CDを聴く


マッツ・グスタフソンは下の2枚の中で、サックス表現の新しい可能性の諸相を探っていると思います。以下たっぷりとスペースを取って紹介していきたいと思います。


"Impropositions"(PHONO SUECIA PSCD99)

Mats Gustafsson(soprano saxophone,tenor saxophone,baritone saxophone,fluteophone,alto flute,french flageolet)

スウェーデンは行ったことがないですが、こんなに素敵な私好みの本が出せる国はどんなところなんだろうと思う。実際これは1Bくらいの厚さの本になっていて、音楽の詳しい解説や写真やペインティングが載っています。CDは背表紙の内側のポケットに入っていて、パソコンでも見られます。
"Impropositions"というのは、improvisation と composition を合わせた造語だろうか?解説は、composition、interpretation、improvisation と free improvisation の間に違いを聴くことはできるだろうか?少なくとも違いがあるということに同意できるだろうか?という問いかけから始まっています。
下記に写真とペインティングの一部を抜粋してみます。


Karin Almlof という人のペインティング。禅画に通じるような直感的な美しい絵。右上はもろ龍安寺の土塀のようだ。こういう絵が描けるといいのにな。


その人の絵の前で演奏しているらしい。


スコアの一部が見える。解説はかなり踏み込んだ音楽論になっている。曲のほとんどは誰かに捧げられている。例えば、ポール・ローフェンスに、バリー・ガイに、ギュンター・クリストマンに。



"Windows:The music of Steve Lacy"(BLUE CHOPSTICKS 4)

Mats Gustafsson(tenor and baritone saxophones,fluteophone)

レイシーの演奏にそっくりなクリストフ・ガリオにも驚かされましたが、マッツ・グスタフソンはレイシーのマテリアルを使って全く別の驚きを与えてくれます。レイシーご本人によるライナー・ノーツを書き出してみたいと思います。拙訳、誤訳はお許し下さい。

1.Deadline(Lacy)
誰かがサキソフォンにおいて私がかつて一度も聴いたことのない何かを演奏するのを聴くのは素晴らしいことだ。とりわけ、出発点として私のマテリアルの幾つかを使うことによって。私はそこにある多くのことを評価するが、 とりわけ驚きを認める。それらの多くのことが語っているように、ジャズというのは驚きのサウンドだ。サキソフォンは非常に多くの異なったやり方で演奏されるのが可能であり、それと共に非常に多くの異なったサウンドが可能である、そして、実際のところ私がかつて聴いたことのない幾つかの要素を携えてつかつかとやって来る男がここにいる。そして私がこんなにも慣れ親しんでいる楽器でこのように驚かされるということは私にとってはスリルである。私を驚かせてくれて本当にありがとう。また彼が作り出す幾つかのサウンドがここにあるが、あなた方はそれがサキソフォンであることを知りさえもしなかったであろう。それはまさに新しいサウンドである。それはまた私に幾つかのアイデアを与えてくれる。そう、それは美しい。続けて行きたまえ。

2. Prospectus(Lacy)
この曲"Prospectus"は、ブレーズ・サンドラールによって発見された一編の詩に基礎を置いている。彼は南大平洋にある島のための旅行パンフレットを発見した。そして彼は旅への誘いであるそのパンフレットからひとつの詩を作り出した。私たちはそれをかなり何年も前に音楽にした。イレーヌはそれを何千回も歌い、私たちはそれを多くの異なったやり方で演奏した。今ここで誰かがそれから別の種類の prospectus を作るのを聴くのは、私にとってはとても目新しくておもしろくまたとても楽しいことである。それは略奪の試練を受けている。これらの事柄は誰かのやるべき仕事である。これらの事柄の上にかけがねを降ろすことを欲する誰かの。それらを欲したりそれらと共に欲する何かをやりたいと思う誰かの。それは私にとっては素晴らしいことだ。特にもし彼らが何か異なったことをするなら、何か独創的なことをするなら、また私にとっても面白いことをするのであるなら。それは私を笑わせた、そして私を笑わせる音楽は私が本当に愛する音楽である。私が愛するすべての音楽である。ストラヴィンスキーを初めて聴いた時さえ私は笑いとばした、それははしゃぐように楽しいと思った:「ワオッ、それを聴いて!」これはとても面白い。もちろん、ブレス・コントロールは驚嘆すべきである。しかし、すべての中で私が最も評価するのは、彼が成し遂げるスペースである。音楽は実際のところ、後にやってくる沈黙を評価するために作られている。本当に重要なことは、あなたが演奏しないこと、あなたが作り出すスペースであるとモンクは私に語った。この男はスペースとタイムとブレスの大変良いセンスを持っている。彼は実際のところ画家である、そして私は彼が大いに成せることを評価する。そう、非常に申し分がない。

3.Windows(Gustafsson)

4.Louise(Cecil Taylor)
私がこれに付け加えられることはここには多くは無い。とても美しくて、とても独創的で、とても審美眼がある。驚嘆に満ちていてとても刺激的である。しっかり。幾つかの新しいアイディアを持ってやってきて、同じ古いことをやらない若手の誰かを聴くことはとても元気づけられることである。多くのいわゆる"free"演奏家たちは同じ紋切り型の演奏をする、しかしこの男はサキソフォンの可能性、ブレスとスペースとタイムの可能性の大いなる研究を成し遂げている。彼は彼独自のものを持っている。これはセシルの初期の名作のひとつ、私たちが'50年代によく演奏したものだ。私はそれを'61年にチャールズ・デイヴィスのバリトンと一緒にレコーディングしたと思う。何かもっと平凡なというよりはむしろこのような曲に取り組むという事実さえも彼の名誉となるものである。そう、私は彼に賛同したい。

5.Retreat(Lacy)
私はこれは多くの意味で大変美しいと思う。彼はメロディーを美しく演奏している、そして私が評価するのは、そのサウンドの中には誰かが存在したということである。そこのホームには誰かが存在したのです、そうでしょう。サウンドの中にブレスの中にそして彼が描写するメロディーの中にある存在が現前したのです。このメロディーは画家ゲインズボローの言葉に基づいている、彼は肖像画を描くのがいやになって田舎にリタイアしたいと言った、そして彼自身の楽しみのためにほんのわずかの風景画を描いて、そして彼の最後の二つの言葉は"静穏と安寧"なのだが、その中で生涯を終えるのです。これは"retreat" の美しく描かれたヴァージョンである。バリトンは、そう、美しい響きを奏でている。私はそれがとても好きです。ブレスと存在の現前はとてもとても印象的です。ありがとう。

6.Outline(Gustafsson)

内容を紹介したい一心で訳してみましたが、われながら下手な訳でお恥ずかしいです(^_^;)。内容の大筋が伝わるといいのですが。


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