奏だなーと感心しました。Hacoさんと一緒だと、坂本さんはその凶暴さが押さえられるのかどうか、一見「美女と野獣」?みたいな単純な仕分けをしたくなるユニットのように受け取れないこともないかもしれませんが、実は、Hacoさんの繊細な表現の中にも強さを、決して多弁でも饒舌でもないヴォーカルにエレクトロニクスと拮抗しうる強さを感じたり、一見豪放な坂本さんの表現の中にも繊細さを、口笛やmusicalsawや花火のような火花の表現に繊細さを感じたりもして、これこれであると決めつけることができないような、いい意味でのとりとめのなさみたいなものがあって、それらが全体として何か夢幻的な雰囲気を漂わせるようなところがあって、なかなかすばらしいと思いました。また、こういう感じだと一回一回のライヴで、内容も結構変わってくるのではと思いました。Hacoさん、今日はハウリング・ポット(ポットの中のマイクとハンディのボイスチェンジャーでフィードバックを変化させる)を少し披露しました。
この2人、6月にヨーロッパツアーをして、パリのサーカス小屋や北フランスのダンケルクで公演したそうです。きっとそこは、私が想像するような場所ではないかもしれませんが、シャガールの絵か何かのように優れて詩的であるようにも感じられるこのユニットには、パリの場末のサーカス小屋やドーバー海峡に面した霧の港町が、なぜか無性に似合うように思われました。どこかポエジーを感じさせるこのユニットに心のときめきを感じました。
帰りに、広沢さんらお店の人たちが声を掛けて下さいました。「ミドリさんからCD-R、少しだけど聴かせてもらったよ」、「(飛頭は)いいユニットだから」とか・・・。ありがとうございました。人の優しさを感じるのはこんな時です。
日曜日は、instrumentalize#2という催しに出かけてみました。素敵なHacoさんがもう少し観たいと思ったのと、今日は自由な時間が少し取れるので、遠くの知らない町へ行ってみたいと思ったからです。ミュージアムは、東急東横線の武蔵小杉の駅からバスで10分くらい、等々力緑地という広い敷地の中にあります。緑が多くて気持よかったです。小諸の中棚荘の部屋の真ん前にあった樹齢何年かの大きなプラタナス、同じプラタナスの木があったのでしげしげと見入ってしまいました。開演まで少し時間があったので美術館の周りを歩いてみました。少し歩くと多摩川べりに出ることができました。広々と視界が開けて川の向こうは東京都。人気も少なくて、夕暮れのいい時間になってきました。「夕暮れの時はよい時、限りなく優しいひととき」の作者は誰だったかなー。
演奏会場になっているのは、逍遥展示空間という所。天井が吹き抜けになってる広々とした気持のいい場所で、東大の駒場小空間に似ていますが、こちらは客席から外の景色が望めるのでもっと開放感があります。遠くの森の上の空の色が、夕方の青から暗闇へと刻々と変わっていく様子、そんな様子をずっと眺めながらこの場所にいる時間を楽しんでいました。帰りは久しぶりの雨、随分と涼しくなって、夏の終わりを告げられた一日のように感じられました。
さて、肝心の公演の内容ですが、今日の音楽/音は、私にとってはそんな夏の終わりの夕べを楽しむBGMのようにあったと思います。つまり、この場所でこの時間を過ごしたということの方が自分にとっては印象に刻まれたというような意味です。そうですねー、サウンドアート。こういう手法/技法でやっているということの方に重きを置いている音の現代美術と言っていいのかどうか、音=内容よりも発想の方に、「そうやっているのか」ということの方に注意が惹き付けられてしまったように今日は私には感じられました。以下、どんなことをやったのか、間違いもあるかもしれませんが、書けるだけ書いてみたいと思います。
sasw:佐藤実(m/s)さんの活動ユニットで、今日はNRFAmplificationというシステムを使っています。会場の4個所にガラス管が置いてあって、その中にコンタクトマイクが置いてあってどうのこうのというもの。演奏の間、システムを説明する文章が前方のスクリーンに写し出されましたが、あまりよく覚えていません。
asuna:each organは、オルガンを弾く一方で、オルガンの後ろをとっぱらってそこにコンタクトマイクを置いて振動音を拾うというようなもの。
Haco:howling potは、ポットの中のマイクとハンディのボイスチェンジャーでフィードバックを変化させるもの。pencil organ(エンピツオルガン)は、電子ブロックを使って、鉛筆で塗りつぶした面をなぞって音を奏でるもの。この2つは、Hacoさんの手元が前方のスクリーンに大きく映し出されたのでよく見えました。最後に、超音波を出す電子蚊取り器を20個用意して観客に配りました。モジュレーションが起きるのではないかということでした。これは何かポータブル・オーケストラに使えそうですね。
日曜日は、先週に引き続いて東急東横線でめぐろバーシモンホールへ。ちょっと遅れてしまって開演5分前くらいに会場に入ると客席はすでに一杯。ミュージシャンの円の中、そこも既に一杯といった感じでしたが、何とかスペースを作ってもらってやっと座れたという感じでした。子供さんたちやいろいろな人がたくさん居て、いろいろな道具もたくさん置いてあって、楽しそうな雰囲気。
第一部が、「coal retio」(←綴りは間違っているのか?「コールレシオ」)。上記ミュージシャンにワークショップの参加者が十数人加わっているそうです。静謐な中にもノイズが・・・というような感じで、私には石川高さんの音が基調になっているように感じられました。それと大蔵雅彦さんがすごくおもしろくて、さちこさんの音にインパクトを感じました。
作品のテーマとしては「楽曲の骨格は雅楽に使われる古典的ハーモニーと、東京やベルリンの新しい即興音楽シーンが多用している空間の多い即興の手法を基にしています。前者には強い物語性が、後者はそれとは対照的に物語性を極端に拒否する姿勢がみられ、その両者の矛盾した共存がこの作品の大切なテーマのひとつになっています。もうひとつの重要なテーマは、この作品は会場の状況や響きそのものが作品の骨格になっているところです・・・」(プログラムより)。・・・と、会場でいただいたプログラムに今初めて目を通して読んでみたのですが、トフなんかは、予めコンセプトやテーマを記したこの手の文章を読んでしまうと、自分の素人の耳で自由におもしろおかしく聴くことができなくなってしまうところがあるので、こういったものは、なるべく後で読んで「そうなのか」と思うことにしています。
で、第二部は「GRID」ver.1。小学生から大人まで60人以上の人が参加したそうです。これは、観ていても聴いていても楽しかったです。大友さんがオーケストラの指揮者&音の交通整理係りみたいになって、絵や文字を書いたカードを擧げると、それを見て皆がジャジャジャーンとか・・・。参加者が持ってきた楽器はというと、サックスやヴァイオリンなどのちゃんとしたものからそうでないものまで。トフの近くまで歩いてきて目の前に置いて見せてくれたもの、それはもう何だか表現できない、見たことも聞いたこともない代物で、こういう変わったものを見つけられるのはやはり若い人ならではだと思いました。あと、おもしろかったのは、段ボール箱を突いているのか破っているのか、ガザゴソという音、これがうるさくてなかなか良かったのですが、「ああいうことを一生懸命にやる猫とかいるよなー」と思ったりして可笑しくなりました。
「GRID」ver.1。これは、いろいろな意味で可能性を秘めたすばらしいプロジェクトだと思いました。ヴァージョンが今後アップするのかダウンするのかわからないけれど続けていく、というようなお話が最後に大友さんからありましたが、常に可変的であるということで、ヴァージョンが必ずしもアップしていって完成して終わりではないというコンセプトもすばらしいですね。トフは今回、ちょっといろいろとあって参加する気力がなかったのですが、機会があったらまたやってみたいと思います。ちょっとだけ参加したポータブル・オーケストラの経験から言うと、結構疲れるのですよ、ルールにしたがって演るのは。